霏々

音楽や小説など

アンジュルム「限りあるMoment」レビュー ~音楽理論初心者が楽曲分析してみた~

ANGERME 28thシングル「限りあるMoment」のレビューをさせていただきます。

※なんかYouTuberっぽい副題をつけてしまいました(恥)

 

www.youtube.com

 

コロナの影響もありましてこのところ滞っていたように思う新曲のリリースですが、ハロプロではANGERMEが一足先にその佳境を抜け出した格好になりましたね。

そして、ある意味ではそんな苦難を越えたタイミングでこの「限りあるMoment」というパワーに溢れた楽曲というのは中々心に来るものがありますね。何といっても、ANGERMEらしい「負けん気」みたいなのが伝わって来て良いです。

と、もうコロナ関係の話はこれくらいにしておきましょう。前回のハロコンのライブレポートの方で嫌というほどしてしまいましたからね…(笑)

 

eishiminato.hatenablog.com

 

良かったら読んでください。コロナ禍で再認識したハロプロの素晴らしさについて長々と喋っていますが、きちんとAチームで歌っていた皆のことも書いておりますので…

 

さて、さっそく楽曲レビューに入りたいと思います。久々の楽曲レビューになるような気がしますが、上手くできますでしょうか…?

 

◆ 王道のコード進行と明確なコンセプト

※注釈

私は音楽的には素人同然なわけでして、たまに気が向いたときに手元のギターで簡単なコードを順番に弾く程度しかできません。しかも音感が酷いので、ネットで探して来たコード譜を見ながら弾く感じです。が、この楽曲を聴いたときに、「なんかわかりやすい曲だなぁ」と思ったので、ちょっと頑張ってコード進行くらいは耳コピしてみました。

また、ふとしたときに「コード進行とか音楽理論の勉強をしたいなぁ」と思いながらも、そのハードルの高さにずっと手が出せず敬遠していたのですが、これを機にほんの基礎のところを勉強してみました。勉強の参考にさせていただいた記事を貼らせていただきますね。

 

rittor-music.jp

 

転載記事のタイトルにもある通り、私のような「初心者」にもわかりやすく解説してあり、とても勉強になりました。そして、ほんの少し勉強しただけですが、今回の「限りあるMoment」を分析するにあたって、かなり有用な視点が得られました。せっかく音楽理論の基礎の基礎を学んだので、「演習問題」的な感覚でこの記事を書き進めてみたいと思います。

 

…と、注釈終わりです。が、まとめると、音楽初心者の私でも音楽理論の基礎を元に「何らかの考察」ができるくらいにこの「限りあるMoment」は王道な楽曲であるということを私はこの記事で書き進めるつもりです。本楽曲からは苦難を乗り越え、明るい未来へと何とか辿り着こう!という決意のようなものを感じます。どうしてそういった印象が付与されているのか、その理由を少しでも解き明かせたらと思います。

まずは、以下に楽曲の歌詞と大まかな楽曲構成、小節数、コードを書き出したいと思います。歌詞はMVの字幕から書き写し、そのほかは私なりの解釈でまとめたものです。故に間違いなども沢山あると思いますが、悪しからず…

 

Tempo≒100bmp

theme1(4.4) /Em G Am D/ x2
Wow wow... 何のため生まれてきたの
Wow wow... どんな風に生きればいいの

intro2(2) /Em Em/

A1-1(4.4) /Em ConE C#monE ConE/ x2
間違いもするし 嘘だってつくし
それが人間と誰か言った
もどきにもなれず 雲の上の人
見上げてるだけじゃ惨めだよ

A1-2(4.4) /Em ConE C#monE ConE/ x2
炎上に便乗 批判してる人も
憂さ晴らしで弱さ 隠す
見てる私たちも やろうがやるまいが
悪口言うやつは 言うさ

