1年くらい前に私のiPodの中には「アイドル選抜」というプレイリストが出来上がりました。それは随時更新されているのですが、更新されるということはその時に「好き!」ってなっていた楽曲たちを悲しくも後ろに押しやってしまうことになります。まぁ、その受け皿として「アイドル全集」というプレイリストも作っているのですが、これはもう総再生時間が12時間を超え、収拾がつかなくなっています(これでも、それなりに厳選はしているつもりなんですけどね…)。
というわけで、ここに2020年度版の「アイドル選抜」として、個人的に非常に愛でているアイドル楽曲を書き残しておこうと思います。適応障害というものにかかって、「日記」形式の記事を書くようになり、このブログにその時々の想いを残すことに抵抗がなくなったことも大きな理由ではありますが。
〇記事の概要
私が個人的に愛好しているアイドル楽曲を計35曲書き連ねていきます。私はアイドルに広く精通しているわけではありませんし、一聴しただけで「タイプじゃない」と切り捨ててしまうこともしばしば。ですから、アイドルにも曲調にも非常に偏りがあります。そして、楽曲自体の優劣をつけるつもりは毛頭も無く、何度も言うようにただ私が個人的に「好き!」となっていた楽曲を書き留めるだけです。
実際のプレイリストの曲順に楽曲を書いていくため、同じアイドルがまとめられているわけではありません。また、曲順が好きな順位という訳でもありません。ただ、最初の5曲だけは「ガチ」で好きなので、そこだけ見て共感できる部分があれば、続きも読んでいただければと思います。まぁ、35曲に絞るのにも相当苦労しているので、全部の楽曲がガチで好きなんですけれど。
1~5曲目 ※ここだけでもぜひ!
1.こぶしファクトリー「Come with me」
2.sora tob sakana「silver」
3.東京女子流「十字架」
4.Maison book girl「レインコートと首の無い鳥」
5.モーニング娘。'17「邪魔しないでHere We Go!」
はい。というわけで、1~5曲目は上記の通りになりました。順不同の1位です。簡単に楽曲の紹介をしていきます。
1.こぶしファクトリー「Come with me」
最初聴いたときからジャズっぽく、それでいてファンクロックっぽい強さがあって好きな曲調だと思っていました。特にBメロの四分音符のリズムが心地良いです。ただ最初にワイシャツにアイロンをかけながらこの楽曲を聴いていたときに、「もっと間奏をジャズっぽくすればいいのに。わざわざベースでスラップ入れる必要あったかな」と思う部分もありました。が、この動画を見て、私がきちんと楽曲の方針を理解していないことに気付かされました。
川口千里さんのドラムレコーディング映像が紹介されています。この映像を見る限り、川口さんのタイトかつエネルギッシュなドラムを生かすことがそもそもの念頭に置かれていたことがわかります。また、それに伴って歌詞もかなり力強い女性をイメージしたものに書き換えられているようです。こぶしファクトリーというアイドルの持ち味もありますしね。とは言え、間奏のスラップのベースは「いかにも」っぽい気もしますけれど、そこがハロプロの良さですよね。変に斜に構えず、良いと思うものをきちんとやり切る。こぶしファクトリーのメンバーのロックテイストな声も相まって、ただのジャズっぽい楽曲ではなく、確かな熱量を感じます。
あまり長くなるのであれですが、この楽曲のドラムを聴いていると、いかに正確なタイム感かつ正確なアタック感を出すかというのがドラマーの技量なんだと思わされますね。明らかに序盤と終盤ではスネアの質が変わっています。プロデューサーの要望通り、後半にかけて盛り上がりが高まっていくように演出されており、本当に素敵な楽曲だと思いました。
2.sora tob sakana「silver」
もうこの楽曲についてはいくつもの記事で書いてきたので、あまり言う事はありません。
ただ、どちらかと言えば、オサカナというアイドルありきでの説明が多かったので、楽曲について少しだけ。まず、リズムのタイトさが素晴らしいです。基本は8ビートなんですが、リズムが細かく散りばめられており、それらがどれも最高に気持ち良いです。イントロから続く主題となるフレーズも、特にギターのゴーストノート(カッティング)が多く、思わず身体が動いてしまいますね。そして、アンニュイな感じなのに幼い声質のボーカル。対して、キーボードが音の広がりを生み出してくれています。
そして、何といっても間奏からの展開が最高です。まずギターソロがかなり特殊で捻くれています(ライブも素晴らしいですよ)。ポリリズム気味に乗っかって来るクラップ音の使い方なんかはさすがマスロック、ポストロックを冠するだけありますね。で、何よりも素晴らしいのが落ちサビ。完全にポリリズムでノリを壊しにかかり、ボーカルの寂寥感のあるロングトーンが絡み、最後は低音で構成されたドラムのフィルイン。この展開だけで、古米のご飯3倍はいけてしまいます。と、そんな最高にカッコイイ楽曲です。あまりにもカッコイイので、普通にアイドル以外のプレイリストにも入れてる数少ない楽曲です。
3.東京女子流「十字架」
東京女子流の歌謡曲っぽさが炸裂している楽曲です。しかし、この楽曲は本当にリズムが多彩です。シンプルな8ビートだけでなく、キメも多いし、シンコペーションなどもふんだんに用いられているので、おそらくドラムを叩いても一生飽きることがないんじゃないでしょうか。サビの「じゅ、うーーーじかーーー♪」というのも最初聴いたときはちょっと慣れない部分もあるかもしれませんが、聴いているうちにこれが堪らなくなってきます。コーラスワークでハモリが秀逸なのは「さすが女子流」という部分もありますが、Aメロのパートバトンがこの曲は素晴らしいです。一昔前の男女デュエット曲を彷彿とさせますよね。こういう曲好きなんですよ(ハロプロの限定ユニットHI-FINの「海岸清掃男子」とか)。
ただ単に懐古的という風に感じる方もいるかもしれませんが、上述の通りリズムがめちゃくちゃお洒落なので、聴きようによってはかなり現代的とも言えます。まぁ、EDMの重たい4つ打ちなどが流行っていたりするので、逆にリズムをこねくり回すことが古いと捉えられる時代ということもあるのかもしれませんが。
