霏々

音楽や小説など

「有線ピヤホン」レビュー

本当は他の記事の抱き合わせで軽く書くつもり出たのですが、思ったより白熱したので単独の記事として投稿させていただきます。

有線ピヤホンを買った経緯については、こちらの記事をご覧ください。

 

eishiminato.hatenablog.com

 

まだイヤホンのエージングも済んでいないので、滅多なことは言えたもんじゃありませんが、「良い!」と思えた部分の方が多かったので、簡単にレビューのようなものを書かせていただきます。あくまで私が普段使用しているイヤホン(計5万円程度)やこれまで使って来たイヤホンを基準としたレビューになります。

 

1.アクセント

とにかくこの有線ピヤホンの凄いと感じたところは、「アクセント」ですね。「アクセント」という言葉が正しいのかわかりませんが、基本的に全ての音のアタック音がかなり明確に強調されているような感じがあります。Twitterなどのレビューでもよく「聴こえていなかった音が聴こえる!」とありましたが、確かにそうだと思います。それなりに良い値段のイヤホンを使っていると、流石に音が埋もれて聴こえないということはあまりないのですが、それでもこの有線ピヤホンで聴くと自分が聴き逃していた音の存在に気付かされます。打楽器はもちろん、ギターやベースのアタック音などもパキっとしていて、ちゃんと音が粒として聴こえてきます。

 

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私のイヤホン選びにおける1つの判断基準として、この「シュガーサーフ」という曲のベース音の細かい粒がきちんと聴きとれるかというのがあるのですが、この点に関して嫌ば、余裕でクリアです。ベースのスラップなどもパキっと聴こえてくるので良いですね。このように音の「アクセント」を際立たせているのはさすがドラマーのピエール中野さん、といったところでしょうか。

 

2.歌声

原理的には上の「アクセント」と多分に通っているのでしょうけれど、本当に色んな人のレビュー通り、「吐息」まで聴こえてきます。おそらくかなり小さな音でもうまく増強して、かつあまり反響し過ぎないようにしているため、ボーカルの「吐息」まで聴こえてくるのでしょうね。そのあまりの生々しさに「声フェチ」の人はぞくっとする瞬間もあるんじゃないかと思うほどです。

 

3.バランス

きちんと細かい音まで拾ってくれることもありますが、全体としての音のバランスも相当良いです。ボーカル、ギター、ベース、ドラムはもちろんピアノやバイオリンなど様々な楽器の音がちゃんと埋もれずに聴こえてくるのですごいです。「アクセント」と「バランス」をめちゃくちゃ繊細に調整していることが伝わってきます。情熱を感じますね。リズム(ノリの良さ)が重視される現代の音楽シーンにおいては、「全ての楽器の音がはっきりと聴きとれることが重要」という思想のもと、こういった調整が為されたのかなと思います。「リスナーに音楽を最大限楽しんでもらいたい」というピエール中野さんの心意気を感じます。

 

4.旨み(響き)

ここからは少し批判っぽい感じに読み取れてしまうかもしれませんが、大前提として「この有線ピヤホンは1500円という超低価格」ということを抑えておいていただきたいです。

とにかく上述の通り、「全ての音を届ける」というところでイヤホン入門編としては最高のスペックを誇っていることは間違いありません。ただ、「これ以上イヤホンに値段をかけるとどんな風に音楽が楽しめるの?」という疑問をお持ちの方のために、ちょっとだけ「有線ピヤホン」では届かなかった部分について喋りたいと思います。

例えば、料理で考えたときに、調味料で「マヨネーズ」「ケチャップ」「ソース」「醤油」「塩」くらいがあればとりあえず何とか料理にはなります。特に男の一人暮らしなんて、肉と野菜を炒めて、そこに上記の調味料を日替わりで使い分けることくらいしかバリエーションがありません。でも、まぁ白飯のおかずと考えれば、全然充分ですし、とても美味しく食べられます。言わば「有線ピヤホン」はこの「マヨネーズ」「ケチャップ」「ソース」「醤油」「塩」という基本調味料を最高のバランスで配合したものだと思ってください。とにかくこの特製ソースをかければ何でも美味しく食べられます。

でも……でも……あの高級レストランの味を家でも実現したいんだ。どうにかしてあの大好きなラーメン屋の味を再現したいんだ。そうなってくると、さすがに「マヨネーズ」「ケチャップ」「ソース」「醤油」「塩」というラインナップでは実現できる限度が出てきます。そんな壁にぶつかった時、どうすればいいか。そうです。お金をかけて、より高品質な調味料たくさんを買うしかないんです。

「有線ピヤホン」は1500円という超低価格で、本当によくできているイヤホンだと思いますし、熱量を感じますし、入門編として最高です。ですが、もう少しお金を出すと、まず音の「舌触り」みたいなものがかなり変わって来ると思います。「有線ピヤホン」の音に慣れると、もう少し高価なイヤホンの音は「ちょっと丸いかな?」と感じてしまう部分もあると思います。でも、それは「丸い」んじゃなくて、「太い」んです。「有線ピヤホン」は「うまっ!」と感じる部分を上手く抽出して、そこを聴かせることに特化しているようなイメージです。つまり、超ソリッド。でも、高価なイヤホンになってくると、徐々に素材本来の味を感じられる部分が増えてき、味に広がりを感じるようになってきます。「あぁ、このギターの音のつややかさ……たまらん!」とか「なんて壮大なんだ…!」というような部分が増えてきます。おそらく、クラシック音楽で聴き比べて見ると、差がわかりやすいかもしれません。音の厚み、深み、というのはどうしてもお金をかけて、様々な要素を組み合わせないと実現ができない部分があります。

