霏々

音楽や小説など

The Star Idol

The Star Idol

 

 素敵な時間というのは、こんな世界にもいくらか存在している。基本スタンスは「あ、私、厭世的なんで」と及び腰で生きてはおりますが、テトリスの真っ直ぐの棒をちょうど良く差し込むように、上手いこと手順を踏むことでその素敵な瞬間は訪れる。ただ、訪れた素敵な瞬間はぱっと消えて、後には何も残らない……なんてこともないと私は信じている。彼ら彼女らがそれを望んでいるだろうから。

 会社勤めをしている身からすれば、たいして痛くもないちょっとばかしのお金と、何とか身を削って捻出しなければならない時間と、それから他者との交流を蹴っ飛ばして孤独に自分の中に積み上げたあれやこれやを持ち寄ることで、その機会を手にすることができる。万人にとって最善ではなくても、私は私という器において最善の美酒をそこに注いでいるという自負がある。だから今日もまた私は最善の行いを為したのだ。神様、見ってるぅ?

 てなわけで、数日かけて溜めた仕事の成果を上手いこと今日に集中砲火し、つまるところはテトリスの真っ直ぐの棒。当初は自信がなかったので、事前にチケットは取れなかったのだけれど、当日券でも入れそうという情報は得ていたから、午前中に仕事の進捗を鑑みて会社のトイレでチケットを購入。ランチのため外に出たついでにコンビニで発券。会場の座席を確認して、「まぁ、そりゃ後ろの方だわな」と満足しているのかがっかりしているのかわからない溜息を漏らす。もう夏の熱気だわね。日傘は便利だ。擦れ違う人の顔を見なくて済む。

 あとは消化試合でしょう。午後はゆったりと残務を片付けていればいいと思っていたのだけれど。私の予報士は当てにならない。結局、何やかやと仕事が降って来て、ギリギリで会社を飛び出した。スコールにご注意。

 私は中高生の頃から女性アイドルが好きだった。映画やドラマに出てくる女性はどこかわざとらしい。でも、アイドルはわざとらしくない。逆に、男性アイドルはどこかわざとらしい。でも、映画やドラマに出てくる男性は色っぽい。全部が全部そういうわけではないのだけれど、ともかく私は女性アイドルがずっと好きだ。それでも二十歳までの数年間は少しだけアイドルから離れて、バンドに傾倒していた時期がある。アイドルを追うことは私の日常になっていたから全くさっぱりというわけではなかったにせよ、好きだった子が卒業したこともあって私のヲタク心は小旅行に出かけていた。けれど、大学生活において全く友達ができず、また誰も私のことを評価してくれなくなり、気が付けば「私の人生って何だったんだ」とありきたりなアイデンティティクライシスを引き起こしていた私は、海外通話料金なんて気にすべくもなく、コロッセオの前で浮かれて剣闘士ポーズを決める私のヲタク心を呼び戻した。

 旅行鞄を床に転がしたまま、汗だくで開いたパソコン画面に映っていたのが、Kだった。

 Kは良い。デビューに向けてひたむきな心持ちを語る彼女に打ちのめされた。世を恨み、私を辛み、逃げ場のなくなった私にとって、彼女は冷たい精神の泥濘を暖める燦燦たる陽光のようであった。そんな彼女を応援し続けた。鬱屈とした大学生生活を終え、さらに社会に出て人生に食傷してからも、彼女を応援し続けた。

 が、そんな彼女も卒業コンサートで(コロナ禍でキャパ制限がかかっているとは言え)武道館を満員にして華々しく旅立っていった。彼女の卒業コンサートは生で見たけれど、あの時は私、適応障害で休職中だったっけかな。そう考えると随分と昔のような、いや、ほんのつい最近という気もするな。

 Kが卒業しても、彼女が所属していたグループは相変わらず応援していたし、K自身のことも追うようにしていた。ちょくちょくコンサートにも顔を出し続けた。それでも心も体も疲れ切っていた私はあまり活動的になれず、自宅から応援することが多めにはなっていたな。けれど、最近の私は元気もりもり躁状態に転換したこともあって、かつ、Kがとても素敵なコンサートをやっているということを知り、今までにはないくらいの頻度で彼女に会いに行けるようになった。

 そのようにして、今日もまた仕事をちゃちゃっと(だいぶ返り血は浴びたけれど)片づけ、彼女に会いに行ったというわけさ。

 ちなみに今日はKが所属していた事務所の別グループの、エース格の子が卒業ライブをやっている。そっちにも行きたかったけれど、チケットは取れずじまい。でも、きっと私よりもその子に会いに行きたいと思う人が沢山いたはず。だから、それはそれでいいんだ。何か別の機会で彼女の卒業コンサートの模様を見ることはできるはずだし。それよりも裏被りしているおかげで、より前の席が取れて、より近くでKを見ることができるということに感謝しよう。なんでも前向きに。ビー・ポジティブ。

 今日の会場のキャパは130人くらいらしい。小規模な劇場だ。言い忘れていたけれど、今日は音楽ライブではなく、演劇なのだ。大掛かりなものではなく、出演者も4人しかいない。しかもそのうち2人はまだ研修生という身分だ。つまり、正式にはまだデビュー前。それでも彼女たちは既にYouTubeチャンネルにも出演しているし、それなりのファンであれば当然の如く彼女たちの名前や顔を知っている。デスノートを持っていれば、その効果を適用できてしまう。では、何を以って、デビュー前と言うのか。通例では、自分あるいは自分が所属しているグループがメジャーレーベルから楽曲を発表することがデビューの定義になるようだった。と、それは大事なことだけれど、今はあまり関係のないこと。

 もう1人の演者は宝塚出身のベテラン女優。私はその方面にあまり詳しくないので、どれくらいのネームバリューがある方なのかよくわかっていない。が、伝統と実力を兼ね備えたその一団の中で活躍してきたのだから凄い人ではあるのだろう。

 そんな3人で脇を固めてもらい、Kはその舞台で主役を務める。

 演劇のあらすじはこうだ。

 Kが演じる主人公は、80年代の売れないアイドル。遅咲きでなかなか人気に火が付かないが、向上心が高く、前向きで誠実。そんな彼女があるとき2024年の現代にタイムスリップして、新しい環境でトップアイドルに登り詰める。と、まぁ、かなりわかりやすい物語の筋ではある。この演劇のために書き下ろされた楽曲も多く、事前情報を加味して総合的に考えれば、おそらくは演劇のほとんどがライブのような体裁になると思われる。コンセプトライブとでも言えばいいのか。ストーリーはあくまで演劇の背骨であり、実質的な血肉はKによる音楽ライブということなのだろう。

 そして、実際に演劇を見てみるとまさに想像した通りだった。うん、良いものを観た。

 普段の音楽ライブとはまた一風変わっていて、Kの演技を観られたのも良かったし、ありきたりではあるのかもしれないけれど、それでも破綻なく綺麗にまとめられたストーリーも楽しめた。普段はソロで活動しているKが、役を通して、あるいは時に役を半分降りながら演者たちと絡むのも楽しく観ることができた。そしてもちろん音楽のパフォーマンスはいつものように素晴らしく、いい塩梅に「役」というフィルターを通して為される歌やダンスはいつもとはまた少し違って観えもした。そういう色々が馴染み深くもあり、同時に新鮮で良い。

 Kに限らず、アイドルに限らず、これまで沢山のライブや演劇を観てきた。本はあまり多読ではないけれど、好きな作品を時間をかけながら繰り返し読んできたし、映画やドラマ、アニメもそうだしバラエティ番組もそう。様々なコンテンツに触れてきたからこそ、こういうタイプのステージをまた面白く観られるのだろう。

 100人規模の小劇場で、かなり近い距離間で、4人の演者という構成で、チープなストーリーと煌めく歌とダンス。これもまた乙ですな。なんの疑いもなくそう思える。

 前に地元のレストラン兼ライブハウスみたいな場所で200人規模くらいのバンドライブを観た。妹が学生時代にサークルでやっていたバンドですらそこのステージに立った経験があるくらいの小規模なステージだ。アンプからの生音。ドラムも生音。めちゃくちゃ良かった。暖房が効き過ぎてて、途中で倒れる人がいたけれど(そんなに激しいバンドじゃないんだよ)、みんなが一体となって素敵な時間と空間と質量だった。

 私は演者との距離が近い、小さな会場がとても好き。Kはもっと売れたい、大きな会場でやりたい、と思っているだろうけれど、でも私はこの距離感も好き。もちろん大きな会場にもそれはそれで良さってものがあるけれど。でも親密さに飢えている私にとってはやっぱり演者の瞳の色が伺えるくらいの距離がいい。

 とはいえ、Kはやっぱり悔しいのだろうか。グループの卒業コンサートだけに限らず、定期的に武道館を満員にできるくらいの集客力はあった彼女だ。そんな彼女が100人規模の劇場で、たった4人で構成された舞台をやるのはどういう気持ちなんだろう。グループ在籍時よりも明らかにビジュアルに磨きをかけ、歌もダンスもレベルアップしたというのに。グループという箱がなければ、私にはもうそんなに価値がないのだろうか。そんな風に思っていやしないか。もちろん演劇というのは、特にKが所属する事務所の場合は、一定の期間同じ会場で平日、休日関係なく連日開演される。しかも休日ともなれば1日に数回公演を行うこともある。だから、1回々々の集客数はあまり多くなくていい。チケット代も結構いい値段だし、元は取れているから興行としては成り立っている。

 結局のところ消費という行為はフェアじゃない。

 室伏広治があれだけの肉体を持ちながらも、ハンマー投げという決してメジャーとは言えない競技に身を置いたために、野球やサッカーであれば何百億と稼げていたはずなのに大損こいとるやん。と、そんな説を唱えた人もいたっけ。Kのビジュアルや歌やダンスのスキル、表現力は明らかに現役グループの子たちを凌駕するものではあるけれど、ソロアイドルというマイナージャンルに挑んでしまったKはもはや正当な評価を受けられないのかもしれない。言い方を変えるなら、関係性やストーリーといったプラス・アルファがなければ現代の消費活動には耐えられないのかもしれない。ただ「上手い」、「凄い」というだけではエンターテイメントとしては足りない時代なのかもしれない。

 私は昭和のアイドルに詳しいわけじゃない。でも、彼女たちはたぶんただ美しい、可愛い、パフォーマンスが素晴らしい、人を惹きつけるカリスマ性がある、という点で評価され、人気を博したのだろう。ソロアイドルとしてやっていくことを選んだKは、幼い頃からそんな昭和アイドルが好きだったという。そんな彼女が今回の演劇では、売れない昭和アイドルが現代にタイムスリップして大人気になる、という筋書きを演じることになった。あるいはこれは彼女の願いなのかもしれない。演劇の中の主人公のように、SNSを駆使して、自分の魅力を発信し続ければ、世界はいつか自分に気づいてくれるだろう、と。

 然れども、然れども。私だってこれだけKのことを愛しているけれど、結局のところ彼女がかつて所属していた一連のプロジェクトが今でも好き。そこにはいくつものグループが存在していて、沢山のメンバーが所属している。誰かが卒業しても、新しい子が入ってくる。伝統と楽曲は継承され、魂も継承され、様々なものが継承され、同時に新陳代謝が起きながら、ずっと進化し続けていく。ある種の永久機関みたいなものなんだ。メンバーの入れ替えによる新陳代謝があるおかげで、メンバー間の関係性やそれぞれの役割のようなものも変わっていき、どこかの残念な企業のように腐っていくこともない。見ていて楽しいんだよね。追っかけがいがあるんだよね。これって画期的なシステムだよね。こういうエンタメを知ってしまったら、もう昭和のアイドルには戻れないかもしれない。

 でも、だからこそ、そんな時代だからこそ、Kの推しがいがあるというもの。ひたすら自分という枠組みと向き合い、自分がやれる最大限に対しストイックに取り組みながら、自分の存続のために必死になっている彼女の姿は闇夜に浮かぶ月のように孤高で美しい。

 Kはずっと道を切り開く先駆者だった。

 昔の話をする。Kのデビュー前。研修生から新しいグループでデビューするというパターンがずっと長い間なかった。そんなときに研修生の中でも注目度の高かったKをエースに据えて新しいグループが発足し、そしてどうにかこうにか苦行のようなライブハウスツアーを乗り越えて、グループは成功と言っていい功績を残した。おかげでライブハウスでのツアーという興行パターンも生まれたし、同時に研修生からの新グループ結成という後続にとって大きな波も作ることができた。またグループで活動しながらソロライブをするという功績も残している。これに続くメンバーはまだ多くはないけれど、今年も後輩メンバーがささやかではあるがソロライブをする予定がある。グループの卒業後は、既に卒業していたメンバーや新しく卒業したメンバーを集めて、夢の競演を実現するライブシリーズも作り上げた。

 今回の演劇も新しい可能性だ。100人程度の小規模な会場で少人数構成での音楽パフォーマンス中心の演劇、という形。グッズ販売でも、抽選形式のオンラインストアと提携したりと、新しい試みに取り組んでいる。こういう様々な取り組みが成功していけば、今までであればグループ卒業後にアイドルを引退するしかない子や、芸能活動を続けるにしてもその活動レベルを下げざるを得ない子が減るかもしれない。そういう販路開拓みたいなことができるのは紛れもなく、Kに実力があるからであり、またグループ時代ほどではないにせよ、きちんと彼女のファンがついてきているという事実があるから。これらの点をもう少しファンは評価していいんじゃないかな。と、贔屓をしてみたり。

 だから、というわけでもないけれど、こういう形態の演劇というか実質的に音楽ライブというか……に参加できたのは結構嬉しいし、素直に良かったなと思える。まぁ、ディナーショーみたいなことをやったり、一人ミュージカルみたいなことをやったりしている子もいるので、Kだけが飛び抜けて特別というのでもないにせよ。それでも、歌とダンスに圧倒的な自信がある彼女だからこそのこういうステージはファンとしてはなかなか観ていて頼もしいと感じる部分が多い。

 役柄と彼女自身の趣味、特技が相まって、やはり昭和アイドルらしい歌い方をさせたら、Kは抜群だ。きゅるきゅるとカールしているような甘い歌声、あるいは楽曲によっては草原を渡る爽やかな風のような歌声。天性のクリスタルボイスは、高音になれば島雲の上を飛び跳ねる天使のよう。それでいて場面によって力強く訴えかけられもするし、霞んで消えゆくようにも魅せられる。Kという輪郭をきちんと持ちながらもその中で七色。彼女のオリジナル楽曲ではより彼女らしく、また演劇のストーリー上、実際の昭和アイドルの楽曲(「時をかける少女」とか「青い珊瑚礁」とか)を歌うこともあったのだけれど、これは明らかに昭和アイドルのDNAを引き継いでいてまた絶品。何よりも彼女が楽しそうなのが私としても嬉しくなってしまう。

 ダンスはあくまで繊細で可憐。緩やかで可愛らしいダンスをしているときですら、もう体に染みついているのか、指先まで神経は研ぎ澄まされている。リズムは的確で、ニュアンスをつける首や肩の角度もどれも彼女らしい、というかアイドルらしい。昭和アイドルの楽曲を歌うときは気持ち柔らかめで曖昧なニュアンス。逆に自分の楽曲ではもっと極端にポップな表現へと。どこをどう切り取っても、彼女がどういう風に見せたいのか、パフォーマンスしたいのかが伝わって来て、とてもとても楽しい。

 けれど、そんなパフォーマンスに魅せられながらも、いつも一番に驚くのは彼女の登場シーン。しかも暗めのステージだとなお驚く。

 なんてったって、彼女は発光している。

 初めて彼女を見たとき……それは彼女がまだ中学校を卒業するよりも前だったけれど、その頃からその輝きは何一つ変わっていない。あぁ、このステージのために心と体と技術を鍛錬してきた人間なんだな、と一目でわかる。凡人とは一線を画す、圧倒的なオーラ。リアリティのなさ。異様とも言えるほどの肌の白さ。凝縮されたような華奢な骨格。そしてなんと言っても黒目の大きさ。深い井戸の底を思わせる、或いはそれは宇宙や銀河といった類か。そんな澄んでいて深い黒い瞳が、彼女が私たちとは違う地平で生きていると錯覚させる。

 彼女がステージに立った瞬間、そういった不思議な感覚に侵される。

 まぁ、「はっ」と息を呑む、ってこと。なんど彼女に会いに来ても、ちょっとびっくりするのですよ。

 色々な面で低予算ではあっただろうその舞台でも、意図的に気合を入れていたところがあって、それは衣装だった。たぶんそうだと思う。普通のアイドルの音楽ライブでも、多くても3ポーズ程度しかないけれど、この1時間程度の短い舞台の中で4ポーズの衣装が用意されていた。どれも彼女の細い脚を映えさせるドレスタイプで、昭和のテイストを宿した黄色い衣装、現代のポップなイメージによく合うピンクを主体としたカラフルな衣装、Kの美しさを際立たせる瀟洒な黒い衣装、そして最後はいかにもアイドルらしいぱっきりとした赤い衣装。どれも少しずつ違った彼女の一面を引き出していた。けれど、私は黒い衣装が凄い好きだったな。ワンポーズごとにウィッグで髪型も変えていたけれど、この黒い衣装のときの髪形も盛れていて好きだったな。

 

 日々の忙しさに、というか季節の変わり目の疲労に苛まれて、椅子に座ってパソコンに向き合うということができなかった。にもかかわらず、文章を書きたい欲みたいなものが溢れていて、いくつも「新しい文書」を立ち上げてみたりもした。書いてみては、疲れて立ち止まり、一から読み返してみるとこれが全然面白くない。深いため息とともに、それを「没」フォルダに放り込む。デリートで白紙に戻す勇気まではないのが私だ。

 気が付けばあの舞台を観てからもう半月が立とうとしている。

 おいおい、感動が薄れちゃいないかい?