4.Maison book girl「レインコートと首の無い鳥」
もうこの楽曲は世界観とコンセプトがとにかく好きです。明らかにトルーマン・カポーティ(「ティファニーで朝食を」の作家)の「無頭の鷹」の影響を受けているような気がしますが、でもアイドルが「無頭の鷹」をオマージュしているなんてもう最高としか言いようがありません。5拍子というよりは10拍子の楽曲で、慣れるまではとても大変です。変拍子の多いMaison book girlの中でも最高峰にリズムが難解だと思いますが、慣れるとそれが本当に心地いいです。MVも含め、ダークでセンシティブな世界観に酔い痴れてしまいますね。
この楽曲、あまりダンスがよく見えないのですが、サビのところで首をぐるぐると回す振付があって、それが気色悪くてすごい良いです。あとは、何かのインタビューで作曲家のサクライケンタさんが言っていた通り、全編を通してボーカルのほかにメロディがあるんですよね。この手のかけ方が素晴らしい。本当に濃密な楽曲だと思います。
5.モーニング娘。'17「邪魔しないでHere We Go!」
これも何度か別の楽曲解説の記事の中で触れてきました。
とにかくつんく♂さんの「盛り上げない」フェティシズムが光る1曲です。上記リンクにある「KOKORO&KARADA」も超秀逸ですが、時系列的にはこの「邪魔GO!」が先に誕生しています。ざっくり楽曲構成の肝だけ言うと、サビでリズムを極端に減らすことでサビをサビとして認識させない手法が施されています。そして、そんな手法を使っているものだから、サビと同じメロディラインを用いており、かつリズムの立ったイントロ(楽曲テーマ)がサビみたいに機能しているんです。つまり、アイドル楽曲なのに、アイドルが歌っているサビよりも間奏の方が盛り上がっちゃってるわけですね。しかも、楽曲がその盛り上がらないサビから始まっているので、最初に聴いたときは「んんん??」ってなってしまいます。「あれ、これAメロ?…じゃないよな…あぁ、ここはAメロっぽいね。うん、で次のここがBメロか。で…あれ、サビどこいった? あれ、テーマに戻った」みたいなことになるわけです。
そんな風に混乱しているうちに、何かやたらと重たい本意気の間奏がやってきて、落ちサビらしい落ちサビがやってきます。で、それが終わるとちゃんと本来のサビにリズムも乗って来るので、「あぁ、これこれ! これがサビだったのね!」ときちんと最後には盛り上がることができるのです。そして、サビが終わった流れでまたテーマに戻り、きちんと着地するという何とも難解かつ楽しい構成。この素晴らしさをアイドルファン以外にも伝えたいのですが、セリフパートが一般人にはちょいキツイかな…(笑)。ただ、別の記事でも喩えたように、酢豚にパイナップルがいるかどうかと同じ問題で、この「邪魔GO!」にセリフパートが必要かという問題は非常に難しいものがありますね。
6~10曲目
6.いずこねこ「END」
7.Maison book girl「狭い物語」
9.モーニング娘。'15「冷たい風と片想い」
10.いずこねこ「fake town」
サクライケンタさん作曲が多いですね。8曲目に関してはアイドルというよりもアニソンですが、好きなのでランクインさせていただきました。ここからは可能な限りペースアップして書いていきます。
6.いずこねこ「END」
私がサクライケンタさんを好きになったきっかけの楽曲です。音像自体はお金があまりかかっていないので、チープに聞こえる部分もありますが、こういう世界観でこういう複雑な楽曲をアイドルがやっているというのが当時の私としては衝撃でした。
Aメロが3拍子3小節という独特な楽曲です。「にゃん♪にゃん♪」と可愛い合いの手が入ってはいますが、初見でノるのはかなり大変でしょう。Bメロに入るとそれが自然と3拍子4小節となり、普通の3拍子楽曲となります。が、サビになると今度はそれが4拍子になり、リズムにも切迫感が生まれてきます。ただ、このBメロの3拍子からサビの4拍子に移行する部分が非常に秀逸で、ちゃんと楽曲展開としての盛り上がりを作りつつ、確かな加速度を持ちながら、しかしとても自然に繋げているんですよね。2番終わりの間奏で見せる3拍子3小節と3拍子2小節のポリリズム(つまり、9拍と6拍が同時に鳴っている)も非常にオシャレです。
また、低音の響きが心地良いボーカルも「いずこねこ」というプロジェクトに惹かれた理由の1つですね。
7.Maison book girl「狭い物語」
こちらもサクライケンタさんの楽曲です。楽曲については既に記事にまとめているので、そちらを参考にしてください。
強いて言うなら、サクライケンタさんの楽曲の中では落ちサビからサビまでの盛り上がりが非常に分かりやすく、かつドラムが結構激しいので、きっちりと盛り上がることができる楽曲と言うのが特徴ですね。MVもこのポイントに力点が置かれているのでぜひ観てみてくださいね。
これこそまさにお洒落で好きなタイプの楽曲です。「恋愛サーキュレーション」も素敵な曲ですが、音楽的にどちらが好みかと言われると、私はこちらに分が上がりますね。花澤香菜の声はもちろん最高ですし、撫子は永遠の憧れですが、それを差し置いても良い曲です。
既にお気づきの通り、結局、私はドラムがカッコイイ曲が好きなので、好みドストライクです。ストリングスを贅沢に用いていたり、ベースラインもお洒落だったり、本当にちゃーんと作り込まれている楽曲です。雰囲気がとにかく好きなだけであまり楽曲的に考察できていなく大変申し訳ありませんが、「ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ♪」のところとか普通に音ハメとしても最高で、エンジニアが優秀なのか、花澤香菜さんが優秀なのかわかりませんが、申し分ない完成度ですよね。
9.モーニング娘。'15「冷たい風と片想い」
鞘師里保ちゃんの卒業ソングという位置づけで、それが印象的です。が、つんく♂さんがここまで音数を減らした楽曲はこれが初めてなんじゃないですかね。ミドルテンポでしっとりと聴かせつつ、非常に繊細な少女の美しさを際立たせています。ただ音数が少ないというだけでなく、使用している各楽器のフレーズも非常にシンプルです。静けさ漂う感想の中で、鞘師里保ちゃんが儚くも情熱的に舞う姿は、まさに伝説…!という感じです。
