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音楽や小説など

Juice=Juice「terzo [Disc2]」レビュー~なんて良いアルバムなんだ!~

Juice=Juiceの3rdアルバム「terzo」、その[Disc2]についてレビューをさせていただきます。楽曲のレビューをするのは久しぶりですが、肩の力を抜いて伸び伸びと書き進めたいと思っています。

 

 

 

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まずこのジャケットが結構お洒落で素敵ですよね。緑とピンクというほぼ補色の関係性にある2色がビビットに効いています。衣装もベースにレトロな感じがありながら、結構攻めたフォルムになっています。本アルバム、特にDisc2の方はかなりレトロな雰囲気を持っているので、まさにこのビジュアルはぴったりという感じです。

Disc1の方は副題に「The Best Juice 2019-2022」とあるように、2ndアルバム以降に発表されたシングルを集めた内容になっています。対して、Disc2の方は「The Brand-New Juice 2022」という副題が与えられており、現在の9人体制で新たに制作された内容です。先日、Juice=Juiceの歴史をまとめようともがいた記事を投稿いたしましたが、2022年現在においてJuice=Juiceは大きな転換点にいると私は考えています。

 

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オリジナルメンバーが植村あかりちゃんを残して、みんな卒業してしまったところであはありますが、それ故にグループは新たな形態を獲得しようという面白いフェーズに突入しつつあります。先日には稲場愛香ちゃんの卒業発表がなされ、またこれからも様々な変化が予想されます。しかし、そんな変化があるからこそ今一度「Juice=Juiceってどんなグループだっけ」と振り返るのはとても重要ですね。

そういう意味では、アルバムの歌詞カードに参加者の名前が記載されているのですが、Disc1の1曲目「微炭酸」を見てみると、「オリメン5人+やなるる+まなかん」と刻まれております。まだオリメン5人が残っていたんだと思うと、とても感慨深いです。この「微炭酸」から考えると、今はあーりー、るる、まなかんの3人しか残っていないので全然別のグループになっていると言っても過言ではないわけです。しかし、魂は受け継がれています。上記の記事で、私は「マインド」と「スキル」がその魂の中核だと持論(愚論)を展開したわけですが、まぁ今回はアルバムのレビューなのでこれくらいにしておきましょう。

 

さて、前置きが長くなるのはいつものことですが、そろそろ楽曲について喋っていきましょう。Disc1については過去曲のアーカイブみたいな感じなので、今回はDisc2のみに絞っていきます。

 

アルバム全体の印象

8曲入りで34分。そして割とコンセプチュアルなので、とにかく聴いていて心地の良いアルバムです。もともとJuice=Juiceは大好きですし、これまでも沢山楽曲のレビューをしてきましたが、最近は色々あって楽曲レビューへの欲が減っていました。音楽を好きになればなるほど、私には知識が不足していると痛感したこともありますし、どうしても私は好きになる楽曲に偏りがあって、毎回同じことを書いているような気がしてしまうというのが大きな理由です(つばきファクトリーの「約束・連絡・記念日」やモーニング娘。の「よしよししてほしいの」とか、記事を書きかけのまま断念している状態です…)。

ですが、ここに来て素晴らしいアルバムを大好きなJuice=Juiceが出してくれたので、ようやく重い腰を上げる気になりました。誰も読むことの無い記事だとは思いますが、この私の感動を書き留めておきたい。思えば、それこそが私がブログを始めた1つのきっかけでした。そんな感情を思い出させてくれた素敵なアルバムです。

最近のJuice=Juiceは「DOWN TOWN」や「プラスティック・ラブ」といった往年の名曲シティポップをカバーするといった1つの軸を明らかにしています。そして、それに付随する形で制作されたであろう今回の「terzo [Disc2]」。ちなみに今さらですが「terzo」はイタリア語で「3番目」という意味があります。単に3rdアルバムというところからの命名だと思いますが、その潔さがまた良いんですよね。余計なものはいらない。素材の良さで勝負できるよね。というのが、近年のJuice=Juiceのスタンスかと個人的に思っているので、「らしい」アルバムタイトルに嬉しくなります。

ですから、本アルバム(Disc2)の楽曲は別に目新しい感じの楽曲はなくて、どちらかと言えばレトロ感がある気がします。近年のつんく♂さん楽曲に見られるような「攻め」の姿勢はあまりなく、何となく個人的に90年代っぽい懐かしさを感じますかね。まぁ、あまり私は音楽ジャンルに精通しているわけではないので、あくまでイメージでしかありませんが。

