霏々

音楽や小説など

極・歌唱 ~ TK from 凛として時雨 Birth or Death @KT Zepp Yokohama 2024.11.29~

歌がいいな、って思いますた

 

 久しぶりのTK from 凛として時雨でした。と言っても、春のMAD SAKASAMA TOURに参加しているので、欠かさずツアー参加しているわけではありますが。今回も例によってセトリとか事前に見ないで、「なにやるんだろう~?」とウキウキしながらライブ会場に飛び込みました。いやぁ、何とか仕事が終わってよかった。たぶん来週の月曜、Deathしてるんだろうな(月曜に追記:無事Deathた)。

 

 

 

 今回のライブは会場がZeppということもあって、音響は良さそう。時雨でもよくZeppでやっているので、そこは安心して臨むことができます。そう思っていたんですが、1曲目の『誰我為』から「あれ、ちょっとギター弱いか」という感じがありました。普段はもっとギターがぎゅいぎゅい鳴っているような気が……そんな違和感を感じながらもライブが進み、中盤で『contrast』、『Signal』、『蝶の飛ぶ水槽』という曲目が並んだ時にようやく「あぁ、これは歌を聴かせるツアーなのかもな」ということに思い至りました(本当はもっと早く気づけたはず。『melt』とかの辺りで)。

 そう腑に落ちた瞬間から、このライブのコンセプト(と勝手に私が思っているもの)に全乗っかりで楽しむことができました。いやぁ、TKのボーカルはすごい!狂気的な凶器。優しく包み込んだかと思えば、鋭く切り裂いていく。そしてシャウトでは粉々に磨り潰される。いつも以上に、そういった歌の力を感じました。

 そういった「歌」を支えるのは、まず和久井沙良さんの「コーラス」。『melt』とか最高でしたね。たぶん和久井さんがいたからこそ、より「歌」に特化した内容にできたのかなと思います。プラスで中尾憲太郎さんのピック弾きのベースというのも、音の粒が安定していてかつヌルヌルしているので歌によく合うのかな、と。天野達也さんのドラムも常にドラマティックで、かつポップなため歌ものによく合っているきがします。BOBOさんと吉田一郎さんのコンビはもう少しストイックでアーティスティックな方向に尖がっているような気がします。

 勝手なイメージですが、例えば『鶴の仕返し』とかはBOBOさん・吉田一郎さんのコンビで輝く楽曲だと思うんですね。独特の世界観と超絶技巧。私の大好きな楽曲ですが、今回その曲が演奏されなかったのもそういったところがあったのかもしれません。と、勝手に思っています。

 えっと、バイオリンやピアノについては触れられていませんが、それはまぁ私の能力不足ということですみません。でも、柔らかいところはもちろん素晴らしいのですが、それ以上にそれぞれのエグ味は随所に発揮されていたと思います。『Crazy Tampern』のような激しい楽曲でも、まったくブレずに優雅であり、かつキレッキレの演奏で胸を締め付けられたのが記憶にしっかりと残っています。

 

セトリ

 

1.誰我為

2.彩脳

3.Crazy Tampern

4.subliminal

5.melt

6.fourth

7.contrast

8.Signal

9.蝶の飛ぶ水槽

10.新曲

11.yesworld

12.Showcase Reflection

13.P.S.RED I

14.クジャクジャノマムアイア

EN

15.unravel

16.first death

 

 細かく振り返ってみますが、まず1曲目の『誰我為』。黒いギターを持っていたので、「『Shandy』始まりとかある!?」と変な期待をしたのですが、私の予想に反して現時点での最新シングル『誰我為』始まり。時雨の方で『Missing ling』始まりがあったので、そういうこともあるかと思ったんですけどね。ギターの音に関しては最初に書いた通り、いつもよりは控えめだったように聴こえたのですが、それでもギターソロはエグかったですね。あと、通常でも半音下げチューニングのはずなんですが、ライブバージョンはそこからさらに半音下げでした。これがTKの歌によるものなのか、和久井さんのコーラスによるものなのかはちょっと判別つかないですね。TKなら無理にでも歌おうとするような気がしますので、おそらくは和久井さんの音域の都合なのかな。

