霏々

音楽や小説など

アンジュルム「愛されルート A or B?」レビュー ~シャッフルビート×3拍子~

アンジュルムの29th single「愛されルート A or B?」のレビューをさせていただきます。

 

www.youtube.com

 

久しぶりの楽曲レビューとなりました。ライブレポートや好きな楽曲選のようなことはちまちまとやっていたのですが、楽曲のレビューをちゃんとやるのは2020年7月24日のこちらもまたアンジュルムの「限りあるMoment」ぶりになります。もう1年弱も楽曲レビューをしていなかったのですね。

レビューしたい楽曲がなかったわけではないのですが、個人的に適応障害なんて病気にかかってしまい、その実況をすることに終始していたため、楽曲レビューからは遠ざかっていました。しかしながら、今回は好みドストライクの楽曲がやって来たので、久しぶりに気合を入れてやってみようと思います。気分転換でもありますね。

 

 

リズムパターン

はっきり言って、この楽曲を好きになるにはこの「シャッフルビート」×「3拍子」というリズムパターンだけで事足りますね。もう私の好み過ぎてヨダレが出まくりです。一応言葉だけでなく、わかりやすいようにいつもの底辺のエクセルスキルで視覚化しておきます。

 

f:id:eishiminato:20210529223123p:plain

シャッフルビート×3拍子

 

まず3拍子ということで、「拍」の行に「1,2,3」と振っているように、思わず「ワン・ツ―・スリー・ワン・ツ―・スリー…」とステップを踏みたくなるような感じがありますね。3拍子はワルツなどでも用いられますが、このBPM(テンポ)の速さだとかなり攻撃的なダンスになりそうです。一気にお洒落度が跳ね上がるリズムパターンですね。3拍子についてはハロプロ御用達の作曲家であらせられます星部ショウさんのYouTubeチャンネルでも紹介されていますので、よろしければ確認してみてください。

 

www.youtube.com

 

さて、この3拍子に加えてこの楽曲の「軽やかさ」や「跳ねる感じ」を演出しているのがシャッフルビートです。上の画像の「アクセント」の行を確認していただければわかると思いますが、1拍を3つに区切って、その頭とお尻にアクセントを置いているのがシャッフルビートです。これが私の大好きなリズムパターンでして、古くは日本のお祭り囃子などにも使われているリズムです。そう聞くと少し洒落た感じがなくなりますが、ある程度のBPM(テンポ)の速さがあると、これがかなりお洒落に機能し始めるのです。

サビの歌詞も書き入れていますが、歌詞と対比させるとシャッフルビートであることがよくわかりますね。ドラムのスネアやハイハットなどを聴いてもわかりやすいかもしれません。特に2番終わりの間奏のスネアは聴き取りやすいと思います。「ツッタ・ツッタ・ツッタ・ツッタ(タの部分がスネアの音になりますね)」とかなり細かく刻むことで、このシャッフルビートに乗りながら楽曲を楽しめると思います。

はっきり言って、私なんかはシャッフルビートが使われている楽曲は全部好きなんじゃないかというくらいこのビートが大好きです。ハロプロの楽曲では、Juice=Juiceの「好きって言ってよ」などにも使われており、これもまた私の大好きな楽曲であります。

 

eishiminato.hatenablog.com

 

そんなシャッフルビートにお洒落な3拍子まで加わっているわけですから、もう言うこと無しですね。

 

楽曲構成

基本的にはイントロ⇒Aメロ⇒Bメロ⇒サビ⇒間奏…という王道の構成にはなっています。しかしながら、もう少し細かく見ていくと、面白味が感じられる構成となっています。

 

intro(8.8)

A1(8.8) ⇒ B1(8.8.2) ⇒ C1(8.8) ⇒ D1(8.6) ⇒ inter1(8.8) *inter1=intro

A2(8.8) ⇒ B2(8.8.2) ⇒ C2(8.8) ⇒ D2(8.6) ⇒inter2(8.8)

E(8.8) ⇒ F(8.8) ⇒ C3(8.8) ⇒ D3(8.6) ⇒ outro(8.8) *outro=intro

 

まず特筆すべきは赤太字で示したように、サビにあたる部分のバリエーションの豊富さですね。CメロとDメロという風にサビが2段構成になっています。これまでもいくつかこういった楽曲をレビューしてきましたが、例えばアンジュルムの「全然起き上がれないSUNDAY」やJuice=Juiceの「好きって言ってよ」なんかがそうですね。どちらも私の大好きな楽曲です。

 

eishiminato.hatenablog.com

 

1番、2番ではわかりやすくサビの2段構成になっています。「愛されるのはどっち?」から始まるところがCメロで、「気分次第でしょうか」から始まるところがDメロです。Cメロではシャッフルビートが際立ち、かなり細かいリズムパターンでテンションをグッと上げてくれます。Dメロは3拍子にしっかりと乗る形で、少し切なく抒情的な雰囲気を纏い、しっとりと締めてくれます。この緩急が素晴らしいです。