共通して言えるのはどの楽曲もベースがよく効いているということでしょうか。ドラムは打ち込みだったりもしますが、変なリズムを構築するわけではなく、聴き馴染みのあるフレーズであることがほとんどです。多くの楽曲でしっかりとしたエレキギターも演奏されていますし、シンセやバイオリンなどの上物も親しみが持てる感じです。メロディラインもポップで、耳が心地良く、ずうっと聴いていられる楽曲たちになっています。

あとはアルバムの構築も素晴らしいですね。

①GIRLS BE AMBITIOUS! 2022 ⇒ 自己紹介、ノリの良いロック

②POPPIN' LOVE ⇒ キュートなポップソング

③STAGE~アガッてみな~ ⇒ ハードロック(メタル要素やシンセも)

④Mon Amour ⇒ スパニッシュでジャジーな歌謡曲

⑤ノクチルカ ⇒ レトロなディスコ・ファンク

G.O.A.T ⇒ シティポップ風・元気系アイドルソング

⑦雨の中の口笛 ⇒ しっとり系アイドルポップス

プラトニック・プラネット ⇒ キャッチーなJ-POP(集大成)

というイメージで、色々なジャンルを感じさせながらも、自己紹介から始まり、最後は最高にノリの良いJ-POPで終わるという流れが好きで何回もリピートしてしまいます。全曲アイドルらしい感じでまとまっているのも無理がない感じで良いですよね。多くの楽曲で「たいせい」さんがコーラスに参加しており、ディレクターの名前にも「泰誠」とあるので、かなりたいせいさんが統一感を持ってアルバムを制作したのであろうことが感じられます。

この「統一感」というのは、やはりアルバムにおいてとても重要だと思っています。普通のアーティストでもアルバムとなると、色々と毛色の違う楽曲が並びがちですが、この「terzo」は様々なジャンルを渡り歩きながらも、レトロ感のポイントがうまくたいせいさんによって制御されている印象を受けますね。だからこそ、今回この記事を書こうという気持ちになっています。

あまり他のアイドルの話をするのはどうかと思いますが、初期の東京女子流感を感じます。アルバム的には「キラリ☆」や「Killing Me Softly」の辺りですかね(どちらも編曲の大部分を松井寛さんが手がけており、今回の「terzo」において松井さん編曲の「ノクチルカ」が入っていることからも、当たり前と言えば当たり前の印象なのでしょうが)。どちらも大好きなアルバムです。コンセプトの統一感という意味では、Maison book girlsora tob sakanaといった私の大好きなアイドルたちとも重なりますね。いずれもサクライケンタさんや照井順政さんといった強力なプロデューサー兼作曲家がついていますからね。私はどうしても「自分の趣味趣向をアイドルを通して発露している」という感じに弱いみたいです。

ハロプロつんく♂さんがそのプロデュースの大きな権限を持っているときからも、本当に多様な楽曲がありました。なので、そういう「統一感」みたいなのを感じることは少なかったのですが、ここに来てまさかJuice=Juiceにそんな要素が現れるとは。あまり期待していなかっただけに、とても嬉しく感じております。

というわけで、また長くなりましたが、全体を通して「良いなぁ」と思えるアルバムだと強く思っております。さて、続いて楽曲ごとに簡単に感想を述べていきたいと思います。

 

M1. GIRLS BE AMBITIOUS! 2022

言わずと知れたJuice=Juiceの自己紹介ソングの2022年度版。1stアルバムの「First Squeeze! [Disc2]」にも収録されていますが、こちら「Girls Be Ambitous」とほんの少し表記が変わっているんですね。いま書きながら見返して気づきました。ボーカルだけでなく楽器も再録しているので、若干質感がアップデートされているのも嬉しいですね。より低音が効いていますし、ロック感も強まっています。

全部で12ターム自己紹介ブロックがあるのですが、メンバーは9人なので年功序列的に「あーり」「るる」「まなかん」が2回分のタームを請け負っています。が、新メンバーにも色々と見どころがあり、改めてJuice=Juiceはバランスの良い采配をされていて、素敵だなぁと思います。

 

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先日のハロステでもライブ映像が公開されていて、皆が楽しそうにパフォーマンスしているのが最高でした。コメント欄もJuice=Juice絶賛が多く、思わず嬉しくなってしまいます。

こういう自己紹介楽曲って、いざ歌詞にしてみると、間違ってはいないけど意外と抽象的な内容になってしまいがちだと思います。なので、タコちゃんみたいにわかりやすくぶっ飛んだキャラがあると、一気にネタっぽさが増して良いですよね。タコちゃん、いてくれてありがとう!