音数は少ないですが、中高音域には実に多彩な楽器や電子音が散りばめられており、それらが主張し過ぎることなく、あくまで実直で簡素な低音に身を委ねている全体的な音像が私は大好きです。
10.いずこねこ「fake town」
またしても、いずこねこから。
上記「鯨工場」の記事にも書いていますが、サビのポリリズムが変則的で面白いです。サビの前半が3拍子と4拍子のポリリズムで、後半が2拍子と4拍子のポリリズムです。3拍子と4拍子では、「3×5+1=4×4」で拍数を合わせています。この斬新なアイディアに惚れてしまいました。
ただ、それだけでなくBメロではアイドルらしい「パン、パパン、おい!」のリズムも取り入れられているので、ただ難解なだけでなくポップでもあるというのが良いです。Masion book girlほどお金をかけていないこともあって、音像はやはりチープに聞こえるのですが、そのチープさがまた良いんですよね。でも、歌声はやはり低域がしっかりとしており、艶っぽく憂いを帯びていて、そこがまた本格的な雰囲気を作っており、様々な側面が垣間見える素晴らしい楽曲だと思います。
11~15曲目
11. sora tob sakana「knock!knock!」
12. カントリー・ガールズ「恋はマグネット」
13. フィロソフィーのダンス「ヒューリスティック・シティ」
14. sora tob sakana「ありふれた群青」
15. ℃-ute「人生はSTEP!」
結局、ハロプロが好きなんですよね。そして、sora tob sakanaも。好みの偏りが露呈しだしていますね。
11. sora tob sakana「knock!knock!」
こちらも既に記事にしているので、そちらを参考に。
Bメロが最終的に大サビになるという仕掛けの施された楽曲です。個人的には2番のAメロの位置にしれっと、これまで登場してこなかったCメロなるものが差し込まれていて、そこが非常に好きなポイントでした。全体的に幻想的な曲調の中で、非常に日常的な冷たさを感じるパートなんですよ、これが。間奏のアラビアンな感じもエッジが効いてて素晴らしいですよね。
12. カントリー・ガールズ「恋はマグネット」
古き良きアイドル歌謡曲を感じさせる楽曲です。どちらかと言えば、東京女子流と似たような嗜好で選んでいます。ただ、実は電子音もかなり効いていて、間奏なんかは急にめちゃくちゃエレクトリックな激しさを帯びるので、そこが好みが分かれるところになっていますね。全体的にミドルテンポで甘めの楽曲なので、この急に訪れる刺激的な展開が個人的にはかなり好きです。稲場愛香ちゃんのダンスも素敵ですし。それに衣装も良いですよね。MV含め、ハロプロの中ではしっかり世界観が構築されている方だと思います。
最後の半音転調や、「Find me, Find me, I need you♪」という歌詞なんか非常にポップで構えずに聴いても「良い曲!」と思えるのが良いです。繊細な作り込みが素敵な楽曲ですね。
13. フィロソフィーのダンス「ヒューリスティック・シティ」
シティポップ感のあるアイドルと言えば、フィロのス。歌声も実にバリエーションが豊富で、アイドルらしくないところからいかにもアイドルっぽいところまで、広く楽しむことができます。私はあまり近年流行りのシティポップをちゃんと聴いていない人間なのですが、でもこういう曲調って普通に好きです。普通に楽曲の質が高いので、シティポップ畑に足を踏み入れることに躊躇している人にとって、「アイドル」という切り口からアプローチするには最適だと思います。
何といっても「ヒューリスティック・シティ」という曲名が秀逸ですよね。「ヒューリスティック」という言葉は近年心理学やITの用語として用いられているそうです。意味は「経験則的」。このタイトルに見合った歌詞もクオリティが高いです。
直接の引用ではないですが、「男として車道側を歩くこと」と教わってその通りに行動している、という歌詞なんかには非常に共感できます。「アブダクション」や「ディダクション」といった私なんかには馴染みのない言葉もさらっと出てきますし、「『記憶』って匂いのするふたりの待ち合わせ場所」という甘い歌詞もさらりと歌い上げており、様々な角度から見ても質が高いです。
14. sora tob sakana「ありふれた群青」
この楽曲も既に記事にしています。
実は、ずっと「アイドル選抜」プレイリストには、この楽曲の代わりに同アルバムから「燃えない呪文」がエントリーしていたのですが、最近こちらの「ありふれた群青」に入れ替わりがありました。どちらも良い曲で、sora tob sakanaらしい肩肘を張った複雑なマスロック的な部分が無く、彼女たちのもう1つの特徴である「イノセンス」を感じることができます。
楽曲的にとても特徴があるというわけではないので、聴く人によってはとても退屈に感じてしまうかもしれません。が、sora tob sakanaの重要なファクターが「ノスタルジー」であることに気付き、そこを楽しもうと思ったならばやはりこの「ありふれた群青」は素晴らしい楽曲です。緩いリズム、甘いブラス、透き通る歌声。癒されます。
15. ℃-ute「人生はSTEP!」
リズムはカッコ良く、単調に見えてアクセントの位置が細かく変えられているので、このシンプルな8ビートを追っているだけでもかなり楽しめます。ただ、8ビートに対して軽やかにシャッフルビートも割り当てられており、それがノリの良さを引き立ててくれています。しかし、何よりもポイントなのがこのカッコ良いリズムが全て(おそらくは)打ち込みであることです。打ち込みを用いているせいで、かなり平板で乾いた印象に感じるのですが、そこが逆に良いんですよね。たしかに、生音をふんだんに使用して、もっとノリの良さを出すこともできたかもしれませんが、そこをあえて打ち込みにしていることで、非常に乾いた大人っぽさがあります。「人生」の重さと「STEP」の軽やかさが綯い交ぜに鳴っているような感じです。
℃-uteメンバーの勘の良さ、そして歌唱力があるからこそ、シックなトラックでもきちんと煌びやかさがあるところも素敵な1曲です。
16~20曲目
16. Maison book girl「ランドリー」
17. モーニング娘。'18「A gonna」
18. フィロソフィーのダンス「パレーシア」
