霏々

音楽や小説など

TK from 凛として時雨「MAD SAKASAMA TOUR @仙台Rensa 2024.4.21」

TK from 凛として時雨のライブに行ったのは随分と久しぶりで、「egomaniac feedback tour 2021 @東京国際フォーラム ホールA」以来になりました。凛として時雨の方はちょくちょく行っていたんですけどね。昨年末の「Tornado Anniversary 2023 ~15m12cm~@東京ガーデンシアター」も最高でした。当時生活に余裕がなくて記事には起こせませんでしたが。今でもセトリを眺めながら頭の中であの素敵な時間をリフレインしています。ちょっと寄り道になりましたね。

今回のツアーは関東住みにはちょっと辛い開催地でしたね。ツアーファイナルのDOME CITYが平日ということもあり、行ける確約がなかったので、手が届きそうなのは仙台公演でした。仙台Rensaは一回、yonawoのライブでも行ったことがありましたが、あの頃はまだコロナ禍で、椅子が並べられた会場は結構広く感じました。が、今回はオールスタンディングで、ぎゅうぎゅうに人が詰まったフロア。かなりの後列でしたが、思ったよりもステージは近く見え、会場が小さく感じられました。こんな小さな箱で「てけふろ」が観れていいのかしら、ともう待っている間からワクワクが止まりませんでした。

 

少し回り道。

せっかくの仙台小旅行だしなぁ、と色々と計画していたのですが、前日に飲み過ぎて完全な二日酔い。結局、昼過ぎの新幹線に乗って、仙台に着いたのは15時。県立美術館は臨時休業、東北大学植物園も猪の襲来でエリア制限。むう、とGoogleマップとにらめっこした結果、中本誠司現代美術館なる面白そうな個人美術館を見つけました。異郷のバスに30分揺られ、大山カリーナさんという方の個展を観てきました。色彩豊かな絵と、面白い建築空間。あの45,000円の絵……アクリル絵の具で凹凸が際立った、水色の渦の上に銀色のラメの入った絵……綺麗だったな。買えば良かったかな。でも、これからライブだしな。1円も払っていないのにウェルカムドリンクで白ワインと、ワッフルをご馳走になり、満たされた気持ちを携えて、いざRensaへ。

 

 

1.プロローグ

そう言えば、TK from 凛として時雨をライブハウスで観るのは、もしかして2012年のDecember’s Calling@川崎クラブチッタ以来? 新曲の「Fantastic Magic」を聴いて、「なんだ、この曲は!? ファンタスティック・マジックって言ってるのだけはわかる!!」と衝撃を受けた記憶が今も鮮明に残っています。あの頃はまだライブ慣れしてなくて、TKの爆音ギターに耳をやられ、「バンドってこんなバカみたいな音鳴らしてんの?」と驚きましたね。

有名も有名。今やオリジナル曲から楽曲提供、タイアップから何から何までやり尽くして、結構売れているはずなんですが、そんなバンドがこの規模のライブハウスで観られるとは。なんて幸せ。おまけにサポートメンバーが、BOBOさんに吉田一郎さんですからね。ありえん、まじでありえん。ちょびっとだけjizueも齧っているので、片木さんが出ているのも嬉しいです。須原杏さんは……ごめんなさい。個人の活動までは追えていないのですが、よく「てけふろ」のサポートをしていただいているので、もちろん存じ上げてはいます。いつも煌びやかで、ヒヤっとするような旋律をありがとうございます。

せっかくの機会なのでちょっとインタビュー記事も拝見しましたが、クラシックをめちゃくちゃ聴いたり、ライヒが好きだったり、凄い音楽に精通されている方なんですね。まぁ、プロのミュージシャンなんだから当たり前と言えば、当たり前なんでしょうが。

話を「ライブハウス」ってところに戻すと、やっぱり迫力がエグかったですね。もう最初のSEの「kanazawan」ですら、いつもよりジャキジャキっと聴こえて、ぐぐぐとテンションが上がってしまいました。そして、何と言っても低音が突き上げて来る。ベースから受ける迫力がホールとは全然違います。歌声も、全ての音色がすごい生身な感じがして、直接に体を揺すぶられているような感覚になりました。会場の一体感も素敵でした。同じものを好きな人たちが集っている感じがとても良かったです。

