霏々

音楽や小説など

2020-11-02から1日間の記事一覧

創作物目録

2013年 eishiminato.hatenablog.com eishiminato.hatenablog.com 2014年 eishiminato.hatenablog.com eishiminato.hatenablog.com eishiminato.hatenablog.com 2015年 eishiminato.hatenablog.com 2016年 eishiminato.hatenablog.com eishim…

幕間

南戸詠士(みなとえいし)は今日も仕事を終えて、会社の最寄りの駅まで歩いて行った。雨が降っている。濃紺の傘の生地は振り落ちる雨粒を受け止め、それがそれなりの大きさになるまで育てると、順番にひとつずつ端から落としていく。骨は一般的な傘よりもか…

Past and language

そしてまた何の抑揚も無く、最後の朝がやって来る。僕は固まった身体の節々に力を込めながらベッドの上で身体を起こし、鯨が海上に浮上した時のように低く長い溜息を吐く。カーテンの隙間からは、幾人が詩ってきた希望の朝陽が零れ落ちていた。 希望の朝陽か…

君たちが教えてくれたこと、僕が知ったこと

2杯目の缶ビールを開けて、底に泡が残っているグラスに金色の液体を注ぎ込んだ。狭い僕の部屋にはいつものようにリョウとマリとテツ君がいる。部屋にかかっている音楽に合わせてリョウは気ままに歌っていて、テツ君はチューハイを左手に、右手に持った本を…

Angry Blue

太陽が南中をわずかに過ぎたくらいの時分、荒廃した街のコンクリートの道の上を、瓦礫やその隙間から伸びる腰の丈くらいの雑草を避けるようにして、一人の女が悪戦苦闘しながら歩いていた。今はもう誰も、それこそ浮浪者さえ寄り付かなくなっている幾つもの…

Gray Scale

終電車に乗ると、私はいつも頭が痛くなる。正面には脊柱までアルコールに溶かされたせいで硬い背凭れのされるがままになっている、半目を開け、意識を失っている男。右斜め前にはブランド物の鞄に品の無いキーホルダーをぶら下げている、何故か二本ずつ傘を…

The future should be what you endure

僕が部屋の灯りを点けると、部屋の中をぼんやりとした黄色い光が満たしていく。冷たい夜風が、ほんの少し開け放っていた窓から入って来るので、僕は上着を一枚羽織ってから狭い部屋に一つだけ設けられているその両開きの小さい窓を閉めるために、そこへ歩み…

霧氷

霧氷 大学生の頃の記憶と言うとほとんど暗闇と安い酒の匂いばかりだ。朝が来ることを呪い、カーテンを隙間なくぴっちりと閉め、二日酔いを患いながら、騒々しい車の往来にイヤホンで耳を塞いだ。 もともと国道近くにアパートを借りたのが間違いだったのだ。 …