19. 東京女子流「鼓動の秘密」
20. sora tob sakana「Light pool」
もうだいぶアイドルのレパートリーを出し尽くした感がありますね。私の守備範囲なんて所詮こんなもんですが、どれも大好きな曲です。
16. Maison book girl「ランドリー」
これは拍子ではない方のポリリズムが生きている楽曲です。繰り返されるピアノの主題と、バスドラムとウッドブロック(?)から成る複雑ではあるけれど、ついノってしまう楽しいリズム。どの楽器に注目して聴いても、どのフレーズに注目して聴いても楽しく、それでいて全体を俯瞰して聴いたときには複数のリズムが綺麗に絡み合ってとても気持ちがいい。特に、ファンクやシティポップって休符すら楽しい楽曲が多いですけれど、この楽曲は全然違う質感でありながらその「休符すら楽しい」がありますね。
全編を通して、少し気怠い感じがあり、サビではギアがぐんと上がりますが、何というか「美しい絶望感」みたいなものを私は感じます。絶望の暗闇の中できらりとよくわからない光が射しこむ瞬間が見えますね。それでいてなんか心地が良いので何度でも繰り返し聴ける楽曲です。今のところ私もなんでこの楽曲にそこまで引き込まれるのか、分析しきれていない部分がありますが、雰囲気含めて好きな楽曲です。
サビ前の打ち込みのベースの使い方なんかは特徴的で、サクライケンタさんの遊び心や探求心を感じることができます。
17. モーニング娘。'18「A gonna」
モーニング娘。の「おすすめシングルCDベスト3!」みたいな記事を書こうとして未だに書ききれていないのですが、その2位にランクインする予定の楽曲です。両A面シングルの相方である「Are you Happy?」も大好きですが、やはりこちらの「A gonna」の音数の少なさがクールなので好みです。
5曲目の「邪魔GO!」と同じようにサビで揉音数を減らす手法が用いられているため、不思議な聴き心地のある楽曲だと思いますが、楽曲構成が「サビ⇒A⇒B⇒C⇒サビ⇒間奏⇒A⇒B⇒C⇒サビ」という実質2番までかつCメロまであることもその不思議な感覚を増強してくれています。しかも、最後までサビの音数が少ないため、「邪魔GO!」のような明確な盛り上がりもありません。ただメロディごとに緩急があるため、その揺らぎを感じ、楽しめることができればこの楽曲にハマること間違いなしです。
18. フィロソフィーのダンス「パレーシア」
フィロのスは好きなアイドルですが、実はあまり多くの楽曲を聴いていません。その中で、私がビビっときたのはこの「パレーシア」です。比較的落ち着いた印象のある楽曲でして、もう何度使ったか分かりませんが、私の大好きな「気怠さ」を感じることができますね。ただ、そんな「気怠さ」の中にもきちんと「甘さ」と「機智」があり、そこにオリジナリティを感じます。
「パレーシア」とはギリシャ語の聖書に乗っている言葉のようです(Wikipedia情報)。意味は「包み隠さず話すこと」で、現代で言うところの「言論の自由」や「情報開示の正義」のような意味合いもあるそうです。詳しい歌詞の解釈まではしませんが、女の子が男の子に対して「私にだったら何でも言っていいのよ」と甘く迫るような雰囲気があります。ウィスパーボイスがまたいじらしく魅力的な楽曲となっています。
19. 東京女子流「鼓動の秘密」
言わずと知れたアイドル界の名曲です。東京女子流の名を世に知らしめたのはこの楽曲なのかな、と私は勝手に思っています。「アイドルではなくアーティスト宣言」のせいで後の活動にかなりの制約がかかってしまいましたが、これは本当に「アート」だと思います。総じて私は「アイドル」という手法を用いた「アート」が好きなのですが、それをいち早く体現していたのがこの楽曲のような気がします。
ちょっぴり歌謡曲テイストでオールディーズな雰囲気があり、同時にそのメンバーの幼さが非常に「甘い」です。しかしながら、声質は比較的芯が太いため、きゃぴきゃぴした感じが無く、非常にセクシーでもあります。そして、東京女子流は本当にコーラスワークが秀逸です。そのハモリや声の重なり方が美しく、そこに楽曲としてのこれまたアンニュイな雰囲気が絡み合い、とても質の高い楽曲になっています。また、リズムパターンも多彩で、ちゃんと聴いていると緩急がきちっと図られていることに気が付きます。特にサビの入りや間奏で「待ってました!」と言わんばかりに、ノリやすい8ビートがやって来るので、非常に楽しみやすい楽曲となっていますね。
20. sora tob sakana「Light pool」
sora tob sakanaのメジャーデビューシングルです。このMVと楽曲に当時は度肝を抜かれ、一瞬でファンになってしまいました。以下の記事でも私がどれだけ感動したかは書いていますので、よろしければぜひ。
機械仕掛けのように非常に緻密でありながら、きちんと生音とわかる音像。こういうアイドルが出て来るのを待っていたんですよね。マスロックというなかなか取っつきにくいジャンルの音楽をアイドルというフィルターを通して、ポップに見せているところが1つ目のセールスポイント。そして、ただ「マスロックっぽいね」というのではなく、ちゃんと細部まで緻密に作り込まれており、さらにちゃんとプロデューサー自信が演奏もできてしまうところがまたこのプロジェクトのカッコいいところです。
実は歌詞も非常に美しく、それでいて現代のテクノロジーに塗れる様を描写しているので、深く読んでみるとなかなか楽しめる部分が多いです。
21~25曲目
21. ももいろクローバーZ「マホロバケーション」
22. sora tob sakana「鋭角な日常」
23. Maison book girl「シルエット」
24. 演劇「LILIUM」より「少女純潔」
25. Maison book girl「Fiction」
前半2曲は、20曲目の「Lightpool」のテクニカルを引き継いで、攻撃的な楽曲たちです。23曲目からは、暗くしっとりした楽曲を並べてみました。
21. ももいろクローバーZ「マホロバケーション」
フルのMVではありませんが、もう、ちょっと聴いただけでどんな曲かはわかるはずです。軽やかで、休符が生きるリズム。明るくて楽しい、でもサビではマイナー調になってカッコ良さがビンビンになります。とってもポップだけど、緻密というももクロらしさが楽しめますね。