あと、個人的に歌詞カードを見て嬉しかったのは、コーラスに中島卓偉さんはもちろんのこと、オリメン5人の名前が入っていることです。なんか「受け継がれている感」があって良いですよね、こういうの。今後また新しい時代に再録されることがあっても、オリメン5人の名前がまた載りますように。

 

M2. POPPIN' LOVE

Aメロのバイオリンの音が「らしく」てめちゃくちゃ好きです。編曲はErik Lidbomさんという方で、ちゃんと注目したことはなかったのですが、ジャニーズにたくさん関わっている方の様です。最近では娘。の「ビートの惑星」で作曲&編曲をされているようです。歌詞カードに「All Instruments & Programming: Erik Lidbom」とあるので、歯切れの良いベースもご自身で演奏されているのだと思うと、尊敬してしまいますね。

歌詞は山崎あおいさんで、Juice=Juiceでは「微炭酸」・「ひとそれ」・「好きって言ってよ」という名曲3部作に携わっており、Disc1を通して近年のJuice=Juiceを体現するお方と言って過言ではないでしょう。曲調はその3部作とは全然違いますが、あえて雰囲気の違う楽曲で作詞に起用し、アルバムの2曲目に置いていることからもプロデュースサイドから信頼されていることが伺えます。

Juice=Juiceには珍しいラブラブで可愛らしい恋愛を描いた楽曲で、まなかんやタコちゃん、りさちなんかが似合いそうな感じです。スキルの高いJuice=Juiceだからこそ、こういうシンプルで王道な楽曲が引き立ちますよね。りさちの台詞パートも甘々で可愛いです。

 

M3. STAGE~アガッてみな~

こちらはもう平田祥一郎さん全開の楽曲。同じく平田祥一郎さん編曲で、1stアルバムに収録された「CHOICE&CHANCE」とめちゃくちゃ音像が似ています。れいれいが加入してから「CHOICE&CHANCE」の間奏にボイパパートが追加されましたが、いよいよこの「STAGE~アガッてみな~」では音源から正式にれいれいのボイパパートが採用されることとなりました。この「受け継いでいる感」も良いんですよね~。ハロプロ3大編曲家の平田祥一郎さんが携わってくださることで、ハロプロのDNAを詰め込まれた楽曲とも言えるでしょう。

作詞・作曲の徳田光希さんという方はかなり若手の作曲家のようでアニメ系の楽曲制作に多く参加しているようです。M2の「POPPIN' LOVE」もそうでしたが、ハロプロ歴の長い方で「エッセンス」を残しながらも、新たな風を取り込もうとしているのが素敵ですよね。ただ作詞に関して言えば、「きっと沢山書き直させられたんだろうなぁ」と思ってしまいます(笑)。徳田さんが普段どういう歌詞を書く方なのか存じ上げないのですが(申し訳ございません)、いかにもハロプロっぽい歌詞になっています。

「CHOICE&CHANCE」は「エリートだけれど今一つ殻を破れきれなかった」オリメンが歌うことで、気合いを感じられる楽曲だったように思います。対して、この「STAGE~アガッてみな~」は、「色々な道を歩んでJuice=Juiceに辿り着いた」お姉さんチーム(まなかん、るる、れいれい)が歌うことで、なんかエモさがありますよね。諦めず光り輝く高みを目指そう、って気持ちになれます。

 

M4. Mon Amour

この曲は個人的に一聴して「1番好き!」となった楽曲ですね。お姉さん方(あーりー、まなかん、るる、れいれいの4人)のユニット曲のようなものです。「Mon Amour」ってフランス語で「私の愛」という意味らしいですが、フレンチっぽさというりはギターやブラス、パーカッションの感じがもろラテン系ですね。スパニッシュな情熱を感じます。

るるちゃんのウェットな声質と、まなかんの甘々な声質が絡み合って、非常に色気を感じます。余計なアレンジがなく、とにかく楽曲の持つ力をシンプルに、けれど最大限に引き出す感じは編曲家の浜田ピエール裕介さんらしいと思います。浜田さんはハロプロだと「Uraha=Lover」や「シンクロ。」で編曲をされています。関ジャニ∞の「ズッコケ男道」を作曲された方ということで、凄い人だったんですね!

