本日、2022年5月28日、ODD Foot Works×toconoma×ニガミ17才のイベントに参加してきました。とても楽しく、感動的だったので、「ライブレポート」とまではいかなくても感想を残しておきたいと思い、ここに雑感を書かせていただきます。
このイベントの名前は無く、出演者3組の名前と日付だけ。あとは素敵なサボテンをモチーフとしたアートワークですね。最初にはっきりと言ってしまいますが、私はtoconomaのファン(ライブはこれで3回目くらい?)で、ODDはほぼ初見、ニガミ17才はYouTubeで有名曲のMVを何曲か程度の感じでした。それでも三者三様…まさにこの言葉がぴったり来る本当に素敵なライブだったと思います。あまり知らないアーティストでも、良い音楽をしていたら楽しめる。そういう感覚を持っている自分が誇らしいとも思えましたね(笑)。まぁ、今回のライブに参加すれば誰でもそう感じていたでしょうが。
知ったきっかけはtoconomaのインスタで。相手がODDということで、ODDのファンの友人を誘いました。この時点では、まだニガミ17才の参戦が決まっていなかったので、「あと1組はだれだろう?」とワクワクしていたわけですが、まさかのニガミ17才でびくり。いったいどんなライブになるのだろう。そして、どういう意図があってのこの組合せなのか。というか、誰が主催したんだ、いったい。そんな期待と不安を抱きながら今日という日を迎えました。
少し話は脱線しますが、一緒にライブに行った友人と今日は丸1日過ごしました。昼は六本木のイタリアンでコースランチ(私はジェノベーゼを頂きました)。2000円弱でお手頃な感じでしたが、前菜の盛り合わせも美味しく、お喋りにも花が咲きました。そう言えば、だいぶ暑い1日でしたね。完全な夏服で出かけましたが、それでもだいぶ汗をかきました。ランチの後は、国立新美術館でメトロポリタン美術館展に行きました。15~19世紀あたりの変遷が時代ごとにまとめられており、勉強になりました。なるほど、ルネサンスというのは、それまでの宗教画(キリスト教)のアンチテーゼであり、ギリシャ文化の再生(ルネサンス)がテーマだったのですね。平坦で浮世離れした質感のある宗教画から次第に細密でリアリスティックなルネサンスのタッチに。そして、最後には私の大好きな19世紀の印象派等の絵画も見ることができ、大満足でした。やっぱりルノワールの色彩感覚は艶やかで幻想的、シスレーは牧歌的で童心に帰らせてくれます(不思議とどこかセンチメンタル)。ゴッホもドガもセザンヌもゴーギャンも、素人ながらにみな特徴があって素敵でした。友人はカラヴァッジョの絵がセクシーだと言っていましたが、確かに中性的な少年(あるいは少女?)の絵はエロかったです。その後、お茶をしながら共通の趣味である、有吉弘行のラジオ(サンデー・ナイト・ドリーマー、通称サンドリ)の話をしたり、これもまた充実した時間でした。
まぁ、これも今日という日のよき思い出ということで。
では、ライブに戻りまして。
ODD Foot Works
ライブ1番手はODD。一応、友人にオススメ曲を教えてもらって事前に一通り聴いていましたが、アーティストの雰囲気が掴めただけで楽曲を覚えるには至りませんでした。事前に聴いた中では「夜の学校」が結構好きでしたね。
今日のライブは5人編成。ボーカルとギターとベースがオリジナルメンバーで、MPCプレイヤーとDJ(という呼び方で良いんですかね?)の2人はサポートメンバーだそう。DJの方とボーカルの人が楽しそうに喋っていたので、ベースの人がサポートメンバーかなと思っていたら違いました(笑)。
音源を聴いた感じでは、カッコ良いけどかなり緻密に心地良いサウンドというイメージがあったのですが、ライブは結構粗削りな感じで勢いがあり、非常に熱量を感じました。今日から?ライブでの歓声がOKになり(ただしもちろんマスクは着用前提、シンガロングはNG)、そのこともあって会場はかなり盛り上がっていました。鋭く歪んだギターの音に、小回りの利くベースラインには演奏者としての確かなこだわりや技術を感じました。そして、ボーカルは低い声でありながらバックサウンドに埋もれることなく、エッジが立ったラップをこれでもかというほどに畳み掛けていましたね。発声もリズム感も確かな力を感じ、友人は「昔はそんなに上手くなかったけど」と言っていましたが、私にはとてもそう思えませんでした。かなりカッコ良かったです。