ドラムが私の大好きなバンド「凛として時雨」よりピエール中野さん。ベースはこれまたみんな大好きハマ・オカモトさん。これだけでもウキウキ、ワクワクしていますが、何よりもピエール中野さんのテクニカルなドラミングが非常によく生きています。譜面上ジャストなタイミングというわけではないんですが、タイム感の差し引きが独特で、楽曲を彩りますよね。ハマ・オカモトさんもはっちゃけている感がありますが、でもやっぱりとっても安定したプレーです。本当に上手で上品です。
22. sora tob sakana「鋭角な日常」
こちらはライブ映像しかなかったですが、アレンジ含め素晴らしいのでリンクを貼らせていただきます。
まず「鋭角な日常」という曲名がお洒落です。そして、その「鋭角さ」を体現するかのように攻撃的な楽曲。21曲目のマホロバケーションと組ませるにあたっては、やはりこの楽曲かな、と思いました。Bメロの「本当の気持ちは~♪」と不安定な音階で落ちて来るあたりが非常にカッコ良くて大好きなポイントです。そして、楽曲として面白いのが、サビで音数が減るところです。つんく♂さんのモー娘。楽曲ほどではないのですが、ギターの手数が減ったせいなのか音圧が抑えられるんですよね。これによって、緊迫感が演出させられているように思います。
そして、私が何よりも好きなのが2番のサビ終わりにすぐにやってくるCメロです。「あてーーーなーのーなーいこーとーばー♪」のところですね。柔らかみを帯びた雰囲気がふわっと出て来て、そこにかぶさって来るのは神﨑風花ちゃんの硬質な少年っぽい声。これが堪らなく映えています。
23. Maison book girl「シルエット」
非常にローテンポで静かな楽曲。幻想的で誰もいない深い森の中、曇り空と霧の中で輪郭が不確かな影を眺めているような楽曲です。リズムは決して激しくないですが、様々な音を使うことで、非常にオリジナリティのあるものになっています。サクライケンタさん自身、どこかで「ポップに馴染みのあるものにするうえでギターやドラムは効果的だけど、一般的なドラムセットを使わなくても、それに代わるものはたくさんあるし、それでリズムを作ることもできる」というようなことを言っていました。この楽曲もいったい何の音なのかわかりませんが、実に多様な音でリズムを構築しています。
その中でも特徴的に楽曲の起伏を生み出しているのが、ベースですね。16曲目の「ランドリー」でも見せた特殊な打ち込みのベース音。繊細な世界観とそれを構築する多彩でオリジナリティ溢れる音が、Maison book girlというブランドをしっかりとアピールしてくれています。
24. 演劇「LILIUM」より「少女純潔」
ハロプロの「演劇女子部」という、ハロプロのアイドルたちが主演となる演劇プロジェクトの中でも、最高峰と今でも讃えられているのがこの「LILIUM」という舞台です。人間で言うところの「思春期」で精神が不安定になった吸血鬼の寮養所で巻き起こる悲しい物語。その終幕を飾った劇中歌がこの「少女純潔」です。舞台の正式名称は「LILIUM- リリウム 少女純潔歌劇-」ですので、題目を冠する楽曲でもあります。劇中歌なので、純粋な楽曲としてのクオリティとしては他の楽曲に劣る部分もあります。が、舞台全体のダークで悲しく、そして美しい世界観を背負ってもいるので、舞台を見たことのある人にとっては非常に感じ入るものがありますね。
静けさと怪しさがあり、同時に激情が感じられます。ぜひ、舞台と合わせて聴いていただきたい1曲ですね。ちなみに、最近芸能界に復帰した鞘師里保ちゃんが主人公の「リリー」を演じています。鞘師里保ちゃんの復帰に合わせて演じられた「黑世界」はとても見たかったのですが、結局見れずじまいでした。残念です。
25. Maison book girl「Fiction」
Maison book girlにしては非常にシンプルでポップで聴きやすい楽曲です。柔らかく、同時に明るさを感じますが、そのゆったりとしていて、同時に儚い感じは何とも言い難い部分があります。
この楽曲については私もまだ分析にまで至っておらず、とにかく好きな楽曲なのでプレイリストに入れています。様々なプレイリストに入れており、少しずつ聴き込んでいきたいと思います。
ただ、この曲を聴くと色々な景色が思い出されます。不思議なことですけれど、この曲が作られるよりも前の記憶が思い出されたりするのです。あるいは、そのとき私が思い出しているのは私の記憶ですらありません。でも、人から与えられたイメージではありません。まだ体に馴染んでいないこの曲が感じさせる不思議な懐かしさはいったい何なんでしょうね。
26~30曲目
26. ℃-ute「Summer Wind」
27. モーニング娘。'20「KOKORO&KARADA」
28. ℃-ute「THE FUTURE」
29. Masion book girl「悲しみの子供たち」
ハロプロが多くなりましたね。やはりつんく♂さんの作る楽曲は独特で、なかなか他のアーティストやアイドルの楽曲と綺麗に並べることが私にはできませんでした。辛うじて、28曲目の「THE FUTURE」の持つスピード感や変拍子的な要素と並べることで、Masion book girlの「悲しみの子供たち」を差し込むことができたという感じです。
26. ℃-ute「Summer Wind」
発売当初の2016年、この楽曲の評判はあまり良いと呼べるものではありませんでした。ミドルテンポでキャッチーさが抑えられたメロディラインのような気がします。コードの展開もあまり耳馴染みするものでないため、そのような評価になってしまったのかもしれません。きちんと分析すれば、そのメロディーの音階やコード展開に対して理由付けができそうですが、残念ながら今の私にはそこまで分析するだけでの知識がありません。
しかしながら、この楽曲のコンセプトに私は惹かれたように思います。「Summer Wind」といういかにも夏のウキウキ感や爽快感、あるいはギラギラとした情熱のようなものを想起させるような曲名にも関わらず、全体的な聴き心地はしっとりと涼しげで、どこか憂いを帯びています。リズム自体は重く低い音で構築されているため、沈んだ気持ちにすらさせられます。特にAメロやBメロは平板的な展開が続き、夏というのに浮かれていられないような深刻さのような、ある意味では「辛気臭い」雰囲気すら漂います。それがサビになると音数が増えて、℃-uteメンバーの流麗な歌声が私たちの心をふわりと持ち上げて、優しく遠くの方へと運んで行ってくれそうな気がします。しかしながら、あくまで質量を持った私たちはこの地面から足を離すことができず、ただその歌声の風は私たちの髪を掻き乱すだけです。