 続く『彩脳』と『Crazy Tampern』は、もうさすがに全員音楽のプロって感じでした。あれだけタイトなリズムでやれるなんてすごい。BOBOさんと吉田一郎さんでしか対応できないだろうと思っていた部分もありますが、あまたつさんも憲太郎さんも流石でした。あまたつさんは、BOBOさんよりもさらにとんでもない手数、そして迫力。憲太郎さんは前述の通り、ヌルヌルでした。私は結構ピック弾きのベースが好きなんですよね。345さんのベースで慣れているというのもありますが、特にTKさんのようなハチャメチャな楽曲を支えるうえでは、音が安定しているピック弾きの方がすっきりと締まるような感じがします。いや、もちろん吉田一郎さんの指弾き、スラップもめちゃくちゃカッコいいですが。まぁ、どちらにも良いところがありますよね。

『subliminal』はTKのシャウトがめちゃくちゃ尖がってました。突き刺さりました。スゴイカッコヨカッタ、ソレニシテモイイキョクダナ。アコースティックギターに持ち替えたので何やるのかな、『flower』かな。でもカポついてないし……と思ってたら、まさかの序盤の『subliminal』だったのでブチ上がりましたね。会場でも悲鳴が上がっていたように思います。やっぱこの曲、人気あるのかな。私も大好きです。

 ここからはしっとりゾーンで、『melt』、『fourth』、『contrast』。『melt』は上述の通り、和久井さんの歌もたっぷりと聴けて、TKとの掛け合いも非常に良かったです。そして、なんと言っても原曲は打ち込みなので、こうしてバンドの生音で聴けるのが嬉し過ぎる。『fourth』を聴くのはいつぶりだろう。もしかして初めてか。音源も昔はよく聴いていたのですが、久しく聴いてなかったこともあったので、何だか懐かしく感じました。ポエトリーリーディング的なパートもしっかりとTKの声が聴けて、凄い暖かい気持ちになりました。それでもどこか寂しくて、切なくて。すごい良かったなぁ。『contrast』は前半がバラードバージョンみたいな感じになっていて、これも珍しくてとても良かったです。ピアノが優しくて、優しくて。それまでは意外と音が埋もれてしまっている印象があったので、ここでピアノの端正な音が優しいメロディを奏でているのを聴けて、充実感もありました。それとようやく触れるのですが、プロジェクションが美しかったです。秋の並木道のような、紅葉を思わせるオレンジと赤と黄色の光。この季節にぴったりだし、楽曲『contrast』にもよく似合っていました。

 でも、プロジェクションに関しては、もう少し頑張ってほしい…!かも!(笑)。まぁ、逆にTKの音楽に合う映像って何なんだ、って話なんですが、普通のいつものライティングの方がソリッドで好きかもしれません。今回は歌に力を入れているという仮定に則れば、プロジェクションに挑戦したのもわからなくはない。でも、やるならもう少しお金をかけてみて欲しかったかな、と。もっと洒落た映像を使ったライブを色々と観てきている分、もっとやれるぞ!と思った部分でした。映像関係の方には大変失礼ではありますが。でも、きっと、もっと素敵な見せ方ができるはず!と思っています。

 そして、ふんわりと、そして怪しい感じの前奏?間奏?が1分ほど入ってから、『Signal』へ。この曲、本当に好き。そして、続く『蝶の飛ぶ水槽』も本当に好き。何が、ってそう「歌」が好きなんですよ。凄い良い「歌メロ」なので聴いていてグッとくるんです。そして、バイオリンやピアノが豊かに鳴っている感じも好き。楽曲のちょっと冷たい、けど湿度もたっぷりな感じも大好き。この2曲が続けて演奏されたことで、私はこのライブが「歌」にフォーカスしたものなんだな、と感じました。歌いたいけど歌えない楽曲たち、ベスト2です。