そもそものアウトプットできる情報量に差が出てきます。喩えとして適切かわかりませんが、マヨネーズのあの蓋を開けて出て来る細い口と、キャップを回して開けて出て来るあの太い口くらいの差です。臨場感、音の広がり、生々しさ、聴き心地ということを追い求めるのであれば、やはりある程度お金をかけることには意味があると思います。

 

5.まとめ

有線ピヤホンは1500円という低価格で、現代の一般的な音楽を聴く上では非常に優れたイヤホンだと思います。あんまりイヤホンに興味を持ってこなかった方が、音楽を好きになるのに大きな効果を発揮してくれることでしょう。

ただ、もし「もっとイヤホンにお金をかけても良いかな」と思っている方がいらっしゃれば、ぜひ高価なイヤホンも試してみてください。それはそれでまた更なる発見と感動があるはずです。中には「思ってたより微妙だな」というものにあたってしまうこともあるかもしれませんが、耳も少しずつ変わって来るものなので、諦めず聴き続けるというのも手かもしれません。きっとそのイヤホン特有の良さに気付く場面も出て来るでしょう。

 

6.余談~私とイヤホン~

ちなみに、私はこの4年間くらいで同じタイプのイヤホンを3段階アップグレードさせてきました。

最初は3000円ぐらいのイヤホンでしたが、私はこのイヤホンのボリューム感にまず惹かれました。それまでのイヤホンは出口が小さく、音の広がりをあまり感じられないイヤホンを使っていました。それはそれで有線ピヤホンのようなソリッドな音(イヤホンらしいイヤホンの音)が楽しめていたので良かったのですが、ちょっとだけ奮発して3000円のものに買い替えた結果、とても臨場感を感じられる音を得ることができました。ただ、音の切れ味のようなものが若干失われていまい、またいま思うとあまりバランス感が良くありませんでした。低音の響きが強かったので、刺激的ではありましたが、音の輪郭がぼやけた感じがあったのも事実です。

そして、思い切って次は7000円のイヤホンに変えてみました。すると、音はかなり切れ味を増し、バランスも良くなりました。3000円の方のイヤホンの方が、低音が粗暴に鳴っていたのでそれが上手く矯正されてしまったのが、個人的にはちょっと残念でしたが、新たに手に入れたその切れ味の良さとバランスの良さから7000円の方に完全にシフトしました。これは結構長い間使い続けていましたね。ただ断線も多く、多分3回くらい買い直しています(修理とか面倒だし、時間がかかるのが嫌だったので、私はイヤホンが壊れるとすぐに買い直しに電気店に走ります)。

ただ、何度も断線を繰り返していたので、ここで私はいよいよ「リケーブル」に手を出しました。ネットで買ったものがあまり良くなかったので、電気店で店員に聴いて見ると、1万円くらいするケーブルをオススメされました。「本体よりも高いやんけ……」とは思いつつも、その頃にはもう働いていたので、清水の舞台から飛び降りるような気持ちで諭吉をレジに叩きつけました。が、リケーブルしてみてビックリ。もう全然音の彩度が違うんです。如何にケーブルという電線路にはノイズが乗りやすく、それによって音の本来の色味が失われていたかを痛感しました。特に、ベースのぼんやりとした感じが消え、かなりはっきりと輪郭が際立って聴こえてきました。

この時点で私はもう「ケーブルより高いイヤホンを買うぞ!」という気持ちになっていたので、意を決して4万円のイヤホンを購入。最初はなかなか7000円のものとの違いに気付かなかったのですが、次第にその4万円の凄さがわかってきます。まず、ピアノのタッチ音が全然違うことに気が付きました。「え、ほんとに同じ音源?」というレベルでピアノのタッチ音が違く、またよく聴いてみると響きにも煌めきが加わっています。そして、さらに色々な曲を聴いていったときに、TK from 凛として時雨の楽曲全般で大きな違いを感じることができました。あの音の洪水のような楽曲たちは、本当に音の洪水だったんだ、と気づかされたわけです。7000円のイヤホンでも充分音の出口が広がっていたと思っていたんですが、もう4万円は段違いです。それまで「なんか迫力に欠けるなぁ」と思っていたのは、音の出口で音が引っかかっており、ちょろちょろとしか音が流れていなかったからだったのです。もう4万円の出口がばがばのイヤホンでは、もう「これでもか!」というほどに音が勢いよく流れ出て来て、本来の楽曲の壮大さを初めて知ることができました。また、最近はベースのタッチ音や音作りがよくわかるなぁ、と感じ始めています。

お金をかければ良いというものでもありませんが、お金をかけることで得られるものも確かにあります。リケーブルすることで圧倒的にイヤホンの寿命は延びましたし、高価なイヤホンを買ってみて、またさらに音楽が好きになりました。

と、突発的にこんな記事を書いてしまいましたが、「有線ピヤホン」を私もオススメさせていただきます!

・イヤホンなんて何でも良いと思ってた!

・良いイヤホンは持ってるけど、壊れる可能性が高い状況で使うサブ機が欲しい!

という方にはオススメできると思います。

音楽を楽しみましょう!