作詞・作曲はオオヤギヒロオさんという方で、娘。の「人間関係No way way」&「LOVEペディア」の作曲をされました。アンジュルムの「限りあるMoment」も好きな曲で以前レビューをさせていただきました。

 

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ちなみに作詞では井筒日美さんという女性作詞家との共作となっています。上記の「シンクロ。」や「限りあるMoment」でも作詞を担当されており、ほかにも多数(「恋のマグネット」や「初恋サンライズ」など)ハロプロ楽曲で作詞をされています。この「Mon Amour」ではかなり大人っぽくて、いかにも情熱的な恋模様を想起させる言葉が紡がれております。もうなんか徹底し過ぎてちょっと恥ずかしくなるくらいの文面なわけですが、そんなところもハロプロっぽくて大好きです。

普段はふにゃふにゃと「癒し!」な印象のるるちゃんが「分かち合って本物の二人になれたら何もいらない」と情熱的に歌うのは……なんというか、グッときますね。

 

M5. ノクチルカ

もうだいぶ伝わっていると思いますが、私、この曲を編曲されている松井寛さんが本当に好きなんですよね~。全体的にディスコ・ファンクっぽさとレトロな歌謡曲感が漂う雰囲気がありますが、あの大好きな東京女子流っぽくて素晴らしいです。サビ前のところなんかまさに東京女子流という感じですし。「ダッダッダッダッ」という感じのキメは「鼓動の秘密」を始め、様々な楽曲で用いられている印象です。

松井さんって本当にリズムパターンを沢山詰め込んでくれるんですよ。ベースもドラムも本当に細かくて、単調な8ビートが続くようなことはほとんどなくて。シンコペーションやキメを多用しつつ、時にはアイドルらしいノリやすいリズムも使ってくれるので、非常に洒落ていて飽きが来ません。

「ノクチルカ」はイントロ、Aメロが非常に都会っぽくて、メロウな感じです。そして、Bメロはアイドルっぽいビートを使用して、伸びやかなメロディラインなのでとても聴いていて心地よく、サビに向けて確実に盛り上げてくれます。サビはもしかしたら初見だと難しく感じるかもしれません。あまり耳慣れないコード進行で、なんかメジャーとマイナーを行き来している感じがしますし、シンコペーションも多用しているので一筋縄ではいきません。が、だからこそ何度も聴くことで味わい深く、いわゆる「スルメ曲」的な感じがございます。お馴染みの楽器ばかり使っているので、音像自体は親しみやすいのですが、本当に品が良く格式高い楽曲だと思います。

作詞の唐沢美帆さんはアニメ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」のOP主題歌「Sincerely」を歌うTRUE名義でも活動されている方とのこと。多くのアニメ楽曲に携わっているようですが、ハロプロではこれも松井寛さん編曲の「TOKYOグライダー」でも作詞を担当されています。まず「ノクチルカ=夜光虫」という曲名が素敵ですよね。使用しているワードもちょっとアニソンっぽいカッコイイ感じのものが多く、それでいてとても音への乗り具合が良いです。「ローグライク」とか「ブルース」とか、「Unknown ノクチルカ」とか。「戦慄(わなな)いて」とか「馳せる」とか「夜光虫」とかも。

ちなみに「人生のローグライク」って歌詞、めっちゃ良いですよね。「不思議のダンジョン」系の金字塔(と勝手に思っている)「風来のシレン2」がクリアできずにブチギレていた子供時代を持つ私にとっては、なんか感じ入るところがあります。1手の重みを初めて体感し、でも慎重になり過ぎていると全然進めない……あのときが人生で1番何かに燃えていたかもしれない。。。そんなことを思い出しました。

まぁ、私の話はどうでも良くて…とにかく良い曲が貰えて本当に良かったですね!今後もたくさん歌っていって欲しい素晴らしい曲です。

 

