霏々

音楽や小説など

2019-01-01から1年間の記事一覧

つばきファクトリー「抱きしめられてみたい」レビュー ~作詞・作曲・編曲、最高かよ~

つばきファクトリーの6th single「抱きしめられてみたい」のレビューをさせていただきます。 www.youtube.com ◆ 私とつばきファクトリー つばきファクトリーのレビューをさせていただくのは初めてですね。 冒頭の文を書いている段階で、「あれ? まだ6th sin…

凍結星

凍結星 夜の闇の中で、霧の粒子がよく目に見える。乳白色の亡霊が辺りを漂い、信号の明滅を受けて妖艶に身をくねらせる。吐き出す息の白さえも霧に飲み込まれてしまう。合成皮革の鞄はいつの間にか無数の水滴を身に纏い、蜘蛛の眼のように街灯の光を照り返す…

アンジュルム「全然起き上がれないSUNDAY」レビュー ~曲名の魅せ方~

アンジュルムの27th single 「全然起き上がれないSUNDAY」のレビューをさせていただきます。 www.youtube.com ◆ 前置き 近年のつんく♂さんらしい、静かにどっしり聴かせるEDM系の楽曲となっていますが、編曲は江上浩太郎さんという方になります。EDMと言えば…

モーニング娘。'19「KOKORO&KARADA」レビュー ~楽曲構成による錯視~

モーニング娘。'20の68th single「KOKORO&KARADA」のレビューをさせていただきます。 www.youtube.com ※発売日が年明けということで、'20名義で上は書かせていただきましたが、私がこの記事を書いているタイミングは絶賛'19名義で活動しています。 サムネの…

宮本佳林 <宮本佳林 LIVE TOUR ~Karing~ 名古屋公演> ライブレポート【後半戦】

さて、ライブレポート後半戦に移りたいと思います。 前半戦は以下のリンクをご参照ください。 eishiminato.hatenablog.com 本当はもっと早く書くつもりだったんですが、身体が疲弊しており仕事終わりは「バタンキュー by マーガレットお嬢様(cv. 佐藤優樹)…

宮本佳林 <宮本佳林 LIVE TOUR ~Karing~ 名古屋公演> ライブレポート【前半戦】

宮本佳林のソロライブツアー<Karing>の名古屋公演に参戦してきましたので、ライブレポートなるものをさせていただきます。 ※前半戦と後半戦に分かれる大作となってしまいました… eishiminato.hatenablog.com ◆ 長い前置き わーい! オイラは宮本佳林ちゃん…

Maison book girl <Amazon presents Live 2019.09.16 in 京都MUSE 2公演目>ライブレポート

Maison book girl(以下、ブクガ)のライブに初参戦してきました。 出不精かつ現在の居住区の問題でなかなかブクガのライブチケットを手に入れようとしてきませんでしたが、今回は新曲のCDにライブチケットがついてくるということで、「こりゃあ、いい」と買…

宮崎由加 卒業によせて

2019年6月17日、宮崎由加さんがJuice=Juiceおよび、ハロープロジェクトを卒業されました。 まずは、ご卒業おめでとうございます。 宮崎由加さん(ゆかにゃ)の卒業に際して、ネットなどではゆかにゃの人間・リーダーとしての素晴らしさを再確認するような記…

25歳

25歳 朝起きると、ユカはいなくなっていた。 だいたいはマリンとルリが一緒のタイミングで起きてきて、二人でユカが作る朝ご飯をテーブルに並べる。トーストやスクランブルエッグに、塩コショウで炒めたアスパラガス、それからできるだけ新鮮なレタスで作…

Juice=Juice「『ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?」レビュー~愛されるより、愛したいの~

Juice=Juice 12thシングル 『「ひとりで生きられそう」って それってねぇ、褒めているの?』 のレビューをしてみたいと思います。 当楽曲は、2019年6月17日に卒業するリーダーの宮崎由加(ゆかにゃ)へのあてがき卒業ソングである『25歳永遠説』との両面シン…

Symbol, implicit and closed pray vol.1

Symbol, implicit and closed pray ホテルの一室で栢森夕菜は髪にドライヤーの風を当てていた。小うるさいモーター音が部屋を満たしている。それでも窓の向こうでは強い雨風が、大地と海に降り注いでいるのがわかった。テレビも点けられていない部屋の中で、…

Symbol, implicit and closed pray vol.2

ずいぶんと久しぶりにあの灯台を訪れた夕菜だったが、時の経過で夕菜がずいぶんと変わってしまったのと対照的に、灯台はかつての姿からまるで何一つとして変わっていなかった。波しぶきが付けたシミさえ、かつてのそれと同じように夕菜には感じられた。 とこ…

Symbol, implicit and closed pray vol.3

結局のところ、夕菜は少年とともにバスに乗って、あの防砂林と雑木林の間にあるバス停へと戻って来た。夕陽はもう雲の向うへと隠れてしまい、そして雲の裏に隠れたまま水平線の下へと沈んでしまっていた。 「今晩、雨が降る。風も強い。つまり、嵐がやって来…

7days wonder

7days wonder 一日目。 私が目を覚ましたとき、あの人は既に起きて半分だけ開けたカーテンから朝の淀んだ水色の街を眺めていた。鳥の鳴き声もない、雨の音もない。空が白んでくる、という表現を聞いたことがあるが、これはどう見ても淀んだ水色だった。 あの…