またちょっと寄り道をすると、先日渋谷の「SYNCHRONICITY」に参加してきたのですが、そこで「betcover!!」を観て「ちょっとコレはやべぇな」となりました。一緒に行った友達とQUATTROの3列目くらいで「ヤバいの観たー!」と震えていたんですね。友達は「凛として時雨」を聴かないので、なかなか時雨のライブには誘えないのですが、うーん。今回の「てけふろ」に誘えばよかった。やや身内贔屓みたいになってしまいますが、やっぱり時雨も震える。美しい旋律に、ヒステリックな歌声、シャウト。痺れる洪水みたいなギター。これを感じたくて、320km/hの翡翠に乗って来たんですわな。

 

2.雑感

ライブ外のお話が多くなりました。ここからはライブについての雑感。

ライブ全体を通して思ったのは、「春だなぁ」って感じです。不思議と春色のふんわりとした感触を覚える楽曲が多く、それでいて夜桜のような色気もある、と。昔のドラマ「Dr.倫太郎」の初回を思い出します。芸妓の蒼井優が夜桜の中、堺雅人の唇を奪うシーン。なんかあのシーンの鮮烈な色気を思い出しました。あぁ、また話が逸れた。

もうすっかり20℃越えの暑い日が続き、東京では桜もあっという間に散ってしまいましたが、日中に歩いた仙台の郊外にはまだ桜(桜じゃないのかもしれないですが。とにかくピンク色の花)もちらちらと咲いていたりして、気分は不思議と切なく、TK from 凛として時雨の流麗な美しさをたっぷりと感じることができました。また、それがライブハウスのギザギザとした生々しい音像で聴けたのがいいですね。「そこで鳴らしている」感がとてもありました。

あとでセトリに混ぜて書きますが、珍しく「Addictive Dancer」を演奏していましたが、これが凄い嬉しかったです。春、感じちゃいました。「Dramatic Slow Motion」とかは颯爽とした春風を、「copy light」は柔らかく深く春の陽光と冷たい月の光を、「flower」は艶やかな花々を。中盤のこれらの楽曲から特に強く春らしさを感じました。まぁ、梅雨になれば、これらの楽曲から梅雨要素を感じるんでしょうが。TKの楽曲は季節感を名言している楽曲が少ないんですが(「秋の気配~」とか「サディサマ」とかありますけど)、どの季節に聴いても、その季節の空気感を引き出してくれるような気がします。2022年の「DEAD IS ALIVE」も「竜巻いて鮮脳」をテーマにして、あの梅雨のじめっとした季節を感じさせてくれたなぁ。とにかく、この「MAD SAKASAMA」も私の記憶に、「春」として刻まれました。ありがとう。

3.セトリ…というか、ごちゃまぜに。

SEは「kanazawan」。不穏な音像の中で、ドラムだけが何だか楽し気に鳴り響くこのSE。最初にサポートメンバーが出て来て、少し遅れてTKも登場。ひと際大きな歓声が上がります。もう既にこの時点で、高揚感がとてつもない。遠くまで響く、ギターのノイズ。でも、この後には本物のギターの轟音が待っている。そう思うと、居ても立っても居られません。

1曲目はいきなりの「unravel」。あまりにも有名になり過ぎたこの曲は、もはや時雨ファンにとっては前菜にしかなり得ないのか。そんな穿った聴き方をしてみても、やっぱりイントロのギターから渦に飲み込まれ、結局1番の歌い終わりで歓声を上げてしまいます。「unraveling the world」で本日1発目のシャウト。いやぁ、っぱ名曲っしょ。

2曲目は新曲「クジャクジャノマアムアイア」。時代が天上の梁に頭をぶつけたのか、まさかのNHKみんなのうたに採用された本楽曲。歌詞をちゃんと読めば、ちゃんとNHKしているのがわかるのですが、ともすればサイケデリックなこの楽曲。でも、すごいポップなんで、大きなお友達とみんなでワイワイと盛り上がりました。「サカサマ♪サカサマ♪」「マッサカサマ♪マッサカサマ♪」って拳を振り上げます。