唯一、今日のライブで微妙な点があったとすれば、それは「客入り」だったのですが、MCではそれすらちょっとしたネタにしていましたね。「その後ろにできた微妙なスペースはサークルモッシュのために空けてんの?」みたいな感じで笑いを誘っていました。パフォーマンスがストイックでハードだった分、このMCで少しフロアの緊張も解けた気がしました。新曲も結構演奏されたみたいで(既存曲すらちゃんとわかっておらず、大変申し訳ございません)、特に最後から2曲目のBPM早めの楽曲は結構好みでした。最後の曲は、何となく私も聴いたことがあって、「N.D.W」という曲だそうです。それまでの楽曲と比較すると、何というか世界観というか、やや抒情的な雰囲気があり、盛り上がりながらもメロディアスでしっとりと胸を熱くしてくれました。
後半のMCで別のライブを告知していたのですが、「即完するんで、早めに」と結構大真面目に言っていたのが印象的でした。パフォーマンスからは何となく「怒り」というか、「気迫」のようなものを感じていたので、そういうファイティングポーズを取り続けるようなスタンスで音楽活動をしているのだと伝わって来て嬉しかったです。まだ30手前という若い人たちでもあるようなので、これからもそのスタンスを崩さず、カッコいい音楽を続けていってほしいなと思いました。
toconoma
こちらは今日の私の本命。楽器のセットが途中なのか、終わったのか、微妙なままぬるっとライブが始まりました。と言っても、MCから。「ストイックなODDの後に、柔和なおじさん達が出て来て…」みたいなMCでクスっと笑いを誘っていました。軽くだらっとしたお喋りから始まり、一通り笑いをさらった後、お馴染みの「Yellow surf」から。演奏しながら喋ったり、ソロ回しも朗らかに、楽しそうにやっているのが印象的でした。歓声OKになったということもあって、ソロ回しで幾度となく歓声を呼び込むパフォーマンスをしてくれたので、会場も一気に和やかで、かつハッピーな雰囲気に包まれました。音楽って楽しい!
先にODDがそのストイックなパフォーマンスで会場を熱してくれていたので、toconomaの砕けた雰囲気が逆によく映えていたように思います。続く「L.S.L」も穏やかで心地良く身体を揺らせました。その後は、「新曲」→「underwarp」→「新曲」→「新曲」という感じだったのですが、ベースソロとラストにかけての音の洪水で間違いなく盛り上がる「underwarp」はもちろんのこと、どの新曲も盛り上がる感じで良かったです。BPM早めで結構テクニカルなフレーズが多用されている曲や、シャッフルビート(というよりは、あれは3連符というイメージが強いか)の曲など、これまでのtoconomaのイメージとはちょっと違う新曲でした。新曲のうち1曲は、「まだ完成していない」らしく、曲名もまだないということでした。ライブでは完成していたように聴こえたのですが、これからまたアレンジがあるのだと思うと楽しみですね。
個人的には「Vermelho Do Sol」が聴けて非常にテンション上がりました(本当は「Evita」も聴きたかったのですが、また今度の機会まで待とうと思います)。toconomaのラテン調の楽曲って盛り上がるし、カッコイイから大好きなんですよね。本日3回目のベースソロも、メンバーから「やり過ぎだよね」と演奏中に野次が飛ぶなど、非常に楽しかったです。ラストはもちろん「relive」。これも間違いなく盛り上がりましたし、一度ブレイクしてからのギター石橋さんの煽りにはもう心を射抜かれましたね。音楽って楽しい、最高!という高揚感を残して、メンバーが退場していったのですが、すぐにキーボードの西川さんが戻って来て、「ちょっと早く始めたじゃないですか。だから、あと5分残ってるらしくて。もう1曲」とまさかの嬉しいサプライズ。本当のラストは「Seesaw」で見事にチルしてくれました。これぞアラフォーの貫禄!素敵!イケおじ!…イケオジとはちょっと違うか笑
ODDの若々しい迸りも最高でしたが、toconomaの「良いおっちゃん達」という雰囲気も良かったです。MCも面白く、互いに笑いながら野次を飛ばし合ったり、冗談を言い合ったり。曲中も演奏にただ集中するのではなく、楽し気にアイコンタクトを交わしたり、マイク越しに喋ったり、伸び伸びとパフォーマンスしている様子になんかこっちまで幸せになりました。とても良い時間でしたね。
ニガミ17才
ニガミのライブは初でしたが、もう初っ端からワクワクさせてくれました。こういう対バンイベントでは珍しく、ステージのカーテンが閉められ、そのまま照明も暗転。ゆっくりカーテンが開いていくと中央には、中国の女の子の例の被り物をした4人が。
KIRINの黄色いビールケースを積んだテーブルで何やらマイムをしていました。もうこの最初の演出で笑ってしまいました。もう本当に、三者三様って感じのステージングであることに、とても嬉しくなりましたね。