B1(4.4) /C D Bm7 Em/ C-D Em-Am Bsus4 B/
思うよに生きて それが
ひとつでも いいよ
何か 誰かの役に立てるのなら

C1(4.4.2) /G C Em D/ G C Em-D C-Bm7/ Am D/
限りあるMoment 命ごと輝いて
ありったけ冒険 悲しみも乗り越えて
限りあるMoment 悔いだらけだとしても
前を向き鍛錬 誰かきっと 君のことを
気づくよ

theme2(4.4) /Em G Am D/ x2
Wow wow... 何のため生まれてきたか
Wow wow... いつの日か分かるのだろか

A2(4.4) /Em ConE C#monE ConE/ x2
争いあうくせ 助け合いもして
それが人間の解けない謎
出逢えば別れる宿世だとしても
成し遂げた実感は本物

B2(4.4) /C D Bm7 Em/ C-D Em-Am Bsus4 B/
自分のため生きる それで
誰かにも 勇気
届けられるなら 死ぬ気で生きたい

C2(4.4.2) /G C Em D/ G C Em-D C-Bm7/ Am D/
限りあるMoment 命ごと燃え盛れ
めぐり逢う接点 大切に育てたい
限りあるMoment 熱量で突き進め
諦めず鍛錬 やり抜いたって言い切りたい
それだけ

inter(8.8.1)
/Em Em C C Am Am B B/ Em Em C C Am Am B B/ N.C./

C3(4.4) /G C Em D/ x2
限りあるMoment ささやかなきっかけで
憧れたInnocence 揺るぎない夢になり
限りあるMoment 仲間から受け継いで
背負ってく信念 精一杯繋ぎたい

C4(4.4.2.1) /G C Em D/ G C Em-D C-Bm7/ Am D/ N.C./
限りあるMoment 命ごと燃え盛れ
めぐり逢う接点 大切に育てたい
限りあるMoment 熱量で突き進め
諦めず鍛錬 やり抜いたって言い切りたい
それだけ

theme3(4.4) /Em G Am D/ x2
Wow wow... 何のため生きてくの
Wow wow... 精一杯生きてくだけさ 

 

一応読み方ですが、

「C2(4.4.2) /G C Em D/ G C Em-D C-Bm7/ Am D/」というのは、

f:id:eishiminato:20200724123423p:plain

ということを意味しております。楽譜作成ソフトなどを持っていればいいのでしょうが、とりあえずExcelで代用です…溢れ出る素人感!

 

さて、ここから始めていきますが、本楽曲はGメジャー・スケールで構成される楽曲ということになりましょうか。私が今回勉強したところによると、「C」と「D」という音階的に連続した2コードがメジャー・コード(長調=明るい)ということから、「Gスケール」と特定してみました(この考え方は合っているんですかね?)。サビもGから始まっているし、まぁ、そんなに間違っていないと思います。

そして、さらに転載記事から学んだ、「T:トニック」・「SD:サブドミナント」・「D:ドミナント」の関係性を、当てはめてみると、

f:id:eishiminato:20200724124700p:plain

のようになりますかね。ちなみに、「T」は基準となる音で、「SD」は基準からちょっと外れた音、「D」は基準からかなり外れた音、というような意味合いだそうです。仮に「T⇒T⇒T⇒T」のような流れなら、安定し過ぎて面白味に欠けます。「SD⇒D⇒SD⇒D」のような流れだと、不安定過ぎて聴き心地が気持ち悪くなります。「T⇒SD⇒D⇒T」のような流れは、安定から徐々に外れていき、最後はまた安定に着地するため、展開もあり、聴き心地も良いとされています。

 

f:id:eishiminato:20200724130249p:plain

 

何度も同じような画像を貼り付けて申し訳ございませんが、「T・SD・D」について高低差でグラフ化すると、こんな感じになります。「SD」や「D」は世界がぱっと広がるような感じがある反面、宙ぶらりんで不安定な雰囲気も付与されます。

そう考えると、前半の「G⇒C⇒Em⇒D」という流れは、

「G(T):大地をぐっと踏みしめる感じ」⇒「C(SD):ぱっと光が射し込む」⇒「Em(T):もう一度、足に力を入れ」⇒「D(D):空へと飛び出す」

というような雰囲気に受け取ることもできると思います。

対して後半の「D⇒C⇒Bm7⇒Am⇒D」という流れは、一度飛び上がった空から少しずつ降下して来て、最後は再びダイナミックに空へと羽ばたいていく…みたいな構成になっていることがわかりますね(なお、C2メロの次はまた「トニック(T)」のコードへと戻って行くので、一応点線で下降直線を付け加えています)。サビであるCメロの次はまたテーマに戻って来るわけですが、「SD(サブドミナント)⇒ドミナント(D)⇒トニック(T)」という流れなので、「長い旅路を経てまたここに戻って来たぞ!」というどっしりとした感じが演出されることになります。