3曲目はもう曲が始まる前からのイカレ・ディレイでその楽曲と予見できる「Abnormal trick」。この楽曲、めっちゃ好きなんですよ。いっちゃん、かっこいい。「egomaniac feedback tour」の映像なんて何回観たことか。ラストのギターソロの前に、ドラムのフィルインが入るんですが、ここがなんか三連符っぽい感じで、「うぉ、かっこよ」となった記憶。と、思って普通に「egomaniac~」の映像を確認してみたら、こっちでも普通に三連符でした。ライブハウスで聴いて気づくってことあるよね。もちろんギターソロには間違いなくヤられました。

そして、軽いMCが入った後、ここから怒涛の展開。たぶん、ここからの3曲は私の理想を詰め込んだ感じ。大好きなミドルテンポの楽曲が続きます。

4曲目は、まさかの弾き語りアレンジで始まった「will-ill」。TKの優しい声で歌われる「Transparency」が透明性の極み。歌い終わり、「⤵⤵⤵ ⤵⤵⤵ ⤵⤵⤵」と楽器隊が雪崩れ込んできて、一気に熱量が沸騰するんです(この矢印で伝われ!)。MVも含めて、めちゃくちゃ壮大なこの曲ですが、ライブハウスで聴くと凄いコンパクトにまとまっていて全然違う楽曲に聴こえます。でも、聴きごたえは音源の何十倍か。クレイジーでした。「さかさまにして…さかさまにして…」のところは、ツアータイトルや「クジャクジャ~」にも通じますね。

5曲目が始まる前のピアノの独奏。細切れの音が雰囲気を作っていき、そのまま「鶴の仕返し」のイントロへ。ワタシ、コノ曲、好きアルね。これもまた凄い夜桜感がありました。エロい。バイオリンの背筋をなぞるようなエグいメロディラインは言わずもがなですが、2番のテクニカルなベース、大サビの狂ったようなドラム、これらがライブハウスで聴くとまた凄くカッコイイ。心鷲摑み。TKのハイトーンの畳み掛けも鬼気迫るものがあり、脳が焼き切れそうでした。

6曲目は「Signal」。アニメも大好き。複雑な演奏って感じはしないんですが、シンプルなギターストロークとその音質からなのか、ピアノ、ベース、ドラム、バイオリンの音が総体的にもたらしているのか、この曲からはすごい「湿度」を感じますね。「春雨」って感じです。もちろん食べ物じゃなくて。春の雨、春の嵐。桜の花が散って、アスファルトに貼り付く。今年の東京の春は「Signal」的でした。ギターソロの音はもちろんエグかったんですが、これを弾いているときのTKの表情が凄い苦しそうで、よかった。私が被虐的な女性だったら、ちょっとどうにかなってたかも。

7曲目は「Wonder Palette」。今回のツアーはアルバム「white noise」からの選曲が多めでしたね。明るめの楽曲で、明るい空と桜吹雪を感じさせます。TK楽曲には珍しく結構幸福感強めなんですが、中盤には演奏技術的にエグいポイントも入っていたりして、ライブだとまた音源以上の緊張感があり、良いものを観れました。

8曲目は「copy light」。しっとりと柔らかく、春の暖かさ、夜の冷ややかさ、切ない気持ちを渾然一体として届けてくれるこの曲。確かな演奏技術の上で、音楽を盛り上げながら、TKがほとんど叫ぶようにして歌うこの一瞬。多くは語らずとも心にぐっと来るものがありますね。

9曲目は「Dramatic Slow Motion」。吉田一郎さんがいるので、当然「Reconstructed 2020 ver.」です。中盤のベースソロは圧巻。フロアも熱狂します。にしても、この楽曲って「ドライブ」の楽曲だったんだ、とMVを観る度にハッとさせられます。この曲もなんか颯爽とした感じが、春の心地いい風を想起させますよね。ちょっと浮遊感のある曲調も春らしい。

10曲目は「Fu re te fu re ru」。BPMも速く、攻撃的でありながら、色気もあり、伸びやかなメロディの美しさもある。どの楽器も主役級にカッコ良くて、そして3拍子と4拍子を行ったり来たりする楽曲構成についていける「自分、さすが」ってなる楽曲でもありますね。そしてライブアレンジは相変わらずで、はい、待ってました「ユ・メ・ミ・ル」。夢に出てきちゃう。世界が始まっちゃう。

