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凛として時雨「aurora is mine tour 2023@KT Zepp Yokohama 2023.5.20」ライブレポート

約1年ぶりに凛として時雨のライブに行って参りました。まず一言、「最高に盛り上がったぜ!!!!」なライブでした。

コロナが第5類に格下げとなり、完全に歓声もOK、1階はオールスタンディングという久しぶりの感じだったわけですが、いやぁ、めちゃくちゃ盛り上がっていましたね。ちょうど1年前の「DEAD IS ALIVE TOUR」も同じ会場で観たのですが、その時は1階も全て席指定だったのでここまでの盛り上がりではなかったように思います。そう考えると、たった1年でも世の情勢は大きく変わったんだなぁと思わされますね。通勤電車が込んで来たなぁ、というのも目に見える変化ではありますが、ライブの記憶はまた格段に深く刻みつけられているが故、ライブの高揚感とともに何とも言えない感慨深さに浸っております。

 

aurora is mine tour

 

 

1.雑感

どうしても1年前の「DEAD IS ALIVE」との比較になりますが、「DEAD IS ALIVE」が「竜巻いて鮮脳」を軸に据えた高湿度で濃密なライブであったことに対し、今年の「aurora is mine」はかなり攻撃的でノリの良いライブだったように思います。ツアータイトルからしたら何だか逆な感じですね。

この間発売されたアルバム「last aurorally」に収録されている楽曲が攻撃的な楽曲が多かったこともあり、全体的にアップテンポな構成となっており、息を突く暇もなくライブが進んでいった印象です。TKのソロだと曲ごとにギターを持ち替えている印象が強いのですが、私が見る限り、今回のライブでは一度もギターを変えずにやり切ったと思います。曲間の小休止やチューニングに割く時間も最小限で、次から次へと楽曲が降り注いでくる感じが、時雨のライブではちょっと新しく感じました。また珍しくTKがよく喋っていました。後ほど詳しく書きますが、客を乗せるような言葉を要所要所で発していたのも印象的でしたね。観客の歓声の大きさ、フロア全体のノリも最高で、何となく今回のツアーの中でもこの横浜公演は盛り上がったライブだったんだと思います。

あとは毎度のことかもしれませんが、相変わらず照明が美しかったです。オーロラ、見えましたね。

と、そんな感じで非常に温度感が高く、満足度も高く、という最高のライブでございました。それではセトリも兼て、1曲ずつ簡単に振り返っていこうと思います。

 

2.セトリ

M1:Neighbormind

まず、1曲目が「Neighbormind」ってヤバ過ぎます。この曲はAメロの不安定なボーカル、テクニカルなドラム、超絶技巧のギターという非常に演奏難易度の高い楽曲という認識があります。そして間奏の神々しさと、サビのキャッチーさが個人的に非常に大好きな1曲。スパイダーマンを彷彿させる赤と青の照明が怪しく光り、一音目から凛として時雨の世界に引き込んでくれました。

M2:Marvelous Persona

近年の時雨の楽曲の中でも、構成やリズムパターンが結構シンプル目なこの楽曲ですが、だからこそライブ序盤で非常に盛り上がります。「Neighbormind」がテクニカルで濃密な世界観の楽曲だとすれば、こちらはとにかくノリが良くわかりやすい楽曲。345の切り裂くようなボーカルと、繰り返される狂いそうなギターリフが突き刺さってきました。

M3:laser beamer

すっかりライブの定番曲となってきましたね。この楽曲はとにかくAメロがTKの曲芸なんですよね。よくあんなギターを弾きながら歌えるな、と。印象的なぴゅんぴゅん言わせるリフのときにエフェクターを確実に踏むスキルも一級品。シャウトを多用する楽曲でもあるので、音程なんて関係ねぇ!と言わんばかりのゴリゴリの勢いがテンションを上げてくれます。そして毎回思いますが、例のリフのときのライティングがカッコ良すぎます。脳汁出まくりです。

