2024.5.22に宮本佳林の2ndアルバム「Spancall」が発売されました。
佳林ちゃんはJuice=Juiceでデビューする前の「おじぎでシェイプアップ」に出演していた頃から好きでしたが、本格的に「推そう」と思ったのは「裸の裸の裸のKISS」辺りからだったでしょうか。佳林ちゃんが中学校を卒業する頃、たぶんピンクス&コピンクス!関連のイベントだったような気がするのですが、それに参加して初めて生の佳林ちゃんを観ました。「アレコレしたい!」の赤い衣装を身に纏い、ステージに現れただけで世界が華やかになったことを覚えています。
そこで佳林ちゃんは「お仕事が忙しくて、卒業式の合唱は歌詞を覚えていないので口パクでした」みたいなことを言っていたと思うのですが、そのあとの「ちょっとコピンク*の楽曲歌ってよ」の無茶ぶりに透き通る歌声で応える姿を見て、「プロだ…!」と感動しましたね。卒業式の合唱はできなくても、自分の持ち歌はいつだって歌える。当たり前のことなのかもしれませんが、そのプロとしての当たり前ができる佳林ちゃんはやっぱり凄いと思いました。
それからずっとJuice=Juice在籍時の活動はもちろんのこと、卒業してからも、ソロの活動を追ってきました。ライブも定期的に行ってはいたのですが、昨年の2023年末頃に今回のアルバムにも収録されている「Lonely Bus」のパフォーマンスをM-Line Musicのチャンネルで観てからさらに応援する熱が高まりました。
さらりとした悲哀や孤独感を纏いながら、透き通る高音、しなやかかつ緩急の効いたダンス。このパフォーマンスはちょっと凄いですよね。いわゆる「歌うま」とか「バキバキのダンス」って感じではありませんが、このクオリティのパフォーマンスはそうそうお目にかかれません。唯一無二感もありますよね。でも、ここまで高質なものはきっと現ハロプロメンバーの指標にもなるはず。真似をしろということではありませんが、ここまで丁寧に、そして自分の良さを突き詰めたパフォーマンスがあるのだという事実を知るだけでも何か変わるんじゃないだろうか。そう思わされます。
そんなこともあり、直近のツアー「Hello! Brand new me ~RETURNS~」にも参加し、アルバム発売当日の錦糸町のリリイベにも参加してきました。それぞれ感想も書かせていただいています。そんな感じで佳林熱が高まっているので、今回のアルバムのレビューもとても楽しみでございます。
と、前置きが長くなってしまいましたが、アルバムの感想を書いていきますかね。
- アルバム全体について
- 01. ポラリス・コンパス
- 02. ソリスト・ダンス
- 03. バンビーナ・バンビーノ
- 04. アンフェアな事情
- 05. BAD
- 06. レインステーション
- 07. Love Gravity
- 08. パラレルハート
- 09. Lonely Bus
- 10. C\C(シンデレラ\コンプレックス)'24 宮本佳林 Solo Ver.
- 11. ヴァンパイア
- 12. 愛しあわなきゃもったいない!