 確かに断片は薄れてしまった部分もあるかもしれない。でも、この間、舞台の配信があってそれで復習できたし、YouTubeでKと同時視聴イベントまであったので、2回も復習ができてしまった。そこで得られたいくつかの発見や具体的な情報もあったけれど、基本的には直接舞台を観に行ったあの日のことを思い出しながら書いていきたい。

 といっても、もうだいたいのことは書き終えている。私が言いたいと考えていることは今のところあと1つだけ。

 先にも書いたけれど、やはり何と言っても彼女の美しく、不思議な瞳について。

 彼女は幼い頃からやや釣り目なところがあった。それがコンプレックスで、目じりにテープを貼って矯正したり……みたいなことも昔はやっていたそうだけれど、今でもその釣り目な感じの名残はある。特に伏し目がちになると、彼女は陽気できゅるっとした可愛らしい女の子から、一気にアンニュイな雰囲気を纏った女性へと変貌する。その瞳の在り方はまさに彼女のパフォーマンスと符合しているように私には思える。繊細な心の機微を歌うとき、彼女は目を細めて、冷たい憂いを演出することができる。逆に愛らしさを前面に押し出し、淡い少女の恋心を表したいとき、Kは大きく目を開いて、少しうつむき加減に愛を語らう。目を大きく開いても彼女の大きな黒目のおかげで、むしろ自然で素朴な印象さえ与える。

 さて、喋りたいことはだいたい喋り終えたと思う。書いてみれば、なんてことない。400字詰め原稿用紙1枚分くらいの内容。私の要約能力が熟達しているのか、あるいは私の作文能力が終焉を迎えているのか。まぁ、明言するまでもない。

 

 夏が本格化し、もう一生、熱っちぃ地球を冷ますことはできないんじゃないかと思っていた矢先、帰省先で冷ややかな空気を感じている。昨晩まとまった雨が降って、辺りは鎮痛剤を呑んだみたいに静謐で涼しい。

 音楽をかけながらキーボードをぱたぱた。Kの美しい姿を瞼の裏に思い描いている。都会の喧騒から離れ、こんなしっとりとした涼しい風に身を委ねていると、彼女の凛とした姿ばかりを思い出す。薄暗いステージの中でスポットライトを浴びる彼女は昔からずっと綺麗なままだ。正しい鍛錬を怠りなく続けてきたK。続けられるだけの高潔な精神を持つK。歳月とともに彼女の神聖さは極まっていく。時間はKの味方なのだろう、と思う。

 私は時間とともに腐っていく。日々怠惰に、何かを諦め、その代償に誰にも求められることのない文章を書いて、自らの鬱屈とした想いをお焚き上げしている。その灰は雲となり、雨を降らし、この世界を薄暗いステージにする。そこで輝くKを思い浮かべて、踊り、歌わせる。それだけが私にできる唯一の神聖な祈りかもしれない。

 

 パラグラフを変えてみても、火照った脳みそは大した文章を生み出せない。だから、これくらいで今日も終わりにしようかな。

 次にKに会いに行く予定はまだ立てられていない。でも、また近いうちに必ず。

 Kがステージに立つ限りは応援していくつもりだから。

植村あかり卒業によせて ~卒業コンサート参戦~

2024.6.14(金)に植村あかりちゃんが、ハロー!プロジェクト及びJuice=Juiceを卒業されました。いやぁ、なんと言いますか、心にぽっかりと穴が空いてしまいました。そんな心とは裏腹に今はとてもいい天気。翌日のお昼時です。

 

なんだろう。やっぱり思うのは「1つの時代が終わった」ということですかね。

逆説的に言えば、「新しい時代が始まった」ということになりますし、私も最初はずっとそういう感じで卒業日を待ってはいたんです。後輩も育ち、いい意味でもうあの頃のJuice=Juiceはもういなくて、新しいJuice=Juiceになっていると思っていたので、あーりーが卒業しても何も心配することはないな、という気持ちだったんです。それくらい新しいJuice=Juiceをしっかりと作り上げ、流れに乗せてくれたあーりーは偉大なリーダだったんだと思っていたわけです。

既に新しいJuice=Juiceは立脚し、オリメンがいない不安なんて一抹もなく、むしろ新しい才能がまた新しい景色を見せてくれるとワクワクしてすらいました。もちろんビジュアル・歌唱・ダンス・人間性どれをとっても最高クラスなあーりーがいなくなることはグループとして痛手であるでしょうし、残念なことに変わりはありません。しかし、それを凌駕するほどの期待感というのも後輩メンバーたちは見せてくれています。

だから、卒業コンサートは盛大に送り出してあげるぞー、くらいに思っていたんですが……いやぁ、私の見立てが甘かった。オリメンがいなくなるって、そういうことね。でも、あーりー、最後に素晴らしいものを見せてくれてありがとう。植村あかりちゃんの卒業それ自体もとても心に来るものがあるのですが、やはりラストオリメンの卒業ってのが乗っかってくるとヤバいですね。

 

 

まだどのような構成になるのかも決めていません。考えられていません。ただ、いつものとおり、思い付きでだらだらと喋っていくしか私にできることはありません。

まず喋るべきは、ライブについてですね。このライブ無しでは、植村あかりちゃんの卒業について私には語ることができません。それくらい、この日までは私にはあーりーの卒業についての実感がなかった。というか、残念なことにもう麻痺してました。多くのハロメンの卒業を目にしてきましたし、卒業という形で綺麗に送り出してあげられなかったメンバーも、卒業という名目ではあっても卒業コンサートを開くことができなかったメンバーも、色々な形で沢山の子たちとお別れをしてきました。芸能活動を続ける子、続けない子。もうね、色々と感じてばかりいたら、心が持ちません。

だから、「卒業かぁ。寂しくなるなぁ。卒業後も頑張って生きていってほしいな。残された子たちには、その分がんばってほしいな」とだけ思って、それ以上はあまり考えないようにしていました。何だったら「ハロプロはまだいいよ。楽曲とともに思い出も後輩たちに引き継がれていくから」とさえ、思っていましたね。

でも、実際問題、あんなライブを見せられたら、心に来ないはずがない。うわぁ、私が悪かった。ごめん、もう本当にあの頃の手触りは戻ってこなくなるんだね。私は何もわかってなかった。愚かでした。だから、行かないで……

そう思わせてくれたコンサートについて語ります。

 

卒業コンサートにて

少し日記を挟みます。

このところとてもハードな日々が続いていました。平日の飲み会が多く(と言っても、気心の知れた相手が多かったので、精神的にはそこまで疲弊しなかったわけですが)、また仕事も余計なことに巻き込まれることが多く、メイン業務も量が増えてきました。

愚痴は色々あるんですが、6/14時点で私は結構参ってました。特に6/13は会社のグループ別の送別会があり、まずそこで結構疲れました。嫌な思いもしましたね。そして6/14は全体での送別会だったのですが、これはもうコンサートに行くことを決めたので無理やり出席拒否しました。私のグループが幹事を担当していたのですが、下っ端の私が何の代償もなく出席拒否をできるはずもなく、当日いないにも関わらず周知やら何やらをやることになり……そして当然ながらそのことで「なんで当日いない人が幹事やってるの?」みたいなことを別のグループからは言われ。

結構そういう小さなことで頭を悩ませていたのですが、もう6/14だけは絶対に清々しい気持ちであーりーを送り出すんだと決意していました。疲れ果て、涙が決壊しそうな気分ではいたのですが、あと少しだけ耐えよう、と。そんな中での卒業コンサートでした。

まだ陽の高いうちから会社を出て、武道館へ。送別会のことは先輩たちに任せて(あれだけ色々と事前の仕事はやったんだから、許してくれているはず)。それにしても暑い日でした。今日も暑そうですが。もう夏ですね。

私の席は武道館の2階のX列。そう1番後ろの列ですね。正確にはまだ立見席がありますが、席がある中では1番後ろの席でした。ライブが始まってすぐに熱気が立ち昇っていて、サウナ状態。汗ダラダラでした。ですが、割と正面に近い位置でしたので、視界はよく、肉眼でもパフォーマンスはよく見えましたし、双眼鏡を使えば表情まで見え、当然スクリーンもよく見えました。音響は完璧とは言えないまでも、ちょっと奥まって聴こえるかなくらいで、まずまず充分。照明も臨場感というよりは俯瞰してよく見えるので、何がしたいのか、何が起こっているのかがわかりやすかったですね。昨年末の10周年武道館ライブは、あーりーが言うところのほぼほぼ「勇者席」だったのですが、そこは演者と近いという面白味がありましたね。スクリーンもほぼ見えないので、脇からずっと演者を盗み見していて、たまに近くに来てくれるみたいな楽しみがありました。いずれにせよ、何でも楽しんだもの勝ちですね。今回の最後列も熱気でクラクラしながらも、会場全体の光と熱の折り重なりが体感できる面白い席でした。

 

と、そんなこんなでライブの中身について。

もうね。とりあえずセトリがやばかった。植村あかり監修の意味がよくわかりました。本当にあーりーはJuice=Juiceの当事者として、これまでの歴史をしっかりと紡いできたんだと思わされましたね。あんなに説得力のあるセトリはない。植村あかりの血肉、Juice=Juiceの骨子。それを見せつけられたという感じです。歴史の体現者。そして、このセトリは植村あかりというラストオリメンでしか、もう実感を持っては成しえない。あーりーが卒業した後に、残った後輩たちで同じセットリストをやっても、それではやはりもう説得力がなくなってしまう。あの時代のJuice=Juiceも、この時代のJuice=Juiceも、リアリティを持って体現できるのはやっぱりあーりーしかいないんだな、と思いました。

特にメドレーがエモかったですね。

・天まで登れ!

五月雨美女がさ乱れる

・伊達じゃないよ うちの人生は

辺りは最近ではほとんどやっている印象がなかったので、オリメンのあーりーならでは、という感じがしましたね。特に「天まで登れ!」では会場から笑い声さえ零れ出ていたので、いかに今のJuice=Juiceのイメージからはかけ離れた楽曲かというのが伝わってきました。でも、どこかでみんなこの曲を待ってたんでしょうね。私もなんか胸が熱くなりましたもん。あの最強のオリメンたちがこんなピチピチの楽曲を歌っていたなんて。今ではもうちょっと信じられませんもん。逆に言えば、もう「天まで登れ!」が披露されることはなくなってしまうのかな。これが最後の機会になったかもしれないと思うと、少し寂しいものがあります。

時系列が前後しますが、セトリは初っ端からヤバかったですよね。このところ「わた抱き」はフルでパフォーマンスされることはあまりなかったように思うのですが、今回はフルで。しかも「MEMORIAL EDIT」の方をやってくれました。こっちのアレンジの方が一癖あって私は好きなんですよね。というか、むしろ今のJuice=Juiceっぽいお洒落な雰囲気があるんですよ。だからこそ、そのあとに続く「Borderline」や「トウキョウ・ブラー」とも親和性が高く、とてもいい流れになっていました。でも、この3曲の流れもすごい良いですよね。「Borderline」は名ライブとして語り継がれる「TRIANGROOOVE」の1曲目で、新曲でありながら観客の度肝を抜いたことで有名ですし、「トウキョウ・ブラー」は現在の最新曲の中でも最も都会的でスタイリッシュな楽曲です。もうこの初手の3曲で「Juice=Juiceって昔から今に至るまで洒落たグループやろ」ってわからされましたね。

さらにここに続くのが、「ロマンスの途中」、「好きって言ってよ」、「イジ抱き」とこれまたかなりお洒落で強めの楽曲が来ました。まぁ、オリメンにとってもJuice=Juiceというグループにとっても「ロマンスの途中」は絶対に外せない楽曲ですよね。今回は「10th Juice Ver.」ではなく、オリジナルバージョンをやっていました。よりバンドサウンドっぽい「10th Juice Ver.」も好きなんですが、最近披露する機会も多かったですし、今回はオリジナルバージョンでよかったと思います。「好きって言ってよ」は私がJuice=Juiceの中で1番好きな曲なのですが、この強々のセトリの流れの中で聴けてめちゃくちゃ嬉しかったですね。この曲は本当にシャッフルビートが良く効いた素敵な楽曲なんですよね。もうこの頃には私が立っていたX列はとてつもない熱気になっていましたね。

そして「イジ抱き」ですよ。美楓ちゃん含め、きちんと若手にもパートを与えているにもかかわらず、かなりのクオリティでした。たぶんですけど、「イジ抱き」に関しては音源以上のものをちゃんと聴かせることが難しい楽曲の最高峰ですよね。楽曲自体が結構ウィスパーボイス寄りで、かつリズムもピッチも細かくて難しい。「お・ね・が・い」のところとか、「新しい夜・を」のところとか、ファルセットのコントロールが相当難しそうです。それでも今回のパフォーマンスはかなり隙がなかったですね。それでいて、ただ「正しい」だけでなく、楽曲に重みを乗っけることもできていたように思います。オリメンでも難しかったこの曲をこのクオリティで観られたことがとても嬉しかったですね。そんなある種の試金石的な楽曲ではあるわけですが、これをちゃんとこなせる現メンバーにはもう不安なんてあるわけもありません。

そのままの流れで「おあいこ」でした。この曲に関しては、個人的に色々な思いがあったので、ただの素敵な楽曲ということ以上に、何か胸の中がかき乱されるものがありました。Juice=Juiceメンバーがどうこう、あーりーがどうこう、という問題ではなく、単に私の中での植村あかりちゃんへの向き合い方がフェアだったのかという自問ですね。詳しくは楽曲レビューの記事に譲りますが。

 

eishiminato.hatenablog.com

 

その後、インターバル(衣装チェンジ)で今回のツアーのデュエットコーナーの映像が流れていましたね。本当に毎回違う子と違う楽曲をやって、すべてを受け止め、対応できるあーりーは単純にスキルがすごい。現在のメンバーも相当な猛者揃いだとは思うのですが、全く引けを取らないパフォーマンスが凄すぎました。全公演の映像があるんだったら、どこかで絶対に収録してほしいですね。さくらちが「悲しきヘブン」に挑戦した話とかもかなり胸にグッときましたしね。

そして衣装チェンジをした後は、ツアーのときと少し変わったトレンチコートを着たスタイルに。これもあーりーがデザインしたのかな、しかも「ポツリと」の雰囲気と親和性が高いな、ととても嬉しくなりました。照明やステージ効果も最高でしたね。水滴が落ちた波紋を映し出し、またスモークも焚いて、雰囲気が最高でした。たしか「JuiceFull!!!!!!!」の公演が「ポツリと」スタートだったんでしたっけね。当時「一発目に『ポツリと』なんだ」と結構衝撃を受けた記憶があったので、今回のインターバル明けの「ポツリと」も似たような衝撃を受けました。でもやっぱりいい曲ですよね。あまり激しくないダンスとトレンチコートの相性も良さそうでした。

そして、同じ衣装のまま「愛・愛・傘」へ。これもビックリしましたね。卓偉さん作曲のめちゃくちゃ好きな曲ですが、まさかここで聴けるとは。しかも、傘を持ってのパフォーマンスに、また衣装のトレンチコートが凄い似合うんだ。メンバーカラーの傘というわけではなかったので、あれ?あの子はどこいった?としばらく当惑はしてましたが、、、でも色々と目移りしている分、色んな子の素敵なパフォーマンスを観れてそれもそれでよきかな。優雅なダンスとパステルカラーの傘、そしてお洒落なトレンチコートが最高でした。そんな感じで、なるほど、ビジュアルと演出で魅せるコーナーに入ってきたということなのね。あーりーのプロデュース能力が本当に凄い。しかもその流れで今度は「銀色のテレパシー」。この曲はツアーからやっている曲ですが、ツアーの時からステージに腰掛けて、歌う人の足元がメンバーカラーに光る演出がとても美しく、素敵な空間になっていました。Juice=Juiceってこういうこともできるから凄いですよね。とにかく色んな種類の「お洒落さ」を見せてくれる。本当にレベルが高い。良いグループですよね。

何曲か飛ばして、またメドレーの話に戻りますが、「大人の事情」については言うまでもなくエモいとして、意外と嬉しかったのが「チクタク 私の旬」です。この曲は初代リーダーの宮崎由加ちゃんの甘い声が主役となる曲だと思っています。音楽としても結構リズムがタイトで聴いていて心地いいんですよね。そして、今の今まで気が付かなかった。そうですよ、テーマの部分でバイオリンの振り付けをしていたじゃないですか。てことは、いちかちゃんの出番。リアルタイムで「なるほどなぁ」と頷いておりました。

あーりーって本当によく楽曲のことを見ているなぁ、って何度も思わされました。「チクタク~」はその最たるものの一つではありますが、ちょっと覚えてないくらいには、卒業スピーチでも楽曲名や歌詞を沢山引用していたと思います。例えば、「全部賭けて」という言葉を何回も使っていましたが、これも明らかに「全部賭けてGO!」を意識しての引用でしょうし。まぁ、このセトリを作っている時点で、どれだけJuice=Juiceの楽曲たちと向き合ってきたのかってのは知れますけれど。欲しいところに欲しい曲が来て、それがきちんと意味を持って系統立てられている。個人的には今までのライブで一番しっくり来たセトリだったかもしれない。衣装もとても今のJuice=Juiceに似合ってましたし。あーりー、やっぱり凄い。灰汁の強いオリメンの中でも、自分の「あぁしたい」「こうしたい」「あれができる」「これができる」という視点だけでなく、「どうすべきか」「どうあるべきか」というのがよく見えてるんですよね。そういう個性や強みもあるんだな、とこの歳になって初めて思い至ったかもしれません。まぁ、それだけあーりーのそういう部分が突出していたからなのかもしれませんが。

そしてメドレーを締め括った「アレコレしたい!」も、あーりーが1番好きな曲ということで、納得の1曲でした。「どうして好きなのか」というエピソードも良くて、サビで「クラップ~」と掛け声がかかるのですが、そこで皆が拍手してくれるのが嬉しかったとのこと。特にコロナ禍でそのありがたさに気づき、さらにこの曲が好きになったそうです。あーりーの中でライブというものが、観客との交流に重きを置いているというのが凄い嬉しいですよね。

メドレー後、アンコール前の最後のブロックではもう畳みかけがエグかったですね。どの曲も凄い良かったですが、特に「Fiesta! Fiesta!」はめちゃくちゃ盛り上がっていました。というか、あれだけヲタク達が激しく歌ってたら盛り上がらざるを得ないですよね。「ナイモノラブ」からの「プライド・ブライト」でそもそもがテンション上がりきってましたし。そして勢いそのまま「ひとそれ」。Juice=Juiceの中でも1番売れたと言っても過言ではないこの曲のために、最高の打順で繋いできました。いやぁ、本当に凄かった。ここの流れだけでも、Juice=Juiceの最高火力を出してきた感がありますね。ただ良い曲、っていうんだけでなく、会場を沸かせる、一体にする。そのためのラインナップだったように思います。

それに続く「GIRLS BE AMBITIOUS!」と「Magic of Love」はもう幸福の絶頂。何も言葉で言うべきものはありません。叫んで、拳を振り上げ、そして「ここだよ、りさち」を言うためだけのお時間。あと、元気に「みーふはー♪」と歌っているのを見ると、泣きそうになります。これからも沢山聴かせてください、はい。

 

アンコール。もうね、衣装がね。

かっこ良すぎるだろ。あんなの、あーりーにしか着れねぇよ。だいたいみんな卒業ドレスはふわっとしてて、フリフリっとしてて、甘さとエレガンスのハイブリッドって感じなのに。なんだよ、これ。

すらっとした感じだと、あやちょのが近いのかなと思いましたが、あーりーのはシックというよりもゴージャス。一昔前の良い時代のハリウッド女優って感じがします。ていうか、女神?うん、これは女神だ。なぜか現世に転生した女神だ。美しすぎましたね。なんかヲタク側が「誇らしい」って思える時間でした。

「Brilliance of memories」も素敵な曲ですね。「あかり」という言葉は使わずとも、迷える私達を導く灯台のような、キラキラとしていて眩しくて、同時に儚いけれど、それでも力強い、頼もしい……そんな不思議な魅力のある楽曲です。気が付けば、ありがとうと言いたくなる。いや、ここは「あーりーがとう」か。

 

卒業のお手紙については、ここでは触れないでおきます。あとでもし喋るだけの勇気が私にあったなら、喋ることにします。

 

そして、最後の衣装は初武道館モチーフですかね。純白のスーツっぽい衣装。ニュース記事などで見比べてみると、今回の卒業コンサートの方がスカートだったりガーリーなニュアンスもありますが、佳林ちゃんもブログで触れているくらいなので、かなりそっくりです。こういう演出もさすがの一言です。

楽曲は想像通りというか、どれも名曲揃い。興味深かったのは「WW」の合唱。初武道館のラストと同じだぁ、と思っていたのですが、ヲタク達が思ったよりも歌えていなかったんですよね。たぶんみんな手紙と「続いていくSTORY」の後で泣いていて歌えなかったのかなぁ。でも、初武道館でみんな学んでますからね。歌をやめるタイミングは完璧でした笑

そんな珍しく声の出ていない「WW」だったのですが、メンバー全員からの一言MCが挟まった後の本当のラスト「Goal~」では最高の合唱ができたと思います。あかりんごなんかは号泣していましたし、それにつられて泣いていたヲタも多かったと思いますが(私も泣いてましたし)、でも結局笑顔になっちゃうんですよね。不思議と元気が出てくるというか、前向きな気持ちになっている。なんか「逆に笑わせにかかってる」とかじゃなくて、微笑ましくて、頼もしくて笑顔になっちゃうんですよね。

