霏々

音楽や小説など

『失神蠍@2025.11.03 Zepp Haneda』凛として時雨~失われたはずの神がここに~

 凛として時雨について書くのもちょっと久しぶりという気がしますね。もちろん時雨のことはずっと好きですし、何があっても聴き続けて来ました。が、私の言語能力が変わらない限り、結局時雨のことを表現しようと思ったら同じ言葉が並んでしまうという問題がありまして。色々と日々を過ごす中で、「今なら書きたいかも」というタイミングを見逃してきました。

 が、新譜が出た時点でまだ迷いがあったところを、今回のライブでしっかりトドメを刺されました。これは書かねばならぬ。だって書きたいんだもん。と、久しぶりの承認欲求もどきが湧いてきました。えぇ、承認欲求がゼロというわけではないんです。こう見えて。とは言え、このブログを読んでくださる奇特な方々が数少ないことも理解はしています。よって、所詮その承認欲求は満たされることがなく、結局は自分の中の衝動を吐き出すだけで毎回終わってしまうのです。

 前置きはこれくらいにして。

 

ツアービジュアル・日程

 

 いつもの『I dance alone』、そしてSEへと。今日のピリリリリという着信音(?)はいつもよりも鋭く突き刺さってくるように聴こえました。1曲目は『Sα. SO. RI.』だろうなと思っていたらまさにその通り。なぜ蠍なのか。まだちゃんと歌詞を追えていない身であるので、その答えはわからないのですが、でも蠍ったら蠍。地面を這い回るような不穏なギターフレーズは吐き気を催すほど、胃を突き上げてきます。とにかくハイスピードで駆け抜けていく楽曲ですが、ラストのギターソロが何と言ってもカッコイイ。アルペジオっぽく弾いているのかなと想像していた箇所も、TK流の激しいスライド奏法であることに仰天。目ん玉飛び出ました。

 そしてすかさず『竜巻いて鮮脳』。荒れ狂う雨模様、即ち夜海の竜巻を描く回転する青いライト。この演出がDEAD IS ALIVEの時から大々々好き。サビは乗りやすい8ビートで皆が跳ねていて、会場の盛り上がりを全身で感じます。が、やはりラストの「きゅい~ん」からの倍テンポのところで、フィラメントが弾け跳びました。エグイエグイエグイ!間違いなく今日のライブはあちぃ。そう予見させてくれます。

 もうどの曲が来てもいい。早く次の曲を…と待ちきれないところを射抜くのは『Trrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrue Lies』。たぶん「r」の数が全然足りていない。でも、会場の音は「rrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr」って感じで、「r」マシマシでした。途中のドラムソロなのかギターソロなのか最早よくわからない、マシマシのゲロゲロは「r」を何個積み上げても足りないくらいのクレイジーな音でした。およそ人間が生み出せる音ではない。それを聴いて悦ぶ奇特な方々。我々、最高の時間を共にしている。ぐわーんとなっている間に1曲が終わってしまいました。

 そしてお久しぶり(?)な『Enigmatic Feeling』。私は寝る時に『PSYCHO-PASS』を垂れ流していないと寝付けない病気に罹っているので、何かこの時ばかりは日常に揺り戻されたような気持ち。でも、全然眠くならない! ギターが歪みまくって、もう何がどう演奏されているのかわからない。けど、それがいいよね。素敵。記憶の音と、目の前の激音がコネクトして、間違いなく脳内でエレクト。そう言えば、この時くらいに気づいたのだけど、何かピエールさんのスネアの音がいつもと違うような。前はもう少し、「タンっ!」と小気味いい音だった気がするのが、今日はちょっと「バコンっ」と重ため。マットな雰囲気があって、これもまた良き。

 軽い一言があり、ほっと息をついていたら何ともクリーンで切ないギターの音色が。うーん、いったこれは何の曲で使う音色だろうか。ぼんやり考えていると、余韻を切り捨てるような「ジャキ」というカッティング。こ、これは、もしや秋なのか。秋の気配を感じちゃえるのか。全ての楽器が素晴らしく、また繊細な空気感で魅せてくれるわけですが、何と言っても圧巻はその右手。アルペジオ。どうして、そんなに正確に高速のアルペジオを奏で続けられるの。TK、なぜあなたはTKなの? ラストの切羽詰まったようなツインボーカルで胸がきゅっとなり、そしてアウトロでふっと悲しくなる。あぁ、素敵な秋だなぁ。

