霏々

音楽や小説など

Juice=Juice - 雨垂れ石を穿つ - Queen of Hearts Special Flush

段原瑠々

 情熱と包容力が限界突破した時、圧倒的な覇気が解き放たれる。『好きって言ってよ』でソロコーナーのラストに現れたとき、空気が揺れ、空間が歪んだ。ゆったりと歩を進める様は安直に「ラスボス」と称してしまいたくなる。

 音響の兼ね合いか他のメンバーの声が少し聴きづらいときがあっても、瑠々ちゃんのパートになるとばっちりと聴こえてくる。そのマイク乗りと発声の安定感は全盛期の宮本佳林ちゃんに迫る。ただ、そんな安定感に安心感を覚えているときにこそ、彼女の獰猛な歌声に気をつけろ!結局は「だんるる大先生」に平伏す結果となる。

 

井上玲音

 ツヤ、キレ、コク。どこまでも味わい深い歌声で、聴けば聴くほどに沼に引き摺り込まれる。マイクを通した歌声が会場壁の固定端間で定常波を作るとき、つまり1番のスイートスポットを掘り当てるとき、客席が蕩け、総毛立ち、「れいれいがJuiceに来てよかった」と思う。

 これだけの逸材があの時、アイドルを続けるという選択をしてくれたことに日々感謝。しているというのに、『Future Smile』で魅せた挑戦的なフェイクは、「まだ成長してくれるの?」と感涙を誘う。いつでもカッコイイ姉御に今日も感謝。

 

工藤由愛

 もう「危なっかしい」なんて言葉もかけられなくなってしまったね。ひた向きな努力をしている背中を追っていたけれど、もう遥か陽炎の向こう。と思いきや、ゼロ距離で歌とダンスをぶつけて来てくれる。誰もが君のイマジナリー幼馴染。

 冗談はさておき、本当に上手くなった。「外さなくなった」とかではなく、もうちゃんと幹から、根から太い。それでいて高音の切れ味や張り裂けそうな鋭さは健在。正直、れいるるに並んだと思う。いや、言い過ぎか。まるでアキレスと亀のように追いつけない背中が目の前にいてくれるからか、由愛ちゃんも走ることを止めない。

 あと、安定して安定しないMCもまた健在。

 

松永里愛

 里愛ちゃんがいるといないとでは、Juiceというグループの音楽の解釈が変わる。ただ1人で、音やリズムの色味に効果が生まれる。角度と構図、そして意味が生まれる。『ラス・メニーナス』に描かれる鏡のように。

 ゆめりあいはれいるるを超えることができるのか。最近そのことばかりを考えている。「超える必要なんてない。それぞれがそれぞれの良さを持っている」そんな綺麗ごとはどうでもいい。れいるる在籍中に、ゆめりあいがれいるるを超える。それが至上命題である。由愛ちゃんが糸の切れた凧(タコ)にならないように、里愛ちゃんがきちんと手綱を握っている。ちゃんと握っていてもれいるるは超えられないかもしれない。いや、里愛ちゃんが何か新しい可能性を見つけ出してくれる。そんな予感がする。

 

有澤一華

 里愛ちゃんが音楽に解釈を生むなら、一華氏は音楽に品と教養を与えてくれる。一華氏もまた安定感を増し、常に心地いい音を届けてくれる。それでもまだ上に、れいるる、ゆめりあいが居るというのが恐ろしい。これだけ歌えて覇権が取れないことの意味が時々わからなくなる。

 しかし、瞬間風速は相当凄い。音と密着し、一体となって会場に迸る。特にソロの『ロマンスの途中』では、水色のペンライトも相まって田中れいなさんに見えた。切れ目なく歌い続ける、いわゆる「どこで息吸ってんの?」歌唱。それでいてリズムもばっちりだし、その中で上手く音も跳ね回っている。繰り返すが、これで覇権が取れないって何事?

 

入江里咲

 ディーバを多数擁するJuiceの中において、一貫して「可愛い」をやらせたら誰にも負けない。だんるる大先生も、里愛ちゃんも意外と可愛いの歌唱が上手い。けれど、本物の天然の「可愛い」は一味違う。由愛ちゃんやみっぷるの清涼飲料水の類ともまた違う、コーヒーカップの底に溶け残った砂糖くらいの甘さ。

 それだけ可愛いのに、カッコイイのも職人的にやり切れてしまう。カッコイイのが得意なJuiceには合わないんじゃないかな。でも、りさちがいるからJuiceなんだという説得力がある。結局のところJuice=Juiceというグループは一生懸命に頑張る女の子が好きだ。努力を続け、不安と自信、それから紛れのない誇りとともにステージに立つ姿がいつだって美しい。