 

全曲終わった後のダブルアンコールでは、あーりーが会場に手を振っている間、拍手が段々と大きくなっていったり、音楽に合わせて手拍子が始まったり、と珍しい現象が起こっていたように思います。声出しが解禁されているのに、なんでかみんな拍手をしてしまうんですよね。みんながどういう想いで拍手を送っていたのかはわかりませんが、私はもう「あんたは本当によくやったよ」という賞賛と感謝の拍手でした。悲痛な惜別の雄叫びとかではなくて、なんか「マジで最高だよ、あんたは」という気持ちでいっぱいでした。そしてそんなあーりーへの想いを中心にして、「今日も最高のコンサートだった」という、とても当たり前だけれど、何よりも尊い賞賛と感謝の気持ちもありましたね。このコンサートのセトリや演出の中心にあーりーがいたのは言うまでもありませんが、Juice=Juiceのメンバー全員が最高のパフォーマンスを見せてくれました。いやぁ、とても良いコンサートだった。あーりーの卒業ということを抜きにしても。

 

植村あかり、最後のオリメンについて

私には彼女について語る資格がありません。「おあいこ」のレビューの中で書きましたが、私は植村あかりちゃんのことをフェアに評価してこなかったように思うからです。私は宮本佳林ちゃんがずっと好きで、Juice=Juiceを好きになり、オリメンのことはみんなそれぞれの特徴に合わせて「好きだなぁ」と沢山感じてきたわけですが、どうしてか植村あかりちゃんの魅力にはなかなか気が付くことができませんでした。

℃-uteDVDマガジンか何かで迷子になって号泣する姿を見たり、佐藤優樹ちゃんとのCZ2の動画を見たり、ひなフェスにパティスリーとして島村嬉唄ちゃんと「紫陽花アイ愛物語」のパフォーマンスを見たり、インタビューかなんかで島村嬉唄ちゃんと仕草がシンクロする動画を見たり、TRIANGROOOVEでの「メロディーズ」の妖艶なパフォーマンスを見たり、大人っぽい写真集を見たり……まぁ、何かと心を惹かれる瞬間は沢山あったのですが、どうしても私にはわかりやすさが足りなかった。私の推し遍歴を振り返ると、田中れいなさん、宮本佳林ちゃん、松永里愛ちゃんと結構ハードな情熱を持ったエースタイプの子が好きなんですよね。結構どう応援したらいいかがわかりやすい面々なんです。だから、植村あかりちゃんの飄々とした雰囲気に、どう向き合っていけばいいのかがよくわからなかったんです。

でも、(また佳林ちゃんの話で申し訳ないのですが)同期の宮本佳林ちゃんのブログを読んでいて、植村あかりちゃんが「努力を見せない」「成長スピードのエグい子」と評されていて、そこでようやく「あぁ、そうだったよなぁ」と気づきました。もちろん色んなところで書かれていたことですし、冷静になって見れば、あのバケモノみたいなオリメンに囲まれて腐らずにやってきたんだから、そりゃあ凄いに決まっています。しかも、それでいて持ち前の柔らかい人間性は失っていないわけですからね。ストイックになりがちなエリート集団にあって、植村あかりちゃんは他のグループでも類を見ないほどの大らかな性格。それは今のJuice=Juiceの自由な雰囲気を見ればわかります。

だから個性とか特別感が好きな私からしたら、植村あかりちゃんの特徴というのはもっと好きになって然るべきだったんですね。こんな鋭い強みを持っている子なんてほかにいないんだから。

Juice=Juiceのオリジナルの「グループへの愛(初代リーダー宮崎由加ちゃんが言うところの「いつの時代のJuice=Juiceも最高」)」と「パフォーマンスを通じてお客さんと繋がる」という伝統を初期からずっと継承してきた人間であり、かつ、新時代のJuice=Juiceの自由で開放的な雰囲気を作り上げ、そして過去と未来を繋げる最高のコンサートを編成しながら、自分はスタイリッシュな卒業ドレスに身を包む。こんな最強が、こんな近くにいたなんて。

少なくともJuice=Juiceという物語の第一幕は、最後のオリメンである植村あかりによって完成されたんだな、と思いました。

何が「卒業コンサートだからなぁ、今日は盛大に盛り上げて、送り出すぞー」だ。

事情をよく知らない新入社員が、凄い功績を残した会長のご勇退に際し、とりあえず周囲に合わせて乾いた拍手を送るような、「このあとの懇親会って良い店なんすか?」みたいな戯言を言うような、そんな気持ちでいた自分がなんて愚かだこと。いやいや、マジであの人は凄い人だったんだって。普通の人間には、あの人みたいなことはできないんだから、もっと崇め奉って、もっと感謝した方がいいよ。あの人がいなかったら、この会社はとっくになくなってるし、お前だってここにいなかったんだからな。誰でもいいから私にそういう忠告を投げかけてほしかった。

なーんてことを思うくらいには、この最後の数年で、いや数か月で、もっと言えば、この最後のコンサートで植村あかりちゃんに対する気持ちというのをひっくり返されました。

 

でも、これだけは言っておきたいのが、私は最後のオリメンが植村あかりちゃんになったときに特に不安は抱いていなかったということです。後輩が育っていたということも大きな要因の一つですが、植村あかりちゃんなら問題なくやれるだろうな、というのは何となく感じていましたね。人間的に素晴らしいことは滲み出ていて、鈍感な私にもさすがに伝わっていましたし、何よりも魂の強靭さみたいなのは知っていました。菅井先生にベロを引っ張られている映像も見てましたしね。まぁ、それはあくまで具体的な精神の強靭さを示すエピソードであって、私の言いたい魂の強靭さというのはもうちょっと違うかもしれません。

それは220ツアーを乗り越えたことで身についたタフさのようなものが近いのかもしれません。とにかく何があっても動じない。へこたれない。同時に依存的でないのも良いところかもしれません。松永里愛ちゃんなんかは今回のコンサートの最後の一言でも結構Juice=Juiceに対して自分の価値を依存させているような発言をしていましたが、それはそれでエモいんですけれど、やっぱりちょっと心配になっちゃうところで。その点、植村あかりちゃんはJuice=Juiceに対する愛はしっかりとありながらも、そこまで執着というのを見せないようなところがあります。その方が下につく子たちは伸び伸びとやれるのかもしれません。もともと精神的に穏やかで責任感のある子をメンバーにしているから、というのもあると思いますが、大らかにすべてを受け止める度量のある植村あかりちゃんがリーダーであるならば、空中分解したりはしないだろうなという安心感がありましたね。

開祖たる宮崎由加ちゃんもかなりのやり手ではありましたが、残された金澤朋子ちゃんも高木紗友希ちゃんも宮本佳林ちゃんもストイックモンスターでしたからね。植村あかりちゃんがリーダーになったらだいぶJuice=Juiceの雰囲気も変わるだろうなぁとは思っていました。それでも、たぶんその変化は良い方向に行くんだろうな、というイメージもあって。黎明期の背水の陣みたいな雰囲気って、あるところまで行ったらもう取り戻せないし、取り戻す意味もないんですよね。それよりは居心地の良さを引き出すことの方が組織やグループにとっては大事だったりします。そしてまたいつの日か、厳しい時代がやってきたときに、またその時にいるメンバーで頑張ればいいんです。でも、そのときまでは幸せで楽しい時間を、そんな雰囲気を守っていってほしい。そういう転換点に、植村リーダー期はあったんじゃないかと思います。だから、本当にちょうどいい時期だったと思います。

Juice=JuiceのN+1人目のメンバーに私は菅井先生がいると勝手に思っているのですが、少なくともオリメンは植村あかりちゃんも含め、問答無用で菅井先生のレッスンを受けることができたんです。あの熱血で、激しく、強烈なレッスンを。でも、たぶん今のJuice=Juiceメンバーは菅井先生じゃない先生にレッスンを受けている子もいて。そのことは決してマイナスなんではなく、もっと多様性を持って組織を作るという意味で、すごく良いことだと思うんですよね。植村あかりちゃんはそういうことを自然と受け止められ、もちろん咎めるようなことは絶対にしません。「菅井先生のレッスンも受けられないようじゃ、Juice=Juiceの資格はないね」なんてことは絶対に言わないわけです。それが伝わってくるからこそ、良いんですよ。「みんな、自分にあった自分の在り方を見つければいいじゃん」、「私は私の時代。これからはこれから」とできちゃう。

もちろん、これまでのストイックなメンバーだって、誰かを咎めたりはしないと思います。みんな考え方が大人ですからね。でも、ストイック過ぎて怖くなっちゃうかも。少なくとも私だったら。ストイックモンスターたちは、とぼけたり、人見知りで頼りない感じを見せたり、そういう工夫はしていたと思いますが、植村あかりちゃんはストイックではあるけれど、眉間に皺を寄せるタイプではなく、もっと天然で自然に人の心を開かせられる。それが強みだとずっと思っていました。

だからこそ、(本当に申し訳ないことですが)個人的な興味関心はそこまで惹かれていなかったものの、植村あかりちゃんに任せておけば絶対大丈夫という感じはあったんですよね。それが私の植村あかりちゃんに対する、とてもズルくて卑怯な評価のようなものでした。

 

でも、やっぱりこうして文章に書いてみると、「もっと好きになれたんじゃないかな」と思ってしまいます。少なくとも「卒業コンサートのときが1番好きだと感じた」ってのは、やっぱりなんかズルい。し、勿体ないし、不義理。とても「おあいこ」とは言えません。そのことがとても心残りです。

 

最後に…

結局、スピーチの内容については書くことができそうにないです。私は彼女の心を語れるほどには彼女について深い愛を抱けていなそうです。これまで語ってきたのは彼女の心ではなく、あくまでちょっとした歴史やちょっとした人となりについて。彼女がどう思い、どう感じ、どう考えながらアイドル人生を過ごしてきたのかというのは、きっとスピーチの内容に多分に含まれているのでしょうが、だからこそ私には語れそうにないです。

それでも1つだけ。スピーチを聞いて、本当にそうだな、と思ったことを一つ。

あーりー曰く、「Juice=Juiceに入って、自分の笑顔が好きになった」そうです。確かに最初は笑うのが全然上手じゃなかった。不機嫌なのかな、って思ってしまうほどに笑っていなかった印象です。何度も書きますが、あの座間に辿り着けずに℃-uteのお姉さんに抱き着いて号泣していた映像を見て、「あぁ、この子にも感情ってあるんだ」と思ったほどです。

でも、気づけばめちゃくちゃ笑う人になってましたね。それも「美人」ってことを忘れるほどに顔をくしゃくしゃにして。それはアイドルとしての成長でもあったでしょうし、人間としての成長でもあったんじゃないか、と。そのことが本当に嬉しい。あーりーみたいな黙っているだけでも周りにちやほやされる子が、素敵な笑顔を手に入れてくれたこと。そしてそれを手に入れる過程にJuice=Juiceがあったこと。そのことが、自分はJuice=Juiceのことが好きでよかった、と思わせてくれます。誇らしくさえあります。

 

欲を言えばですね……また、あーりーの笑顔を見たいですね。色んな形の人生があると思いますが、色んな形の人生を選べる現代だからこそ、無理に可能性を狭めたりせず、また表舞台に立つ未来を選択してほしいです。大好きな動物関係の仕事をしながらでもいいので。

 

それでは、今回はここらへんで終わりにしようと思います。あーりーがとうございました。

宮本佳林「Spancall」レビュー

2024.5.22に宮本佳林の2ndアルバム「Spancall」が発売されました。

佳林ちゃんはJuice=Juiceでデビューする前の「おじぎでシェイプアップ」に出演していた頃から好きでしたが、本格的に「推そう」と思ったのは「裸の裸の裸のKISS」辺りからだったでしょうか。佳林ちゃんが中学校を卒業する頃、たぶんピンクス&コピンクス!関連のイベントだったような気がするのですが、それに参加して初めて生の佳林ちゃんを観ました。「アレコレしたい!」の赤い衣装を身に纏い、ステージに現れただけで世界が華やかになったことを覚えています。

そこで佳林ちゃんは「お仕事が忙しくて、卒業式の合唱は歌詞を覚えていないので口パクでした」みたいなことを言っていたと思うのですが、そのあとの「ちょっとコピンク*の楽曲歌ってよ」の無茶ぶりに透き通る歌声で応える姿を見て、「プロだ…!」と感動しましたね。卒業式の合唱はできなくても、自分の持ち歌はいつだって歌える。当たり前のことなのかもしれませんが、そのプロとしての当たり前ができる佳林ちゃんはやっぱり凄いと思いました。

それからずっとJuice=Juice在籍時の活動はもちろんのこと、卒業してからも、ソロの活動を追ってきました。ライブも定期的に行ってはいたのですが、昨年の2023年末頃に今回のアルバムにも収録されている「Lonely Bus」のパフォーマンスをM-Line Musicのチャンネルで観てからさらに応援する熱が高まりました。

 

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さらりとした悲哀や孤独感を纏いながら、透き通る高音、しなやかかつ緩急の効いたダンス。このパフォーマンスはちょっと凄いですよね。いわゆる「歌うま」とか「バキバキのダンス」って感じではありませんが、このクオリティのパフォーマンスはそうそうお目にかかれません。唯一無二感もありますよね。でも、ここまで高質なものはきっと現ハロプロメンバーの指標にもなるはず。真似をしろということではありませんが、ここまで丁寧に、そして自分の良さを突き詰めたパフォーマンスがあるのだという事実を知るだけでも何か変わるんじゃないだろうか。そう思わされます。

そんなこともあり、直近のツアー「Hello! Brand new me ~RETURNS~」にも参加し、アルバム発売当日の錦糸町のリリイベにも参加してきました。それぞれ感想も書かせていただいています。そんな感じで佳林熱が高まっているので、今回のアルバムのレビューもとても楽しみでございます。

 

eishiminato.hatenablog.com

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と、前置きが長くなってしまいましたが、アルバムの感想を書いていきますかね。

 

 

アルバム全体について

まずリリイベに行って仕入れた情報ですが、今回の「Spancall」というアルバムタイトルについて。「スパンコール」という言葉は和製英語であり、本場の英語では「Spangle」となるため「Spancall」は佳林ちゃんが考えた造語という位置づけになります。「スパンコール」のキラキラとしたイメージが佳林ちゃんの心を射止めたことはもちろんですが、「Span」は「合間」、「Call」は「呼び出す」という意味から、「日常の色々な合間合間に宮本佳林の音楽を呼び出してほしい」という願いも込められているそうです。

ずっと「キラキラした感じ」の言葉を探していたそうで、当初は星の名前から検討していったということですが、まずは誰もが思いつく「デネブ」とかその辺りを考えたそうです。ただ「デネブ」と来たら、次は「アルタイル」、その次は「ベガ」と夏の大三角形が完成するまで、アルバムのタイトルが決まっちゃいそうで「デネブ」案はやめたということ。それから私は知らなかったのですが、輝度が高く、また光が周期的に脈動することで有名な「ミラ」という星があるそうで、それも候補になったそうなのですが、その脈動というのが星の寿命が尽きる前の現象らしく、いま現在はもう「ミラ」は爆発してないかもしれないらしい…って、そんな星の名前つけちゃっていいのか?とこれも断念。

そして何かの曲のレコーディング中にふと「スパンコール」という言葉が思いついて、レコーディングを終えてブースを出るなり、「スパンコールがいいです……」とスタッフにかけあったそうです。そんな感じで最初はイメージと語感で思いついた言葉だったようですが、言葉の意味を改めて調べる中で「スパンコール」が和製英語であったこと、ただ「Span」+「Call」と当て字をすることで上述のような素敵な意味にもなるということで本決まりになったようですね。

そしてジャケット写真ですが、ピンク色であり、かつ紫色であり、そしてかなり淡い感じ。これも佳林ちゃんの希望だったそうで、ピンクはもちろんコピンク*の色で、紫はもちろんJuice=Juiceのメンバーカラー。と、かなり自分の歴史や好みを詰め込んだエモい出来となっています。

楽曲に関してはあとで細かく見ていきますが、アルバム全体を通して聴いてみると結構いい感じです。語彙力がなくて何が「いい感じ」なのか、上手く言えないんですが、良くも悪くも奇をてらった楽曲がないので、アルバムを通して宮本佳林の世界観がきちんと見えてくるんですよね。とにかく佳林ちゃんが無理をしていない。佳林ちゃんに似合わない曲がない。だからこちらも自然体で何度も繰り返し聴くことができる。オケも比較的キラキラとした感じが強く、佳林ちゃんが歌う前提で上手く構築されている印象があります。

そんな中で「C\C(シンデレラ\コンプレックス)'24」だけは異色で、アルバム全体をカチッと締めている感じがありますかね。まぁ、この辺はもはや血に染みついているので、特に違和感があるというほどのものでもないです。「やっぱ曲が強いよなぁ」って感じですかね。

と、ざっくりとはそんな感じでございます。私が佳林ちゃんを好きなことは大前提として、それでも同じアルバムを繰り返し(途中の曲を飛ばしたりせずに)聴けるのはかなり嬉しいことです。Juice=Juiceの「terzo」というアルバムを聴いたときにも思ったのですが、意外とアップフロントという事務所はトータルコーディネートが上手いんですよね。TikTokやShort動画とかで1曲がさらに分割されている現代において、アルバム1枚の力をちゃんと信じていると言いますか。1枚を通しで何度も聴ける良いアルバムに出会うと嬉しくなりますね。

 

01. ポラリス・コンパス

さて1曲ずつ簡単に書いていきます。こちらの曲はMVも公開されていますね。

 

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言わずとも知れているでしょうが、コピンク*のチームが再結集して制作されたこの楽曲。相変わらず宇宙や星の煌めきがテーマとしてあり、柔らかくキラキラとして、儚い夢を見させてくれるような音像です。コピンク*の楽曲も、私は暖かく優しさを感じるドラムの音がとても好きで。特にスネアの音が素敵なんですが、今回は落ちサビでそのスネアのロールが入っており、急がないと消えてしまう流れ星の煌めきを追いかけるような、そんな淡く切ない焦燥感のようなものを強く感じさせてくれます。

ポラリス(=北極星)が私にとってのコンパスだったから、羅針盤なんていらなかった。そんなテーマの歌詞ですが、とにかくどの一文を切り取っても美しい。そしてコピンク*のイメージがそうなのか、佳林ちゃんのイメージがそうなのか、なぜか不思議と佳林ちゃんは「ひとりで夢を追いかける」という感じが似合ってしまうんですよね。仲間と手を繋いで、みんなで大きな夢を叶えるんだ!って感じじゃなくて。「私には揺るぎない信念と目標があるの。苦しいし、怖いし、寂しいときもあるけど、それでも輝かしい目的地へと向かって…」みたいな、そういう健気で切ない、夢追い人のようなスタンスがしっくりくる。佳林ちゃんの歌声には誰をも寄せ付けないような清廉な部分がありますが、それが歌詞に説得力を持たせているようにも聞こえます。

柔らかく、可愛く、愛らしく、それでいて清純で決して媚を売っているわけではない、心からの天使の歌声。低音部も多用される高音部も、どの瞬間を切り取っても「これぞ!コピンクちゃん!」という素敵な歌声ですよね。でも、確かにあの頃よりもちゃんと大人びている。でも、あの頃に見ていた夢を今もちゃんと追っている。そのバランス感覚がすごい。いやぁ、いい曲ですねぇ。ちょっと喋りすぎました。

 

02. ソリスト・ダンス

この曲はとにかくライブでのコールが楽しい。ライブ動画も上がっていますが、ヲタ=かりん党員の声も割とちゃんと聞こえていますね。さすがに音が絞られていますが、それでも声の厚みは感じられるはず…!