そういう意味では、Aメロのお洒落でアンニュイな感じから、Bメロの3拍子強めのお茶目な雰囲気、Cメロ(サビ1段階目)の激しい感じから、Dメロの抒情的な感じという飽きさせない振り幅の大きい展開が全て素晴らしいです。全体を通してお洒落さが統一感を出していますが、その中ではコロコロと表情が変わっているので、1番と2番で全く同じ構成になっていながらも全く飽きが来ないように思います。

そして、やはり最後の「E ⇒ F ⇒ C3 ⇒ D3」という展開が何よりも素晴らしいです。

Eメロ(ドジばかり~)とFメロ(無礼講しちゃうくらい~)は1番、2番でサビを務めていたCメロを基盤にしたメロディラインでありながらも、音階的には低めのところで旋律を作り上げています。シャッフルビートに乗っており、リズムパターンだけで言えばCメロに近くとも、音階が少し低いわけですね。Eメロは少し静かに、楽器も高音域を控え目にしており、そこからFメロに差し掛かると一気に高音域も増えてサウンドが豪華になります。しかしながら、ここでもサビのCメロよりは少しだけ低い音階。そして、ラストのC3メロ(愛されるのどっち~)に入ると、一度またバックミュージックは控え目になります。それによって、このC3メロは若干落ちサビのような風格を持つわけです。C3メロの後半8小節はまた一気に盛り上がり、勢いそのままにD3メロへと入っていきます。

そんなわけで「E ⇒ F ⇒ C」という流れでは似たようなメロディが繰り返されながらも、実際には音階が徐々に上がっていく構成になっており、その中でバックミュージックの濃淡の移り変わりも激しく、最後のC3メロの後半8小節に向けて劇的な展開が用意されており、とても気持ち良いのです。

 

そして、青太字で示したBメロのラスト2小節「あ あ あ」の部分もまた楽曲の緩急をつける上で非常に重要な役割を果たしていますね。ここはあえて2小節付け足すことで、間合いを測るような雰囲気があり、サビのCメロに入るタイミングで大きく盛り上がる仕掛けとなっています。対して、Dメロの後半は6小節しかなく、他と比べて2小節短くなっています。Dメロのラストはロングトーンになっているため、歌が間奏に割り込んでくる形になり、楽曲の展開を滑らかにしている印象があります。それと同じように、間奏⇒Aメロ、Aメロ⇒Bメロでは歌が前に割り込んでくるような工夫がなされています。例えば最初のイントロからAメロに入るところでは、「愛想よ」までが間奏の小節に食い込んでいます。これによっても、楽曲の展開が滑らかになっている印象が付与されていますね。

そう考えると、この青太字のBメロラスト2小節の「あ あ あ」だけが楽曲の中で展開をばっつりと切り取るような効果を表しており、サビへのわかりやすい助走として機能しています。

 

こんな感じで、この楽曲は緩急と流れるような展開が優れており、ただ「サビがいいよね!」とか「雰囲気がカッコイイ!」というだけでなく、本当にイントロからアウトロまで全体を通して素晴らしい楽曲になっていると言えます。

 

作詞・作曲

作詞はハロプロではもうお馴染みの山崎あおいさんです。Juice=Juiceの「微炭酸」、「ひとそれ」、「好きって言ってよ」の3部作でさらに名を上げたように思いますが、今回も素敵な歌詞を書いておられます。

根が真面目過ぎるのか、可愛げが足りないと言われるタイプの女の子の煩悶が綴られています。頭が悪いわけじゃないから「可愛げ」が大切だということは理解しているものの、「どうやったら可愛げが出せるか」と考えてしまうが故に「可愛げ」が出せない。「Aという選択肢、Bという選択肢、いったいどっちを選んだ方が可愛げがある?」と周りが求める「可愛げ」に振り回されているわけですが、第三者的な目線から見ると、そんな風に悩んでいるのが実は可愛いような気がします。「可愛げが出せない」と悩んでいる様子が可愛いという、つい笑ってしまいたくなるような皮肉が詰まっている歌詞になっていて、私はだいぶ好きだなぁと思わされました。

キラーワードとして「ディプロマシー」という言葉が出てきますが、これは「diplomacy:外交」という意味がある一方で、第一次世界大戦前のヨーロッパの覇権争いをモデルとしたボードゲームの名称でもあるようです。サイコロなどのランダム要素が排除されているうえに、基本的には交渉や策略、裏切りのプレイヤースキルが勝敗を分けるため、「友情破壊ゲーム」と称されてもいるようです。私はプレイしたことがないため、深く語ることはできませんが、そういったガチガチのゲーム性は本楽曲の歌詞世界にも強く共鳴しているように思います。「もっと気楽に生きていきたいのに!」というような心の声が「攻略不可 ディプロマシー」という素敵な歌詞を通して、伝わってきますね。