また今回のコード進行ではトニックはトニックでも、「G」というメジャー・コード(長調=明るい感じ)から始まっています。これによって、このサビはかなり明るく、光を感じるような雰囲気になっていますね。

 

さて、順番が前後しますが、対する「theme(テーマ)」や「Aメロ」は「Em」というマイナー(短調=暗い感じ)の「トニック(T)」コードから始まっています。これによって、マイナーの「暗い感じ」とトニックの「どっしりとした」雰囲気を感じますね。

まずは「theme」ですが、ここは「Wow wow...」を主軸に、各小節の頭にはっきりとしたリズムが来るため、どこか「行進」をイメージするような力強さを感じますね。「T⇒T⇒SD⇒D」という展開からも、「盛り上げていくぞ!」という意思を感じることができます。掛け声とともに、少しずつこぶしを高く掲げていきたいような気持にさせられます。

次に、「Aメロ」は「Em」という「トニック(T)」コードのみで構成されています。ただし、「E」を基盤としながらも「B⇒C⇒C#⇒B」と組み合わされる音が半音ずつ上がっていくため、どこか不穏な感じが漂っています。コード進行は違うのですが、「ダッダッ・・・・・・」リズムの組み方も相まって、どこかEminemの「Lose Yourself」を彷彿させます(そう感じるのは私だけでしょうか…?)。

 

www.youtube.com

 

泥濘を這いずり回り、辛酸を舐め、胸には煮えたぎるような感情を秘めている…みたいな雰囲気が感じられます。

繰り返しになりますが、テーマとAメロでは「Em」を基準とした「トニック(T)」コードを中心に楽曲を展開させているため、暗く・どっしりとした雰囲気が作り込まれています。特にテーマの方はその中でも「サブドミナント(SD)」や「ドミナント(D)」を使用して展開をもたらしているため、楽曲を印象付ける力強さがありますね。Aメロは今後の展開を期待させるようにコードの展開は微量ですが、「E」という基音を変えずに、不協和音的に展開させているため、フラストレーションを強く感じさせる導入となっております。

 

そして、「Bメロ」へと入ってくるわけですが、ここはJ-POPでも王道のコード進行が用いられています。

「C(SD)⇒D(D)⇒Bm7(T)⇒Em(T)」という展開ですが、最初が「サブドミナント(SD)」から始まるため、頭からどこか余白のある世界に入り込んだ感じがあります。AメロとCメロ(サビ)は「トニック(T)」から始まるため、がっちりとした緊密さがありますが、このBメロは唯一本楽曲において心の余裕というか、何となくリラックスした解放感があるように思います。リズムもどちらかと言えば、響きを重視したような優しい感じになるため、相乗効果がありますね。Bメロの後半は徐々にリズムが立っていき、サビであるCメロへの導入としての役割も担っています。

 

その他、intro(イントロ)やinter(間奏)などもありますが、これまで話してきたことの繰り返しになりそうなので、これくらいにしておきます。

 

さて、ここまでコード進行を追ってきましたが、簡単に総括をしてみると、

theme…行進曲的な力強さ。盛り上がれ、声を上げろ、という感じ。

A…苦難、不穏、やってやるぞという内に秘めた闘志

B…優しさ、迷い、微妙な感情。機微。

C…雲間から光。大地を踏みしめ、空へと羽ばたく。

theme…もう一度、ここから頑張っていこう、という感じ。 

と、楽曲が展開していくことが、およそコード進行からも読み取れます。まぁ、もちろんこういう風な印象を持てるのは、リズムや歌詞、メロディがあるからですが。しかしコード進行も含め、この楽曲のはっきりしたコンセプトによく合致するよう内容が練られていることがわかりました。 練られている、というよりは、「まさに王道!」と言えるコード進行を採用しているという感じでしょうかね? むしろ小細工なしで真っ向勝負してくる感じが、まさにこの楽曲の曲想を体現しているように思います。