M6. G.O.A.T

Greatest Of All Time=史上最高、という意味の曲名です。とてもお洒落なシティポップ的でアンニュイなAメロ、Bメロ。そして、それとは対極的に前向きで明るく元気を貰えるようなサビといった、不思議な質感の楽曲になっています。Aメロ、Bメロの感じはアルバムの中でも1,2位を争うくらい好きですね。

作曲はShusuiさん(と、Andreas Ohrmさん、Henrik Smithさん)であの名曲「青春アミーゴ」を作った方です。ジャニーズと縁が深いのですが、近年はハロプロにも楽曲提供をしてくださっており、「Va-Va-Voom」、「Familia」、「Future Smile」といったJuice=Juice楽曲に多く携わっていらっしゃいます。作詞は井筒日美さんでM4の「Mon Amour」と同じですが、全然詩から受ける雰囲気は違いますね。A, Bメロのアンニュイなパートでは、コロナ禍を憂うような歌詞になっており、一転サビでは「目一杯恋がしたい!」という感じの元気いっぱいな歌詞になります。編曲を担当されるHenrik Smithさんは調べてもあまり情報が出てこなかったのですが、ジャニーズ関係の楽曲を多く手掛けられているようです。

フェードアウトの楽曲というのも近年ではちょっと珍しく、なんか哀愁を感じてよかったですね。「ラ・ラ・ラ♪」という部分はライブで合唱したいところではあります。が、このコロナ禍……そう考えると、この楽曲で歌うように、何とか「コロナ禍」を終えて、皆でまた「密」になりながら感動を共有する未来に向かいと心から思いますね。意外とライブのラスト曲的な感じになるのでしょうか。あぁ、またコロナ前みたいなライブに行きたいなぁ。地蔵スタイルの私でも、やっぱりヲタクたちの歌声が懐かしいです。

 

M7. 雨の中の口笛

若手チーム(タコちゃん、里愛ちゃん、いちか史、りさち、きんちゃん)の楽曲です。特に新メンバーの初々しい歌声が、優しい楽曲とよく合っています。が、ビートは結構ソリッドな音を使っており、シャッフルビートが採用されていて結構リズムが立っているという特徴もあります。そのおかげで甘々になり過ぎず、軽やかさも感じますね。

こちらもShusuiさん楽曲となります。作詞・作曲はShusuiさん、Zeyunさん、tsubomiさんの共作で、編曲はZeyunさん。Zeyunさんは韓国の方の様ですね。あまりハロプロ界隈でお名前を見ない方々なので、ほとんど情報がありません。ShusuiさんはM6の「G.O.A.T」と合わせたイメージだと、無駄がなく軽やかで都会的な音楽が得意な感じでしょうか。「青春アミーゴ」からはあまりそんなイメージを受けませんが笑。

アルバムの終盤にこういう楽曲がすっと挿入されているというのが、またこの「terzo」というアルバムの完成度を高めている気がしますね。別に箸休めという意味で作っているとは思いませんが、結果的に一連の作品の中で箸休め的な役割を担える楽曲って、私は結構好きです。そして、アルバムを通しで聴くときに本当に良い味を出してくれると思っています。単に若手チームのための楽曲というところを超えて、普通にカフェとかで流れていてもおかしくないようなお洒落で良い楽曲です。いまこうやって曲を聴きながらキーボードを叩いているわけですが、1番負荷が少なく、心地良いですね。

「雨の中の口笛」という楽曲のラストが「雨の中の口づけ」というのもなんかお洒落で良いです。楽曲のテーマを奏でる口笛の音もとても落ち着きます。見ようによっては、お姉さんチームの「Mon Amour」よりもよっぽど大人っぽい落ち着きを感じます。

 

M8. プラトニック・プラネット

もしかしたらアルバムの中でこの楽曲が曲調的には最も異色かもしれません。が、Juice=Juiceのファンとしては、もはやこの楽曲を聴くためにこのアルバムを買ったといっても過言ではない、と。そんな、長い期間ライブで披露され続け、多くのファンを魅了し、ようやく音源化に漕ぎ着けた「プラトニック・プラネット」です。

伝説のライブ(そして、私の大好きなライブの1つである)「octopic!」(2019年12月)で初披露された本楽曲は、ゆめりあいのイメージが強いですね。加入して間もない2人が、百戦錬磨の猛者たちに混じっている図が最高でした。ライブ序盤の曲ということでまだガチガチに緊張している感じが窺えるタコちゃん。そして、それとは対照的にニッコニコでパフォーマンスする里愛ちゃん。この曲で松永里愛に心を奪われました。