- 13. Beautiful Song
- 最後に…
アルバム全体について
まずリリイベに行って仕入れた情報ですが、今回の「Spancall」というアルバムタイトルについて。「スパンコール」という言葉は和製英語であり、本場の英語では「Spangle」となるため「Spancall」は佳林ちゃんが考えた造語という位置づけになります。「スパンコール」のキラキラとしたイメージが佳林ちゃんの心を射止めたことはもちろんですが、「Span」は「合間」、「Call」は「呼び出す」という意味から、「日常の色々な合間合間に宮本佳林の音楽を呼び出してほしい」という願いも込められているそうです。
ずっと「キラキラした感じ」の言葉を探していたそうで、当初は星の名前から検討していったということですが、まずは誰もが思いつく「デネブ」とかその辺りを考えたそうです。ただ「デネブ」と来たら、次は「アルタイル」、その次は「ベガ」と夏の大三角形が完成するまで、アルバムのタイトルが決まっちゃいそうで「デネブ」案はやめたということ。それから私は知らなかったのですが、輝度が高く、また光が周期的に脈動することで有名な「ミラ」という星があるそうで、それも候補になったそうなのですが、その脈動というのが星の寿命が尽きる前の現象らしく、いま現在はもう「ミラ」は爆発してないかもしれないらしい…って、そんな星の名前つけちゃっていいのか?とこれも断念。
そして何かの曲のレコーディング中にふと「スパンコール」という言葉が思いついて、レコーディングを終えてブースを出るなり、「スパンコールがいいです……」とスタッフにかけあったそうです。そんな感じで最初はイメージと語感で思いついた言葉だったようですが、言葉の意味を改めて調べる中で「スパンコール」が和製英語であったこと、ただ「Span」+「Call」と当て字をすることで上述のような素敵な意味にもなるということで本決まりになったようですね。
そしてジャケット写真ですが、ピンク色であり、かつ紫色であり、そしてかなり淡い感じ。これも佳林ちゃんの希望だったそうで、ピンクはもちろんコピンク*の色で、紫はもちろんJuice=Juiceのメンバーカラー。と、かなり自分の歴史や好みを詰め込んだエモい出来となっています。
楽曲に関してはあとで細かく見ていきますが、アルバム全体を通して聴いてみると結構いい感じです。語彙力がなくて何が「いい感じ」なのか、上手く言えないんですが、良くも悪くも奇をてらった楽曲がないので、アルバムを通して宮本佳林の世界観がきちんと見えてくるんですよね。とにかく佳林ちゃんが無理をしていない。佳林ちゃんに似合わない曲がない。だからこちらも自然体で何度も繰り返し聴くことができる。オケも比較的キラキラとした感じが強く、佳林ちゃんが歌う前提で上手く構築されている印象があります。
そんな中で「C\C(シンデレラ\コンプレックス)'24」だけは異色で、アルバム全体をカチッと締めている感じがありますかね。まぁ、この辺はもはや血に染みついているので、特に違和感があるというほどのものでもないです。「やっぱ曲が強いよなぁ」って感じですかね。
と、ざっくりとはそんな感じでございます。私が佳林ちゃんを好きなことは大前提として、それでも同じアルバムを繰り返し(途中の曲を飛ばしたりせずに)聴けるのはかなり嬉しいことです。Juice=Juiceの「terzo」というアルバムを聴いたときにも思ったのですが、意外とアップフロントという事務所はトータルコーディネートが上手いんですよね。TikTokやShort動画とかで1曲がさらに分割されている現代において、アルバム1枚の力をちゃんと信じていると言いますか。1枚を通しで何度も聴ける良いアルバムに出会うと嬉しくなりますね。
01. ポラリス・コンパス
さて1曲ずつ簡単に書いていきます。こちらの曲はMVも公開されていますね。
言わずとも知れているでしょうが、コピンク*のチームが再結集して制作されたこの楽曲。相変わらず宇宙や星の煌めきがテーマとしてあり、柔らかくキラキラとして、儚い夢を見させてくれるような音像です。コピンク*の楽曲も、私は暖かく優しさを感じるドラムの音がとても好きで。特にスネアの音が素敵なんですが、今回は落ちサビでそのスネアのロールが入っており、急がないと消えてしまう流れ星の煌めきを追いかけるような、そんな淡く切ない焦燥感のようなものを強く感じさせてくれます。
ポラリス(=北極星)が私にとってのコンパスだったから、羅針盤なんていらなかった。そんなテーマの歌詞ですが、とにかくどの一文を切り取っても美しい。そしてコピンク*のイメージがそうなのか、佳林ちゃんのイメージがそうなのか、なぜか不思議と佳林ちゃんは「ひとりで夢を追いかける」という感じが似合ってしまうんですよね。仲間と手を繋いで、みんなで大きな夢を叶えるんだ!って感じじゃなくて。「私には揺るぎない信念と目標があるの。苦しいし、怖いし、寂しいときもあるけど、それでも輝かしい目的地へと向かって…」みたいな、そういう健気で切ない、夢追い人のようなスタンスがしっくりくる。佳林ちゃんの歌声には誰をも寄せ付けないような清廉な部分がありますが、それが歌詞に説得力を持たせているようにも聞こえます。
柔らかく、可愛く、愛らしく、それでいて清純で決して媚を売っているわけではない、心からの天使の歌声。低音部も多用される高音部も、どの瞬間を切り取っても「これぞ!コピンクちゃん!」という素敵な歌声ですよね。でも、確かにあの頃よりもちゃんと大人びている。でも、あの頃に見ていた夢を今もちゃんと追っている。そのバランス感覚がすごい。いやぁ、いい曲ですねぇ。ちょっと喋りすぎました。
02. ソリスト・ダンス
この曲はとにかくライブでのコールが楽しい。ライブ動画も上がっていますが、ヲタ=かりん党員の声も割とちゃんと聞こえていますね。さすがに音が絞られていますが、それでも声の厚みは感じられるはず…!