 

さて、コード進行ついでに小節数からも楽曲の展開を見てみましょう。

まず最初に目につくのは「Aメロの小節数カット」が見られることです。1番と2番ではAメロの長さが半分になっていますが、これはコード進行も楽曲展開も比較的シンプルな本楽曲において、「中弛み」を防ぐのに一役買っていますね。なお、仮に1番のAメロが2番と同じ短さだったとしても、「中弛み」は起こっていたと思います。大事なのは、いかに「展開を変えるか」ということです。「小節数カット」については、色々な記事で話させていただいておりますが、一番最初に私が記事にしたのはJ=Jの「ひとそれ」ですので、一応紹介させていただきます。

 

eishiminato.hatenablog.com

 

次に、小節数という意味でポイントとなるのは、赤字で書き込んである通り、「inter(間奏)」と「C4(大サビ)」になります。

「inter(8.8.1)/Em Em C C Am Am B B/ Em Em C C Am Am B B/ N.C./」と書きましたが、ずっしり・どっしりとした間奏ではあまり小細工が無いように思われますが、楽曲を劇的にするために「無音」を駆使しているのがすぐにわかると思います。「C3(落ちサビ)」の「限りあるMoment~♪」の部分は、C3頭の小節から前にはみ出すようにして、「inter(間奏)」へと食い込んできています。これは全てのCメロ(サビ)において言えることですが、この山場においては「inter(間奏)」とバッティングしないよう、あえて変則的な「1小節」を設けているのです。無音も活用することで、落ちサビへ向けた期待を煽る効果がありますね。

ただそんなある意味王道とも言える手法に、1つだけ不可解な点があります。

それは、「なぜC3(落ちサビ)の頭をソロ歌唱にしなかったのか?」ということです。これだけ盛り上がる展開を用意しておきながら、1番目立つところでソロ歌唱にしない理由はいったいどこにあるのでしょうか。アイドル楽曲なのですから、せっかく楽曲展開で作った「見せ場」を不意にするのは勿体ないと思うんですよね。「初恋サイダー」の冒頭の鈴木愛理、「Fiesta! Fiesta!」サビの段原瑠々のように、ソロ歌唱というのはアイドルを輝かせるうえで非常に重要なポイントだと思います。なのに、なぜ…?

とわかりやすく前振りをしてみたわけですが、それはもちろん次の展開まで追っていけばよくわかります。

もう1つ楽曲の展開上、重要なポイントとなっているのが、「C4(大サビ)」のラストです。

「C4(4.4.2.1) /G C Em D/ G C Em-D C-Bm7/ Am D/ N.C./」と書きましたが、ここでもまた余計な1小節が付け加えられています。もうさっさと言ってしまいますが、これもまた「無音」を用いての強調が為されていますね。そもそもサビは最初から「トニック(T)⇒サブドミナント(SD)⇒ドミナント(D)」という王道の盛り上がる展開を成り立たせるために、余計に2小節が付与されています。その上さらに、1小節が付け足されているわけです。しかも、「inter(間奏)」のときは「トニック(T)⇒無音⇒C3冒頭トニック(T)」という構成であったのに対して、この「C4」のラストは「T⇒SD⇒D⇒N.C.(無音)⇒theme冒頭トニック(T)」という流れになっているため、「inter(間奏)」以上に盛り上がる展開です。すなわち、本楽曲において最も盛り上がるポイントなわけですよ。

この最も盛り上がるポイントでソロ歌唱を歌っているのは誰か?