M4:Super Sonic Aurorally

楽曲が始まる前にちょっとチューニングタイムがありましたが、ここで珍しくTKが一言。「凛として時雨です。沢山聴こえますね、魂の声が。オーロラ見えちゃうんですかね、今日は。最後までよろしくお願いします」と、オーロラ・フラグを立てて、フロアを盛り上げました。このときから、この横浜公演はおそらくかなり盛り上がっている方なのではないかという予感がありました。

そして、始まった楽曲はもちろん盛り上がること間違いなしの「Super Sonic Aurorally」。時雨らしいテクニカルな部分もありながら全編通してメロディラインがキャッチーなこともあり、非常にポップな一曲ですよね。この頃にはもう既にフロアはこれ以上ないくらいに盛り上がっていました。僅かに残っていた硬さなんて完全に消え失せ、楽曲の勢いに身を任せていました。いやぁ、やっぱり好きだわ、この曲。

あ、あとライティングも非常に美しかったです。「last aurorally」のアルバムジャケットを彷彿とさせるような、青と緑のオーロラっぽい色味が最高でした。

M5:竜巻いて鮮脳

イントロから歓声が沸き起こっていました。おそらく「DEAD IS ALIVE」のラストのあの盛り上がりを思い出した人が沢山いたんじゃないでしょうか。そして、イントロのライティング(竜巻を模してくるくると回転する照明)がまた美しいんですよね。サビのノリの良さはもちろんですが、楽曲ラストの狂ったように倍テンポになる瞬間はとてつもないカタルシス……めちゃ竜巻いてました。

M6:ラストダンスレボリューション

ずっとライブで聴きたかったこの楽曲。私はそこまでの古参ではないので、ベストアルバムにライブバージョンが収録されていたこの曲を、実際にライブで聴いたことはありませんでした。ただライブでさらに良くなるということは、ベストアルバムで知っていたので、いつか生で聴いてみたいとずっと思っていたわけです。その願望をこの度、遂に叶えていただきました。とにかく「ありがとう」とゆいたい。

前半は緩やかになったり、細かいリズムになったりを繰り返し、後半は劇的な展開を見せるこの楽曲。中盤でガラッとテンポが変わる瞬間には、あのベストアルバムのように会場から歓声が上がり、「これこれ!」となりました。ラストのシャウトの応酬は本当に頭がおかしくなりそうなくらい盛り上がりました。うーん、生で聴けて本当に良かった。あと、ミラーボールを使ったライティングが最高でした。とても美しかったですし、この楽曲が「オーロラ」と題するこのライブで披露されて良かったな、と思いました。何となく銀色っぽいなぁと感じていたこの楽曲に最適の証明だったと思います。

M7:DISCO FLIGHT

まぁ、これもイントロから盛り上がる外れ無しの1曲ですね。ただただいつものようにノっていただけなので、あまり記憶がないです。何回聴いてもこの曲のドラムが大好き。そして、間奏のギターソロもエグイ。実は楽曲構成も凝っているので、何回聴いても飽きないんですよね。不思議。

M8:seacret cm

激しいラインナップから一転、幻想的な凛として時雨を見せてくれます。少し全体的なセトリに言及すれば、この「seacret cm」から「illusion is mine」に繋がるのかなと思いながら聴いていました。何て言ったって、ツアータイトルが「aurora is mine」ですからね。でも、まさかの「illusion is mine」なし。まぁ、それもそれで時雨らしいからいっか(笑)。

と、少し話が逸れましたが、この「seacret cm」がかなり良かったです。スタジオライブバージョンの映像も観たことがあるのですが、その時も結構終盤に盛り上がりを見せて、原曲とはまた違った一面がありました。が、今回のライブのそれはスタジオライブバージョン以上。もちろん、序盤、中盤の静かで美しく抒情的な音楽性も素敵ではありますが、この攻撃的なセットリストに引っ張られるような形で楽曲ラストではかなりの盛り上がりを見せてくれました。TKのファルセットも強弱がついていて、美しくかつ激しかったです。