 

江端妃咲

 特徴的なハスキーボイスはいつだって耳目を惹いて止まない。オン眉の前髪も、一見してお調子者とわかる八重歯も、どれもがエバちゃんをJuiceのアイコンにしている。彼女がはしゃいでいるだけで、れいるるゆめりあいの頬が綻び、ともすれば殺伐とした闘争になりかねないグループに柔らかさが生まれる。いや、れいるるゆめりあいも別に闘争感はないけれど。

 そんなキラキラで分かりやすい輝きを放つ彼女だけれど、実体としては愚直も愚直のド真面目の超努力家。毎回のコンサートで着実にスキルの成長を感じさせてくれる。明らかに1つ前のツアーよりも、声の迫力が出るようになっている。『四の五の~』のフェイクでそれを感じる。ソロの『銀テレ』では「宮本佳林を学んだな」というのがよく見えた。だから、江端妃咲が好きだ。

 

石山咲良

 さくらちはわかりやすく、パフォーマンスが伸びている。良く言えば、はっきりとした発声でスコーンと抜けていた。悪く言えば、棒読み感があった。でも、その「悪く言えば」の部分がかなり改善されて、様々な楽曲の良いパートを貰って、そこで「歌心」を見せている。もともとの発声が良いから、「歌心」さえ身に付けば無双し始めるのは火を見るよりも明らか。

「Juice=Juiceは誰も置いていかない」と煽りで言っていたけれど、たぶんそれは「自分もまた置いていかれなかった」という実感の現れなんじゃないか。皆がさくらちの成長を待っていた。手を差し伸べることこそ、私たちヲタクにはできていなかったかもしれない。けれど、ずっと見つめていたんだ。絶対に、さくらちに胸打たれる日が来るって信じていた。うん、待っていて良かった。そう思う今日この頃。

 

遠藤彩加里

 圧倒的な手足の長さ、スタイルの良さ、姿勢の良さ、クールな目元。ビジュで多くの新規を虜にしている昨今において、それでも歌を伸ばしてきている。体調不良で披露できなかった『裸の裸の裸のKISS』も、苦手な滑舌の部分で挑戦をしたのではないかと勘繰っている。ラテン調の曲にあかりんごのダンスが似合うのは言うまでもないけれど、スピード感が必要な歌唱に適応する必要もある。

 その挑戦が完全なる勝利であったかは、ちょっと判定するのが難しい。けれど、決して楽曲に置いていかれることはなく、しっかり適応はできていたと思う。また、あかりんごの低音ボイスで歌われる『裸の~』はかなり新鮮で、オリメンのそれより随分と大人びて聴こえた。ダンスもあかりんごらしい流麗さがあって、非常に面白かった。さくらちに負けず劣らず、日々成長しているあかりんごだからこそ、今以上にJuiceの起爆剤になってくれる未来しか見えなくてそれが嬉しい。

 

川嶋美楓

 現状、れいるるゆめりあいに最も迫るメンバーはみっぷるだろう。一華氏も強いが、一華氏がどちらかと言えば、縁の下の力持ちでありトリックスターであるという印象であるのに対して、みっぷるにはれいるるゆめりあいでさえ持ちえない、王道のアイドル力がある。赤色のリボンを身に付けた姿は、どこに居ても輝き過ぎてすぐにわかってしまう、そんなオーラがあった。

 もちろん歌も抜群に上手い。特にソロの『シンクロ。』は極上の1曲であった。ふと、「沖縄民謡とか似合うんじゃないかな」という思い付きが脳裏を掠めた。『涙そうそう』とか。透き通るけれどどこかに癖が入り混じる感じがハマりそう。盛り上がる局面では、熱量も感じさせることができるから、そこも彼女の天賦の才を感じるところだ。

 

林仁愛

「大型新人」という言葉は多分仁愛ちゃんの為にある。始まってしまえば緊張しないでライブを楽しめるところや、初の武道館でばっちりソロで『禁断少女』を歌い切ってしまえるところが、逆に可愛げがない。でも、MCで喋るとちゃんとどこかずれていて可愛らしく、「アイドルだなぁ」と思わせてくれもする。

 いつの間にか、仁愛ちゃんにメロメロになってしまう。また、みっぷるとは違ったタイプの王道アイドル。これで歌も独特の響きがあって、それでいてピッチ感やリズムも最高峰。そして、みっぷると並べたときの絵が見え過ぎるという謎の未来予知まで齎してくれるという逸材。Juiceに来てくれてありがとう。

 