 

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当時のハロステでパフォーマンスを観てから、「これはいずれレビューすることになるぞ!」と思っていたわけですが、こんな形でのレビューになるとは露ほども思いませんでした(普通にシングル楽曲として、あるいはシングルのカップリングになると思っていました)。この頃はまだ山木嬢がいたんですね。ということは、カントリーもまだ活動していたのか……そう考えるととても昔の事のような気がしてしまいます。

ちなみにハロステ版にはありませんが、Blu-ray版のサビ、「すっごい世界が知りたいの」のところでカメラ目線になる里愛ちゃんが好き過ぎます。ハロステで観て気になり、Blu-rayで観て完全に落とされました。もちろんその後の「すべては許せないけど」も最高で、Ultimate Juice Ver.として収録された本アルバム音源でもそのパートを守り切っているので、それもなんかとてつもなく嬉しいことです。タコちゃんの「滲んでる プラトニック・涙」も良いですよねー。

特別複雑な曲という訳ではなく、どちらかと言えばシンプルでとてもキャッチーなメロディラインが続く、マイナー調ナンバーです。故に、Juice=Juiceの歌唱力がこれでもかというほど堪能できます。ソロパートも多く、そこが好きだなと思いながらも、ユニゾンもやっぱり最高で。やっぱりJuice=Juiceファン待望の音源化という感じです。

Ultimate Juice Ver.ということで、金朋・さゆき・佳林ちゃん・あーりー・るる・まなかん・タコちゃん・里愛ちゃん・れいれい・いちか氏・りさち・きんちゃん、という豪華な名前が歌詞カードには乗っております。それ以外の楽曲だと、まなかん⇒るる⇒れいれい⇒タコちゃん⇒里愛ちゃんとなっているのに、この曲だけ名前の順番が加入順になっているのも、なんかエモいです。金朋、佳林ちゃんはもちろん、さゆきの声が入っているのもとても嬉しいですし。ラストのフェイクと「すべては許せないけど」が佳林ちゃんというのも、なんかJuice=Juiceの歴史を体現しているようで良いですよね。3flower(いちか氏・りさち・きんちゃん)とは一緒に活動していなかったメンバーが重用されているのが、何と言うか先人たちへのリスペクトを感じます。メンバーはもちろんリスペクトしているのでしょうが、楽曲制作陣やスタッフも彼女たちをリスペクトしているのが伝わって来て、「ハロプロ最高!」となるんですよね。

そして、本当にこれは言わなくて良い事だと思うんですが、金朋・さゆき・佳林ちゃんってやっぱり凄かったんだなぁ、と。ここまでの楽曲は全て美しく高い技術を持つ歌声で、楽曲の魅力を損なうことなく、充分素敵だと思っていました。それはそれで嘘ではないのですが、金朋・さゆき・佳林ちゃんの3人はそれに加えて、パッと聴いてわかる特徴を持っているのが凄いです。もちろんプラトニック・プラネット自体がかなりボーカルを際立たせてくれる楽曲なので、ほかのメンバーのソロパートも非常に魅力的に聴こえます。それはそうなんですが、それでもこの3人はちょっとエグイですよね~…といっても、この3人は単純な歌唱力・表現力でもハロプロの歴史に名を遺すような人たちなので当たり前と言えば当たり前ですが。

決して現状に対する批判じゃないですし、これからのJuice=Juiceを応援していくことももちろんなんですが、こんな素敵な作品を出されてしまうと、ついつい懐古的になってしまいますね。アルバムの副題は「Brand New Juice」なわけですが、この楽曲に限って言えば、やはり曲の副題である「Ultimate Juice」がしっくりきます。

これぞ〆にふさわしい楽曲でした。ごちそうさまでした。

ハロプロ御用達作詞家の児玉雨子さんの詩も光っています。「この大地に林檎がキスして引力生まれた」なんて歌詞、雨子さんじゃなきゃ書けないです。作曲・編曲の炭竃智弘さんはあまり情報がないですが、こんな素晴らしい楽曲を作れる方なのですから、今後も沢山ハロプロに良曲を提供していただきたいですね!