はい。「れらたん」もとい「れらぴ」こと、伊勢鈴蘭なわけですね。前回の「全然起き上がれないSUNDAY」に続き、れらぴ礼賛記事となってしまうのは少し不公平な気がしますが、事務所がそういう起用をしているのですから、致し方ない部分があります。

何といってもエグいのが、上述の「inter(間奏)明け」の「C3(落ちサビ)」冒頭も盛り上がるポイントであることは間違いなのにも関わらず、ソロ歌唱にしていないことです。つまり、楽曲を観る上での焦点がぼやけるから、あんなに「見せ場」っぽい「C3」冒頭をあえてソロ歌唱にしていないのです。それだけこの「C4(大サビ)」ラストを使って「れらぴ」を目立たせたかったということになるでしょう。

ここからは無責任な見解になりますが、この楽曲の世界観の主軸とも言える「泥臭さ」「人間臭さ」みたいなものって、現リーダーの「たけちゃん」こと竹内朱莉ちゃんにこそ感じるニュアンスだと思うのですよね。まぁ、彼女の甲高い声がこの楽曲にハマっていないかも…というのもあります。そういう意味で言えば、「かわむー」とか「かみこ」とかも少し合わない部分があるでしょうか。ということで、低く力強い声で言えば、「れらぴ」のほかに「りかこ」や「かっさー」、「ふなっき」という選択肢もあります。声質とか度外視で1番若手になる橋迫の「りんちゃん」を起用するというのもありますね。ただ、その中で選ばれたのが「れらぴ」なわけです。何となく事務所が本気で「れらぴ」を押し始めたのではないか?という気がします…

ま、事務所が誰を押そうが、私たちにはあまり関係のないことでもあります。私たちは私たちの好きだと思う子を推していけば良いのですから。ただ、「加入2年目、16歳の子がグループの中心に据えられ、未来を託される」ということには、ついついワクワクしてしまいますね! お姉さんたちは彼女の成長をサポートしつつ、これからもグループを牽引していって欲しいですし、同世代の子たちは負けじと自分を進化させるきっかけにしてほしいです(別に現時点でれらぴに負けているとか、そういう意味ではないです。単に自分なりの方法と方向性で、アイドルを楽しみながら成長していって欲しいというだけです)。かつての鞘師里保ちゃんがそうであったように、伊勢鈴蘭ちゃんにも様々な苦難があると思いますが、彼女は彼女で与えられたチャンスというか責任の重荷に負けず、何よりも活動を楽しみながらこのかけがえのない貴重な10代を過ごしてほしいですね!

と、話が逸れましたが、そんな事務所の思惑も含め、楽曲の構成をコードと小節数から追ってきました。

 

◆ 歌詞解釈

決してわかりにくい歌詞というのではないので、あえて詳細に解説は不要と思います。各々が各々の人生に照らし合わせ、落とし込むことができる普遍的で素晴らしい歌詞だと思います。なので、ここではレトリック(修辞法)などに注目しながら、つまり文章表現として「素敵だな」と思う部分について話してみます。

 

というわけで、まずは口語表現について。

・何のため(に)生まれてきたの

・見上げて(い)るだけじゃ

・思うよ(う)に生きて

など、全てを抜粋したわけではありませんが、「助詞の省略」、「ら抜き(い抜き)言葉」などかなり口語的な表現が為されています。これによって、「私たちのために同じ目線で歌ってくれている」、「同じ仲間なんだ」みたいな雰囲気が付与されていますね。

対して、かなり書き言葉的な部分もあります。

・命ごと輝いて

・出逢えば別れる宿世(さだめ)だとしても

・実感(おもい)は現実(リアル)

・めぐり逢う接点

などは、普通の日常では使う言葉ではないですし、所謂マンガ的な「ルビ」を用いた手法も取り入れられています。これらは見方によっては固っ苦しく 、お説教臭く感じられるかもしれませんが、上述のように「口語」も混ぜながら使われているため、どこか少年マンガのような「熱い友情」的な温度感へと昇華されています。「敵と書いて(とも)と呼ぶ」的な、アレですね。

再びコロナの話ですが、人類がみな共通の敵に対して、一致団結しなければならない現在の状況を鑑みると、こういった温度感は非常に沁みるものがあります。同様に、SNSに端を発する自殺事件なども続いています。「炎上に便乗~」などの歌詞からは、そういった問題に対する問題提起というか訓戒のようなものも感じることができますね。多義的な歌詞であるので、どうとでも解釈できるところはありますが、間違いなく言えることは、私たちが生きる今の社会がこの歌詞の背景には含まれているということです。ただ普遍的なだけでなく、リアルな実感をこの楽曲から感じられるのは、そういった要素が含まれているからでしょう。