周りの目なんて気にせず、誰かに褒められたいとかそういうんじゃなく、ただただ自分が踊りたいように、独りでも思いっきり踊ろうよ。と、そんな曲なんですが、ライブでは1番一体感が生まれるんですよね。ツアーでも最後の曲として披露されていました。各々はソリストであるかもしれないけれど、各々が自分の好きなものを一生懸命好きにやることによって、結果的に一体感が生まれるという不思議な現象がこの楽曲では発生します。それがなんだか毎回面白いんですよね。
この歌詞も「ポラリス・コンパス」同様に、たとえひとりになっても私らしくありたいという佳林ちゃんを彷彿とさせるのですが、もう少しみんなに呼びかける感じがありますね。決して「一緒に踊ろう」ではないんですが、「みんなも自分らしく踊ればいいんだよ」と言ってくれている気がします。どんなときも自分らしくあるための努力を惜しまなかった佳林ちゃんが歌ってくれるから私たちも一生懸命踊ろうと思える。そんな勇気を貰える素敵な楽曲です。
03. バンビーナ・バンビーノ
こちらの楽曲もMVが公開されています。元気が出るノリの良い楽曲です。
本当は弱い乙女だから、甘えさせて、優しくして、褒めまくってよーって歌詞ではあるんですが、楽曲自体はあくまでハイテンションなので、「褒めてもらえなくても、もう踊っちゃうもんね!」感もちょっとあったりしますかね。2番頭のラップもインストも併せてかなり面白い音像になっていますし、それ以外の部分は終始アップテンポでノリノリ、そしてなんと言っても「Na na na na na na na♪ バンビーナ♪ バンビーノ♪」のところが気持ち良すぎる。なのでおそらくは人気も高く、佳林ちゃんのYouTubeチャンネルでも2024.5.26時点では2番目の再生回数となっています。
04. アンフェアな事情
この楽曲もライブ映像がYouTubeに上がっていますが、私、この横浜公演を観に行っていたんですよね。こういうの、ちょっと嬉しいですよね。
「イイオンナごっこ」、「Lonely Bus」とばっちり歌って踊る大変な楽曲が続いた後で、この「アンフェアな事情」が披露されたのですが、結構息が上がっていて大変そうでしたね。サビで「Oh my got」と「It's all my love」のコールも入るので、結構盛り上がります。
マイナー調でカッコイイ感じ、そして2分50秒というかなり短く、きゅっとした楽曲でもあるので聴きやすいです。圧強めで色気を含んだ佳林ちゃんの声が堪能できますが、よくよく音源を聴いてみると、本当に歌が上手いなぁと思わされます。色々な声音を使い分けていますし、低めの太い声もありながら、張り上げる声なんかにはいかにも佳林ちゃんっぽいしゃくりあげも加えられて、「あぁ、これこれ。こういう歌も似合うんだよなぁ」と思わされます。
05. BAD
こちらもカッコイイ感じの楽曲で、「アンフェアな事情」からの流れがとても良いです。この2連で「あぁ、良いアルバムだなぁ」とまず思わせてくれます。ライブ映像も上がっています。
このライブ映像の衣装、ヘアスタイリング、とっても好きです。が、ライブ映像の話は一旦ここまで。
音源についてですが、まず冒頭の「I like you like you!」がとても可愛い。そして途中に差し込まれる「…残念」や「文句ある?」も可愛い。それからサビの「BAD GIRL」の発音が特徴的で、これも可愛い。ノリが良くて、聴いていてとても楽しい楽曲ではあるんですが、そういう要所要所に佳林ちゃんの素敵なお声が入っているので、巻き戻しながら何度も聴きたくなるようなそんな楽曲です。今回のアルバムの中でも好きなランキングかなり上位に入りますね。