 

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周りの目なんて気にせず、誰かに褒められたいとかそういうんじゃなく、ただただ自分が踊りたいように、独りでも思いっきり踊ろうよ。と、そんな曲なんですが、ライブでは1番一体感が生まれるんですよね。ツアーでも最後の曲として披露されていました。各々はソリストであるかもしれないけれど、各々が自分の好きなものを一生懸命好きにやることによって、結果的に一体感が生まれるという不思議な現象がこの楽曲では発生します。それがなんだか毎回面白いんですよね。

この歌詞も「ポラリス・コンパス」同様に、たとえひとりになっても私らしくありたいという佳林ちゃんを彷彿とさせるのですが、もう少しみんなに呼びかける感じがありますね。決して「一緒に踊ろう」ではないんですが、「みんなも自分らしく踊ればいいんだよ」と言ってくれている気がします。どんなときも自分らしくあるための努力を惜しまなかった佳林ちゃんが歌ってくれるから私たちも一生懸命踊ろうと思える。そんな勇気を貰える素敵な楽曲です。

 

03. バンビーナ・バンビーノ

こちらの楽曲もMVが公開されています。元気が出るノリの良い楽曲です。

 

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本当は弱い乙女だから、甘えさせて、優しくして、褒めまくってよーって歌詞ではあるんですが、楽曲自体はあくまでハイテンションなので、「褒めてもらえなくても、もう踊っちゃうもんね!」感もちょっとあったりしますかね。2番頭のラップもインストも併せてかなり面白い音像になっていますし、それ以外の部分は終始アップテンポでノリノリ、そしてなんと言っても「Na na na na na na na♪ バンビーナ♪ バンビーノ♪」のところが気持ち良すぎる。なのでおそらくは人気も高く、佳林ちゃんのYouTubeチャンネルでも2024.5.26時点では2番目の再生回数となっています。

 

04. アンフェアな事情

この楽曲もライブ映像がYouTubeに上がっていますが、私、この横浜公演を観に行っていたんですよね。こういうの、ちょっと嬉しいですよね。

 

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「イイオンナごっこ」、「Lonely Bus」とばっちり歌って踊る大変な楽曲が続いた後で、この「アンフェアな事情」が披露されたのですが、結構息が上がっていて大変そうでしたね。サビで「Oh my got」と「It's all my love」のコールも入るので、結構盛り上がります。

マイナー調でカッコイイ感じ、そして2分50秒というかなり短く、きゅっとした楽曲でもあるので聴きやすいです。圧強めで色気を含んだ佳林ちゃんの声が堪能できますが、よくよく音源を聴いてみると、本当に歌が上手いなぁと思わされます。色々な声音を使い分けていますし、低めの太い声もありながら、張り上げる声なんかにはいかにも佳林ちゃんっぽいしゃくりあげも加えられて、「あぁ、これこれ。こういう歌も似合うんだよなぁ」と思わされます。

 

05. BAD

こちらもカッコイイ感じの楽曲で、「アンフェアな事情」からの流れがとても良いです。この2連で「あぁ、良いアルバムだなぁ」とまず思わせてくれます。ライブ映像も上がっています。

 

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このライブ映像の衣装、ヘアスタイリング、とっても好きです。が、ライブ映像の話は一旦ここまで。

音源についてですが、まず冒頭の「I like you like you!」がとても可愛い。そして途中に差し込まれる「…残念」や「文句ある?」も可愛い。それからサビの「BAD GIRL」の発音が特徴的で、これも可愛い。ノリが良くて、聴いていてとても楽しい楽曲ではあるんですが、そういう要所要所に佳林ちゃんの素敵なお声が入っているので、巻き戻しながら何度も聴きたくなるようなそんな楽曲です。今回のアルバムの中でも好きなランキングかなり上位に入りますね。

 

06. レインステーション

この曲はツアーやYouTubeでもまだ公開されていない楽曲でしょうか。アルバムを購入して初めて聴きましたが、ちょっとダウナーな感じで素敵ですね。こういう楽曲があるからアルバムとしての幅が広がって本当に助かります。

結構ベースの低音がエグい音をしていて、かつあまり装飾的過ぎないスタイリッシュな音像が素敵だなぁと思っていて、作曲・編曲のところを見たらKarrinatorさんの名前が。「あれ、どなたでしたっけ」と調べてみたら、OCHA NORMAの「Peek a Boo」を作った方でした。あぁ、それで見たことあったんだ。あの曲も好きなんだよなぁ。

歌詞も西野蒟蒻さんで、「レインステーション」というテーマに対して、的確に素敵な失恋の詩が書かれていて、佳林ちゃんの表現力をいかんなく引き出してくれています。「1、このままか 2、変わるのか」というのが音にもハマりつつ、歌詞表現ではなかなか見ない形なのでそこもお洒落です。特に「2(トゥ)」のところが、佳林ちゃんの歌い方でよく「る」が「とぅ」に聴こえる現象を逆側から攻めているみたいでなんか好きです。

「アンフェアな事情」→「BAD」→「レインステーション」とマイナー調の楽曲が続いていますが、どれも私好みの楽曲で、うおぉぉおぉぉ良いアルバム!となりますね。

 

07. Love Gravity

こちらもアルバム以外では未公開の楽曲ですかね。こちらもマイナー調でありながらも、ノリが良くて、ついつい踊りだしたくなるような楽曲です。一昔前で言うところの「ダンスナンバー」という感じがします(今はもっとバキバキのEDMのことをダンスナンバーと言うんでしょうか)。

ブラスとかも贅沢に使われていて、結構ファンキッシュな仕上がりに。デビュー前からハロプロの最終兵器と言われていた佳林ちゃんがこういう楽曲を歌いこなせないわけもなく。「真っ赤なリンゴが落ちるように」という歌詞がありますが、何となくの楽曲の色味も相まって、不思議とJuice=Juiceの「プラトニック・プラネット」を彷彿とさせます。また、サビの頭で「Hold me tight !」とか「Through the night !」とか掛け声が入るのですが、ここの佳林ちゃんの放り投げ感がとても素敵。なんとなくここでジャンプする光景が目に浮かびますね。ぜひ、ライブで観てみたい楽曲です。盛り上がりそう!

 

08. パラレルハート

こちらも最早佳林ちゃんのライブには欠かせない楽曲という感じになりましたね。柔らかく佳林ちゃんの透明感のある歌声を活かす可愛目の楽曲であり、なんと言っても長いセリフパートが3回もあります。なんて贅沢。ライブ映像もありますね。

 

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こういう楽曲をしっかりと歌えるのが、佳林ちゃんがアイドルとして強いところですよね。そしてこういう楽曲でしか摂取できない栄養分というのも確かに存在していて。ってことは、やっぱり佳林ちゃんを追うしかないってことになります。

アルバムの曲順的には、ずっとマイナー調の楽曲が続いていたところだったので、急にほんわかきゅるきゅるタイプの楽曲になり、ちょっと「おっ」とびっくりした部分もありました。この次が「Lonely Bus」でまたマイナー調なんで、あえてここに入れる理由ってなんだろう、と考えたのですが、全体の楽曲のバランスを見ると確かにここかもしれない…と思いました。というか、あまりにもアイドル味が強いので、前半過ぎても後半過ぎても、アルバムの印象がかなりアイドルっぽくなってしまう気がします。なので、中盤のマイナー調が続くところで「お口直し」的にこの佳林ちゃんのアイドルボイスを堪能するというのが1番良いやり方なのかもしれませんね。

この甘く爽やかな味わいがあるからこそ、佳林ちゃんが好きなんだよなぁ。

 

09. Lonely Bus

この曲は結構私の中では随一です。佳林熱がさらに高まったきっかけでもありますし。それに何と言っても制作陣が強すぎる…大森祥子さん、星部ショウさん、大久保薫さんですからね。

 

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佳林ちゃんの伸びやかな高音と、抒情的なメロディ。それを結構バキバキで細かい跳ねるようなリズムのトラックで支える。特にベースラインはかなり細かくてカッコイイですね。音色も豪華で、力強いのですが、どの音も繊細で佳林ちゃんの声を邪魔しない。本当に素敵な楽曲です。

歌詞は、「孤独な夜行バス」というテーマを見事に体現した、シンプルではありながらも、悲しみと前向きとが共存したまさに佳林ちゃんが得意とするところという感じです。か弱い乙女が悲恋を歌うみたいなのは佳林ちゃんのパフォーマンスにおける醍醐味でありますし、同時に佳林ちゃんの中にはストイックに自分を高め続けるところもあります。だから悲しみを纏いながらも、新しい明日に向けて歩んでいく……それこそがまさに宮本佳林が歌うべき詩だと思うのです。

少しだけ脱線すると、最近発表されたJuice=Juiceの新曲の「トウキョウ・ブラー」でも似たようなテーマについて語りました。Juice=Juiceに合う曲だなぁ、と思ったのですが、それもそうか。このテーマは佳林ちゃんに合ってたんですもの。Juice=Juiceに合わないわけがないか。もしよろしければ、そちらの記事も読んでいただければ嬉しいです。

eishiminato.hatenablog.com

 

それにしても、

与えてもらうよりも与える人に

愛を変わらず備え持った人に

なれなきゃ意味がないよね

という歌詞が好きすぎます。短い落ちサビで歌われているのもとても好き。これぞ佳林ちゃんって感じなんですよね。

 

10. C\C(シンデレラ\コンプレックス)'24 宮本佳林 Solo Ver.

とてつもなく長い曲名になってはいますが、みんな大好き「シンデレラ・コンプレックス」です。この曲だけはどう捉えるべきか……とても難しく。一応、原曲のMVでも貼っておきますか。

 

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どなたかのコメントで「ゆうかりんの声が甘すぎて血糖値スパイク起こすわ」というのが好きだったのですが、なんていうかこの頃は私も思春期で大人の色気と同世代のゆうかりんの可愛さに悶々としておりました。とは言え、やっぱりこの三連符まみれのオシャな音楽に「かっけぇー」となっていたのが一番の思い出ではありますか。

とにかく曲が強い。そして、よりダークに洗練されたアレンジになったのが、SIOOMの'24 Ver.です。そりゃあ、もう強すぎますよ。感慨深いというのもありますしね。ただ、楽曲が強すぎるうえ、曲の性質上コーラスを重ねまくっているので(しかも佳林ちゃんだけのコーラスではなく、SIOOMのコーラスです)、「宮本佳林を堪能する一曲」という風にはなっていませんね。この楽曲以外がどちらかと言えば、音楽それ自体よりは宮本佳林を一面に押し出しているので、そういう意味ではちょっと風合いが異なります。

けれど、こればっかりはもう佳林ちゃんがレジェンドハロメンの1人になったということをまずは喜ばねば。だって、あの「シンデレラ・コンプレックス」をソロバージョンで、自分のアルバムに入れられるんですよ? そんなことってあります? 色々なタイミングやチャンスがびたっとハマった結果と言えばそうなんですが、それにしても、「シンデレラ・コンプレックス」を自分のアルバムに入れられるなんて。何回も言いますが、そんなことってあります?

もうそれだけで「すっげぇ!」と思います。

 

11. ヴァンパイア

言わずと知れたボカロPの名手、DECO*27さんの楽曲のカバーです。ボカロ界隈にあまり造形のない私でも知っている超有名P。ですが、ちゃんとは追えてなかったので、佳林ちゃんのおかげで出会えた素敵な楽曲です(私のボカロ音楽は、ころn…宮助エージェントゆゆこの歌う「脳漿炸裂ガール」で止まっている……)。

 

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この曲は佳林ちゃんが大好きだということもあって、さすがに体重が乗っていて素晴らしい出来ですね。ハロプロ歌唱の中でも、佳林ちゃんはまた結構特殊な歌い方だと思うんですが、こういうメロディラインがしっかり目の楽曲にはめちゃくちゃ合いますね。気怠く雰囲気重視で歌う系の楽曲が割と流行りがちな昨今において、ボカロに歌わすことが前提で作られた楽曲はやはりメロディラインで魅せなくてはならないのか、発生からしっかりと表現まで学んでいるハロプロとは相性がいいのかもしれませんね。

キャラクター降ろせる佳林ちゃんにとって、この「ヴァンパイア」は能力をフルスロットルで注げる楽曲なのでしょう。音域も低いところからめちゃくちゃ高いところまでありますが、1番高いところではミックスで、その次に高いところではあえてファルセットを使ったりと、本当に多彩な発声ができる佳林ちゃんの凄味を感じます。高速ラップももうお手の物って感じです。まぁ、コピンク*の「兎 to come」からやってはいるんですけどね。

そんなキャラ降ろしも含めて、佳林ちゃんの曲芸が堪能できる1曲です。とっても好き。これからも大好きなボカロ楽曲をどんどんカバーしてほしい!

 

12. 愛しあわなきゃもったいない!

この楽曲はアルバム終盤に相応しい、多幸感溢れる楽曲になっています。ライブ映像もM-Line Musicに先日アップされましたね。

 

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この曲の振り付けは佳林ちゃんが自分で考えたそうで、特にサビの手を左右に振るところはちょっとこだわりがあるようで、「普通に右・左・右・左ってならないところが、ハロプロっぽいでしょ?」と喜んで仰っていました。振りについていけずに戸惑っているヲタを見て喜んでいる佳林ちゃんを見て、ヲタは喜んでおります。にしても、この衣装めちゃくちゃ可愛いんだよなー。

楽曲に関して言えば、サビこそ手を振れるくらいわかりやすいリズムですが、意外とAメロとかは裏のリズムが多くて、かっこいいサウンドになっていますね。間奏もかなりお洒落で、なんかちょっと西遊記を感じさせます。西遊記っていうか、「モンキー・マジック」を感じさせます。んー、これって私だけの感覚かもですが。使っているシンセの感じが似ているだけですかね。余計なことを書いてしまいました。

 

13. Beautiful Song

そして、ラストは疾走感溢れるこの曲。

 

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サビの8ビートは本当に走っているかのように、青春を感じさせます。歌詞の世界も真面目に不器用に懸命にひた走る佳林ちゃんらしい内容になっていますね。大きく腕を回しながらこの曲を歌う佳林ちゃんがもう尊くて。純潔過ぎて切ない。

そして、これがこのアルバムを通して1番言いたかったことかもしれないのですが。アルバムをリピートで聴いていると、このラストの「Beautiful Song」から「ポラリス・コンパス」の繋ぎが本当に凄いんですよ。「ポラリス・コンパス」のイントロだけ聴いていると、「あれ?また『Beautiful Song』が始まった?」ってくらい地続きの世界観、そして音色で。でも、そのまま聞き続けていると、世界が「ポラリス・コンパス」になっているんですよね。本当に不思議。昔懐かしき「アハ体験」的な。

この仕掛けのせいで、アルバムを無限ループしてしまうんですよね。いつまでも終わらない。そう、いつまでも終わらない青春。エンドレス・エイト。あるいはビューティフル・ドリーマー。このアルバムにもそんな力が宿っているように思えます。

 

最後に…

さて、ようやく全ての楽曲世界に挨拶が済ませられました。これにて私の巡業は終了になります。いやぁ、なかなか大変だった。1曲1曲はさして多くのことに触れたわけではないのですが、13曲もありますからね。文字数もさすがの分量になりました。1万字程度と、まぁ、それなりに多い方ですかね。でも、全然語りつくした感がない……なんか本当に触りのところだけ、っていう感覚です。けれど、まぁ、仕方ないですね。だらだらといつまでも書き続けていても、アルバムレビューにはなりませんし、これはこれでちょうどいい分量なんじゃないでしょうか。旧Twitterなんて、140文字までしか書けないわけですからね。ざっと70投稿分くらいしているわけですから、むしろ多いという感じかもしれません。

まぁ、そんなこんなで、佳林ちゃんのことをより好きになる素敵なアルバムに出会えました。これからもたっぷり私の日常の合間合間に佳林ちゃんを呼び出していこうと思います。

【初お話し会】宮本佳林「2024.5.22 2nd アルバム発売記念 ミニライブ&お話し会 @錦糸町PARCO TOWER RECORDS」

宮本佳林ちゃんの2ndアルバム発売記念のミニライブ&お話し会に行ってきました。

Juice=Juice時代に何度かリリイベの握手会には行った記憶がありますが、それも遠い昔の話。個別握手会とかしっかりとした接触系のイベントは苦手なので、ずっとずっと行っていなかったのですが、このブログの過去の記事を見ていただければわかるように、ここのところ佳林熱が高まっていたので思い切りました。というわけで、厳密には「初」ではないのですが、しかしながらほぼ「初」みたいな心境で、今回のお話し会に参加してきました。

そんな私にとって個人的に特別な日…もちろん、アルバム発売日でもあるので、佳林ちゃん的にも特別な日であることに間違いはないのですが…そんな日の感想をだらっと書いていこうと思います。

 

 

1.ミニライブ前の私的日記

佳林ちゃんのリリイベ行きたいなぁと思いながら、日々をなんとなしに過ごしていたら、「5/22(水)の19:00~に錦糸町で」という何とか希望が見えてきそうな条件が。幸い、私のいま所属している部署はそこまでハードワークということもなく、またある程度自分で裁量を持って働ける職場なので、数週間前からしっかりと予定を立てて上手いことやりました。

仕事をテレワークにして、8時から勤務を開始して、既定の時間だけぴったり働いて勤務終了。テレワークをするときには、あらかじめ上司に「〇〇と、△△をやります」と業務内容を申告するのですが、きちんと事前に準備をして、ある程度成果をまとめられる算段を事前につけておきました。そういう小さな積み重ねをしっかりやったからこそ、こうして佳林ちゃんに会いに行ける。がんばった自分、偉い。というか、頑張らせてくれる佳林ちゃん、ありがとう。社不の私が曲がりなりにも社会で労働力と見なされているのは、佳林ちゃんが元気とやる気をくれるからです。おかげできちんと税金も払って、みんなの役に立てているし、自分にも生きている価値があるのかもしれないと思えています。

そんなこんなで自分で決めた定時に「やっほー!行くぜー!」と自宅を飛び出し、電車に飛び乗りました。

そして錦糸町タワレコに到着したのが、17時半過ぎくらい。お店に入ってまっすぐ行ったところで特別販売所があり、早速アルバムを購入しました。それにしても素敵なジャケ写ですよね。これは部屋に飾りたい1枚。ミニライブの優先券は100番以降でちょっと後ろかな、と思いましたが、盛況で何より。それにおそらく17時半に仕事を終わらせている私は世の中的には結構早い方なのかなとも思います。とりあえずは満足の行く番号ではありました。

とりあえずの第一関門は突破できたので、そこからは自由時間。仕事が順調だったので隙間時間で調べた「麺魚」というお店に。どうしてかはわからないのですが、錦糸町ってなんか海鮮系が強そうなイメージがあるんですよね。なので、この真鯛ラーメンのお店はとても気になりました。駅から歩いて5~10分くらいのところなので、時間的にもちょうどいい。特製濃厚真鯛つけ麺を食べましたが、これがなかなか美味しい。一口含んだ瞬間にとてつもない魚のエキスが。そして味はけっこうしょっぱめ。麺は太く、柔らかく、瑞々しく。つけ麺もつけ汁がかなり多めでしたので、最後まで冷めづらく、かつ「足りないな」とならず、とても満足できる一品でした。特製なので、半生のチャーシューや味玉、それからチンゲン菜?も沢山入っていて、かなり贅沢でもありましたね。これで1350円は安い。ラストはスープ割でつけ汁も楽しみ…ご馳走様でした!