 新曲は何と言ったらいいか。インスタか何かにイントロ付近が上がっていたように思いますが、あの静かなイントロのまま行くのではなく、世界観はそのままどんどんポップになっていく感じで。四分音符×4の「E→F#→C#→D」みたいな感じのキメが繰り返されていてとても印象的でした。劇的とも言える展開だったのですが、そこには時雨特有のカオスな感じはあまりなく、きちんとずっとポップなままどんどん盛り上がっていくという感じがありましたね。音源が出るのが楽しみです。

 終盤戦は『yesworld』から。イントロの和久井沙良さんのピアノがなんか跳ねている感じがあって、ちょっと印象が原曲と違いました。ちゃんMARIさんの良い意味でダラっとした感じとはまた違う雰囲気が面白かったです。楽曲自体は全体を通して素晴らしく、でもここでもやはり和久井沙良さんのコーラスが良い味を出していたように思います。落ちサビのダークなバイオリンも凄いカッコイイと思いましたね。

 そして『Showcase Reflection』。ちょっとしたMCが入って、TKから「激しいのはお好きですか?」という煽りが。Yes, I do!って叫びたいのを堪えて、拍手で応えるしかできない自分が情けない。その煽りの通り、目まぐるしい演奏が繰り広げられます。しかし、個人的に面白かったのはここでプロジェクションが本領発揮をして「歌詞」を映し出したこと。なんで『ショーケース』で?この歌詞って、そんな映し出すタイプの歌詞だっけ?よくわかんない。でも、楽しいからいいんだ。もう。終始謎が謎を呼び、ラストではTKが雄叫びを上げて、このカッケェ1曲は終わりました。本当に何が何だか訳がわかりませんでした。でも、楽しいからいいんだ。もう(2回目)。

 そしてまたMCが入り、「ちょっとだけ、ちょっとだけ、ちょっとだけ、歌ってほしいんですが。珍しく歌えるところがあって。横浜が1つになることを願ってます」という確定演出が。『P.S.RED I』はもう会場全体で歌っていました。ていうか、みんなよくあんな高い声が出せるな。いやぁ、楽しかった。続く『クジャクジャノマムアイア』では、MVがプロジェクションに映し出されて、あの可愛らしい赤い虫が。改めて、TKの音楽が「みんなの歌」に取り上げられている現代の異常性を感じます。あんな殺伐とした楽曲ばかり作っていたTKが、ねぇ。ていうか、ラストが「みんなの歌」の曲ってことは、やっぱりこのツアーのコンセプトは「歌」だったんじゃ。って、なんでも自分の仮説に結び付けすぎ。確証バイアスかかりすぎ。

 アンコールはメンバー紹介から。ドラムのあまたつさんが「21:30」のBOBOさんのシャツを着ていたのが印象的でした。そしてもちろん演奏されないわけがない『unravel』。先日、THE FIRST TAKEのOnline Fes. でトップバッターを飾った本楽曲。相変わらず素敵な曲です。が、もう聴き過ぎて、改めて言うことは何もありません。どこからどこまでが過去の記憶で、どこからどこまでが今回観たものの記憶なのか。それがもうわからない。それくらい聴きました。でも、素晴らしいことは間違いがない。『unravel』が終わり、最後のMCへ。「乾燥で喉が死にそうだった。でも、会場の熱気で喉が潤って、何とか完走できそう」と笑いを誘いつつ、ラストの『first death』へと。もうこれは何も言うことがありませんね。めちゃくちゃに盛り上がって、終わりました。にしても、本当に毎回驚きます。あれ、弾けんのかよ。しかも、歌いながら。どういうギターボーカル? 驚異的でした。

 

終わりに

 ブログの投稿が遅れている…体調が悪い。日々辛い。自律神経が終わってる。強い疲労感と、若干の発熱状態。悪寒戦慄。関節が爆発しそうだ。勘弁してくれ。最初に書いたように仕事も終わってるし。

 でも、ライブがあるから生きていける。毎日は楽しいことばかりじゃないけれど、毎日が苦しいことだけってのでもない。この世界には煌めくものがあるし、たとえ僅かでもそういった時間を手に入れられるのであれば、まだ生きても行ける気がする。『ねじ巻き鳥クロニクル』の深い井戸の中に降り注いだ一瞬の陽光のように。

 ありがとうございます。