MVの色彩や衣装が好きということもありますが、このリアリティ溢れる冷たい夏の風が私はとても好きで、ずっと聴き続けています。
27. モーニング娘。'20「KOKORO&KARADA」
この楽曲は過去にがっちりと解説をしているので、そちらを参考にしていただければと思います。
記事の副題にもしている通り、楽曲の構成によって得られる錯視のような効果が光る楽曲です。1つ例をあげれば、つんく♂さん特有の「サビ」を盛り上げない手法によって、実は1番や2番で使用されている「サビ」と同じものが「落ちサビ」として機能してしまうというのが最も分かりやすい部分になりますね。
例によってその「手の込んだ感じ」には惚れ惚れとするのですが、単に楽曲の世界観も好きですね。雄大で美しいものをこの楽曲からは感じさせられます。
28. ℃-ute「THE FUTURE」
実はずっと解説したかった楽曲ですが、そこまで過去に遡って分析記事を書くほどの気概が私になかったため、この機会にさらっとこの楽曲の面白さについて話しておこうと思います。故に、この楽曲については少し長くなります。
3連符という1拍の間に「ダダダ」と3つ音を詰め込む手法がこの楽曲では多用されています。というか、「3」というのがもはやこの楽曲のテーマになっています。つんく♂さんはどこかでこの楽曲について、「この高速のシャッフルビートは℃-uteにしか歌えない」というようなことを言っていたように思いますが、シャッフルビートというのも「3連符」の一種です。「ダダダ・ダダダ・ダダダ・ダダダ」という3連符を用いて4拍のリズムを刻んだとします。これを「ダッダ・ダッダ・ダッダ・ダッダ」と3連符の真ん中を抜くことによって、シャッフルビートというビートになります。トラック上では音量が抑えられているためやや聴き取りづらいかもしれませんが、主に「チッチ」というハイハットや、歯切れの良いシンセサイザーのような音でこのシャッフルビートが構成されています。
しかし、実はこの楽曲のシャッフルビートの使い方はあまり一般的なものではありません。15曲目の「人生はSTEP」もシャッフルビートの曲ですが、基本的にシャッフルビートというのは、ファンクっぽいノリの軽やかさを演出するのに効果的な手法です。ファンクっぽさは微塵も感じませんが、「上を向いて歩こう」なんかもよく聴くと、シャッフルビートを使用しています。
参考までに私の好きなシャッフルビートの楽曲を。
「ズック・ズック・ダッカ・ズック」みたいな言葉にするとアレですが、洒落た雰囲気を醸し出すのにも効果的です。つまり、シャッフルビートというのは基本的に緊張感を取り除くような楽曲に用いられていることが多いんですね。
しかしながらこの「THE FUTURE」を聴いて、「あぁ、リラックスするなぁ」という印象を持つ人はそういないんじゃないでしょうか。これは8ビートを際立たせ、テンポを上げ、さらにシャッフルビートをかなりタイトに組み合わせているからだと思います。そして、中抜きの「ダッダ」というシャッフルビート以上に、「ダダダ」と密で切羽詰まった印象を与える3連符を多用しているからとも言えます。ですが、きちんとシャッフルビートらしい、軽やかさを絶妙なバランスで兼ね備えているところがこの楽曲の凄いところです。
と、ここまでであれば、単純につんく♂さんが言うような「高速シャッフルビート」ということで良いのですが、イントロの「ダ・ダダ・ダダ・ダダ…」というフレーズがあると思いますが、実はこれが「3」という数字を用いたポリリズムになっているのです。先ほどから行っている通り、シャッフルビートというのは4拍に当てはめると「ダッダ/ダッダ/ダッダ/ダッダ」という風に表記できます。対してイントロを小節ごとに区切ると「ダ・ダダ/・ダダ・/ダダ・ダ/ダダダダ」という風に表記できます。あえて色分けして「ダ・ダ」というシャッフルビート的な括りがわかるようにしましたが、4拍子4小節の計16拍に、3拍セットのフレーズが4つ(4色)隠されているわけです。このように「3」と「4」を組み合わせたポリリズムを採用したフレーズのため、初めて聴いたときにイントロから「ん?」となってしまうわけです。そして、このイントロと同じフレーズが楽曲中で何度もリフレインされるわけですね。
また、つんく♂さんが「℃-uteにしか歌えない」と言った理由ですが、それは例えばサビの「生きてくその問題点は」という部分の後半をよく聴くと分かるはずです。「そのも/んーだ/いって/んーわ/ぁ・・」と高速で3連符とシャッフルビートが混在する形になっています。そして、次の「きっと忘れ去るだろう THE FUTURE」なんてもっと酷いです。「きっと/わすれさ/る・だ/ぁ・ろ/う・・/・・・/ざ・ふゅ/う・ちゃ~」と、まず前半の紫色のところなんて、3連符で数えれば6字しか入らないところに無理やり7文字突っ込んでいます。「わ」が丁度1拍目と2拍目の中間にあるようなイメージですね。そして、そんな密状態の前半から、後半はシャッフルビートへ。それをこのテンポで音を粒立たせて歌うわけですから、リズム感と活舌には非常に高いレベルが求められます。
というわけで、この「THE FUTURE」は何となく軽視されがちな楽曲のように個人的には感じているのですが、非常に高度な楽曲ということでプレイリストにエントリーさせていただいております。長くなりました…
29. Masion book girl「悲しみの子供たち」
MVの攻めた演出もさることながら、非常に攻撃的な楽曲です。高速5拍子ということで、28曲目高速シャッフルビートの「THE FUTURE」の後ろを任せられるのはこの楽曲しかない!って感じです。