 で、奏でられる独特の色気あるコード感。これは来るな。えぇ、来ますとも。「ジャ…ジャン…………ドドタ、ドドタ」。345さんのうねるベースラインに釘付け。TKの不穏なアルペジオも鳴り響き、背中からせっ突いてくるようなシンプルなドラム。「イツカ、見える未来」と歌詞が変わっていたのも驚きでした。そう言えば、今日の会場には明らかに海外の方が多かった。目の前のフランス人カップルは「J-POP!」と叫ぶステージ上の彼らを見て何を思うのか。いいかい、これがJ-POPだ!!!!(大嘘)

 余韻も束の間、『DISCO FLIGHT』が来ましたわ。跳ねる群衆、空に突き出される拳。定番のナンバーではありますが、明らかにいつもより荒く激しい。特に、ギターソロのところでは終盤でツーバスが踏まれるなど、ここに来てまだ進化するのか、っていう。ここってTKの凶悪なギターを聴いていればいいんじゃなかったっけ。話が違う。そして、アウトロに入るところのリフがいつもならブリッジミュートしてるはずなのに、今日はバキバキに音を鳴らしていました。音源が完璧だから基本的に原曲に忠実に演奏する時雨ですが、ツアーイメージに合わせて微調整してくる辺りがさすがの玄人感ですね。

 忌々しく歪められたギター音。これはもう『laser beamer』。緑の閃光。左右にしなる光の鞭。もう触れたらキリがないので、ちゃんと触れられていませんでしたが、今回のツアーは照明もエグイ。もちろん定番の照明パターンも素晴らしいのですが、全体的にイカれた発光です。ビカビカに瞬いて、ちゃんと脳味噌から犯しておかしくしてくれます。この曲では、終盤のキメのところで、スネアが非常に重要な役割を担うわけですが、ここでスネアの音質が変わったことが非常に活きてきました。キレのある音も良いんですが、今日はなんか重い。三十路の女性の「私のことどう思ってる?」くらい重い。そんなこと言われたことないけど、なんかテキトーに雰囲気で喋っちゃうくらい良い味の出ているスネアでした。

 そして、待っていました。これは絶対にライブで聴きたいと思っていた1曲。『sick mind B rain』。TKの血管が弾け飛ばないかが心配な1曲ですけれど、やるったらやるんだ。そういう気概を感じますね。喉への負担が大きいかな、と思っていたら、間奏でずっとギターをかき鳴らし続けているので、腕への負担もハンパないことに気づく私。よかった。次はAメロ。少し休んで。どうせまたすぐ絶叫するのだから。会場を震わせる地獄みてぇなシャウト。シャウトした後にまたすぐに自分の歌割。本当に再現性考えずに楽曲を作る人だな。もう怖いよ。ちびりまちた。最後はなんかツーバス踏んでるし。原曲ってそうだったっけ。もうわからんけど、凄いからいいや。

 EPと同じ流れで『Black Sparkle』へと。神秘的な楽曲に合わせて確か美しい青いライティング。黒い光ってないんだよな。と、この楽曲の意味に辿り着きながら、青い光を浴びて、音光浴。延々となり続けるリバーブするギターが失われた神を想起させます。なんて神々しいんだ。でも、この曲をここでやるってことは、ラストは『Loo% Who%』だろうななんて余計なことも考えてしまったり。345さんのボーカルも光るこの曲は、時雨がただの凶悪バンドではなく、繊細で美しい世界観を持ったバンドでもあるんだと証明してくれています。

 そして、ピエール中野さんによる煽りが入り、今日は誰も捌けずにステージに立ったまま。めちゃくちゃ盛り上がる曲やるよ、というような宣言からの『nakano kill you』。もう荒い、荒い。最高に盛り上がって、会場に灼熱の波が。TKの歌うメロディラインも、もううねる、うねる。あなたそんなに色気たっぷりで歌ったら、みんな狂ってしまうよ。でも、色気じゃねぇ。この曲はそういうんじゃねぇんだ。ピエールさんのひた向きに打ち込み続けるドラミングが、全てを飲み込んでどこまでも我々を飛翔させてくれます。もう拍手が鳴りやまない。鳴りやまない。鳴りやまないと思ったら、なんだよ。なんだよ。『感覚UFO』が来ちまうじゃねぇか。たぶんこの繋ぎのところで、何人かは涅槃に辿り着いていますね。忘我の境地にドライブ・インでございます。会場の全員が7拍子のリフに頭を振っているという異様な光景。それが涅槃。でも、あれだけ熱気が渦巻いていたのに、コロコロと変わる楽曲の表情に合わせて、切なくなったり、潮らしくなったり、叫びだしたくなったり、結局叫んでいたり、忙しい我々。「あぁ、時間の中に」とセンチメンタルかと思っていたら、「ワン・ツー・スリー」で絶叫。最後まで駆け抜けて、短命な秋が盗んでいった疾走感をここに見つけたり。最後の一音まで最高でございました。