ラーメンを食べた後も少し時間があったので、ちょっとした野暮用が片付くか、街をふらふら。黒いトートバック(ちょっとだけ良いヤツ)が日焼けして色落ちしてきたので、黒染めし直したいなぁと思っていたのですが要領を得ないので、色々調べたりユザワヤに行ったりしましたが、これはなかなか片付かなそうですね。ほんのワンポイントなのですが、白い刺繍があるため、染料を溶いたバケツに放り込む方法は取れなさそうというのが難しい。一応、家の近くの仕立屋さんみたいなところに電話もかけてみたのですが、そういうサービスはやっていないみたいで。最終的に、黒染めのスプレーをAmazonで購入して、公園かどこかで黒染めチャレンジをすることにしました。

と、そうこうしているうちにミニライブの時間がやってきました。

 

2.ミニライブ

スタッフの人(おそらくは事務所の人ですかね)の完璧な煽りからもう最高過ぎました。

私はどちらかと言えば「在宅」の人間なので、錦糸町に関するお話は初耳でしたが、昔は違うところに立派なイベントスペースがあったそうです。ステージも高く、あまりに立派なイベントスペースだったので、「ライブハウス錦糸町」と呼ばれていたくらいだったそう。そこが取り壊されて、しばしの空白期間があった後、今はこの錦糸町パルコのタワレコにまた素敵なステージが。あの頃よりは若干規模も小さくなったようですが、それでもCDショップなのに、CDを置いていないこんな素敵なイベントスペースがあるなんて、本当に素晴らしいこと。今日はここをライブ会場さながらに、アルバムの発売記念(まさに今日!)を祝うためにも最高に盛り上げましょう!という意のアナウンスがあり、スタッフの方の声にも強い熱が込められていて、もうその時点で上がりました。

SEがかかり、ヲタのクラップが始まりを告げます。ぎゅうぎゅう詰めになったライブハウス錦糸町は、もうすでに凄まじい熱気。館内全体の空調が統一されているからであろう、このライブハウスには貧弱すぎる冷房によって、すでに私も汗ダラダラ。しっかりとした間の後、白く美しい、妖精のような佳林ちゃんが登場します。

アルバム発売前日、すなわち昨日MVが公開された『ポラリス・コンパス』の天女のような衣装に身を包んだ佳林ちゃんの、なんと優雅なお姿。そして、柔らかな笑みを浮かべたまま、最初の曲はやはり『ポラリス・コンパス』。100番台の優先券だったので、結構後ろかな、と思っていたのですが、いざ佳林ちゃんが現れるとあまりの近さに脳がバグったかと思いました。いや、確実にバグっていた。内心、うわあああああ、となりながら、佳林ちゃんの柔らかな歌声に身を預け、ゆらりゆらりと揺れていました。落ちサビのスネアのロールがとても好きなんですよね。楽曲が1番盛り上がるポイントで、佳林ちゃんの透き通る歌声が、もう。あぁ、最高でした。

お次は『ヴァンパイア』。これはもう盛り上がりましたね。声のレンジが佳林ちゃんにぴったりというのもあって、ただテンション高く盛り上がるだけでなく、佳林ちゃんのピュアっピュアでクリーンなハイトーンボイスも楽しめる1曲。ヲタのコールにも熱が入り、またライブハウス錦糸町では生々しい反響の仕方をするんですよね。

MCではアルバムジャケットの話を。小学校に入学する頃からピンク色が好きで、当時は珍しかったピンク色のランドセルをねだって買ってもらったという話がありました。お母さまからは「6年生になったときも絶対後悔するなよ」と念押しされたそうですが、結局6年生になって卒業したタイミングでも、ピンク色にしたことは後悔しなかったそう。それからコピンクちゃんをやるようになって、ファンからもピンク色で応援してくれるようになったのでずっとピンクが好きだったわけですが、Juice=Juiceではブドウ色、もとい紫色がメンバーカラーに(担当フルーツのことは書くなよ、と佳林ちゃんに言われましたが、書いてしまいました…ごめんなさい)。でも、結局、紫色も好きだし、ということで今回のアルバムはそんな思い入れのある2色をベースに作り込ませてもらったそうです。楽曲たちも、自慢のシングル曲から大好きなカバー曲、そしてコピンクの作家陣で作ったアツい新曲、というエモエモな内容になっています。結構すごいアルバムですよ、これは。別途、レビューもしたいですね。何とか時間を取らねば。

そして、MCの後はまさかの『Lonely Bus』。衣装が天女のような長い袖がついてフリフリしたものだったので、結構ダンスが激しい『Lonely Bus』はやれるのかという感じもありましたが、見事に袖を捌きながら思ったよりもテキパキとダンスをされていました。やっぱり何回観てもこの曲のパフォーマンスはすごいなぁ。ステージがそこまで高くはないですし、フロアもフラットだったため、ほとんど顔くらいしか見えなかったのですが、ターンを決めたり、さっと流麗に腕を回し、顔の前で指先をぱっとしならせるフリはその近さもあってとてもよく見えました。繊細ですごい。やっぱり佳林ちゃんはすごい。

お次は『パラレルハート』、そして『愛しあわなきゃもったいない!』。どちらも暖かく元気や癒しを貰える楽曲ですね。この辺りはもう私も汗ダラダラになりながら、音楽と佳林ちゃんの美声に身をゆだねていました。コールもダンスも苦手なので、手は膝上で組んだままでしたが、ちゃんとノっていましたよ。佳林ちゃんが下手、上手と1番、2番に分けて寄りながら歌ってくれるのが嬉しくて。何回か本当に目が合ったような気がして。「あ!これがみんなが言ってるやつか!自意識過剰でもなんでもない!これは目が合ってる!」とついつい自意識過剰になってしまいました。本当に合ってるといいな…だって、ライブハウスとかと違って、フロアもめちゃ明るいし…見えないってことはないと思うんだ…そうだよね…そのはずだよね…

そして再びMC。お次はアルバムの名前について。キラキラした名前が良くて、最初は星の名前で考えていたそう。デネブ、と考えたようですが、そしたら次はアルタイル、ベガと続けて最終的に夏の大三角形を作らなきゃいけなくなりそうだし。と、一旦却下。次に、ミラという明るく、脈動する星を考えたそうですが、この脈動は寿命末期を示しているらしく、すでに爆発してなくなった星を名前にするのはどうなんだろうと、これも一旦却下。それから何の曲だったかは佳林ちゃんも忘れたようですが、レコーディング中にふと「スパンコール」という単語が頭に浮かび、レコーディングブースから出るなり「スパンコールがいいかも」とスタッフに言ったそうです。そして実際に「スパンコール」という単語を調べてみると、英語にはそういう単語はなく、本来は「Spangle」であることがわかったそうですが、そこはもう造語でいいかということで「Spancall」というタイトルになったそうです。Spangle Call Lilli Lineというバンドも「スパンコール」と読ませていますしね(これは私の勝手な補足)。造語ではあるものの、「Span」というのは「合間」という意味でもありますし、そんな生活の「合間」に宮本佳林の音楽を「Call」=「呼び出し」てもらう。そんな風に捉えることもできるじゃない。と、ありがたいお話を頂くこともできました。こういう話が聞けただけでも今日は来てよかった。

最後は全員で団結して…と煽りがあったあとで『ソリスト・ダンス』。この曲は本当にコールが楽しい。私は恥ずかしくて声を出せないけど、みんなが「おーい、おーい、おい、おい、おい、おい!」と叫んだりしていると、私も幸せな気持ちになります。まさに会場が一体となった瞬間。歌詞は前向きなようで実際はちょっとだけ寂しい感じもあるのですが、コールもあってか不思議とこの曲は会場全体の心が繋がる感じがあるんですよね。今はみんな「佳林ちゃん」というハブに向かって集まってきているけれど、明日からは、いや数時間後にはみんなバラバラになって別々の人生を生きていく。だからこそ、今だけは精一杯に気持ちを繋げよう。そんな心持ちのする楽曲です。

いやぁ、楽しいミニライブでした。

最後には会場の前方の人にしゃがんでもらって、後ろの人にまでご挨拶。そして、たっぷりと時間を取って、全員と目を合わせながら手を振ってお別れ、という感じでした。

 

3.お話し会

そして、ドキドキのお話し会。来たことを既に後悔しながら列に並びました。

まずまともにコミュニケーションは取れないでしょうから、言うべきことだけを言おうと心に決めました。まずミニライブが良かったということ。次にツアーにも参加して、それもすごい良かったということ。それから「おじぎでシェイプアップ」の頃からのファンです、ってこと。正確には「おじぎ」のDVDを舞台の数年後に中古で購入して、そこから佳林ちゃんの存在を知って、なんやかんやと名前だけは知りながら、本格的に推し出すのはJuice=Juice結成くらいのタイミング、いやもう少し経った『裸の裸の裸のKISS』くらいなんですが、まぁ、広い意味でのファンになったのは「おじぎ」ですからね。嘘ではないです、嘘では。

これだけのことを何度も何度も頭の中で反芻し、もう並んでいる段階から、近い、近すぎる。と脚が震えていました。そして、いよいよステージ前の階段。もう階段からほぼ落ちそうになりながら、ついにもう前の人が佳林ちゃんと喋っているところまで。うわ、近すぎる。ちっちゃい。可愛すぎる。正直、私の最後の記憶は、この前の人と佳林ちゃんが喋っているところでした。もう自分の番になったら、何が何だかわかりません。たぶん頭がイカれていると思われたでしょうね。脚もガタガタ、手もプルプル。薄っすらと自分の喋っている声が脳にリフレインしてきましたが、気が付けばもうパルコのエスカレーターに乗っていました。

エスカレーターではもうやばかったです。緊張が解けたのか、余計に全身が震えだしました。真冬の根室にタンクトップで行ったみたいに体が震えていました。駅のホームで電車を待ちながら、「なに喋ったっけ」と思い出すと、不鮮明なスクリーンショットみたいな佳林ちゃんの笑顔と、自分の間の抜けた声。ふいに吐き気が襲ってきて、地面に座り込みそうになります。何とかこらえて、震える体を抱きかかえ、また少ししてから記憶を辿ってみると、やはり吐き気が。なんだこれ、どういう症状?可愛すぎると気持ち悪くなるのか?そこからはもう何も考えないように、YouTubeで令和ロマンの「セカおじ」企画の動画見ていました。あぁ、落ち着く。

これが恋、恋煩いさ。ってことなんですかね。三十にして?アホらし。とは思いながらも、確かに初恋くらいの衝撃はありましたね。個人的な関係性を深めたいというような恋愛感情ではないにせよ、心が浮足立ち、血沸き肉躍るってこういうことかもな、って。遅れてくる筋肉痛みたいに、年のせいで、終わってから武者震いと緊張による吐き気がやってきたってことなんでしょうか。とにかく人生トップレベルで、なんかおかしな状態に追い込まれていましたね、勝手に。

 

4.最後に…

と、訳のわからない話になってしまいましたが、ミニライブもお話し会も、錦糸町という街も、すべてが楽しい1日でした。もう仕事のことなんて何も覚えていないくらい、濃密な1日でした。これからも佳林ちゃんを応援していこうと思いますし、またアルバムのレビューもできたらなぁと思っています。

これから毎日しっかりとアルバムを聴き込んで、佳林ちゃんとともに生きていくぞ!

Juice=Juice 「Concert Tour 2024 1-LINE @仙台サンプラザホール 2024.5.12 1公演目」

やっと行けました。「1-LINE」。なかなか日程が合わなかったり、チケットが取れなかったりで困っていたのですが、何とか私の対応範囲である仙台にて最新=最強のJuice=Juiceを観ることができました。

前日の飲み会を早めに切り上げて体調は万全。コーヒーを水筒に作り、村上春樹の小説をリュックに忍ばせ、新幹線に乗り込みました。

 

 

1.前書き ※Juice=Juiceの話はほぼなし

ここ最近はbetcover!!というバンドにハマったこともあって、映画「花腐し」や久保田早紀などちょっと古めかしい雰囲気の諸々に心を惹かれるお年頃となりました。新幹線の吹き飛ぶ車窓を見るともなく眺めながら、「異邦人」なんかを聴いていると不思議と遠くへ旅をしているような気持ちになります。そんなちょっとおセンチな御心を抱えつつ、はてさてどんなライブになるのやら、と頭の中は結構現金で、「相も変わらずJuice=Juiceの評判が良い」という感じなのでとても楽しみでした。

前日の飲み会では、仙台で大学生活を送っていた高校の同級生と会っていたので、何軒かオススメのお店を教えてもらい、駅からは遠かったのですが、そこまで足を伸ばしてきました。「めちゃくちゃ美味くてオススメってわけじゃないけど、朝までやってるラーメン屋があってさ」と、教えてもらったお店。わかる、わかるよ。どこの大学の近くにも何故かそういうラーメン屋があるんだよな。美味いってわけじゃないけど、飲んだ後とかに行くんだよな。で、美味いんだよな。当然、私は行ったことのないお店。でも、何故か懐かしく、思い出深く、胃袋に染みる長浜ラーメン。「仙台で長浜ラーメンってどうなのよ」みたいなことは今さら考えません。無料のトッピングで、にんにくと高菜を盛り付け、最後に雑炊用の白飯を頼みました。ここ最近は食事制限をしているので、久しぶりの胃袋の豪遊。あぁ、美味かった。

絶妙に時間が余ったので、1時間ほど一人カラオケ。先日、別のライブで仙台の美術館は行ったし、あんまり行きたいところも、時間もないしな。逆にこういうときじゃなきゃ、もうカラオケなんて行かないしな。ハヌマーンの入っているJOY SOUNDを選び、離婚伝説やyonawoでゆるりとやりながらも、結局は「しょうがない夢追い人」とか「泣いちゃうかも」とか「情熱のキスを一つ」を入れてしまう。プラチナ期は意外と高橋愛ちゃんのキーに合わせて作られているので、男でもギリ歌える。点数は劣等生でしたが、頑張って高い声を出していると「歌っている感」があって楽しいですね。

そんなこんなで電車に乗って、榴ヶ岡駅へ。

私は家に物が増えるのがあまり得意ではないので、基本的にはグッズを買わないのですが、先日のフットボールアワーの岩尾さんのFSK紹介の配信を見てから、なんだかFSKが欲しくなり……結局、青い衣装の里愛ちゃんを買ってしまいました。やばい……可愛すぎる。むふふ、と零れ落ちそうな笑みを何とか噛み潰し、会場の3階へ。

3階通路の前側、最後列でしたが思ったよりも近い感じ。比較的正面に近い場所でしたので、ステージがよく見下ろせました。「もっとハロプロを楽しもう!」とみいみに促されつつ、持参した本を読みながら時間を潰し、そしてアナウンス。コールが鳴り出し、いよいよコンサートが始まります。

 

2.ライブの感想 ※ごめんなさい、ほぼ里愛ちゃんしか観てませんでした。

※セトリのネタバレありますので。

私は一応、Juice=Juiceの箱推しなので、できるだけ万遍なくステージを観たいと思っているのですが、なんか今回は里愛ちゃんをじっくり観ようかなという気分になりました。Juice=Juiceの中では、いや現ハロプロの中では、里愛ちゃんが1推しなのでずっとそうすべきではあったのですが、「せっかく全員を観られるんだから」という先入観でこれまでずっと全体を万遍なく観てきました。それはそれでとても有意義な時間ではあったのですが、結局、「歌ってる人を追っているだけだとライブ映像を観ているのと変わんないよな」という気がして、今日は思い切って里愛ちゃんにフォーカスすることを決心しました。そして、その選択はもう正解と言わざるを得ませんでした。

なんて言えばいいのでしょう。サトウのごはんに、最高級たまごをかけて食べているみたいな……いや、ちょっと違うか。色んなブランドの服から好きなものを組み合わせて着て良いと言われているのに、あえて1ブランドだけで硬派にコーディネートする、みたいな。そういう背徳感というか、「うわぁ、すっげぇ贅沢してんな」感がありましたね。でも、そういう捻くれた楽しみ方だけでなく、単純に里愛ちゃんのパフォーマンスを観ているのはとても楽しかったです。とても有意義でありました。

※ここから、というか引き続き、もはや里愛ちゃんに関することがほとんどすべてになります。

とは言え、まずは登場シーンから。

一人ひとりがメンバーカラーのライトとともに、ポーズを決めて登場。割と暗めの証明だったので表情を伺うまでは出来ませんでしたが、とにかくシルエットが美・美・美。良い感じの小さなロッジの木製ドアを開けたら、中には色とりどりの無数の花々が咲いていた。みたいな、感動がありましたね。はぁーん!って感じです。中でも妃咲ちゃんの少し伸びた髪を巻き巻きした大人っぽさに撃ち抜かれました。なんてゴージャス。

せっかく妃咲ちゃんの話が出たので、全体を通して、妃咲ちゃんの印象ですが……歌、上手くなり過ぎじゃないですか?

もちろんみんな凄くパフォーマンスレベルが向上してはいますが(さくりんごとかもエグイ成長をしていましたが)、妃咲ちゃんはちょっと1つ別次元に到達しましたね。もう何年も前ですが、terzo辺りでは結構歌が固い印象があり、そこから徐々に上達していったのは知ってはいるものの、それでもまだどこかに固い芯のようなものが残っている感じがあったように思います。それが今回、少なくとも現場で聴いた感じでは全くなくなっていました。特徴であるハスキーボイスを存分に活かし、めちゃくちゃ柔らかく歌われていました。あーりー、るるちゃん、れいれい辺りに匹敵する貫禄さえ感じました。張り上げる系のパートもかなり圧力高めに声を出せていたので、そこも成長したところではあると思いますが、やはりあの柔らかさ。大人びたビジュアルも含め、ちょっとハロプロ・エース感が出て来ましたね。

さて、里愛ちゃん、里愛ちゃん。

まず衣装ですけれど、1ポーズ目は黒を基調としたエレガントな雰囲気。人によっては黒い手袋をしていたり、長めのスカートを穿いていたり、すごいドレッシーな感じって言うんですかね。ただ有難いのは、里愛ちゃんには手袋をはめさせず、長いスカートではあるけれど透け感のある素材を選んでくれたということです。順序が逆転しますが、まずはスカートについて。里愛ちゃんよりも重めのスカートを穿いていた子もいたと思うのですが、里愛ちゃんに関してはあれくらい透け感があって、軽めのスカートが絶対に良い。里愛ちゃんのパフォーマンスは優雅と言うには少しスピードがあり過ぎて、激烈・スポーティと言うにはちょっとクール過ぎる。その絶妙な塩梅を取ったとき、あの華麗さを演出するためのロングではありながらも、どこか羽飾りのような軽快さを感じさせる透け感はすごい丁度良かったです。あ、もちろん、スカートとは言っても、中にはショートパンツを穿いていて、後面だけに靡くようなタイプのスカートです。こういうのなんて言うんでしょう。すみません、服には疎くて。

んで、手袋が無いのも有難かった。黒の手袋も間違いなく似合うとは思うのですが、里愛ちゃんのパフォーマンスは本当に指先まで美しい。黒い手袋をはめていると、遠くからでは指先まで上手く見えず……なので、里愛ちゃんの手袋無しの指先が本当に綺麗に見えたのが何よりも嬉しかったですね。2曲目の『Borderline』のサビ終わりだったような気がするのですが、ハーフテンポになる辺りだったか(たぶん違うかな。ごめんなさい、ちゃんと覚えておらず)で指が1本ずつ折りたたまれている様さえ綺麗に見えてすごい感動しました。

そして、3曲目の『トウキョウ・ブラー』。MVの感想も記事にしましたが、もうこれは里愛ちゃんの曲と言っても過言ではないですよね。

 

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出だしのソロからもうカッコイイんですが、何と言っても間奏明け、瑠々ちゃんのCメロから里愛ちゃんのキメキメの落ちサビのところ。というか、生でパフォーマンスを観てゾクゾク来たのが、落ちサビを歌う直前の里愛ちゃんの現れ方。瑠々ちゃんがピンスポで柔らかく優しく囁くように歌っているその背後……「一番星を目指す」の「す」が発声されると同時に、くるくると2回転して、まるで蝶のように華麗に現れ、瑠々ちゃんが空け渡したスポットライトに飛び込んでくる里愛ちゃん。うわぁぁぁあぁぁぁ、ってなったよ。うん。凄かったです。カッコイイ!!!