とにかくリズムがかっこよ過ぎます。詰め込まれたバスドラム。重ねられたクラップ音。うねりまくり、跳ねまくるベースとピアノ。これを聴いてテンションが上がらない人間がいるのでしょうか。5拍子に楽しくノるためには、実はギターの音に耳を澄ませると良いです。ざっくりと「ジャ・・ジャジャ/ジャ・・ジャジャ/…」という繰り返しですが、赤字にしたように3音の塊を意識しつつ、下線をした各拍の頭を捉えられればもはやそのリズムを感じているだけで楽しむことができるはずです。
特に私が好きなところは、間奏のバスドラムと落ちサビのトーンの暗い木琴ですかね。
間奏のバスドラムは「5拍子」に対して「2拍子」でなっているので、ポリリズムの効果によって1小節ごとにアクセントの位置が変わっています。このお茶目さとお洒落さが素敵です。
落ちサビの木琴はアタック音がかなり丸くされていることによって、より不気味に楽興の世界観を補強してくれています。
とにかく情報密度が高い楽曲です。何度も何度も聴いて、いくつも好きなところを見つけられそうです。この楽曲も少し解説が長くなってしまいました…反省。
私がちゃんとモーニング娘。というアイドルグループにハマるきっかけになった楽曲です。私の周りの同級生はやれ「夏帆が可愛い」だとかやれ「ガッキーが可愛い」だとかそういうことを言い出すお年頃。ひねくれ者の私は「そんな皆が可愛いって言ってる子のことなんか好きになるものか」と漠然とした反骨心を抱えていました。そんなときに夜中にやっていた「ハロモニ」を観て、田中れいなさんに一目惚れしました。
しかし、田中れいなさんがモーニング娘。であるということについては、あまり意識していなかったように思います。しかしながら数か月後、彼女がモーニング娘。というグループのメンバーであり、つい最近「リゾナントブルー」という曲をリリースしたことを知ります。そして、楽曲を聴いて一発でモーニング娘。というグループにハマりました。
まぁ、当時は2番の「車とか格好とかそんなの自慢はもういいからぁ♪」の「らぁ♪」の部分が好き過ぎる!くらいで聴き続けていたんですけど、でも、いま聴いても本当にカッコイイ楽曲ですよね。重い8ビートを中心に据えながらも、私の大好きなシャッフルビートがちゃんと効いていて、ベースラインも硬派でイカしてます。エキゾチックなニュアンスも当時のモー娘。のメンバー(特に愛ちゃん、れーなのツートップを中心に)によく合っていると思いますし、諸説ありますが所謂「プラチナ期」の幕開けとなった楽曲でもあります。いま聴いてもこの楽曲のクオリティはなかなか凄いと思います。
31~35曲目
31. ℃-ute「あったかい腕で包んで」
32. 東京女子流「pain」
33. sora tob sakana「Summer Plan」
34. コピンク*「最高視感度」
35. Juice=Juice「好きって言ってよ」
さて、最後の5曲となりました。もうこのラストはコンセプトの統一感もありませんが、とにかく好きな曲を詰め込みました。
31. ℃-ute「あったかい腕で包んで」
「ボサノバで愛して」と歌詞にあるように、ボサノバテイストをふんだんに用いた超お洒落楽曲です。やっぱりこの気怠さ、アンニュイな感じがたまりません。細やかなテクニックや工夫に目が行くような楽曲ではありませんが、その質の高さから「選抜」には選ばざるを得ませんでした。
ハロプロの良いところが出ています。私がこれまで上げてきた様々なコンセプトや世界観のはっきりしたアイドルたちとは違い、ハロプロはある意味ノンジャンルなアイドルです。「王道アイドル」あるいはもはや「ハロプロ」というジャンルとして捉えらえることが多いですが、それはそれで間違っていないものの、「ノンジャンル」というのもハロプロにおける非常に的確なジャンル分けだと私は思っています。
ボサノバ+歌謡曲というテイストの楽曲をきちんとそのジャンルに則り、練度の高いトラックを作り、さらにそれを高いレベルで歌うアイドル達。例えば、前山田健一さん、サクライケンタさん、照井順政さん、松井寛さん、そしてもちろんつんく♂さんもですが、個人でとてつもない才能を持ち、私を魅了する作曲家の方がたくさんいます。しかしながら、この楽曲に限って言えば、斬新で鋭く、ユニークな才能というものはあまり感じません(強いて言えば、「ボサノバで愛して」という歌詞には感じるものがありますが)。むしろ、この楽曲からは技術と練度を感じます。そして、一般的なセンスの良さも。特別に目を惹くところが無くても、良曲は良曲であり、それは必然的に人の目を惹きます。そんな真理を体現する素敵な楽曲だと思います。
32. 東京女子流「pain」
東京女子流には好きな曲が多過ぎて絞り込めなかったので、様々な良曲たちに分散されていた票をこの1曲に集めたと思っていただければと思います。既に女子流の他の楽曲でも話している通り、多彩なリズムパターン、コーラスワークなどが非常に高いレベルでまとめられています。楽曲の世界観としても私好みの、哀愁漂う歌謡曲的なところがありますし。
何かあまりこうやって記事にするまでちゃんと細かく聴いてこなかったので、何をどう言えばいいのかわからないんですが、本当に隙が無いんですよね。ミックスからマスタリングにかけても、もう本当に言うことがない出来です。どこをどう切り取っても高品質過ぎます。
これも31曲目の「あったかい腕で包んで」と同じく、楽曲に携わった人たちの技術力やセンスの良さを感じることができ、同時に前述したように東京女子流の良さを存分に楽しめる楽曲になっています。例えば、この楽曲を聴いて「コーラスワークが良いな」と思った方には「Liar」を聴いてみて欲しいですし、「ちょっと懐かしい感じの切ないテイストが良いな」と思った方には「Partition Love」を聴いてみて欲しいです。入門編というには、何というかマイナーな感じもありますが、色んな要素が高度に詰め込まれた楽曲だと思い「選抜」とさせていただきました。
33. sora tob sakana「Summer Plan」
直訳で「夏の計画」。爽やかな曲調、そして香るあの幼く無垢だった頃の風。
画質は荒いですが、まさにこのアルバムジャケットを体現するかのような楽曲です。ドラムのスネアの位置が特殊で、慣れるまではノるのが大変かもしれません。リフもちょっと難解ですしね。ですが、基本的にはとてもキャッチーな歌声に導かれていれば、この楽曲を楽しむことができます。特にサビのメロディーは非常にキャッチーで、意図的に演出された「合唱感」があり、その青春感にキュンとします。まだまだ未熟なメンバーの歌声が逆にその痛々しいほどの無垢さを表現していて、胸が苦しくなってくるのです。