作曲・編曲は山崎真吾さんという方で、私はお初にお目にかかりました。アニメ関連の楽曲に沢山携わっている方のようで、私がちゃんと観たことのあるアニメだと「ヒナまつり」くらいでしょうか。勉強不足で申し訳ございませんが、既に色々書いているようにこの楽曲はとても素晴らしいので、凄い作曲家・編曲家なのだなと思います。簡単ですが、こんなところですね。

 

ベース

とにかくベースがめちゃくちゃカッコイイです。ドラムもピアノもブラスも素敵ですが、何よりこの楽曲ではベースの旨みが半端ないです。誰が弾いてらっしゃるんでしょうか。アプカミでベースのレコーディング映像が配信されることを心より願っております。

 

アンジュルムメンバー・MV

今回はMVもかなり秀逸ですね。モノクロの映像から始まり、背景の無いコンクリート打ちっぱなしの広い空間が楽曲の雰囲気と相まって、とてもお洒落です。冒頭から莉佳子(佐々木莉佳子ちゃん)の激しいダンスも堪能できますし、開始5秒で「好き!」となってしまいます。

そして、ワンコーラス目からかっさー(笠原桃菜ちゃん)が魅せてくれます。甘くとろみのある声質のかっさーをワンコーラス目に持って来たことは大正解ですし、2番のラストでも非常に目立つパートをかっさーが担っているので、私的にこの楽曲は「かっさー」の楽曲だと思っています。ソロショットでは極端な接写を用いており、これもまた良い味を出しています。13歳の頃から大人っぽかったかっさーももう17歳なんですね。何というか時の流れるのは本当に早いものです。ようやくポテンシャルに実年齢が追い付いてきた感がありますね。

好きなポイントとしては、1:00あたりの竹ちゃん(竹内朱莉ちゃん)のくしゃっとした表情、2:31の莉佳子の剽軽なダンディ坂野的な動きが挙げられます。どっちもこの子にしかできない!という個性が弾けているところだと思います。あとは具体的に言葉にするのが難しいのですが、松本わかなちゃんをブランコに乗せた人は天才だと思いますね。何と言うか、超小柄で実際に年齢も13歳とめちゃくちゃ若いわかなちゃんなんですが、ブランコに乗っている姿が「無理して子供っぽさを出してる感」に溢れている気がするんですよね。この楽曲の詩世界に近い境地がこのブランコわかなちゃんからは感じられます。歳のわりにしっかりし過ぎているわかなちゃんが「はいはい。ブランコに乗ってるのが、可愛げあるんでしょう?」と内心では感じていそうで、そこにグッときます。それにしても、指が長かったり、骨格から察するに、わかなちゃんは将来的に背が高くスラっとした美しい女性になりそうですね。タワレコの嶺脇社長が好きなタイプなんじゃないかなぁと勝手に思っています。

そして、衣装がとてもカッコイイですよね。シルエットが美しく、飾りも厭味にならないくらいで非常にスタイリッシュです。最後のC3メロまではモノクロのダンス映像が使われているのでなかなか気づかないのですが、鮮烈な赤の差し色がとてもお洒落で楽曲雰囲気にばっちりハマっています。

ダンスシーンはモノクロがメインですが、私服カットでは色味のはっきりとした映像が使われており、その色使いにも非常にセンスを感じますね。どのカットもかなり好みですが、れらぴ(伊勢鈴蘭ちゃん)の紫色の壁紙にかぼちゃ色のソファ、そして私服衣装の臙脂色の配色が素敵だなぁと思いました。

そんな感じで全体を通して素敵なMVで、観れば観るほどに好きになっていきます。

 

最後に…

久しぶりの楽曲レビューでした。いつも8,000~12,000字近くなるのですが、今回は6,000字未満と比較的コンパクトにまとめられたと思います。

適応障害という病気になってもう半年以上経ちますが、徐々に文章を書くのが下手になっている気がします。というか、今までは兎にも角にも言葉が止まらない感じがあったのですが、その勢いがやや衰えた感じがあります。でも、逆にこれくらいの方が丁度良いのかもしれません。

いずれにせよ、良い文章を書いていきたいものです。

闘病中と言うほどの闘病中ではないのですが、やはり体調はずっと万全でなく、会社に行くのもしんどい状況が続いています。この記事を書いているときは1度復職してからまた再休職が決まった翌日です。体調が優れない中、ハロプロには救われてきましたが、何と言うか感性が鈍っているのか、あまり何をしていても昔ほど楽しめないような気がしています。本能的にあらゆる刺激を恐れているのか、はたまた薬のせいか。そのせいで、ちょっとだけハロプロ熱が下がっている現状がありました。

そんな中、この「愛されルートA or B?」という素敵な楽曲に出会い、また楽曲レビューを書きたいという気持ちになれただけ、今の私は少し幸福なんでしょう。もっと心の底からハロプロを愛せるように、早く病気に打ち勝ちたいと思います。

私の書いたしがない文章が誰かの心に少しでも響けば嬉しい限りです。