06. レインステーション
この曲はツアーやYouTubeでもまだ公開されていない楽曲でしょうか。アルバムを購入して初めて聴きましたが、ちょっとダウナーな感じで素敵ですね。こういう楽曲があるからアルバムとしての幅が広がって本当に助かります。
結構ベースの低音がエグい音をしていて、かつあまり装飾的過ぎないスタイリッシュな音像が素敵だなぁと思っていて、作曲・編曲のところを見たらKarrinatorさんの名前が。「あれ、どなたでしたっけ」と調べてみたら、OCHA NORMAの「Peek a Boo」を作った方でした。あぁ、それで見たことあったんだ。あの曲も好きなんだよなぁ。
歌詞も西野蒟蒻さんで、「レインステーション」というテーマに対して、的確に素敵な失恋の詩が書かれていて、佳林ちゃんの表現力をいかんなく引き出してくれています。「1、このままか 2、変わるのか」というのが音にもハマりつつ、歌詞表現ではなかなか見ない形なのでそこもお洒落です。特に「2(トゥ)」のところが、佳林ちゃんの歌い方でよく「る」が「とぅ」に聴こえる現象を逆側から攻めているみたいでなんか好きです。
「アンフェアな事情」→「BAD」→「レインステーション」とマイナー調の楽曲が続いていますが、どれも私好みの楽曲で、うおぉぉおぉぉ良いアルバム!となりますね。
07. Love Gravity
こちらもアルバム以外では未公開の楽曲ですかね。こちらもマイナー調でありながらも、ノリが良くて、ついつい踊りだしたくなるような楽曲です。一昔前で言うところの「ダンスナンバー」という感じがします(今はもっとバキバキのEDMのことをダンスナンバーと言うんでしょうか)。
ブラスとかも贅沢に使われていて、結構ファンキッシュな仕上がりに。デビュー前からハロプロの最終兵器と言われていた佳林ちゃんがこういう楽曲を歌いこなせないわけもなく。「真っ赤なリンゴが落ちるように」という歌詞がありますが、何となくの楽曲の色味も相まって、不思議とJuice=Juiceの「プラトニック・プラネット」を彷彿とさせます。また、サビの頭で「Hold me tight !」とか「Through the night !」とか掛け声が入るのですが、ここの佳林ちゃんの放り投げ感がとても素敵。なんとなくここでジャンプする光景が目に浮かびますね。ぜひ、ライブで観てみたい楽曲です。盛り上がりそう!
08. パラレルハート
こちらも最早佳林ちゃんのライブには欠かせない楽曲という感じになりましたね。柔らかく佳林ちゃんの透明感のある歌声を活かす可愛目の楽曲であり、なんと言っても長いセリフパートが3回もあります。なんて贅沢。ライブ映像もありますね。
こういう楽曲をしっかりと歌えるのが、佳林ちゃんがアイドルとして強いところですよね。そしてこういう楽曲でしか摂取できない栄養分というのも確かに存在していて。ってことは、やっぱり佳林ちゃんを追うしかないってことになります。
アルバムの曲順的には、ずっとマイナー調の楽曲が続いていたところだったので、急にほんわかきゅるきゅるタイプの楽曲になり、ちょっと「おっ」とびっくりした部分もありました。この次が「Lonely Bus」でまたマイナー調なんで、あえてここに入れる理由ってなんだろう、と考えたのですが、全体の楽曲のバランスを見ると確かにここかもしれない…と思いました。というか、あまりにもアイドル味が強いので、前半過ぎても後半過ぎても、アルバムの印象がかなりアイドルっぽくなってしまう気がします。なので、中盤のマイナー調が続くところで「お口直し」的にこの佳林ちゃんのアイドルボイスを堪能するというのが1番良いやり方なのかもしれませんね。
