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音楽や小説など

Maison book girl「狭い物語」レビュー ~変拍子のカタルシス~

Maison book girl 「狭い物語」のレビューをさせていただきます。

 

www.youtube.com

 

Maison book girl(以下、ブクガ)と言えば、変拍子。ミニマル音楽の泰斗、スティーヴ・ライヒを尊敬するという作曲家のサクライケンタさんがプロデュースするアイドル(?)グループです。

*ここから、私のブクガとの出会いについての語りになります。例によって、読み飛ばしていただければと思います。

サクライケンタさんの前のプロジェクトである「いずこねこ」から、リズム・拍子にこだわったスタイルが好きで聴いていましたが、ブクガが始まってからはよりお洒落にトータル・プロデュースされてきました。

私がサクライケンタさんを知ったきっかけは「凛として時雨」のピエール中野さん経由ですね。今となっては、ブクガのライブにミュージシャンとして、サクライケンタさんと一緒に出演したりしていますが、おそらくピエール中野さんが最初にサクライケンタさんの音楽をちゃんと知ったのは、以下の対談だったかと思います。

www.cdjournal.com

南波さんと言えば、ネット番組のアイドル三十六房で、タワーレコード社長の嶺脇さんと一緒に様々なアイドルについて熱く語っている印象があります。特に、ハロプロメンバーがゲストの回は、ハロヲタとしてチェックしていましたが、そんな南波さんとピエール中野さんが対談ということで非常に心躍るものがあったのを覚えています(このインタビューでも様々なアイドルが紹介されていますが、紹介されている動画が残っているのは一部のみ…アイドル業界の厳しさを感じます)。

そして、私もこのインタビューがきっかけでサクライケンタさんを知り、そして今でもブクガを通して応援させていただいている次第でございます。

*これで私のブクガとの出会いについての語りは終わります。

 

さて、やっとこさ「狭い物語」の楽曲レビューに移りたいと思いますが、サクライケンタさんの音楽偏差値は私には高すぎるため、どれほどちゃんとした解説にできるのか非常に不安です。音楽的にはほぼ素人なので、話半分に読んでいただければと思います。

 

まずは、例によってMVから歌詞を抜粋させていただきました。楽曲の構成などと合わせて、以下にまとめて引用させていただきますので、これでざっくりと楽曲の概要を掴んでいただければと思います。

 (イントロ)7拍子

(Aメロ)7拍子
狭い この部屋に刺さる ベッドシーツ。
今も 残ってる 匂い 小さな夢達。

(Aメロ)7拍子
白が 染み付いた壁は ぼやけたまま、
古い アルバムの 鍵を 探しているの。

(Bメロ)10拍子(3・3・4)
鏡に残る影、映り込む雨音。
枯れてゆく季節と 耳鳴りを、傷つけた。

(サビ)3拍子
それは、夢じゃないの。
今も、ここにあった部屋で 抱き合ってるの影と、涙を流して。

(間奏)

(Aメロ)7拍子
最後 の朝の光を、待っているの。
ひとり、望まない 床を 眺めていたの。

(Bメロ)10拍子
指でなぞる瞼、瞳はくり抜かれて。
水滴の傷跡、絡まる部屋を抱いて。

(サビ)3拍子
ここは、夢じゃないの。
今も、手のひらで触れてる、浮かんでいるベッドで 朝を迎えるの。

(間奏)

(サビ)3拍子
それは、夢じゃないの。
今も、ここにあった部屋で 抱き合ってるの。
影と 体を重ねている。
夢じゃないの。今も、
手のひらで触れてる、浮かんでいるベッドで 朝を迎えるの。

 さて、ざっくりと書けば、7拍子⇒10拍子⇒3拍子と移り変わっていくような構成になっています。Bメロの10拍子は正式には5拍子なのかもしれませんが、3・3・4と捉えると個人的にわかりやすいので10拍子としています。サビの3拍子は、まぁ、わかりやすいので特に説明は不要でしょう。

そして、この曲を把握する上で最難関なのが(イントロ)&(Aメロ)の7拍子のところです。ここさえ理解できれば、Bメロとサビはブクガファンなら余裕でノれるはず!

 

では、個人的なリズム・拍子の解釈をExcelでまとめたので、まずはそれをご紹介します。

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(なんか、PC初心者みたいな感じになってすみません。ですが、これが私の精一杯なんですよね笑。文明に取り残された旧時代的な人間ですので。)

こちらの表は最初のAメロまでを理解するために作ったものです。

まずは、ピアノパートをご覧ください。7拍子のフレーズになっています。最初の「レ♭」が曲者で、明らかに小節の最後らしい音であるが故に、いきなりリズムを狂わされます。この「レ♭」がなければただの3拍子で済んだものを…まぁ、そこがサクライケンタさんの好きなところなんですが。

とは言え、7拍子くらい今までのブクガにも散々登場してきましたから、「あぁ、この7拍子のフレーズにノってればいいのね」と思わされた次の展開で、頭がおかしくなります。そう、ドラムの登場です。

基本は「●(ドン)」というバスドラムの音。そして、「◆(タッ)」というスネアの音でリズムが構築されています。「・」に関しては、楽曲にはない「・(ツ)」とハイハットの音ですが、これを感じるとノりやすくなるのでぜひ意識してみてください。

さて、もうお気づきかと思いますが、バスドラ「●」が拍子の裏で鳴っています。これが頭と体を狂わせるのです。なので、バスドラ「●」は遠くに感じつつ、まずはスネア「◆」でリズムを取りましょう。スネア「◆」が7拍子の4拍目に来ているため、それでもノりにくいはノりにくいですが。