Maison book girl <SOUP>レビュー ~上質な舌触り、「鯨波の街」とは~

Maison book girlのシングル<SOUP>のレビューをさせていただきます。 <SOUP>は 1.鯨工場 www.youtube.com 2.長い夜が明けて www.youtube.com 3.まんげつのよるに の3曲で構成されたシングルとなっています。 何はともあれ、「1.鯨工場」というタ…

ハロプロ・オールスターズ「憧れのStress-free」レビュー~シンプルな音像、独創的な構成~

ハロプロ・オールスターズ「憧れのStress-free」のレビューをさせていただきます。 www.youtube.com この記事を書いている現在は2019年4月15日ということで、先日にはアンジュルムが「恋はアッチャアッチャ」、こぶしファクトリーが「ハルウララ」などハロプ…

sora tob sakana「World Fragment Tour」レビュー(後半) ~世界旅行を終えて~

sora tob sakana <World Fragment Tour>のレビュー、後半戦に入りたいと思います。 eishiminato.hatenablog.com eishiminato.hatenablog.com 当初は記事が3つに分かれるとは予想していませんでしたが、よくよく考えてみれば私がそんなに要領良くものを書け…

sora tob sakana「World Fragment Tour」レビュー(中盤) ~アイドル=偶像とメタ構造~

さて、sora tob sakana <World Fragment Tour>のレビュー、中盤戦に入りたいと思います。 *アルバムレビューは前半・中盤・後半の3つに分けてあります。 eishiminato.hatenablog.com eishiminato.hatenablog.com と言いながらも、まずは仕事の愚痴から。 …

sora tob sakana「World Fragment Tour」レビュー(前半) ~新たな旅への門出~

sora tob sakanaのアルバム<World Fragment Tour>のレビューをさせていただきます。 *全曲のレビューをこの1つの記事でしようと思っていましたが、量が多くなってしまったので、前半・中盤・後半に分けました。 eishiminato.hatenablog.com eishiminato.…

梁川奈々美 卒業によせて

3月11日、月曜日。 梁川奈々美さんがハロープロジェクトから卒業し、アイドルから普通の女の子へと戻りました。 私は現場に行くことも、その他の手段でも卒業ライブを見ることができませんでした。仕事が忙しく、また夜勤などもあって生活が非常に不規則とい…

春甘 vol.1

春甘 甘ったるい風が吹いている。三月の最終週、平日の午後。通りには春を告げる陽光が降り注ぎ、完全な暖色へと移行した生温い風が吹いていた。 玄関の扉を開け、霞がかった空を見上げる。きっとそこまで眩しくはないのだろうが、昼過ぎまでずっと家に引き…

春甘 vol.2

裕也は慌てて首を回し、そこに確かな人影を認めると、耳からイヤホンを抜いた。 「上原くん?」 すらりとした立ち姿。肩まで伸ばした髪は黒く、グリーンのニットに暗い灰色のガウチョパンツを合わせている。化粧のせいなのか、ぱっと見てそれが白井海織と裕…

春甘 vol.3

その日は中間テストが終わった後に、交通講話と進路指導の時間が取られていた。裕也は「徹夜で勉強して体調が悪いので」とテストが終わってからすぐに早退し、静かな校門を自転車に跨って通り過ぎた。傾きかけた陽射しは心地よく、夏に向かう風がテスト後の…

Juice=Juice「微炭酸」レビュー ~本当に美しく儚い初恋なの?~

Juice=Juice 11thシングル「微炭酸」のレビューをしたいと思います。 www.youtube.com 「微炭酸」のMVがYouTubeで公開されてから、かなりの日数が経ってしまいました。仕事が忙しく、そのうえ風邪までこじらせてしまって、ゆっくりと腰を据えて書く時間が取…

Juice=Juice グループの歴史 ~パロプロエリート集団の挑戦と苦悩~

Juice=Juiceの楽曲レビューをする前に、ちょっとグループ自体のレビューをしておこうと思いまして、この記事をまとめています。ハロプロで1番推してるグループですが、何と楽曲レビューはまだ1つもできていないという…とは言え、やなみんの卒業発表やゆかに…

茫洋 vol.1

茫洋 裕也は黒いキャリーバッグを引きずりながら駅を出ると、まずはゆっくりと息を吸い込んだ。まだ夏の香りが残っているものの、温度それ自体は少し冷ややかだ。それから湿度が違う。東京の乾いた空気に慣れてしまうと、こっちの空気が持っているじめじめと…

茫洋 vol.2

帰り道。歩いているときに、裕也は中学の同級生に会った。最初は遠くて誰かよくわからなかったが、近づくにつれてその二人連れが日高浩輔と、笹山なんとかという女であったことを思い出す。イヤホンを外して、裕也も手を挙げて挨拶をする。 「おぉ、ユーヤじ…

茫洋 vol.3

家に戻ると、とりあえずシャワーを浴びた。数時間前にも浴びたばかりだけれど、とも思ったがとにかく汗が気持ち悪かった。何となく、あの成人式の日の最後の雨を思い出しながら、髪の毛に水を含ませていく。頭皮に打ち付ける水の粒。滝業でも行こうか。そん…

バズマザーズ「文盲の女」レビュー ~イノセンスへの憧憬と、対立する自堕落的性衝動~

バズマザーズ <スクールカースト>収録曲の「文盲の女」のレビューをさせていただきます。 この楽曲は残念ながらMV化されてはいませんが、曲調、そして何と言っても歌詞が秀逸です。ベースの重松伸さんはMV化を熱望していたそうですが、個人的には「MV化さ…