なんかこういう言い方をすると変態みたいなんですけど、里愛ちゃんを見ていると、自分の中に乙女なところがあったんだと気づかされるんですよね。自分が女の子で、女子校に通ってて、気さくだけれどどこか超人的なところのあるカッコイイ先輩に、きゅんきゅんしてしまうような、そんな感じになります。いや、能力が異常に高くて奔放な後輩かもな。でも、なんか乙女がカッコイイ同性に憧れるような、そんな気持ちになるんですよね。

そして『トウキョウ・ブラー』に今一度戻りますけれど、もちろん落ちサビは外さない。完の璧。フェイクも最強にお洒落でした。ただ熱いだけじゃない、音楽を磨き上げるようなそんな素敵なフェイクです。あぁ、それにしてもこの曲、好きだな。

 

3曲目の『トウキョウ・ブラー』が終わってからは、いつもの通り、名前だけの自己紹介がありましたが、いつも里愛ちゃんってすごいクールに自分の名前を言うんですよね。由愛ちゃんとかりさちとかは結構アイドルらしく、きゅるきゅるした感じで自己紹介するんですが、里愛ちゃんは凄いしっとりと落ち着いた声で自己紹介します。それがなんかいじらしくていいですよね。そして、別にそれを真似しているわけじゃないと思うんですけれど、意外と妃咲ちゃんも里愛ちゃんっぽい落ち着いた感じの御挨拶でした。いつもこんな感じでしたっけ。ちょっと覚えていないんですが、自分的には意外だったので記憶に残っています。

みっぷるからも「戻ってきました」的な一言があり、会場全体が「みっぷる……うぅ……よかったね……」と涙を堪える一幕もございました。

そう言えば肝心の1曲目に触れていませんでしたが、1曲目は『わた抱き』で結構上げ目の感じでライブが進むのかと最初は思っていました。が、2曲目の『Borderline』から少しクールな感じの雰囲気が滲み出し、そこから『トウキョウ・ブラー』。MC明けの4曲目は『プララブ』ですから、かなり都会的でお洒落な感じの曲目ですよね。あ、っとちょっと申し訳ないですけど、もう1回宣伝しちゃいますね。

 

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『トウキョウ・ブラー』と『プララブ』の親和性、というか関連性について上の記事で言及しています。そして、5曲目の『好きって言ってよ』は一旦飛ばして、6曲目の『TOKYOグライダー』についても同記事内で引き合いに出しているので、ぜひ、よろしければ。5曲目の『好きって言ってよ』も『トウキョウ・ブラー』と同じく山崎あおいさん楽曲で、Juice=Juiceの中では1番好きな楽曲なので、この辺のセトリは個人的にかなりグッと来ました。うんうん、自分でもそうするわぁ。

 

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7曲目は『おあいこ』で、これもお洒落な楽曲ですね。休符の位置で差し込まれる吐息とかはもしかしたらトラックを流すのかな、と思っていましたが、ちゃんと歌っていてそれが凄いグッときました。また宣伝で申し訳ないですけど、『おあいこ』のレビューは個人的に結構よく書けていると思うので、反論等あるかもしれませんが、1つのアイディアとして読んでいただけるととても嬉しいです。

 

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ライブではあーりーを中心に据えて、メンバーが左右に分かれて花道を作るようなフォーメーションが凄い感動的でした。ラストの瑠々ちゃんのソロも、なんかJuice=Juiceを引き継いでいくみたいな魂を感じてグッときました。

由愛ちゃん、妃咲ちゃん、りさち、いちか氏、みっぷるのふわふわしたMCの後は、8曲目『香水』。あーりー、瑠々ちゃん、れいれいの三神で。めちゃくちゃハモるし、しかもハモりのパートもどんどん入れ替わっていくし、Juice=Juiceの現有戦力で考え得る最強の布陣で披露された本楽曲は、ちょっと別格でしたね。こういうのやられると、TRIANGROOOVEの『メロディーズ』を思い出しますね。ただ、あの頃は金朋とあーりーが主旋律を歌い、さゆきがハイスペック便利屋でどんな歌にもハモりを合わせていくっていう構成だったので、そこからの進化も感じます。何よりも、あーりーがハモりながらも、音楽を魅せる上で重要な役割を担っているのが感慨深いです。本当に素敵な時間でした。

 

【追記】

衣装の2ポーズ目について書くのを忘れていました。ので、ちょっと無理やり挿入します。

MCを挟んで『香水』から今度はかなり可愛らしい衣装になりました。バーバリーチェックっぽい柄だったんですが、こちらも里愛ちゃんを中心に見させていただきました。やや曖昧な記憶になりますが、今度はミニスカートになった里愛ちゃん。上半身は確か手首くらいまであるお洋服だったのですが、里愛ちゃんだけ白いノースリーブパーカーを着ていましたね。これがまたお洒落な感じでした。さくらちとか(記憶が曖昧で……違う子だったらすみません)はバーバーリーチェックに黒っぽいニュアンスのシャツを着ていたような気がするのですが、一番クールな里愛ちゃんがポップな白いパーカーってのがギャップ萌えってやつなんでしょうか。2着目を身に纏っての前半は、パーカーの前を空けて、ルーズに着こなしていましたが、後半のさくらちが煽っている間にチャックを上げてぴっちりとした着こなしに。衣装でも遊びを見せてくれる里愛ちゃんが愛おしくて仕方ないです。

里愛ちゃん以外で言うと、たしかりさちのソックスがフリフリの付いているやつだったかなと思うのですが、それが当然の如くキュートでした。前半戦のようなクールな衣装も似合いますけれど、みんなチェック柄の可愛い衣装もしっかり似合っていました。が、やることは変わらない。どこまでもスマートで、エレガントで、そして情熱的なパフォーマンスを魅せてくれます。んん、スタイルがみんな良いからなぁ。何を着ても絵になりますよね。さて、「追記」もこの辺で。あ、アンコールの3ポーズ目はあえて触れないでおきます。お楽しみということで取っておきましょう。

 

9曲目の『銀テレ』も素敵な演出でした。ステージの2階に腰掛け、脚を投げ下ろしたところがディスプレイになっているので、そこにメンバーカラーの星屑のようなものが映し出されている感じでした。1番は全員で横一列、まさに1-LINEになって座りながらのパフォーマンスでとても夢見心地でした。2番からはダンスも織り交ぜて。柔らかいダンスでも里愛ちゃんは素敵でした。繊細。そして可愛い。

10曲目は『FUNKY FLUSHIN'』、11曲目は『KEEP ON 上昇志向!!』とノリノリな感じへと。華麗で流麗でキメキメの里愛ちゃんだけでなく、元気でノリの良い、イケイケな里愛ちゃんが観られるのが嬉しいですね。里愛ちゃんってずっと追ってると、本当にかなりハードに踊っているんですよ。もうこっちの息が上がっちゃうくらい。止め、跳ね、払いがかなり洗練されていると言いますか。イメージで言うと、まなかんとかみたいに、ゴリゴリに踊っているわけではないんですけど、最近の佳林ちゃんの先鋭化されたダンスとまなかんの中間くらいの感じですかね。観ていて美しいけれど、きちんと力強さと、音楽に対するグルーヴがある感じ。でも、終始そういう感じなんで、いったいどこで休んでいるんだろうと思うんですけど、意外とこういうノリの良い曲だと脱力が上手いのがわかってきます。

例えば、手を下ろす振りがあると、力を入れて手を下ろすのではなく、ある所からは力を抜いて、重力と慣性に任せて腕ごと下ろす……みたいな感じがすごく上手(手を下ろす振りが上手、とはこれ如何に。なんつって)。まぁ、冗談はさておき。そんな感じで、基本的にはパキパキ、ビシバシ踊る里愛ちゃんなんですが、力を抜くところも魅せ方とシルエットが美しいので、それすら演出になる感じがありますね。

あと、いい意味で無駄な動きが多いんですよ。無駄、ってのはちょっと表現が悪いですね。要は、他の子がしない動きを本当に細かく入れているんです。まず普通に観ていて思うのが、ターンの多さ。とにかく回る、回る、回る。くるくるくるくるくる……夢想花かってくらい。里愛ちゃんが尊敬する、そして幾人ものヲタクが指摘するように、そのパフォーマンスのDNAを引き継いでいると言われている佐藤のまーちゃんにも匹敵する回り具合。そして、まーちゃんと言えば、自分が歌う直前のマイクくるりんぱ。これ、里愛ちゃんもよくやっているんですよね。まじでカッコイイ。くるくる、っとマイクも回しちゃう。これで音を取ってるんだろうな、って感じ。

それから今回は1-LINEというツアータイトルにもある通り、横一列を綺麗に作ることを意識しているそうですが、1回横一列を綺麗に揃えた後で、フリーになったときに里愛ちゃんは前に出たり、後ろに下がったりをフィーリングでやりまくるんですよ。それがステージ上に立体感を作っていて、特に3階席のような上から観ていると本当に楽しいんです。もちろん1列に揃っているときも、例えば℃-uteを観ていたときのような綺麗な「揃ってる感」があっていいんですが、それ一辺倒でも飽きてしまうので、要所要所で里愛ちゃんがバランスよくそれを崩してくれるので、それがとても心地いい。ちょっと度の曲か忘れてしまいましたが、割と自由が利く曲の中で、自分のパートを歌いながら客席に凄い近寄ったり、そういう臨機応変さみたいなものも見せてくれるので、観ていて飽きません。

あとは、背中を見せることも多い印象がありました。アイドルなんだから顔を見せるべきというのも1つの考え方ではあると思いますが、あえて背中を見せて、ラインから下がり、そして後ろ向きのまままたラインに合流して、そしてくるっと回って、正面に向かってポーズ。こんなこともできちゃうですねぇ。どの曲か忘れましたけど。

あとあと、確か終盤の『ひとそれ』だったと思うんですけど、曲終わりでみんなポーズをキメるじゃないですか。そこでみんな1回ポーズ取ったらそこで終わりだと思うんですけど、里愛ちゃんだけ2ポーズキメてたんですよ。ヤバくないですか。ヤバいですよね。そんなことしていいんだ、っていうかできるんだ、みたいな。

なんていうか、ずっと里愛ちゃんを追っているとそういう発見が沢山あるんですよ。それに1つひとつを言葉にはできないんですけれど、「あぁ、そこのダンスってそういうニュアンスだったのね」みたいな気付きを得らえることが本当に多いです。いつだったか、なんだったかで由愛ちゃんも、「里愛と歌っていると、歌い方がわかる(意訳)」というようなことを言っていたと思いますが、まさにそんな感じで。これもどの曲だったか忘れちゃったんですけど、あかりんごと里愛ちゃんが並んで踊ってるところで、たぶん今まで普通にバックステップを踏んでいるところだったと思うんですけど、結構しっかり目に後ろにジャンプしてリズムを取っていて(2人とも)、「そこって、そういうフリなんだ」と思った記憶がありますね。私の認識不足で元からそういうフリだったのかもしれないのですが、きちんとあかりんごと2人で合わせながら、カッコ良く見せているのが印象的でした。

他にも悪目立ちしない程度に、ダンスにアレンジを加えてくれるので、観ていて本当に飽きないです。歌って踊るってことは、こんなにも自己表現に溢れていて、それでいて楽曲に対して愛を表明する行為なんだということが里愛ちゃんを観ていると伝わってきます。

 

セトリに話を戻すと、11曲目の『KEEP ON~』が終わると、もう既に恒例となっているさくらちの雑無茶振りコール&レスポンスがあって、会場が異様な熱気と笑いに包まれ、12曲目は新曲の『ナイモノラブ』。この曲は間奏がめちゃくちゃカッコイイ。ライティングも激しい明滅で、ヲタクたちもハーフテンポに合わせて「オイ!」「オイ!」と叫んでいるのがとても楽しかったです。直前のさくらちの煽りの効果もありましたね。ここも里愛ちゃんのダンスがセンス爆発していてカッコ良かったです。

13曲目はみんな大好き『プライド・ブライト』。出だしの瑠々ちゃんは言わずもがな、やっぱり妃咲ちゃんのクオリティが爆上がりしていてめちゃくちゃ盛り上がりました。間奏始まってすぐの、あの隊列を組んで歩いて来るところ、やっぱり生で観るとゾクゾクしますね。Juice=Juiceカッコ良すぎ。あの強さ、そうそう出せるもんじゃない。そして里愛ちゃんの落ちサビは今回もバッチリでした。

14曲目は『Fiesta Fista』。これはもう盛り上がること間違いなし。相も変わらず情熱を解き放ち続ける瑠々ちゃんが素敵過ぎです。15曲目の『CHOICE&CHANCE』ではれいれいのボイパを堪能できました。里愛ちゃんの「グッバイ♪」も聴けたし、大満足です。あとは由愛ちゃんの「やっちまった後悔がしたい」もいつも通り、空間を切り裂いていました。うーん、最高。16曲目は『ひとそれ』。これも外せない楽曲になりましたね。落ちサビの里愛ちゃんにも磨きがかかっていました。しっとりと哀を込めて歌うとちょっと重すぎるし、かと言ってアンニュイになり過ぎても落ちサビとして力が乗らない。そのいい塩梅の、音として発声の力強さは損なうことなく、それでもクールにアンニュイに憂鬱で気怠く、そこのニュアンスをしっかりと表現できるようになっています。里愛ちゃんはさぁ、歌もいいんだぁ。

17曲目は『ガルビー』。由愛ちゃんのアレンジが昔とは全然変わっていて、かなり台詞っぽい感じになっていて可愛かったなぁ。あと、れいれいが仙台向けに何かを言ってくれていたと思うんですが、マイクの音量が絞られていて、何て言っていたか全然聴こえなかったのが残念でした(笑)。それからそれから!みっぷるのパートあるじゃないですか!いつからでしたっけ?なんか「お休みしてたから、みっぷるのパートはまだ作られてないんじゃない?」みたいなことをどこかで聞いたような気がしたんですが。いやぁ、嬉しいなぁ。『ガルビー』で自分のパートを貰えるって、それでようやくJuice=Juiceのメンバーとして迎えられた感がありますよね。第2の洗礼というか。

そして、ラスト18曲目は『ロマンスの途中』。オケは10周年バージョンの方でしたかね。この曲って、あんまり、こう歌を全面に押し出す楽曲ではないというか。めちゃくちゃオケの質が高くて強いんですよね。なので、この曲ばかりはもはや歌を聴くというよりは、音楽にノって楽しませていただきました。間奏の里愛ちゃんだけベースの振りも観られたし、とにかく楽しく踊らせていただきました。

そしてアンコール1曲目は、あーりーと由愛ちゃんによる『愛のダイビング』。由愛ちゃんがこの曲が本当に好きみたいで。そして、あーりーの『言葉は愛の中でまだ躊躇』のパートがめちゃくちゃお気に入りみたいです。今回のツアーでそこが聞けないことが悲しくて、それで今回のデュエットパフォーマンスでこの曲を選んだみたいでした。いやぁ、愛が感じられて素晴らしいですね。

最後のMCでは「母の日」にちなんで、色々なメンバーが家族への愛を伝えていました。瑠々ちゃんに至ってはちょっと涙ぐんでいましたね。いやぁ、みんないい子やぁ。里愛ちゃんのMCでは、楽屋で歌の練習をしているあーりーに対して、由愛ちゃんが「なかなかいいね」と言っているのを見てびっくりしたと暴露をしていましたね。加入当初からすごい礼儀正しい子だったから、そうとう懐いているんだなぁと思ったそうです。

そんでもって本当のラストは『Magic of Love』。これはもう言うまでもないですね。やっぱり瑠々ちゃんは凄いってことで。あと、里愛ちゃんがあかりんごの立ち位置に食い込んでしまって、片手で「すまん」と謝っているのが可愛かったです。

 

と、後半はかなり駆け足になりましたが、だいぶ長くなったのでこれくらいにしておこうと思います。

 

3.総観

まぁ、里愛ちゃんをずっと見ていたわけですが、Juice=Juice全体について。

まずはみっぷるについて。一部の楽曲でのみのパフォーマンスでしたが、とても堂々とパフォーマンスしていました。が、もしかしたらまだ本調子じゃないのかもな、という雰囲気も見受けられました。いや、単純にほかのメンバーのレベルが高過ぎるのか。さくりんごも本当に歌、ダンスともに上手になっていて、あれだけ秘蔵っ子扱いされていたみっぷるに対しても、きちんと先輩としての格の違いを見せつけていたと思います。こんな風に書くとみっぷるがまだまだという風に誤解されそうですが、でも実際みっぷる的にはまだまだやれるって感じがあるんじゃないでしょうか。少なくともステージ上では堂々としていましたし、これからどんどん素敵なアイドルになっていく予感をビシビシと感じさせてくれる素敵なパフォーマンスでした。

3flowerに関しては、まず最初に書いたように妃咲ちゃんのパフォーマンスがえらい上達しています。そして、いちか氏はダンスが結構目を引きました。歌は相変わらずセンスがいいものの、まだまだむらっけがある感じで、さらっと歌う方がよりセンスの良さを感じます。力を込めるところは、まだまだパワーを制御しきれていない感じがあるってところでしょうか。制御しきれないほどのパワーを秘めているというのが、これからも楽しみなところです。対して、りさちはめちゃくちゃ安定していて、それでも着実に実力を伸ばしている感じでした。うわぁ、めっちゃJuice=Juiceじゃん。って思うくらい、歌もダンスも上手。それでいて、ビジュアルも良い。完璧人間でした。愛嬌も誰よりもあるしね。

ゆめりあいはいつも通りですが、由愛ちゃんは強みの発声を活かしてキラーパートを悉く沈めていましたし、それでいて苦手としていた安定感も手にしつつあります。対して、里愛ちゃんは相変わらずピッチもリズムも良いうえに、苦手だった発声も良くなり、確実に場を盛り上げてくれます。ラストの『Magic of Love』だったかな?で、2人で手でハートを作っているのは、とても尊いものを観られました。

れいれいは本当にJuice=Juiceを支えてくれています。与えられたパートは絶対に外さないし、何ターンかに1回れいれいを経由することで、歌がダレないって感じがします。それと意外と声が特徴的なんですよね。だから、今のJuice=Juiceの歌声やハーモニーって、れいれいの音だという気がしています。terzoのアルバムレビューでも書きましたが、音源で聴くとなおさら顕著で、本当に良い声を持っているな、と。あと、顔が綺麗ってのは言うまでもないこととして、MCでも意外と熱い面を見せてくれるので、精神的支柱にもなっているのかなと思っています。改めて、Juice=Juiceに来てくれてありがとう、って気持ちでいっぱいです。

そして、瑠々ちゃん。もうね、改めてあんた歌が上手すぎよ。もう言われ過ぎて、「はいはい、そうですか」って感じかもしれませんが、本当に上手い。れいれいが底から支えているとすれば、瑠々ちゃんは引っ張り上げてくれているような感じ。瑠々ちゃんの誕生日に里愛ちゃんがブログで、永遠のライバル宣言のようなものをしていましたが、里愛ちゃんが憧れ、悔しがるのもわかる。こりゃあちょっと上手すぎだ。

んで、最後はあーりー。本当に上手くなった。歌もダンスも。特に歌なんかは、もうJuice=Juiceになくてはならない存在ですもんね。あの慈悲に満ち溢れた、澄み渡る歌声がもうJuice=Juiceとしては聴けなくなるのだと思うと、本当に悲しいです。どうかJuice=Juiceを卒業したあとも歌い続けてくれますように。

というわけで、メンバー全員に簡単に触れたので、もう一つ、ダンスについて。Juice=Juiceはオリメンの頃から、歌は強いけど、ダンスはあんま揃ってないかな、みたいな評価をされることが多かったと思います。でも、今回のツアーでは、というかもしかしたら仙台で私が観た席が3階だったということがあるのかもしれませんが、本当にダンスが美しかったです。めちゃくちゃ揃ってました。℃-uteなんかは腕の上げる角度まで揃っているからこそ、そのシンクロ率が異常に高くて美しいという印象でしたが、今のJuice=Juiceはそことはちょっとベクトルが違うかもしれないです。そもそも同じ振付を皆で踊るというタイミングがそこまで多くなく、どちらかと言えば、フリーな部分が多かったり、メンバーによって異なる振りを付けられていることが多かったりする印象です。ですが、なんか揃ってる感があるんですよね。今回は1-LINEと名を打っている通り、横一列を綺麗に見せることに集中していたみたいですが、その成果が良く表れていました。ただ、それだけに終始するのではなく、個々のダンスに特徴があり、特に里愛ちゃんなんかは一度揃ったラインをあえて崩して、また有機的なグルーヴを魅せてくれたりもします。そういう意味で、とにかく観ていて楽しい、聴いていて心地いい、素晴らしいグループになってきているな、という感じでした。

さて、最後にリーダーの継承について。ラストの『Magic of Love』が終わって、メンバーが客席に手を振って帰っていくところ。完全にあーりーと瑠々ちゃんだけがステージに残って、別々に左右に帰っていきました。流石に若干瑠々ちゃんの方が先に捌けていきましたが、このラストを見ただけでも、もうJuice=Juiceはあーりーから瑠々ちゃんへと継承されていくのだろうというのが見えてきます。『おあいこ』のMVでも同じことを思いましたが。それにしても瑠々ちゃんが凄い逞しくなったように思います。前までだったらもっと恐縮していたように思うのですが、もうJuice=Juiceを背負う覚悟はできてる!みたいな貫禄を感じました。あーりーの卒業前からそういう部分を見せてくれるのは、未来に対して安心できますし、安心できるからこそ、集中してあーりーの卒業を祝うことができるように思います。これからのJuice=Juiceも楽しみですね!