M9:abnormalize

この楽曲もすっかりライブ定番曲となりましたね。興行上外せないという部分もあるのでしょうが、やっぱり1音目が鳴った瞬間の盛り上がりは格別ですね。1拍目にアルペジオが鳴り始め、2拍目からボーカルが入って来る。この一瞬で涎が流れてしまうくらいには、私もすっかりパブロフに調教されてしまいました。この曲も定番曲なので多くは語りません。とにかく音の洪水に身を任せましょう。

M10:self-hacking

最新アルバム「last aurorally」の中にあっては希少なミドルテンポの楽曲。怪しげなベースのリフから始まり、浮遊感漂うAメロが長く続くこの楽曲は掴みどころがなく、あまり得意でないという方もいるのかもしれません。が、私はとにかくこの楽曲のサビのメロディラインが大好きなんですよね。一気にキャッチーになるじゃないですか。てことは間違いなくライブで盛り上がるわけです。そんな期待通りの展開を見せてくれた本楽曲であります。

一点気になるとすれば、Aメロのギターが被せの音源だったことですかね。まぁ、さすがにあれは弾きながら歌えないか。でも、それ以外のところでは、キメも完璧に合っていましたし、ベースもギターもゴリッゴリの音像なのでめちゃくちゃカッコ良かったです。

MC

ピエール中野さんが沢山喋っていました。Xジャンプをしました。俺たちはXになりました。

あと予備知識で、ピエール中野さんのインスタのフォロワーが1番多いのは、横浜市民だそうです。教えてくれました。ありがたいですね。あと、「横浜は熱量高いですね」と言ってくれたことも嬉しかったです。

このピエール中野さんのMCを楽しむというのも、凛として時雨のライブの大事な要素だと思います。これと345さんの物販紹介があるからこそ、何と言うか凛として時雨がバンドだと思えるんですよね。バンド、最高です。

M11:make up syndrome

珍しい楽曲をやってくれるな!と嬉しかった1曲です。ていうか、ライブで実際にギターを弾いているのを見て、この楽曲のギターリフがエグイことに気づかされました。なんであんなにハーモニクスを多用して、しかも綺麗に鳴らせるんだ……!? あと意外とドラムもエグイというか、表現力が問われるなと思いました。何となく音源を聴いているときには平坦な印象があったのですが、こんなに深みのある曲だとはあまり認識できていませんでした。これからちゃんと音源も聴いていこうと思いました。今回のライブを通して、1番音源とのギャップを感じた曲だと思います。

M12:Telecastic fake show

はい。この曲も定番ですね。ブレイクのところで歓声が上がったり、間奏の辺りでクラップが会場を包んだり、会場全体が一体となった感じがありました。ピエール中野さんのドラムもちょっと走り気味になったりと、ライブならではの良さを強く体感した1曲でもありました。本当に素晴らしいパフォーマンスを魅せてくれます。楽曲終わりの遊びのギターソロも非常にカッコ良く、痺れました。

M13:感覚UFO

いやぁ、実は私、ライブで「感覚UFO」聴くの初めてだったんですよね。ライブ映像は死ぬほど見てきましたが。イントロというか、曲が始まる前のあの前奏が「Telecastic fake show」から間を置かず始まった瞬間に、体に電撃が走りました。これを生で感じたかった。フロアも最高潮に達していました。

サビの激情的なバックサウンドを叩き割るような平板なボーカルのメロディラインが相変わらず狂っていました。そこから盛り上がらないはずがないシャウト。一体全体、どういう展開の楽曲なんだい。初見殺しとはこのことですが、初見でも「なんか盛り上がってるー!」となってしまうに違いない素晴らしい楽曲です。