副題について

 今の熱々のJuice=Juiceに対して「雨垂れ」という言葉を使うのはややイメージに反しているように思う。でも、この「雨垂れ石を穿つ」という言葉以上に、今のJuice=Juiceを表している良い言葉を思いつけなかった。「分水嶺を越える」はややありきたりだし、「相転移」や「閾値」、「活性化エネルギー」みたいな言葉は理系味が強い。

 言いたいことは非常にシンプルで、これまで腐らずに自分を磨き続けてきたからこそ、こうして『盛れ!ミ・アモーレ』という良曲とともにプチバズが起こっているということだ。結局、良い曲が来ても、そこで「素敵だな。もっと調べてみよう」と思ってもらうためには、何かしら観る人に伝わるモノが必要だと思う。Juiceはその「伝わるモノ」というのをずっと磨いてきた。実際、直近の『TRIANGROOOVE2』も『Crimson×Azure』もかなり完成度の高いものであり、The First Take公開後にアップされた『ひとそれ@Crimson×Azure』もかなりの好評だったと思う。

 今回の『盛れミ』のプチバズで少なくない新規が入ってきていると思われる。その新規がそのまま武道館に入ってきているというよりは、「新規に注目されてるみたいだし、ハロプロ興味あったから武道館行ってみようかな」という層も増えたようで、今回の武道館は超満員のステージとなった。

 これまでハロプロなんて知らなかった世間にまでJuice=Juiceが浸透したとまでは言わない。でも、その片鱗があったことは確かだし、それによって潜在的ハロヲタに興味関心を持たせたことはかなり大きなことだったと思う。まずはしっかりと身近なところから取込んでいきたいし、その方が変なバズり方をするよりもよっぽど健全だと思う。だからこそ、メンバーからも「また次も来たいと思えるようなライブを」という言葉が聞けてよかった。それこそそういった努力の先に、「雨垂れ石を穿つ」というように、本当の意味で世間にまでJuice=Juiceが浸透する未来も来てくれるかもしれない。

 そう言えば、『盛れミ』のバンドライブVer.が100万回再生を超えた。ちょうど武道館公演の日に。何とも嬉しいことである。このライブはヲタクたちのコール(もはやチャント)も相まって、かなりの熱量を感じるものである。こういう生の音楽の素晴らしさが伝わる映像が人気を博しているのが嬉しい。これもずっとJuice=Juice、もといハロプロが頑張り続けて来たことである。あまり音楽のライブとかに来たことがない人に伝えるのが難しいのだけれど、嘘でも誇張でもなく、やはり「音楽は素晴らしい」のだ。

 オケを流して歌うことも、クリックに合わせてバンドと一緒にやるのも、また別々の違った良さがある。完全にアコースティックでやるのもまた素敵だったりする。例えば、今回の武道館公演で、私が引いた席は2階のかなり後ろの方だった。故に、正直メンバーは良く見えないし、ビジョンも見づらい。しかも、音響もイマイチで、後ろのヲタクはコールの熟練者で声がでかい。決して、良い環境とは言えない。でも、それはそれで楽しかったりするのだ。不思議だけれど。

 結局のところ、音楽ライブをどう楽しむかは受け手の問題だったりする。川崎市政100周年記念イベントに行ったとき、洗足大学の演劇部だったかがパフォーマンスをしていたが、彼ら部員5名の人間関係を思い浮かべながら観劇したのもそれはそれで楽しかった。どんなイベントでも自分なりの楽しみ方を見つけることができれば、それを楽しむことができる。だからこそ、「音楽は素晴らしい」と思える。

 そんな風に言うと、「じゃあ、Juice=Juiceがどんなパフォーマンスしようが、客側の心持ち次第なんでしょ」と揚げ足を取られそうだ。それは間違ってはいない。でも、Juice=Juiceの楽しみ方の王道というのは、「音楽に真剣に取り組み、自己成長を成し遂げている姿を、客席が一体となって応援する」というものなわけであって。だから、そういう切り口を忘れずに全うし続けたJuice=Juiceが凄いのですよ。彼女たちは常にそこに挑み続けてきたんだ。それを続けて来て、そしてそれが遂に石を穿ったわけ。

 今回の『盛れミ』のプチバズは偶然の産物かもしれない。けれど、そのセレンディピティを捕球できたのは、日頃から売れるための努力を続けてきたからこそ。毎回のライブで自分たちのセールスポイントを磨いてきたから。そのことをヲタクとして誇りに思うし、頑張り続けてくれてありがとうと感謝の言葉を伝えたい。

 

 Juice=Juiceの良さについて、また何か記事を書きたいと思うけれど、とりあえず今言えることはこれだけ。各メンバーの素敵だったところと、遂に雨垂れが石を穿ったということだけ。いつも素敵なJuice=Juiceというグループには常に感謝の念を抱きます。これからも応援させてください!