この甘く爽やかな味わいがあるからこそ、佳林ちゃんが好きなんだよなぁ。
09. Lonely Bus
この曲は結構私の中では随一です。佳林熱がさらに高まったきっかけでもありますし。それに何と言っても制作陣が強すぎる…大森祥子さん、星部ショウさん、大久保薫さんですからね。
佳林ちゃんの伸びやかな高音と、抒情的なメロディ。それを結構バキバキで細かい跳ねるようなリズムのトラックで支える。特にベースラインはかなり細かくてカッコイイですね。音色も豪華で、力強いのですが、どの音も繊細で佳林ちゃんの声を邪魔しない。本当に素敵な楽曲です。
歌詞は、「孤独な夜行バス」というテーマを見事に体現した、シンプルではありながらも、悲しみと前向きとが共存したまさに佳林ちゃんが得意とするところという感じです。か弱い乙女が悲恋を歌うみたいなのは佳林ちゃんのパフォーマンスにおける醍醐味でありますし、同時に佳林ちゃんの中にはストイックに自分を高め続けるところもあります。だから悲しみを纏いながらも、新しい明日に向けて歩んでいく……それこそがまさに宮本佳林が歌うべき詩だと思うのです。
少しだけ脱線すると、最近発表されたJuice=Juiceの新曲の「トウキョウ・ブラー」でも似たようなテーマについて語りました。Juice=Juiceに合う曲だなぁ、と思ったのですが、それもそうか。このテーマは佳林ちゃんに合ってたんですもの。Juice=Juiceに合わないわけがないか。もしよろしければ、そちらの記事も読んでいただければ嬉しいです。
それにしても、
与えてもらうよりも与える人に
愛を変わらず備え持った人に
なれなきゃ意味がないよね
という歌詞が好きすぎます。短い落ちサビで歌われているのもとても好き。これぞ佳林ちゃんって感じなんですよね。
10. C\C(シンデレラ\コンプレックス)'24 宮本佳林 Solo Ver.
とてつもなく長い曲名になってはいますが、みんな大好き「シンデレラ・コンプレックス」です。この曲だけはどう捉えるべきか……とても難しく。一応、原曲のMVでも貼っておきますか。
どなたかのコメントで「ゆうかりんの声が甘すぎて血糖値スパイク起こすわ」というのが好きだったのですが、なんていうかこの頃は私も思春期で大人の色気と同世代のゆうかりんの可愛さに悶々としておりました。とは言え、やっぱりこの三連符まみれのオシャな音楽に「かっけぇー」となっていたのが一番の思い出ではありますか。
とにかく曲が強い。そして、よりダークに洗練されたアレンジになったのが、SIOOMの'24 Ver.です。そりゃあ、もう強すぎますよ。感慨深いというのもありますしね。ただ、楽曲が強すぎるうえ、曲の性質上コーラスを重ねまくっているので(しかも佳林ちゃんだけのコーラスではなく、SIOOMのコーラスです)、「宮本佳林を堪能する一曲」という風にはなっていませんね。この楽曲以外がどちらかと言えば、音楽それ自体よりは宮本佳林を一面に押し出しているので、そういう意味ではちょっと風合いが異なります。
けれど、こればっかりはもう佳林ちゃんがレジェンドハロメンの1人になったということをまずは喜ばねば。だって、あの「シンデレラ・コンプレックス」をソロバージョンで、自分のアルバムに入れられるんですよ? そんなことってあります? 色々なタイミングやチャンスがびたっとハマった結果と言えばそうなんですが、それにしても、「シンデレラ・コンプレックス」を自分のアルバムに入れられるなんて。何回も言いますが、そんなことってあります?