「おいしい水」、「ただし、BGM」など私でも知っているような楽曲をやってくれ、「ねこ、にゃん」という歌詞が印象的な「ねこ子」では、あくびさん(シンセのお姉さん)がティッシュ箱からティッシュを抜いて撒くという謎のパフォーマンスを。何となく全体的に、「コミカルなZAZEN BOYSかな」という印象を受けました。もちろん、ちょっとマスロックっぽい楽曲がそう思わせるのかもしれませんが、それ以上に、ギターのキレとベースのエッジの効き方がZAZEN感を感じさせてくれたように思います。
奇天烈で「らしい」楽曲が続いて、途中MCでは「あと5曲なんやけど、5曲のときに言うのって珍しいよね」みたいな面白い関西のお兄ちゃん感が堪りませんでした。ラストの楽曲(調べましたが、たぶん「かわきもの」という楽曲)は5拍子で、結構トリッキーだなと思っていました。が、それ以上に不思議なのが「あと5曲」と言ってから、この曲で5曲目。でも、嫌に5曲目来るのが早くないか、ということでした。ちゃんと時計を見たわけではないけど、明らかに体感でまだ持ち時間はありそうな感じでした。「あと5曲」と言ったときも「早いな」と思いましたが、「まぁ、長い楽曲もあるんだろう」と思っていたのであまり気にしていませんでした。が、これがラストって早すぎないか。
そんな私の懸念を打ち消すがごとく、途中で楽曲がブレイクすると急にMCみたいなのが始まり、「いま最後の楽曲が佳境を迎えてるんやけど、あと12分残ってる」と衝撃の言葉をフロアに投げかけました。もうそこからは「ちょっとZAZEN BOYSみたいなことやってみるわ」と言って「ハッ」と叫んでリズムを取ってみたり、「1,2,3,4」や「しろたま、しろたま(たぶん全音符のこと)」などと矢継ぎ早に捲し立てて、それに合わせてドラムとベースがバチっとフレーズをキメて来たり。さらには、「ドラムの上半身がいま5拍子を叩いていて、下半身が4拍子。ベースも5拍子のフレーズを弾いていて、お客さんが4拍子で手拍子。あくび(シンセのお姉さん)は卓球」と音楽についての講義が始まりました。ちなみに、あくびさんは手にピンポン玉を乗せて、卓球のラケットで素振りをしていました。そして、この素振りは後に明らかになるところによると、3拍子らしいです。そこからはもう4拍子と5拍子をボーカルの掛け声に合わせて行ったり来たり。
そして、そんな曲芸が終わったかと思えば、まだ時間があるとのことで、自分たちがプログレッシブ・ロックというジャンルであることをフロアに同意を求めつつ、今度はそのフレーズをヒップホップにアレンジ。ヒップホップが終わると、今度はフロアのお客さんにリクエストを求め、メタルにアレンジすることを宣言。そして、「メタルでベースソロできる?」「ベース:首を横に振る」「じゃあ、メタルの次はボサノバで。ボサノバでベースソロできる?」「ベース:首を横に振る」「じゃあ、ボサノバの次はロックで。ロックならベースソロできるやろ」「ベース:首を縦に振る」という茶番を挟み、その通りに演奏を実行。メタルもボサノバも最高に盛り上がりました。最後にロックに戻って来て、ベースソロをかました後、またオリジナルの5拍子のフレーズに戻るという圧巻のパフォーマンスを魅せてくれました。
ニガミ、いいじゃん。
そんなことを思わせてくれる、最高に楽しいライブでした。
総括
何度も言いますが、三者三様の素晴らしいライブでした。音楽って楽しいし、最高!
友人がODDを好きだと知っていたから、誘って参加できたイベントでした。なんて奇跡的。友人も非常に楽しんで満足してくれたので、とても良かったです。
こういう楽しくて刺激的な出会いがあるから、対バンやサーキットイベントはやめられないですね!音楽、最高!
あと、O-EASTという会場も良かったです。やっぱりあれくらいの規模感のライブハウスって良いですよね~広くて盛り上がるし、それでいて音もパキっとしている。生々しい感じがあります。歓声がOKになったことをパフォーマーも本当に喜んでいるのが伝わってきましたし、渋谷の街も嫌になるくらいの人込みで(笑)。少しずつだけれど、コロナ前の日常が戻って来ていることを実感して、なんかそういう意味でも嬉しくなりました。
最後に…
体調を崩し、会社もあまり楽しくなく。早く田舎に帰りたいと思う日々ですが、こうやって楽しい日もある。だからまだ都会で頑張ろうと思えているような気がします。無理をしてまで耐え忍ぼうとは思わないけれど、それでも「もう少しだけ頑張ってみよう」と思わせてくれる力が音楽を始め、色々なものには宿っています。そういう微かな光明を辿って、何とか歩いていこうと思ってしまいますね。
高校生の頃、何の気なしに、そこら辺の高校生に混じって、RADWINPSの「閉じた光」を聴いていました。「嫌いになるにはもう少しで 好きになるには程遠くて うまいことできた世界だ」。この歌詞が、なんか響いちゃってます。