 一体これだけのものを見せられた後で、何が続くんだろうか。息を整えていたら、乾いたドラムのフレーズが。あぁ、そうかい。『Sitai miss me』なんかやってくれるのね。とにかく暴力性の高いセトリにしたいんだね。わかりましたよ。もちろん付き合いますとも。願ったり叶ったりとはこのこと。楽曲のシックでマットな手触りに反して、照明はカラフルなのがこの曲の不思議なところ。コード感を失ったフレーズでも、何故だかこの曲には得も言えぬ色気があるんですよね。そう思われたいわけではないでしょうが、『Sitai miss me』ちゃんはお洒落な狂気なんですよ。天邪鬼だから認めてはくれないんですけどね。

 そしてそこに続くのが『滅亡craft』。正直、私はこの曲をずっと愛しきれていなかったんですよね。イントロは好み。全体的に嫌いじゃない。でも、転調して明るくなるのはどうなの。私の前では常にキレッキレの反逆者でいて。優しさなんていらないの。そう思って接してきました。でも、やはりライブで観ると印象が変わりますね。真っ白の照明は天界のように明るく輝いていましたけれども、ステージの上では悪魔が絶叫してました。長調……ってなんだっけ? これは、なんだ? めっちゃ怖いんだが。童謡を流しながらグロテスクな殺戮シーンを映すなんて、ありきたりの恐怖演出じゃないんです。明るいコード感の中で、マジで発狂しているんですよね。これは数ある時雨の楽曲の中でも、他では感じられない恐怖体験。いやぁ、圧巻でした。

 物販コーナー。345さんが相変わらず可愛い。気の毒な各種小動物を思わせる可愛さ。爪切りの紹介の後、切った爪をがおーっと見せちゃうところも可愛い。演奏とMCの温度差に当人も困惑されている模様。でも、そこに責任感を感じてはいない。そこも可愛い。

 MCが終わるなり、食い気味に『Loo% Who%』のイントロがかぶさり、冷水をぶっかけられたみたいに心臓に痛みが走ります。MVを彷彿とさせるようなモノクロのライティングが、もうつまらない小細工は全てやめたんだ、というような限界ギリギリの集中力みたいなものを感じさせました。でも、この曲は謎の浮遊感があるから。ていうか、マジで謎な構成してるから。こんな曲を生みだせるのは凛として時雨しかいないから。なんで皆この曲を楽しめるの!? あなたたちみんな狂ってますよ!! もう、ずうっと「ふわぁ~↑↑↑」って全部どうでもよくなっていました。最高にカッコイイ、ということだけはわかる。

 で、終わるかと思ったらやっぱりやってくれた『Telecastic Fake Show』。もうお腹はいっぱい。でも、最後にこれで殴り殺してくれるなら、それも本望だよね。めちゃくちゃ早いの。荒いの。凶悪なの。あんまり記憶ない……だから、もはや何も書けることはありません。

 夜神月にキスされた後の帰り道のミサミサの気持ち。ぽわーん、て。大丈夫、一人で帰れる。送らなくていいわ。

 

 舞い上がったテンションのまま書き進めたら、文章と呼んでしまうには忍びない5000字となりました。これは文章というよりは、失神中のうわ言。でも、そこにこそ神はいる。太古の巫女はトランス状態になって神を降ろし、彼女のうわ言が予言となったと言います。ならば、私の書いた駄文の中にもきっと何かしらの神がいるのではないでしょうか。それはどこかで失われた神様の生まれ変わりかもしれませんね。なんつって。

 何はともあれ、年末の武道館も楽しみです。チケットが取れて何よりですが、武道館では『傍観』観られるかな。今からワクワクですね。