ただ、全体を通して(それはもちろん音楽的な表現も含め)私たちが感じることができるのは、「アイドルとしての生き様」のように思います。特にBメロに顕著ですが、

・思うよに生きて それがひとつでも いいよ 何か 誰かの役に立てるのなら

・自分のため生きる それで誰かにも勇気 届けられるなら 死ぬ気で生きたい

のような「自分が精一杯やることが他者を救い得る」という考え方は、私たちアイドルヲタクがアイドルに求めることそのもののような気がします。ですから、そんな歌を精一杯に歌っている彼女たちの姿を見ると、どうしてか私たちは泣けてくるのですよね。

そして、最後に蛇足的にもう1つだけ。

問題を起こして、謹慎となってしまった太田遥香ちゃん。ANGERMEのメンバーには、できれば彼女のことも想いながら歌って欲しいと私は思います。直接的にはこの楽曲の歌詞には「私たちは仲間だよね」という言葉は出てきません。しかし、「私は精一杯生きていく!」という決意表明のような歌には、決意を同じくする者たちの間に仲間意識をもたらしてくれると思っています。特に、この楽曲の歌詞には、

・誰かきっと 君のことを気づくよ

・出逢えば別れる宿世だとしても

・めぐり逢う接点 大切に育てたい

のような自分だけでない、他者を感じさせる詩も書かれています。ですから、決して孤独ではないんです。

・間違いもするし 嘘だってつくし それが人間と誰か言った

・悪口言うやつは 言うさ

・争いあうくせ 助け合いもして

・仲間から受け継いで 背負ってく信念 精一杯繋ぎたい

この辺りの歌詞は、頭の片隅には太田遥香ちゃんの場所を取っておきながら、歌ってあげて欲しいと心から願っています。

 

◆ MVについて

さて、文字数も嵩みましたが、せっかくなんで「好き!」ってなったポイントを羅列していきたいと思います!いっつも堅苦しい話ばっかりになってしまうので、たまには素直に女の子を愛でましょう!

 

〇衣装部門

・かっさー(笠原桃奈ちゃん)の色味

 上半身は白で統一されている中、彼女の暗い色合いが画面をきゅっと締めてくれているように思います。特に、かっさーの常に年齢を先取りする色っぽさが良く強調されています。「これ」というものは提示しませんが、なんか彼女には他のメンバーにはない「深み」を感じるんですよね。かつてのやなみん(梁川奈々美ちゃん)の影にも近いものを感じていました。

 

eishiminato.hatenablog.com

 

私がやなみんから感じたものに関しては、上の記事を読んでいただければ幸いです。

 

・りんちゃん(橋迫鈴ちゃん)の萌え袖

 ロリコンと言われようと、良いものは良いです。めちゃくちゃキュートです。研修生時代にはサングラスをつけて「まっさらブルージーンズ」をパフォーマンスしていましたが、彼女からはどこかまいまいさん(萩原舞ちゃん)味を感じます。まいまいさんよりは、ちょっぴり悪ガキ感が強いですが(笑)。ちなみに、れらぴもソロショットでは萌え袖してますね(さすがれらぴ系女子)。

 

・かわむー(川村文乃ちゃん)の脚

 言うまでも無いですが、長い!細い!。膨張色の白を使った上半身と対比して、暗色によって引き締められた彼女の脚はもはやゼロスーツサムス。「ゆるふわウェーブボブ」とでも言うんですかね? 髪型も凄い好みです。

 

〇ダンス部門

・印象的なフォーメーションの使い時

 inter(間奏)の輪になってのダンスは、モー娘。の「花が咲く 太陽浴びて」を思い出しました。女の子が手を繋いで輪を作る感じや、身体を反らす感じは、花弁が開くモチーフとして最高だと思います。舞台LILIUMに見るように、年頃の女の子を花に喩え、その儚さと無垢さがぎゅっと詰まった一瞬に芸術性を感じます。また、C3(落ちサビ)の横一列に並ぶところも、「選ばれし者たち」感があって格好いいです。そしてただ格好いいだけでなく、メンバー同士の信頼関係のようなものも透けて見えるような気がするので、シンプルながらも胸が熱くなります。そんなフリを落ちサビに持って来るのも、なかなかニクい演出と思いますね。