4.最後に……

気がつけば、1万2000字。いつもは8000字程度が多いので、1.5倍増し。それくらい楽しいライブでした。そして、里愛ちゃん好きだ。

明日は月曜。いや、今日はもう月曜。時間は1時ちょい前。もうこれで終わりにして早く寝ましょう。ちょっと寝不足にはなるだろうけれど、でも、今日素敵なものを観られたから、来週もまた頑張れそう。いつも元気をありがとうございます。

これからも応援していきます。武道館、当たりますように。

Juice=Juice「おあいこ」レビュー

さて、ついに『おあいこ』のMVが公開されました。

 

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1.『冷たい風と片思い』との比較・『おあいこ』の主題の読み解き

植村あかりちゃん(あーりー)の卒業ソングであることは、あえて言うまでもないことですが、目を閉じて音像だけに耳を傾ければあまり卒業ソングっぽくないという印象。ただ「どこかでこの感じあったよなー」と思い返してみると、鞘師里保ちゃん(りほりほ)の卒業曲、『冷たい風と片思い』もこういうテイストだったように思います。

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どちらもつんく♂さんが作詞、作曲ですが、『おあいこ』は平田祥一郎さんが編曲。『冷たい風と片思い』は大久保薫さんが編曲となっています。ミドルテンポで気怠く重たいビート、そしてコーラスにエフェクトをかけたような音をふんだんに使っているところがかなり似ていますよね。

 

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こちらの記事にも書かれているように、あーりーは、自分が落ちてしまったモー娘。の9期オーディションにりほりほが通過したときからのファン。あーりーが自分からつんく♂さんに、「鞘師さんの卒業ソングみたいな楽曲を」と発注をかけたとは思えませんが、こういうシンクロが起こるからハロプロって面白いです。

 

冷たい風と片思い』は当時のモー娘。が前面に押し出していたフォーメーションダンスと、間奏でのりほりほの単独のコンテンポラリーダンスがかなり印象的です。一方で、『おあいこ』はパフォーマンスというよりは、イメージシーンがふんだんに使われていますね。なので視覚的にはあまり共通点というのは見られません。『冷たい~』は全員真っ白な衣装で統一されているのに対し、『おあいこ』はメンバーバラバラのパステルカラーの衣装ですし。

 

これは比較点ではありませんが、せっかく衣装の話をしたので。Juice=Juiceは当初のコンセプトである「女の子が真似したくなるような」という観点から、私服っぽい衣装をシングルのうちの1曲では着て来ました。今回のトリプルA面シングルでは、この『おあいこ』がその枠を埋めています。歌詞には「夏っ風」と出て来ますが、MVはあくまで別れの季節でもある春らしさを全面に出しており、衣装もパステルカラーで淡い春霞みを思わせる風合いです。

そして先日、平川結月さんという女優さんが「ひとそれ新規」であることをインタビューで明かしていましたが、いつの間にかJuice=Juiceは女性が憧れるアイドルになっていましたね。結成当初は「同世代のファッションアイコン」を目指していたような感じですが、それがオリメンを中心としたスキルの研鑚により次第に「憧れの対象=芯のある大人で強い女性像」という感じになってきたように思います。現在のJuice=Juiceにおいては、最年長にしてラスト・オリメンであるあーりーがその中心にいると考えて良いでしょう。

あの座間に辿り着けずに号泣して、℃-uteのお姉さんに抱きしめて貰っていたあーりーが今ではあかりんごをあやす立場に。Berryz工房のお姉さんを物理的に持ち上げていたあーりーが今ではエバとタコに煽られる立場に。初代リーダーのゆかにゃの後を付いて回っていたあーりーが今ではラスト・オリメンとしてグループのリーダーに。ゆかにゃと同じく25歳という年齢で、グループからの卒業となりました。どれもエモいポイントですけれど、こういう歴史を辿って来たあーりーは、後輩からもファンからも慕われ、またその圧倒的な心身両面の美貌から、最も憧れられている存在なのではないでしょうか。Juice=Juiceを体現する存在になりましたね。

 

少し話が逸れました。『冷たい~』に戻ります。

『冷たい~』は切ない片思いの歌でありながら、「孤高のエースとしての重圧に軋んだ心を誰かに気づいて欲しい」みたいな解釈を個人的にはしています。今回の『おあいこ』もどこかあーりーへの当て書きがなされていないかな、という視点でちょっと読み解いてみたいと思います。

 

『おあいこ』

<イントロ>

<ラップパート>
Yeah Yeah 「前向き」と「俯き」 Ah 全然違う 「明日(あす)行き」
いつも人のせいにしちゃう言い訳 そう 弱いだけ てか 踏ん張れ

<Aメロ>
いいよ いいわよ 許したげる
「おあいこね」ってことにして 許したげる

<Aメロ>
ねえ 悲しそっぽい 表情(かお)すんだね
ほっとしてるくせして

<Bメロ>
街なんか大嫌い 階段を上がりきったら
眩しくて ムカついてきた

<サビ>
キラキラの明日(あした)からを 応援してるように
夏っ風 舞い降りた Forever

<サビ>
思い出が色を重ね 滲んじゃってるけど
なんだか 愛しい色だね

<ラップパート>
Wanna be 「旅立ち」と「寄り道」 Baby 一期一会のめぐりあい Here we go
それでもあの日からしのぎ削った思い出が 溢れ出る 涙腺崩壊

<Aメロ>
まあね ほんとは そうじゃないけど
「おあいこね」ってことにすれば 落ち着くし

<Aメロ>
でも まあいいけど 甘やかしの
積み上げた様(ざま)だわ

<Bメロ>
初恋のあの頃 今日みたく強い私って
自分でも 想像出来ないよね

<サビ>
キラキラの未来の道 歩いて行けるように
夏っ風 優しくて Forever

<サビ>
思い出がツンときてる いたたまれない程
悔しい いい匂いだな

<間奏>

<サビ>
キラキラの明日(あした)からを 応援してるように
夏っ風 舞い降りた Forever

<サビ>
思い出が色を重ね 滲んじゃってるけど
なんだか 愛しい色だね

<サビ>
キラキラの未来の道 歩いて行けるように
夏っ風 優しくて Forever

<サビ>
思い出がツンときてる いたたまれない程
悔しい いい匂いだな

<アウトロ>

ざっくりと歌詞をそのまま読み取れば、「失恋から立ち直って新しい明日に向かう」って感じでしょうか。ただ、直接的な恋愛要素は2番Bメロの「初恋のあの頃」しかなく、友達にしろ家族にしろ恋人にしろ、とにかく同じ時を共にした誰かとの別れを前向きに歌っているという感じがします。ただ、「おあいこってことにして許したげる」という関係性って、やっぱり恋人しかないようにも思えます。部活で犬猿の仲、ライバル関係だった相手がいたとすれば、その相手にも卒部時に「おあいこ」って言えそうな気もしますが。

こうして改めて考えてみると、「おあいこ」って面白い表現ですよね。「お互いに嫌な想いをしたけど、まぁ、色々と水に流そうや」ってことですけれど、これに「離別」というテーマが重なることで、それだけで様々なストーリーを想起できます。

そこで、じゃあ、あーりーは現メンバーの誰かに対して、そういう感情を抱いていたのかというと多分そんなことはないんじゃないかな。少なくとも、あーりーは誰か特定の人間に対して、「これでおあいこね」と半ば怒りと諦めのような感情を抱くタイプではないように思います。では、いったい何に対して「おあいこね」と思っているのか。

 

言うまでもなく、Juice=Juice、そしてハロプロに対して「おあいこね」と思っているんじゃないかと。私はそう思います。

 

こういう言い方って酷いかもしれませんが、あーりーってだいぶ長い間、「おまけ」みたいな扱いを受けて来たように思うんです。もちろん、最年少でお姉さんたちに甘えに甘え、パワフルな自由人、でもめちゃくちゃ美人っていう稀有なキャラクターはしていましたし、ファンも沢山ついていたと思います。ただ、Juice=Juiceは割と序盤からスキルエリートという角度でファンを増やして来たグループですし、『イジワルしないで抱きしめてよ』なんかでは「ねぇねぇ隊」みたいな扱いを受けてましたからね。その後、徐々に発声の良さを活かして、歌パートを増やしてきたわけですが、それでも三大将(佳林ちゃん、さゆき、朋子)には及ばず、不遇と言わざるを得ませんでした。

その妹気質な人間性から、あーりーが本当の本当の最年長になるまでは、素晴らしいリーダーになると想定できていた人は少ないと思います。しかし実際にリーダーになってみて初めて、その穏やかかつ大らかで懐の広い人間性は、誰よりもリーダーに適していたんだとわかりました。今では歌の面でもグループを引っ張る存在になり、あーりーの歌がないJuice=Juiceなんて成立するのかしらという心配の声も聞こえてくるほどです。

あと、あまり言われていないように思いますが、ダンスも凄い上達しているんですよね。私が最初に「あーりーのダンスってすごい!」と思ったのは、TRIANGROOVE(2018)の『メロディーズ』のパフォーマンスでした。あんなに妖艶なダンスをスタイリッシュに踊れるなんて。あのダンスはJuice=Juiceの中でも1番の出来だったように思います。

と、そんな感じで誉めるべきところは沢山あるんですが、きちんとそれが評価されてきたかと言うと、この卒業の際々になるまでずっと過小評価が続いていたように思います。菅井先生のスパルタ授業に平然と耐える度量を持っていたり、あーりーの超然としたところなんかには、瞬間的にスポットライトが当てられたこともありましたが。しかし、やはり同い年の宮本佳林が様々な面でエグかった。佳林ちゃんは努力の魅せ方も上手かったし、パフォーマンスもちょっと段違いな個性を持っていました。かく言う私もずっと佳林ちゃんが好きですし。

これはもう笑い話にして良いと思っているのですが、℃-ute萩原舞ちゃんが「歌もダンスもトークもできない。ビジュアルが格段に良いというわけでもない。あなたは何でグループに貢献しているんですか」と心無いファンから問い詰められたという話がありましたが、これってもしかしたら部分的にあーりーにも当てはまっていたんじゃないかと。ビジュアルこそ常にトップを突っ走ってきましたが、スキル至上主義のJuice=Juice(ひいてはハロプロ)においては、「ビジュアルだけ」というのはそれはそれで嫌な目立ち方をしたこともあったかもしれません。

実際には上述の通り、歌もダンスもしっかりと伸びて、今やグループ随一というところまで来ています。でも、そうなるまで本当に時間がかかりました。菅井先生の話を再度しますが、あーりーにはどこか超然としていて「周囲の目線は別に気になりません」という雰囲気があるように思います。でも、本当に「周囲の目線が気にならない」なんて人はいるんでしょうか。そう考えると、あーりーって結構苦しいこともあったんじゃないかな。

そういうことを想像しながら、『おあいこ』の歌詞を読むと、とても胸がぐっと苦しくなります。

 

嫌な想いも沢山してきたけど、まぁ、楽しいと思う瞬間もあったしな。Juice=Juice、いいよ、「おあいこ」ってことにして許したげる。

 

そういう歌なのかな、と、『冷たい~』のときと同じように勘ぐってしまいます。

つんく♂さんとの対談の中で、つんく♂さんがあーりーの成長に驚いたという話をされていたので、そこからこの楽曲のテーマを考えられたのかなと勝手に考えています。

 

note.tsunku.net

 

2.細部の読み解き

主題は1章のとおり。歌詞の細かい点について喋っていこうと思います。

「前向き」と「俯き」 全然違う 「明日(あす)行き」

「き」で韻を踏んでいるわけですが、ポジティブでもネガティブでもなく、ただ未来に向けて足を踏み出していく、っていう潔さが素敵です。でも、これってすごいあーりーっぽいかも。あーりーの超然とした感じって、そういう考え方にあるのかなと思ってしまうほどです。要は、ポジティブに「きっと未来にはいいことが待っているはず」という期待をし過ぎるわけでもないし、ネガティブに「これまで通りきっと良い事なんて起こらないんだ」と捻くれているわけでもない。ただただ粛々とどうなるかわからない「未来」へと歩みを進めていく。そういう人間だからこそ、過去のことなんて、「おあいこね」って言えるのかもしれません。

 

ねえ 悲しそっぽい 表情(かお)すんだね
ほっとしてるくせして

「悲しそっぽい」っていう口語をそのまま歌詞にするつんく♂さんのセンスは、相も変わらず素敵ですが、ここで言っていることも凄い皮肉ですよね。「卒業するってなったら急に悲しそうにするじゃん。ずっとおまけ扱いしてきたんだから、むしろ卒業してくれてほっとしてんじゃないの」みたいな感じでも捉えられます。もちろん、1章のような前提に則って、歌詞を解釈すればということですが。

 

街なんか大嫌い 階段を上がりきったら
眩しくて ムカついてきた

これはちょっと私には解釈を一意に定められません。ですが、ここは大胆に仮定をして話を進めます。まず「階段を上がりきったら」というのは、スキルの向上や主要メンバーの卒業で、あーりー自身にスポットライトが当たるようになってきたという状況を指していると仮定します。地下鉄の地下のホーム、改札から階段を上って、地上の街に出てきたという場面を、自分が注目・評価され出したという風に読み替えます。そのうえで「眩しくてムカついてきた」となっているわけですから、これも1つ前のパラグラフ同様、「なんか手のひら返しがムカつく」という風に読み取れるでしょう。

んー、あーりーって本当に人間ができているから、そんなこと思っていないかもしれませんが、私があーりーだったらそう思っても仕方ないかな、と。まぁ、そもそも私なんぞは、あーりーみたいに直向きに努力をし続けることができないので、階段を上りきって眩しい地上に出ても来られないわけですが。

 

思い出が色を重ね 滲んじゃってるけど
なんだか 愛しい色だね

それでもあの日からしのぎ削った思い出が 溢れ出る 涙腺崩壊

ムカつくことも多々あったけれど、その中で紡いできた沢山の思い出がある。その思い出は総じて愛しい。「おまけ」扱いされる要因となった出来過ぎるライバルとの日々も、まぁ、なんか涙を誘う。そんな感じでしょうか。

でも、そんな解釈せずとも、単純にこのサビの歌詞は素晴らしいです。思い出を色に喩え、色々な水彩を塗り重ねることで色がどんどんと滲んでいく、という表現。そして、そのよくわからない色が愛しい、っていうのが、やり切れない想いなんかも全部ひっくるめて愛おしく思えるとなっています。パステルカラーのMVとの相性も凄くいいです。何だったら、このサビの一節を元にこのMVの雰囲気を作り上げていったのかなと思えるほどです。

 

まあね ほんとは そうじゃないけど
「おあいこね」ってことにすれば 落ち着くし

この辺もすごい複雑な感情ですよね。色々と言いたいこともあるけれど、恨みつらみを言い続けていても気持ちよく明日には進めないから、とりあえず楽しい想いもしたし、ってことで。それで手打ちね。「おあいこ」ね。

でも、考えれば考えるほどに、あーりーってそんなにJuice=Juiceとかハロプロに絶望してはいないように思うんですよね。さも、「恨んでいるだろう」みたいなことを自分で言い出したわけですけれど。

だから、あくまでこの楽曲の歌詞を書いているのはつんく♂さんであるということを忘れてはなりません。あーりーがたいした文句も言わず直向きにパフォーマンスを磨き続け、最後にはリーダーの役割まで受け持って、卒業間近になったら急に聖母みたいな扱いを受けて、「普通、なんかもっと思うやろ」みたいにつんく♂さんは考えたのかな、と。その「なんかもっと思う」の部分を歌詞に落とし込んだら、こういう解釈になるような気がしています。だから、当たり前ですけれど、あーりー自身が歌詞を書いているわけではないので、あーりーはたいして何も思っていないんじゃないかな。

でも、だからこそ気をつけなければいけないのは、「普通、なんかもっと思うやろ」っていう感覚をヲタクである私たちが持っているべきということだと思うんです。卒業するときに、「まあね、ほんとはそうじゃないけど。おあいこね、ってことにすれば落ち着くし」と思われないように、精一杯応援して、愛し、よく見てあげること。私自身、それができていなかったな、とこの曲を聴きながら身につまされました。

 

思い出がツンときてる いたたまれない程
悔しい いい匂いだな

この歌詞も凄い切ないです。楽曲の最後もこの歌詞で終わります。「いたたまれない程に悔しい」っていうのが、最後に感じることなんでしょうか。「もっとできた」ということなのか、「なんでもっと評価されなかったんだろうか」ということなのか。「いい匂いだな」というのも、素直に沈丁花の香りを嗅いで、「うわーいい香り」というわけではなさそうです。色々と含みがあったうえで、それでもまぁ切なさも込みで「いい匂い」と言っているはずです。

あぁ、なんかヲタクとして素直に「最高のアイドル人生でした!」と言わせてあげられないことに申し訳なくなってきました。別にあーりーがそう言っているわけではないので、その罪悪感はお門違いも甚だしいわけですけれど。でも、つんく♂さんにはそう見えているのかな、と思うだけでも、胸が締め付けられますね。