MC

345のMCは相変わらず可愛かったです。中学生の頃、妹がハムスターを飼っていましたが、何故かいつもその頃のことを思い出します。小動物的な可愛さ。「オーロラ・マイクロファイバー・クロス」の紹介をするときに言葉が出てこなかった345さんをサポートするように、会場から「メガネが拭けます」と声が上がっていたのが面白かったですね。次に「オーロラ・タオル」を紹介すると、会場から「おぉ!!」と歓声が上がったりして、この横浜公演が盛り上がっていることが感じ取れてそれも良かったです。

M14:滅亡craft

ライブ終盤のこの曲はヤバイですね。イントロの内省的な雰囲気が素晴らしい一日の終焉を予感させます。なんで楽しい時間って、ほんの少ししたら寂しさに変わってしまうんだろう的なセンチメンタルに浸りながら聴いていましたね。

ただ曲に集中できない瞬間もあって。頭の隅っこでは、「滅亡craftをここでやるってことは、最後がアレキシサイミアスペアか」と考えてしまう自分は取り除けませんでした。その辺が私の集中力がないところですね。まぁ、それくらい「アレキシサイミアスペア」が楽しみだったという事でもあるのですが。

それにしても「滅亡craft」は何と言うか、酸いも甘いもを含んだ楽曲ですね。転調して明るくなる部分もあるのですが、そこでもTKが悲痛なシャウトを放つのでとにかく心が乱されます。そして最後にはイントロと同じフレーズに戻って来て終わるという。素晴らしい映画を一本観た後のような満足感がありました。

M15:アレキシサイミアスペア

正直、アルバム「last aurorally」の中でも力の入れ方が半端じゃない本楽曲。どれだけ時雨の持っている引出を詰め込んでいるんだという感じですよね。そして、この狂った1曲を演奏しきってしまう3人のミュージシャンとしての技術の高さにも驚かされます。

もう終わってしまうのか、という寂しさもありましたが、そんな儚い感情さえ圧倒して吹き飛ばしてしまう楽曲と演奏のエネルギーに感服しっぱなしでした。一分の隙さえなく、一音一音がクライマックスに向けて盛り上がっていく感じが「良いライブに来てるなぁ」と実感させてくれます。テレビ番組「Love Music」でも演奏が披露されていましたが、ぜひこのライブ、横浜公演での演奏をもう一度テレビで流してほしいと思いました。やっぱりバンドだから。生きてるものだから。盛り上がったライブのラストで披露される楽曲ほどに心を揺るがすものは無いと思います。それくらい素晴らしい演奏でした。

 

3.ライブ終演

いやぁ、久しぶりに手放しで盛り上がれたライブでした。最近行ったライブで言うと、yonawoやtoeなどがありましたが、それとはまた違った、凛として時雨でなければ体感できない類の激情がありましたね。やっぱり時雨が好きです。そのことを再確認しました。今回のライブは「last aurorally」という最新アルバムを引っ提げての公演ではあったのですが、最初に書いたようにコロナ規制が終了したこともあってか、何か古き良き時雨のライブに来たという感じがありました。何度も書きますが、それくらい手放しで楽しめたライブだったように思います。

私事にはなりますが、近く会社で部署異動の予定があり、そのことで漠然と不安感を抱く毎日が続いておりました。新しい場所で上手くやっていけるのか、今までの場所で自分は何か成果が残せたのか、そういう焦燥感や不安感みたいなものが頭の中を渦巻いていて、何をしていても落ち着かないという状態。新しく買ったゲーム(ゼルダの伝説)をやっている間は、何となくそのことを忘れていられるけど……でも、なんか日々が楽しくないんだよな。そんな感覚に苛まれていました。

そんな日常に合って、わずか90分弱という短い時間ではありましたが、心から楽しいと思える時間をくれた凛として時雨には感謝しかありません。ほんの僅かな時間であっても、そういうのが心のエネルギーとなり、また小さな太陽となって、じめじめとした部分を照らし出し、温めてくれるのだと思います。そんな奇跡的な一瞬を胸に、言うなれば自らの心にオーロラを飼って、明日もまた頑張っていこうと思います。

最後にもう一度。最高のライブでした!