しかし、ピアノの「レ♭」を忘れないことで7拍子を意識し、バスドラ「●」を少し意識から遠ざけ、スネア「◆」を感じることで、およそイントロのリズムを掴むことができるようになるはずです。

 

はい。そして、イントロが終わりまして、次はいよいよカオスなAメロへ。イントロの意味不明なリズムに、どう歌が乗って来るのか。先ほどの表をご覧ください。

まずはいきなり「1拍の休符」を感じましょう。そして、出だしの「せまい」を除けば後は1音1拍で構成されているため、何拍目に各フレーズの歌い出しが来るかを覚えれば、しっかりと歌えるはずです。

直感的にまとめれば、

「・/セマ/い/・/・/・/・/・/こ/の/へ/や/に/・/さ/さ/る/・/・/・/・/・/ベ/ッ/ド/シ/ー/ツ/」

です。さらに直感的にすると、

「(ウン)せまい(1・2・3・4・5)このへやに(ウン)ささる(1・2・3・4・5)ベッドシーツ」

です。たぶん、ブクガのメンバーもこうやって歌っているんじゃないかと思います。

こういった構成ですから、もはや何拍子だからどうこうって話じゃないですよね。歌に関してはただメロディとして捉えていくしかないような気がします。それこそミュージカルの歌なのかセリフなのかわからないアレみたいな感じですね。ミュージカルには疎いので申し訳ありません(ハロプロの舞台しかほとんど見たことがないので)。

また、Aメロ~Bメロの繋ぎ部分は

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という感じで、7拍子からも若干はみ出していますね。なので、最初の「せまい♪」の「せま」までを前小節からのシンコペーションと考えるのが妥当かもしません(つまり、「せまい♪」の「い」を小節の頭と捉えるわけです)。ですが、これだけごちゃごちゃだと、ここまで整理してみてようやく「そうかもしれない」と言えるくらいなので、あまり細かく考えなくてもいいのかもしれません。

ほかにも、歌詞だけに注目すれば次のように並び替えることで、7拍子っぽい感じに見ることもできます。

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このように、どこに焦点を当てるかで区切り方が変わってきます。あえて画像にはしませんが、ドラムに焦点を当てれば、全てが半拍ずれることになりますし、画像内には示さない楽器に焦点を当てることだってできるでしょう。

 

最後に、サクライケンタさんが大好きな木琴の音については、もうどう説明したらよいのかわからないので、ポリリズム的にずっと絡んできているくらいに流しておきましょう(この難解なリズムにさらにシャッフルビート(3連符の中抜き)まで加わったものを私のしょーもないExcel技術でどう表現しろと言うのか…)。

 

というわけで、このAメロを解読するだけでほとんどの気力を持っていかれてしまいました。最初にも言いました通り、Bメロとサビに関しては、比較的わかりやすいので特に解説はしなくても良さそうですよね笑?

なので、あとは個人的に気になったところだけまとめたいと思います。

まずは、サビのドラムですね。ドラムパターン全体としては、メタルやメロコアっぽい感じですね。バスドラは「ダララ」とメタルっぽい細かいフレーズですし、スネアは徹底した裏打ちでメロコアっぽい感じです。そして、私個人的には「凛として時雨」のピエール中野さんを感じるんですよね(まぁ、ちゃんとある程度個性を把握しているドラマーは数人しかいないので、私がドラマーを持ち出すときはだいたいピエール中野さんになってしまうんですが笑)。作曲のサクライケンタさんはブクガのバンドメンバー「カオティック・スピードキング」でピエール中野さんと一緒にやって来ているわけですし、当たり前と言えば当たり前ですが。でも、そうやって影響を及ぼし合っていると思うととても嬉しいわけです。

対するピエール中野さんも自身のバンドである「凛として時雨」に、ブクガ(サクライケンタさん)の要素を持ち帰っています。

凛として時雨 『Chocolate Passion』 - YouTube

最新アルバムの<#5>から「Chocolate Passion」では時雨では珍しい3拍子が取り入れられていますが、これは凛として時雨の作曲を担当しているTKさんから「何か中野くんの中で流行ってるフレーズ叩いて」と言われて叩いたものなんですよね。ピエール中野さんもこのフレーズに関しては、「ソロ活動でやっているバンドが変拍子を使ってて…」と公言しています。

ブクガの「狭い物語」も、時雨の「Chocolate Passion」も、それぞれ新しいものを取り込んで素敵な楽曲に仕上がっていると思います!

 

あとは、最後のサビでは静かな落ちサビからリピートで激しいサビへの切り替え方がとても好きですね。本来であれば、歌詞で言うと「それは♪」という部分が入って然るべきなのですが、そこをカットしていることで最後に畳みかけるような印象が生まれています。めちゃくちゃお洒落な手法だと思うんですよね。

 

そして、楽曲の構成も、上では「7拍子⇒10拍子⇒3拍子」と書きましたが、「7⇒5⇒3」と捉えれば、これは立派な等差数列。音楽と数学は密接に関係していると様々なところで聞いたことがありますが、こういう数学的な美しさも感じられるのがブクガの良いところだと思います。

 

さて、これにて楽曲のレビューを終わりたいと思います。非常に疲れました…

また気力のあるときに、気が向けば、歌詞の解釈もしたいと思いますが、とりあえずはこの辺で締めようと思います。

 

最後に…

音楽的な素養の無い私がこんな音楽的なレビューをするのは、非常に恥ずかしく悩ましいところではありますが、少しでもこの曲の面白さを多くの人に知っていただければと思います。