 

・りかこ(佐々木莉佳子ちゃん)のバックステップ

 まぁ、もはや改めて言うまでもないですが、りかこのダンスはめっちゃ格好いいです。C1終わりの場面ですが、首から上は正面にびしっと据えられたまま、身体はしなやかにくねらせながら後ろへ下がります。8ビートを叩かせればドラマーのレベルが分かるとよく言いますが、こういう単純に歩くだけのフリでこそ、彼女が段違いのダンスセンスを持っていることがよくわかりますね。

 

・りんちゃん(橋迫鈴ちゃん)のリズムの取り方

 腰でのリズムの取り方がめちゃくちゃ可愛いです。「限りあるMoment~♪」のところで右手を上げながら、腰を横に振ってリズムを取っていますが、あのキュートさはどこから来るのでしょう? 特にC3(落ちサビ)ではよく見えますね。まるで天使の羽が腰についているかの如く軽やかです。衣装部門でノミネートしろよ、という話ですが、ミニスカートと短いソックス、それとダボっとした上着で強調されるか細い脚が、キュートさに拍車をかけている気もします。

 

・溺れそうなふなっき(船木結ちゃん)

 これはともすれば失礼にあたることかもしれませんが、なんか終始ふなっきが溺れそうに見えるんです(笑)。溺れそう…というか、1人だけ足のつかない深さのプールに入れられているというか(そう、別に溺れ顔とかそういうんじゃないですよ! 単に身長のお話です)。1:36秒あたりが一番そうかなぁ、と思うのですが、かみこと比べてもやはり背が小さく、色々な場面で他のメンバーと一緒に映り込むと、画面からぎりぎり顔が出ているみたいな感じになっていて(笑)。あぁ、愛しいなぁ、となってしまいますね。ただ、ダンス自体は「やったるで!」という感じでキレキレなんでめちゃくちゃカッコイイです。ANGERMEではりかこと双璧を為しているんじゃないですかね。

 

〇歌唱、音部門

・ドラムのゴーストノート

 themeやAメロ、Bメロのハイハットに顕著ですが、とにかくハイハットの芸が細かいです。シンプルな打点だけでなく、ゴーストノートをふんだんに用いることで、王道過ぎてともすれば味気なくなりそうな楽曲に、有機的な印象をもたらしてくれています。サビではスネアでゴーストノートを入れ、フィルインもタムを上手く活用し、全体を通してめちゃくちゃ良いドラムを叩いています。そのうちレコーディング映像も出されるんじゃないですかね。というか、絶対に見てみたいです!

 

・かみこ(上國料萌衣)の歌声

 これもりかこのダンスと一緒で、もはや言うまでもないことですね。ですが、やはりA1-1でかみこのソロパート(「それが人間と♪」の部分)が来た瞬間に、「うわぁ、やっぱかみこすげぇ良い声してんなー」となってしまいますよね。「それっがぁ↷」とスタッカートとフォールが駆使されているのも、凄いテクニックと彼女らしさを感じるポイントです。勝手に引用させていただきますが、なぜか下記写真のボア・ハンコック風見下し方式を思い出しました。

 

f:id:eishiminato:20200724163810p:plain

見下し過ぎるかみこ

あと、衣装部門でお話しするのを忘れていましたが、1人中世の貴婦人ばりのフリフリ盛り沢山の衣装も、めちゃくちゃ似合ってますよね。あそこまでガーリーなのを着こなすのは、ANGERMEでもかみこならでは!

 

・ふなっき(船木結ちゃん)の変幻自在な声音

 A1-1の「誰か言った」、C1の「命ごと輝いて」、C3の「ささやかなきっかけで」という3か所を聴き比べれば、もう一目瞭然。どれだけ自在に声音を操っているのだ?と驚愕すること間違いなしです。声優の山寺宏一さんばりの、バリエーション(言い過ぎ? いや、そんなことないですよね?)です。ディレクションが素晴らしい部分もあるでしょうが、だいぶ上の方で私がダラダラと書いたような、楽曲構成上の各パートの意味合いまで理解が及んでいるとさえ思います。まぁ、彼女の場合、それらを天然でできてしまうのでしょうが(つまり、天才ということですね)。彼女の卒業、今からでも取り消していただけないでしょうかね?