 

改めて感想

良いアルバムでした。もうそれだけです。改めてJuice=Juiceというアイドルが好きになりましたし、これからも応援していきたいと思い直しました。

私はハロヲタでありながら、実はあんまり普段はハロプロの曲を聴かないんですよね。もちろん好きな曲は沢山ありますし、「今日はアイドル楽曲を聴くぞ~」となったら色々聴きます。何と言うか、スポーツ観戦が好きで、試合を観に行けば応援歌とか沢山歌うけど、普段は別に応援歌を聴いたりはしない……みたいな。なんというか、ハロプロの場合、どうしても映像、つまり彼女たちのパフォーマンスとセットなんですよ。もっと言うと、「あぁ、この子上手くなったなぁ」みたいなのとセットで楽しんでいるわけですね。

だから、楽曲レビューでもしない限りは、そんなに繰り返してハロプロ楽曲を聴くことはないんです。が、このアルバムはとても良いです。散歩しながら結構エンドレスで聴いてしまいました。ハロプロで「アルバムが良いなぁ」と感じたのは、割と初めてくらいの体験な気がします。「良い曲が入ってるアルバムだなぁ」はあるんですけどね。大概、通しで聴くことはなかったように思います。8曲で34分という手ごろさもちょうど良いですよね。

プラトニック・プラネットでの前言を撤回するようですが、今のJuice=Juiceのニュートラルな歌声というのも意外と私好みなのかもしれません。金朋とか佳林ちゃんが歌っていると、「あぁ、Juice=Juiceだなぁ」とどうしてもなってしまいます。しかし、この「terzo」は「誰々」ということをあまり意識せず、単に「良い歌声だな」という感じで聴けるのが、普段私が音楽を聴く時の姿勢とマッチしているのかもしれません。

音楽の聴き方、エンターテインメントの楽しみ方、そういうのは人それぞれで良いと思います。同じ人でも、色んな楽しみ方をして良いと思います。ましてや、表現者側も表現者ごとに違う意図を持って、表現をしています。そういう意味では、この「terzo」というアルバムは私のハロプロの楽しみ方をより広げてくれたと思います。

良い買い物をしました!

 

最後に…

最近は4月にSYNCHRONICITYというサーキットイベントに行き、そこで色んな音楽を楽しみました。まさかtoconomaD.A.N.が裏被りしているなんて……といった残念な場面も沢山りましたが(yonawo, 崎山蒼志、ZAZEN BOYSあたりも混戦でしたね)。でも、ふらっと訪れたTENDREや奇妙礼太郎が良かったり、その分良い出会いもありました。

そこで思ったのが、アーティストによって色んな楽しませ方をしているなぁ、ということです。夕暮の浜辺でお酒を飲みながら踊るみたいな空間を作っている人もいれば、とんでもない緊張感で駆け抜けるようなパフォーマンスを見せつける人もいて、もちろんtoeのようにとにかくエモーショナルなステージングも最高で。アイドルなんて、ハロプロなんて、と簡単に切り捨てるような人もいるのかもしれませんが、ハロプロだって誇り高きアーティスト集団の1つなんですよね。

「へぇ、アイドル好きなんだ」と半笑いで言う人もたまにいますし、これだけハロプロが好きな私ですら、なんかちょっと後ろめたく思ってしまう場面はあります。確かに単純な音楽だけでなく、年頃の女の子の可愛さにキュンキュンするという楽しみ方は恥ずかしいことなのかもしれません。でも、夕暮の浜辺でお酒を飲みながら踊るのも、緊張感とともに駆け抜けるようなパフォーマンスも、全員で頭を振りながら叫ぶようなパフォーマンスも、ベクトルが違うだけで「楽しみ方」という意味では同じです。

三浦文彰さんのチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」に感嘆の拍手を送るのと同じ温度感で、私はハロプロアイドルたちに拍手を送れるような人間でありたいですね。

なんか「terzo」が良すぎて、変なことを書いてしまいました。

しかし、それに比べて会社というところはなんて楽しくないんでしょう。あぁ、やだやだ。前の職場は楽しかったのになー。コロナだからかなぁ、プライドが高い人が多いからかなぁ、人が多すぎるのかなぁ、都会でゴミゴミしてるから精神が荒んでいるのかなぁ。わからんですが、ちょっとでも楽しくなるように、日々工夫して頑張りたいと思います。可愛くて美しいハロプロアイドルから活力を貰い、良い音楽に癒され、チェーホフが言うように「耐え抜きましょう」。

そんなことを想う、日曜の夜でした。