11曲目は「Addictive Dancer」。こちらもアルバム「white noise」からですが、ライブで演るのは結構珍しくないですか? 少なくとも映像化されているのは観たことがない気がします。でも、この曲ってサビのメロディラインやコード感がすごい好きなんですよね。音源は音が濃密なので、どれくらい音が拾えるのかってので、イヤホン選びで使うことが多いです。ライブでも音源くらいの濃密さを感じることができました。これもとても甘い旋律、音像なので個人的には春らしさ全開です。

12曲目は「flower」。アコギに持ち替えたときは、もしかしたら「dead end complex」演ってくれんじゃないかと期待しましたが、安定の「flower」。嫌じゃない、嫌じゃない。むしろ好きな楽曲なので、演ってくれてよかった。この曲は本当にカッコイイですからね。カラフルな配色、妖艶な雰囲気、熟れ過ぎた春って感じですね。楽器同士の絡み合いがテクニカルでセクシーですし、ギターのフレーズなんか、まるで蔓や花弁が次々と絡みついて来るようですからね。

13曲目は、「皆さんの声を聴かせてください」的な煽りから始まって、「P.S. RED I」。まさか時雨のライブでみんなで歌うことになるとは…!「Oh Oh Oh O O O Oh !」と叫んで、「Break it down !」しました。やっぱこの曲、めっちゃ盛り上がるなー。Cメロの一気に切なさが染み渡っていく展開も良いし、でもやっぱりラストに向けて盛り上がっちゃうのもすごい良い。にしても、みんな声高ぇ!さすが時雨好きな人たちだ!

14曲目は、ラスト「film a moment」。まぁ、これ聴かないとね。てか、普通に演ってくれて嬉しいんですけど。原点にして頂点。厳かであり、神聖であり、魂に触れるような危うさもある。何回聴いても凄い構成の楽曲です。どこかからの引用なんかじゃない、TKにしか作り出せない世界観。この世界に魅せられて、私は凛として時雨が好きなんだよなぁ、と毎回思わせてくれます。本当に、少しずつ、一歩ずつ、楽曲が盛り上がっていくのが凄い。中盤で「film a momet♪」と曲名の歌詞を携えてサビっぽいのが来るけど、それをラストではさらに上回っちゃいますからね。そして、絶頂を迎えた楽曲は静かに幕を下ろしていくんですが、ライブだとここからがクライマックス。轟音とともに照明が世界を焼け尽くすように燦然と光り輝き、全てを薙ぎ払っていきます。

アンコール、まずはTKが出て来て、メンバー紹介。帰って来た堀川さん(BOBOさんの紹介です)。MCは軽くさらっとで、「激しいのいいですか」と煽って始まるアンコール1曲目は「first death」。もう何も考えられない。すげーって思いながら、音楽に身を任せていました。フロアも熱気に浮かれて、私には踊り狂っているように見えましたね。

そして、アンコール2曲目、ラストは2回目の「クジャクジャノマアムアイア」。やっぱりノリやすいですね。この曲は、お祭り気分で皆で拳を振り上げて、祝福すべき1日に手を振り、別れを惜しみ、それでも最後の1秒まで楽しみ切りました。

全体的に春らしさを感じつつ、最後には疾走感に身を委ねて、時雨らしいライブを堪能できました。ありがとうございました。

 

4.エピローグ

日曜日だから早く帰らなきゃ。急いで仙台駅まで戻り、新幹線の切符を購入。一応、自由度を確保しておくために事前には切符を買わないでおいたのですが、これが失敗。席が取れず、立席になってしまいました。新幹線の時間まで10分少々あったので、適当な駅構内の店で牛タン弁当を買ってから乗車。デッキで立ち食いという下品な行いに身を投じました。いつも会社の昼休みに駅前まで歩いて行く道中、弁当を食べながら歩いて来る禿げたおっちゃんを見て、「ああはなりたくないな」と思っていたんですけどね。

それはそれとして、知ってましたか? ライブ会場で新曲の「誰我為」を予約すると、A3クリアポスターが貰えるんですよ。今回の仙台ライブの目的の1つがコレでした。無事自宅まで送迎を終え、今は壁に貼り付けてます。うーん、良い眺めだ。

 

さて、日付を跨ぎました。早く寝ないと。

最近は色んなライブに行って、とても充実してるなぁ。お金も昇天してますが。でもね、心の充実感は何にも代えがたい。こうして文章を書くこともまた、心震える一時です。明日も寝不足背負って、仕事を頑張ろう。