 

・たけちゃん(竹内朱莉ちゃん)の安定感

 A1-2において「(悪口言うやつは)言うさ」というパートがありますが、このソロパートはたけちゃんに割り当てられています。楽曲を通して聴いてみればわかりますが、この楽曲の歌唱において最難関はこの「言うさ」だと思います。「ゆ(A)・う(B)・さ(Hi E)」と一気に高いファルセットを出さなければならない部分です。しかし、「さ(Hi E)」の瞬間にも、声の立ち上がりが悪くなるでもなく、弱くなるでもなく、きちんとピッチを安定させ切って歌い上げる芸当は、「さすがたけちゃん!」というところ。モー娘。のフクちゃんもそうですが、ただ単にリーダーという役職を冠しているだけでなく、安定したスキルでグループの大黒柱になっているというところに痺れますね。

 

〇伊勢鈴蘭部門

・伊勢鈴蘭

 まぁ、れらぴ系女子に騙されている人間の一人なので。

 とは言え、別に依怙贔屓しているわけでもなくてですね…上述の通り、本楽曲の一番の見せ場を彼女が射止めているわけですが、本楽曲を俯瞰してみると、やはりどうしても「うん、れらぴがエースってことね」と言わざるを得ない部分があります。良くも悪くも。

 もちろん彼女にはグループのエース的なポジションをやるだけの素質があるとは思います。ビジュアルやメンタリティ、スキルもまぁ申し分ないですし。ただ、あからさまに事務所にエースとしての役割を与えられているように思います。それは、もちろんC4ラストの「それだけ」という1番盛り上がるソロパートを与えられているからというのもあります。が、それだけでなく、楽曲の1番最初と1番最後のソロショットに選ばれているのもまた「れらぴ」なんですよね。ちょっとあからさま過ぎるかな、とも思いますが、しかしそれだけ期待されているということでもあります。

 

www.youtube.com

 

 可愛いですよね…ほんとに。まぁ、エースに据えられるというのは大変なことだとは思いますが、あまり気負い過ぎずに、こういう自然なあざとさが彼女の魅力の1つであることは間違いがないので、自分らしくアイドル活動を楽しんで欲しいです。

 本楽曲ではC4ラストの「それだけ」だけでなく、いくつかソロパートも与えられていますが、何というか風格が出てきましたよね。ビジュアルも極まって来ています。本当に将来が楽しみなメンバーの1人だと思います!!!

 

最後に…

ずっと敬遠してきた「コード進行」について触れてみました。まだまだ不勉強なので、きっといつかこの記事を見返して、自分の未熟さに恥ずかしくなるのだろうなぁ、と思いながらもやはり「演習」というのは必要だと思うのです。

そして、何かを学ぶことの楽しさをまた実感できました。色々と漠然と感じていたことにも、合点がいくこともあり、もっと勉強しよう!と思い直すことができました。

最近は仕事の関係が色々と忙しく、やりたいことがやり切れていない感もありますが、でも少しずつやっていけたら…でないと、何のために仕事をしているんだとなってしまいますからね。仕事は確かに生きがいの1つになり得ますが、私もまた例に漏れず、人生の何分の1かをそれに捧げることしかできません。私の人生には仕事以外にも沢山の要素があるのです。だから「仕事なんてやってらんねぇよ」ともしばしば思うわけですが、落ち着いて考えてみれば、仕事は私の人生においては「潤滑油」みたいなものなのかもしれません。私のやりたいことをやるためには、安定的にお金を稼ぐための仕事が必要なのです。時には面倒になる人間関係もまた、私にはとても良い刺激ですし、私1人では得られないものも沢山与えてくれます。

そんなことがこのところ頭を過り、「不自由の中にこそ自由がある」という言葉に収束していきます。

ありがとう、不自由。