もうそれだけで「すっげぇ!」と思います。
11. ヴァンパイア
言わずと知れたボカロPの名手、DECO*27さんの楽曲のカバーです。ボカロ界隈にあまり造形のない私でも知っている超有名P。ですが、ちゃんとは追えてなかったので、佳林ちゃんのおかげで出会えた素敵な楽曲です(私のボカロ音楽は、ころn…宮助エージェントゆゆこの歌う「脳漿炸裂ガール」で止まっている……)。
この曲は佳林ちゃんが大好きだということもあって、さすがに体重が乗っていて素晴らしい出来ですね。ハロプロ歌唱の中でも、佳林ちゃんはまた結構特殊な歌い方だと思うんですが、こういうメロディラインがしっかり目の楽曲にはめちゃくちゃ合いますね。気怠く雰囲気重視で歌う系の楽曲が割と流行りがちな昨今において、ボカロに歌わすことが前提で作られた楽曲はやはりメロディラインで魅せなくてはならないのか、発生からしっかりと表現まで学んでいるハロプロとは相性がいいのかもしれませんね。
キャラクター降ろせる佳林ちゃんにとって、この「ヴァンパイア」は能力をフルスロットルで注げる楽曲なのでしょう。音域も低いところからめちゃくちゃ高いところまでありますが、1番高いところではミックスで、その次に高いところではあえてファルセットを使ったりと、本当に多彩な発声ができる佳林ちゃんの凄味を感じます。高速ラップももうお手の物って感じです。まぁ、コピンク*の「兎 to come」からやってはいるんですけどね。
そんなキャラ降ろしも含めて、佳林ちゃんの曲芸が堪能できる1曲です。とっても好き。これからも大好きなボカロ楽曲をどんどんカバーしてほしい!
12. 愛しあわなきゃもったいない!
この楽曲はアルバム終盤に相応しい、多幸感溢れる楽曲になっています。ライブ映像もM-Line Musicに先日アップされましたね。
この曲の振り付けは佳林ちゃんが自分で考えたそうで、特にサビの手を左右に振るところはちょっとこだわりがあるようで、「普通に右・左・右・左ってならないところが、ハロプロっぽいでしょ?」と喜んで仰っていました。振りについていけずに戸惑っているヲタを見て喜んでいる佳林ちゃんを見て、ヲタは喜んでおります。にしても、この衣装めちゃくちゃ可愛いんだよなー。
楽曲に関して言えば、サビこそ手を振れるくらいわかりやすいリズムですが、意外とAメロとかは裏のリズムが多くて、かっこいいサウンドになっていますね。間奏もかなりお洒落で、なんかちょっと西遊記を感じさせます。西遊記っていうか、「モンキー・マジック」を感じさせます。んー、これって私だけの感覚かもですが。使っているシンセの感じが似ているだけですかね。余計なことを書いてしまいました。
13. Beautiful Song
そして、ラストは疾走感溢れるこの曲。
サビの8ビートは本当に走っているかのように、青春を感じさせます。歌詞の世界も真面目に不器用に懸命にひた走る佳林ちゃんらしい内容になっていますね。大きく腕を回しながらこの曲を歌う佳林ちゃんがもう尊くて。純潔過ぎて切ない。
そして、これがこのアルバムを通して1番言いたかったことかもしれないのですが。アルバムをリピートで聴いていると、このラストの「Beautiful Song」から「ポラリス・コンパス」の繋ぎが本当に凄いんですよ。「ポラリス・コンパス」のイントロだけ聴いていると、「あれ?また『Beautiful Song』が始まった?」ってくらい地続きの世界観、そして音色で。でも、そのまま聞き続けていると、世界が「ポラリス・コンパス」になっているんですよね。本当に不思議。昔懐かしき「アハ体験」的な。
この仕掛けのせいで、アルバムを無限ループしてしまうんですよね。いつまでも終わらない。そう、いつまでも終わらない青春。エンドレス・エイト。あるいはビューティフル・ドリーマー。このアルバムにもそんな力が宿っているように思えます。
最後に…
さて、ようやく全ての楽曲世界に挨拶が済ませられました。これにて私の巡業は終了になります。いやぁ、なかなか大変だった。1曲1曲はさして多くのことに触れたわけではないのですが、13曲もありますからね。文字数もさすがの分量になりました。1万字程度と、まぁ、それなりに多い方ですかね。でも、全然語りつくした感がない……なんか本当に触りのところだけ、っていう感覚です。けれど、まぁ、仕方ないですね。だらだらといつまでも書き続けていても、アルバムレビューにはなりませんし、これはこれでちょうどいい分量なんじゃないでしょうか。旧Twitterなんて、140文字までしか書けないわけですからね。ざっと70投稿分くらいしているわけですから、むしろ多いという感じかもしれません。
まぁ、そんなこんなで、佳林ちゃんのことをより好きになる素敵なアルバムに出会えました。これからもたっぷり私の日常の合間合間に佳林ちゃんを呼び出していこうと思います。