個人的に好きなポイントは2番終わりの間奏で、ここでは初めてリズムが乗りやすいパターンになるため、童心に戻って音楽を楽しむことができます。ここではメンバーが肩を組んで、同じステップを踏むのですが、その姿が本当に愛らしくて切なくなります。間奏に入る瞬間の「Fu~♪」というところも大好きなところです。
34. コピンク*「最高視感度」
Juice=Juiceの宮本佳林ちゃんが大好きな私からすれば、どうしても「コピンク*」の曲を入れざるを得ませんでした。彼女がまだメジャーデビューする前、静岡のローカル情報番組の中に出てくる「コピンク」というキャラクターの声優を務めることになった佳林ちゃん。後に「コピンク*」名義でCDを発売するのですが、その中でも1番バランスが良く、楽曲としての完成度が高いと私は思っています。アイドル楽曲としては間違いないのですが、どちらかと言うと「みんなのうた」みたいな教育系の音楽番組に使われそうなジャンルと言えるかもしれません。宮本佳林というアイドルらしいアイドルの純度を極限まで研ぎ澄ませ、それを増幅するような素敵な楽曲です。
また、「カリーナノッテ」という曲も「コピンク*」や「宮本佳林」を語る上では外せない楽曲ですが、佳林ちゃん自身そんな「カリーナノッテ」と並んで、よくライブで披露するのがこの「最高視感度」です。
Juice=Juiceというグループに入って様々な表現を身に着け、アイドルとしての器を大きく広げてきた宮本佳林の根幹となる魂を感じることができるところが特に私を魅了しているポイント。昭和のアイドル、そして「きらりん☆レボリューション」が大好きだった彼女が目指していたアイドル像が、実はもうこの時点で完成されていたんだと感じさせられるような歌唱表現を楽しむことができますね。
宮本佳林というアイドルについて語り出すと長くなるので、ご興味があれば上記リンクの記事も読んでいただければと思います。
35. Juice=Juice「好きって言ってよ」
ラスト35曲目にして、ようやくJuice=Juiceの楽曲を選ばせていただきました。そして、その曲が「好きって言ってよ」ということで、もしここまでこの記事を律儀に読んでくださった方がいらっしゃったなら、意外と思うかもしれません。
アンニュイな感じの楽曲が好きな私からしたらまさに「イジワルしないで抱きしめてよ」の方が好みに近いんじゃないかと思うでしょう。実際問題としてJuice=Juiceの中で人気投票をしたらきっと「イジ抱き」が1位になると思われるくらい、「イジ抱き」も良曲ですし。ただ、それでも私はどうしてもこの「好きって言ってよ」が好きで仕方ないのです。
理由は色々と考えられて、私の大好きな「シャッフルビート」を使っているからとか、解説記事を書いているからそちらに誘導したいとか(笑)。でも、心からの理由を言うのであれば、「今のJuice=Juiceの良さを最大限に引き出しているから」というところで選ばせていただいたような気がします。もちろん、曲調もかなり好みなんですけど、この無駄のない洗練された感じと、かっこつけ過ぎないキャッチーさが何よりも素敵です。解説記事の副題に「シンプルな中に見る『重力』」とつけましたが、まさにこの楽曲にはJuice=Juiceというグループが持つ自然な「重力」を感じるのです。
それ以上のことについては、下記リンク先の記事をご参照いただければと思います。
グループの顔であった宮本佳林ちゃんが卒業した後に、Juice=Juiceというグループの軸となるであろう段原瑠々ちゃんと井上玲音ちゃんが歌ったバージョンもつい先日公開されました。こうやって歌い継いでいってくれるところがハロプロの良いところですよね。
〇登場アイドル ※ネタバレです。
・いずこねこ
・演劇「LILIUM」劇中歌(モーニング娘。&スマイレージ)
・コピンク*
・Juice=Juice
こうして並べて見ると、本当に偏りがありますよね(笑)。でも、とりあえずはこんな感じのアイドルたちが私好みの世界観を構築してくれています。もともと私はあまり多くのアイドルに精通しているわけではないことは最初に言った通りです。
もし私と同じような好みの方がいて、1人でも「わかるわ~」と感じてくだされば本当に嬉しい限りです。そんなことが起こったとすれば、この超個人的な趣味の記録も、多少アイドル記事・音楽記事としての価値も生まれてくるでしょう。
あと、本当に最後になりますが、この記事を通して私が何を言いたかったかと言うと、アイドル楽曲は素晴らしいということです。アイドルによってその成り立ちやコンセプトは様々です。才能ある音楽プロデューサーの趣味や世界観を表現する題材として「アイドル」を用いているパターンや、「アイドル」自体を作品としてその美しさを引き出すために制作陣が技術を詰め込んでいるというパターンなどもあります。そこに実際的な金銭が投資され、楽曲としての質をさらに高めている部分もあったりします。
芸術家だけでは「届け」という想いが足りない場合があります。
エンターテイナーだけでは「エゴ」が足りない場合があります。
個人では到達できない「質」や「発想」を生むことができます。
アイドルというフォーマット、文脈でしか成し得ない「表現」があります。
そういったものを感じられる楽曲が私は大好きで、中でも個人的な趣味に沿うようなものを今回は35曲だけ選ばせていただきました。幾分偏りもありますが、これからどんどん色んな楽曲を聴いていこうと思っていますので、今後とも一緒にアイドルを愛していきましょう!
最後に…
この記事を書くにあたっては、私が現在闘病中(という表現は誇張し過ぎ?)である「適応障害」のリハビリという目的も兼ねていました。リハビリという名の暇つぶしです。何もしていない時間が「苦」なので。
詳しくは、リンク先の記事を読んでいただければ幸いです。
まるで赤い羽根共同募金みたいに、ここで紹介させていただいた1曲1曲が私にとっての大切なかけがえのない貴重な支援だったのです。そのお返しに私はぜひ全てのアイドルに赤い愛の羽を送りたい気持ちでいっぱいです。
はやくよくなりますように、トゥー・ミ―。早く仕事に復帰して沢山働いて、沢山稼いで、愛すべき彼女たちに還元していきましょー。