 

3.音像とMV

この章はさらっとで。もうだいぶ「書いた感」が出てきたので。

柔らかく、切なく、『冷たい~』と似た音像ではありながら、どこか温かさのようなものも感じますね。と、音像についてはこれくらいで、すみません。ハロプロ御用達三大編曲家の平田祥一郎さんの素敵な作品ですね(あとの2人は、ファンクの鈴木俊介さん、EDMの大久保薫さん…一応)。

MVについては、とにかく「春」や「卒業」というコンセプトがしっかりと軸にあり、「対話」のシーンも素敵ですし、あーりーの屋外でのソロカットもとても美しいです。そして、もちろんラストであーりーから瑠々ちゃんに花が手渡されるところには、グッときます。

みんな淡く、甘く、可愛らしい衣装がとても似合っています。が、里愛ちゃんだけはなんかちょっと似合わな過ぎて面白い……でも、そこが愛おしい。里愛ちゃん推しの私からすれば、なんか背徳感すらありますね。ぞわぞわします。

はい、余計なことも喋っちゃったので、これくらいにしておきます。

 

4.最後に…

Juice=Juiceの結成当初から応援している私からしたら、植村あかりちゃんの卒業は結構な事象でありまして。とは言え、思ったよりも動揺はしていないし、未来に対する不安も、オリメンを失った喪失感ってのもあまりないですね。単純にあーりーをもう見られなくなるのかもしれない(卒業後にどういう未来に進むのかは、まだよくわかってないですからね)ということに関して、悲しみを感じているだけです。

まじで、後輩たちがめちゃくちゃ優秀で、かつJuice=Juiceの魂をちゃんと継承してくれているのが伝わって来るので、グループに対しては特に負の感情は持っていないです。むしろ、あーりーがいなくなることで、また別の良さが引き出されるんじゃないかなという期待すらありますね(こういう言い方は、あーりーに失礼でしたかね…)。瑠々ちゃんがリーダーになったJuice=Juiceはどうなるんだろう(えっと、瑠々ちゃんリーダーはほぼ確ですよね)。れいれいは、どういう風に瑠々ちゃんをサポートするんだろう。ゆめりあいはグループの看板になるんだよね。3flowerは、さくりんごは、みっぷるは。そういうことをついつい考えてしまいますよね。

ただ、繰り返しになりますが、この『おあいこ』を聞いて、「私はヲタクとしてあーりーを幸せにしてやれたのだろうか」と考えずにはいられません。あんなに努力をして、歌もダンスも上手になり、献身的にグループを守り続けてきた彼女に対し、私の在り方は無礼ではなかっただろうか。そのことだけが気掛かりです。

だから、残り少ない期間にはなってしまいましたが、今から気合を入れ直して、しっかりとあーりーを応援していこうと思いました。もちろん、卒業してからもね。少なくとも「植村あかりちゃん、ってすごいメンバーがいたのよ」ということを語り継いでいくつもりです。今日、ここに、それを決心しました。皆さんもぜひ、よろしくお願いいたします。

TK from 凛として時雨「MAD SAKASAMA TOUR @仙台Rensa 2024.4.21」

TK from 凛として時雨のライブに行ったのは随分と久しぶりで、「egomaniac feedback tour 2021 @東京国際フォーラム ホールA」以来になりました。凛として時雨の方はちょくちょく行っていたんですけどね。昨年末の「Tornado Anniversary 2023 ~15m12cm~@東京ガーデンシアター」も最高でした。当時生活に余裕がなくて記事には起こせませんでしたが。今でもセトリを眺めながら頭の中であの素敵な時間をリフレインしています。ちょっと寄り道になりましたね。

今回のツアーは関東住みにはちょっと辛い開催地でしたね。ツアーファイナルのDOME CITYが平日ということもあり、行ける確約がなかったので、手が届きそうなのは仙台公演でした。仙台Rensaは一回、yonawoのライブでも行ったことがありましたが、あの頃はまだコロナ禍で、椅子が並べられた会場は結構広く感じました。が、今回はオールスタンディングで、ぎゅうぎゅうに人が詰まったフロア。かなりの後列でしたが、思ったよりもステージは近く見え、会場が小さく感じられました。こんな小さな箱で「てけふろ」が観れていいのかしら、ともう待っている間からワクワクが止まりませんでした。

 

少し回り道。

せっかくの仙台小旅行だしなぁ、と色々と計画していたのですが、前日に飲み過ぎて完全な二日酔い。結局、昼過ぎの新幹線に乗って、仙台に着いたのは15時。県立美術館は臨時休業、東北大学植物園も猪の襲来でエリア制限。むう、とGoogleマップとにらめっこした結果、中本誠司現代美術館なる面白そうな個人美術館を見つけました。異郷のバスに30分揺られ、大山カリーナさんという方の個展を観てきました。色彩豊かな絵と、面白い建築空間。あの45,000円の絵……アクリル絵の具で凹凸が際立った、水色の渦の上に銀色のラメの入った絵……綺麗だったな。買えば良かったかな。でも、これからライブだしな。1円も払っていないのにウェルカムドリンクで白ワインと、ワッフルをご馳走になり、満たされた気持ちを携えて、いざRensaへ。

 

 

1.プロローグ

そう言えば、TK from 凛として時雨をライブハウスで観るのは、もしかして2012年のDecember’s Calling@川崎クラブチッタ以来? 新曲の「Fantastic Magic」を聴いて、「なんだ、この曲は!? ファンタスティック・マジックって言ってるのだけはわかる!!」と衝撃を受けた記憶が今も鮮明に残っています。あの頃はまだライブ慣れしてなくて、TKの爆音ギターに耳をやられ、「バンドってこんなバカみたいな音鳴らしてんの?」と驚きましたね。

有名も有名。今やオリジナル曲から楽曲提供、タイアップから何から何までやり尽くして、結構売れているはずなんですが、そんなバンドがこの規模のライブハウスで観られるとは。なんて幸せ。おまけにサポートメンバーが、BOBOさんに吉田一郎さんですからね。ありえん、まじでありえん。ちょびっとだけjizueも齧っているので、片木さんが出ているのも嬉しいです。須原杏さんは……ごめんなさい。個人の活動までは追えていないのですが、よく「てけふろ」のサポートをしていただいているので、もちろん存じ上げてはいます。いつも煌びやかで、ヒヤっとするような旋律をありがとうございます。

せっかくの機会なのでちょっとインタビュー記事も拝見しましたが、クラシックをめちゃくちゃ聴いたり、ライヒが好きだったり、凄い音楽に精通されている方なんですね。まぁ、プロのミュージシャンなんだから当たり前と言えば、当たり前なんでしょうが。

話を「ライブハウス」ってところに戻すと、やっぱり迫力がエグかったですね。もう最初のSEの「kanazawan」ですら、いつもよりジャキジャキっと聴こえて、ぐぐぐとテンションが上がってしまいました。そして、何と言っても低音が突き上げて来る。ベースから受ける迫力がホールとは全然違います。歌声も、全ての音色がすごい生身な感じがして、直接に体を揺すぶられているような感覚になりました。会場の一体感も素敵でした。同じものを好きな人たちが集っている感じがとても良かったです。

またちょっと寄り道をすると、先日渋谷の「SYNCHRONICITY」に参加してきたのですが、そこで「betcover!!」を観て「ちょっとコレはやべぇな」となりました。一緒に行った友達とQUATTROの3列目くらいで「ヤバいの観たー!」と震えていたんですね。友達は「凛として時雨」を聴かないので、なかなか時雨のライブには誘えないのですが、うーん。今回の「てけふろ」に誘えばよかった。やや身内贔屓みたいになってしまいますが、やっぱり時雨も震える。美しい旋律に、ヒステリックな歌声、シャウト。痺れる洪水みたいなギター。これを感じたくて、320km/hの翡翠に乗って来たんですわな。

 

2.雑感

ライブ外のお話が多くなりました。ここからはライブについての雑感。

ライブ全体を通して思ったのは、「春だなぁ」って感じです。不思議と春色のふんわりとした感触を覚える楽曲が多く、それでいて夜桜のような色気もある、と。昔のドラマ「Dr.倫太郎」の初回を思い出します。芸妓の蒼井優が夜桜の中、堺雅人の唇を奪うシーン。なんかあのシーンの鮮烈な色気を思い出しました。あぁ、また話が逸れた。

もうすっかり20℃越えの暑い日が続き、東京では桜もあっという間に散ってしまいましたが、日中に歩いた仙台の郊外にはまだ桜(桜じゃないのかもしれないですが。とにかくピンク色の花)もちらちらと咲いていたりして、気分は不思議と切なく、TK from 凛として時雨の流麗な美しさをたっぷりと感じることができました。また、それがライブハウスのギザギザとした生々しい音像で聴けたのがいいですね。「そこで鳴らしている」感がとてもありました。

あとでセトリに混ぜて書きますが、珍しく「Addictive Dancer」を演奏していましたが、これが凄い嬉しかったです。春、感じちゃいました。「Dramatic Slow Motion」とかは颯爽とした春風を、「copy light」は柔らかく深く春の陽光と冷たい月の光を、「flower」は艶やかな花々を。中盤のこれらの楽曲から特に強く春らしさを感じました。まぁ、梅雨になれば、これらの楽曲から梅雨要素を感じるんでしょうが。TKの楽曲は季節感を名言している楽曲が少ないんですが(「秋の気配~」とか「サディサマ」とかありますけど)、どの季節に聴いても、その季節の空気感を引き出してくれるような気がします。2022年の「DEAD IS ALIVE」も「竜巻いて鮮脳」をテーマにして、あの梅雨のじめっとした季節を感じさせてくれたなぁ。とにかく、この「MAD SAKASAMA」も私の記憶に、「春」として刻まれました。ありがとう。

3.セトリ…というか、ごちゃまぜに。

SEは「kanazawan」。不穏な音像の中で、ドラムだけが何だか楽し気に鳴り響くこのSE。最初にサポートメンバーが出て来て、少し遅れてTKも登場。ひと際大きな歓声が上がります。もう既にこの時点で、高揚感がとてつもない。遠くまで響く、ギターのノイズ。でも、この後には本物のギターの轟音が待っている。そう思うと、居ても立っても居られません。

1曲目はいきなりの「unravel」。あまりにも有名になり過ぎたこの曲は、もはや時雨ファンにとっては前菜にしかなり得ないのか。そんな穿った聴き方をしてみても、やっぱりイントロのギターから渦に飲み込まれ、結局1番の歌い終わりで歓声を上げてしまいます。「unraveling the world」で本日1発目のシャウト。いやぁ、っぱ名曲っしょ。

2曲目は新曲「クジャクジャノマアムアイア」。時代が天上の梁に頭をぶつけたのか、まさかのNHKみんなのうたに採用された本楽曲。歌詞をちゃんと読めば、ちゃんとNHKしているのがわかるのですが、ともすればサイケデリックなこの楽曲。でも、すごいポップなんで、大きなお友達とみんなでワイワイと盛り上がりました。「サカサマ♪サカサマ♪」「マッサカサマ♪マッサカサマ♪」って拳を振り上げます。

3曲目はもう曲が始まる前からのイカレ・ディレイでその楽曲と予見できる「Abnormal trick」。この楽曲、めっちゃ好きなんですよ。いっちゃん、かっこいい。「egomaniac feedback tour」の映像なんて何回観たことか。ラストのギターソロの前に、ドラムのフィルインが入るんですが、ここがなんか三連符っぽい感じで、「うぉ、かっこよ」となった記憶。と、思って普通に「egomaniac~」の映像を確認してみたら、こっちでも普通に三連符でした。ライブハウスで聴いて気づくってことあるよね。もちろんギターソロには間違いなくヤられました。

そして、軽いMCが入った後、ここから怒涛の展開。たぶん、ここからの3曲は私の理想を詰め込んだ感じ。大好きなミドルテンポの楽曲が続きます。

4曲目は、まさかの弾き語りアレンジで始まった「will-ill」。TKの優しい声で歌われる「Transparency」が透明性の極み。歌い終わり、「⤵⤵⤵ ⤵⤵⤵ ⤵⤵⤵」と楽器隊が雪崩れ込んできて、一気に熱量が沸騰するんです(この矢印で伝われ!)。MVも含めて、めちゃくちゃ壮大なこの曲ですが、ライブハウスで聴くと凄いコンパクトにまとまっていて全然違う楽曲に聴こえます。でも、聴きごたえは音源の何十倍か。クレイジーでした。「さかさまにして…さかさまにして…」のところは、ツアータイトルや「クジャクジャ~」にも通じますね。

5曲目が始まる前のピアノの独奏。細切れの音が雰囲気を作っていき、そのまま「鶴の仕返し」のイントロへ。ワタシ、コノ曲、好きアルね。これもまた凄い夜桜感がありました。エロい。バイオリンの背筋をなぞるようなエグいメロディラインは言わずもがなですが、2番のテクニカルなベース、大サビの狂ったようなドラム、これらがライブハウスで聴くとまた凄くカッコイイ。心鷲摑み。TKのハイトーンの畳み掛けも鬼気迫るものがあり、脳が焼き切れそうでした。

6曲目は「Signal」。アニメも大好き。複雑な演奏って感じはしないんですが、シンプルなギターストロークとその音質からなのか、ピアノ、ベース、ドラム、バイオリンの音が総体的にもたらしているのか、この曲からはすごい「湿度」を感じますね。「春雨」って感じです。もちろん食べ物じゃなくて。春の雨、春の嵐。桜の花が散って、アスファルトに貼り付く。今年の東京の春は「Signal」的でした。ギターソロの音はもちろんエグかったんですが、これを弾いているときのTKの表情が凄い苦しそうで、よかった。私が被虐的な女性だったら、ちょっとどうにかなってたかも。

7曲目は「Wonder Palette」。今回のツアーはアルバム「white noise」からの選曲が多めでしたね。明るめの楽曲で、明るい空と桜吹雪を感じさせます。TK楽曲には珍しく結構幸福感強めなんですが、中盤には演奏技術的にエグいポイントも入っていたりして、ライブだとまた音源以上の緊張感があり、良いものを観れました。

8曲目は「copy light」。しっとりと柔らかく、春の暖かさ、夜の冷ややかさ、切ない気持ちを渾然一体として届けてくれるこの曲。確かな演奏技術の上で、音楽を盛り上げながら、TKがほとんど叫ぶようにして歌うこの一瞬。多くは語らずとも心にぐっと来るものがありますね。

9曲目は「Dramatic Slow Motion」。吉田一郎さんがいるので、当然「Reconstructed 2020 ver.」です。中盤のベースソロは圧巻。フロアも熱狂します。にしても、この楽曲って「ドライブ」の楽曲だったんだ、とMVを観る度にハッとさせられます。この曲もなんか颯爽とした感じが、春の心地いい風を想起させますよね。ちょっと浮遊感のある曲調も春らしい。

10曲目は「Fu re te fu re ru」。BPMも速く、攻撃的でありながら、色気もあり、伸びやかなメロディの美しさもある。どの楽器も主役級にカッコ良くて、そして3拍子と4拍子を行ったり来たりする楽曲構成についていける「自分、さすが」ってなる楽曲でもありますね。そしてライブアレンジは相変わらずで、はい、待ってました「ユ・メ・ミ・ル」。夢に出てきちゃう。世界が始まっちゃう。

11曲目は「Addictive Dancer」。こちらもアルバム「white noise」からですが、ライブで演るのは結構珍しくないですか? 少なくとも映像化されているのは観たことがない気がします。でも、この曲ってサビのメロディラインやコード感がすごい好きなんですよね。音源は音が濃密なので、どれくらい音が拾えるのかってので、イヤホン選びで使うことが多いです。ライブでも音源くらいの濃密さを感じることができました。これもとても甘い旋律、音像なので個人的には春らしさ全開です。

12曲目は「flower」。アコギに持ち替えたときは、もしかしたら「dead end complex」演ってくれんじゃないかと期待しましたが、安定の「flower」。嫌じゃない、嫌じゃない。むしろ好きな楽曲なので、演ってくれてよかった。この曲は本当にカッコイイですからね。カラフルな配色、妖艶な雰囲気、熟れ過ぎた春って感じですね。楽器同士の絡み合いがテクニカルでセクシーですし、ギターのフレーズなんか、まるで蔓や花弁が次々と絡みついて来るようですからね。

13曲目は、「皆さんの声を聴かせてください」的な煽りから始まって、「P.S. RED I」。まさか時雨のライブでみんなで歌うことになるとは…!「Oh Oh Oh O O O Oh !」と叫んで、「Break it down !」しました。やっぱこの曲、めっちゃ盛り上がるなー。Cメロの一気に切なさが染み渡っていく展開も良いし、でもやっぱりラストに向けて盛り上がっちゃうのもすごい良い。にしても、みんな声高ぇ!さすが時雨好きな人たちだ!

14曲目は、ラスト「film a moment」。まぁ、これ聴かないとね。てか、普通に演ってくれて嬉しいんですけど。原点にして頂点。厳かであり、神聖であり、魂に触れるような危うさもある。何回聴いても凄い構成の楽曲です。どこかからの引用なんかじゃない、TKにしか作り出せない世界観。この世界に魅せられて、私は凛として時雨が好きなんだよなぁ、と毎回思わせてくれます。本当に、少しずつ、一歩ずつ、楽曲が盛り上がっていくのが凄い。中盤で「film a momet♪」と曲名の歌詞を携えてサビっぽいのが来るけど、それをラストではさらに上回っちゃいますからね。そして、絶頂を迎えた楽曲は静かに幕を下ろしていくんですが、ライブだとここからがクライマックス。轟音とともに照明が世界を焼け尽くすように燦然と光り輝き、全てを薙ぎ払っていきます。

アンコール、まずはTKが出て来て、メンバー紹介。帰って来た堀川さん(BOBOさんの紹介です)。MCは軽くさらっとで、「激しいのいいですか」と煽って始まるアンコール1曲目は「first death」。もう何も考えられない。すげーって思いながら、音楽に身を任せていました。フロアも熱気に浮かれて、私には踊り狂っているように見えましたね。

そして、アンコール2曲目、ラストは2回目の「クジャクジャノマアムアイア」。やっぱりノリやすいですね。この曲は、お祭り気分で皆で拳を振り上げて、祝福すべき1日に手を振り、別れを惜しみ、それでも最後の1秒まで楽しみ切りました。

全体的に春らしさを感じつつ、最後には疾走感に身を委ねて、時雨らしいライブを堪能できました。ありがとうございました。

 

4.エピローグ

日曜日だから早く帰らなきゃ。急いで仙台駅まで戻り、新幹線の切符を購入。一応、自由度を確保しておくために事前には切符を買わないでおいたのですが、これが失敗。席が取れず、立席になってしまいました。新幹線の時間まで10分少々あったので、適当な駅構内の店で牛タン弁当を買ってから乗車。デッキで立ち食いという下品な行いに身を投じました。いつも会社の昼休みに駅前まで歩いて行く道中、弁当を食べながら歩いて来る禿げたおっちゃんを見て、「ああはなりたくないな」と思っていたんですけどね。

それはそれとして、知ってましたか? ライブ会場で新曲の「誰我為」を予約すると、A3クリアポスターが貰えるんですよ。今回の仙台ライブの目的の1つがコレでした。無事自宅まで送迎を終え、今は壁に貼り付けてます。うーん、良い眺めだ。

 

さて、日付を跨ぎました。早く寝ないと。

最近は色んなライブに行って、とても充実してるなぁ。お金も昇天してますが。でもね、心の充実感は何にも代えがたい。こうして文章を書くこともまた、心震える一時です。明日も寝不足背負って、仕事を頑張ろう。