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音楽や小説など

【ほぼ日記】「宮本佳林 LIVE 2024 春 ~Hello! Brand new me~ RETURNS」@横浜Bay Hall

名古屋公演に引き続き、横浜公演にも参加してきました。大学時代のバイト先の後輩が結婚式に呼んでくれたので行けないと思っていたのですが、幸運にも2次会も含め早めに終わったので、急遽当日券で観覧できました。

以下、公演内容の主要な部分については前回の名古屋公演の記事に譲るとして、半分以上は横浜公演に至るまでの私の日常について日記的に書こうと思います。この気持ちを書き留めておくことが、今回の記事の目的です。

 

eishiminato.hatenablog.com

 

 

1.4/13(土)~14(日)に纏わる私の出来事

4/15(月)の夜、この記事を書き始めています。この土日が濃密な休日になるであろうこと、そしてまず間違いなくかなり疲弊するであろうことは目に見えていたので、今日はお仕事をお休みにしていました。案の定、ほとんど寝て1日を過ごし、佳林ちゃんのブログを読んで、何とか気合を入れてパソコンの前に座っています。

 

ameblo.jp

 

土日を振り返る前に、ちょっとだけ今日の話を。

今日は8時までゆっくりと眠り、朝ご飯を食べたり、だらっとしたりしつつ、10時ごろに家を出て病院に行ってきました。原因不明の発熱(37℃くらい)がこの1~2か月断続的に続いていたので、血液検査をしたのですが、その結果を聴きに行きました。基本的な検査を幅広くしたのですが、尿酸値と中性脂肪が高いというザ☆中年的数値以外は何も見つからず。結局、「心因性ですかね~心療内科の方の先生とも相談してみてください」というところで手打ちとなりました。まぁ、ここ1週間は発熱を感じることもかなり少なくなっていたので、一旦は良しとしましょう。心身のケアと、ダイエットを地道に続けるしかないですね。

病院に行っただけですが、すっかり疲れ果て、洗濯機を回してから昼食前に昼寝。セブンイレブンの冷凍パスタを食べながら乾燥機を回し、アイロンをかけてからまた昼寝。ベッドに横たわりながら佳林ちゃんのブログを読んで、「これではいかん」と重い腰を上げてランニングへ。葉桜を冷やかし、息切れから歩きに変え、半分以上は散歩と化した1時間ほどのランニングを終え、お風呂で汗を流します。風呂場の小さな窓を開け、浴槽の中から夕空を見上げるのはなかなかに気持ちの良いものでした。

そして、夕食を食べ、今日も漢方と炭酸リチウムを飲んでから、割と満たされた心もちの中、この記事を書き始めています。

 

さて、すでに長くなっていますが、それでは4/13(土)から。

土曜日は朝から歯医者に行き、1年かかった虫歯の治療がようやく終わりました。が、「やっぱり親知らずは抜いておいた方が吉ですね」という話になり、もう何回か通院が必要そうです。「痛いの嫌だなぁ。えりぽん、ひいては舞美ちゃんくらい腫れたらどうしよう」と思いながら、そのまま電車に乗って、渋谷へ。

「SYNCHRONICITY」というサーキットイベントに友達と参加してきました。1番の目的はトップバッターを務めた「toe」だったのですが、リストバンド引換に想像以上に時間がかかり、私たちがO-EASTに辿り着いたときには既に入場規制…結構ショックでした。まぁ、「toe」に関しては数年前の「SYNCHRONICITY」でもほぼ最前で見られましたし、地方の小さなライブハウスに遠征しに行ったり、結構ちゃんと追っているので今回ばかりは我慢しましょう。

いやぁ、それにしてもまさかリストバンド引換でこんなに手間取るとは。前回私が参加した時もかなり行列になっていたので、「toe」の出番1時間以上前に渋谷駅に集合したのですが、全然間に合いませんでした。前はO-EASTの辺りで引換だったので、何も考えずにO-EASTまで行ったのですが、引換所が見当たらない…スタッフの方に声をかけて尋ねてみると、なんと今回は引換所がWWWの辺りだということ。え、結構遠くね。私という泥船に乗せてしまった友人に謝りつつ、WWWの方に向かいます。

それにしても、O-EASTやWWWに駅から直接行く分には何も問題ないんですが、O-EASTからWWWに移動したことがないので、めちゃくちゃ道に迷いました。頭の中で「なんとなくこっちやろ」と検討をつけて歩き始めたはいいけど、まるで見当違い。地図アプリを使ってみても、どっちがどっちかイマイチよくわからない。人が溢れる狭い路地をいくつか抜け、女子大出身の友人が「『平成女学園』って見ると、なんか居た堪れない気持ちになる」と苦笑いを浮かべ、そうこうしているうちにようやくWWWへ。WWWの入口にいるスタッフの方に、またリストバンドの引換について尋ねると、「あぁ、ここじゃないですね」とまさかの一言。「宇田川36-14って調べてください。パーキングエリアみたいな感じのとこなんで」と説明してもらい、来た道を引き返します。そして、「役所みたいにたらい回しだな」と楽しく愚痴を零し合いながら、渋谷の街を散策しながら謎の呪文「宇田川36-14」を目指します。「『54-71』ってもしかしてなんかの住所からの引用なんかな」とか考えながら。

ようやく目的地付近に辿り着きましたが、そこにあるのは長蛇の列。列を辿っていくと、それはヨシモト∞ホールを超え、かの有名な兆楽のあるデルタ地帯へ。そこをまさに蛇のとぐろの様にぐるっと取り囲む形で、最後尾に並びました。春にしては暑過ぎる陽射しに眉を潜めつつ、「去年に行ったLocal Green Fes.も暑かったよね」「あそこで『離婚伝説』を知れたのは大き過ぎる」というような思い出話に花を咲かせながら、散りかける桜の花を見ながら、列が進むのを待ちました。

30~40分くらい並んだ後で速足でO-EASTまで戻ったのですが、先述の通り、既に「toe」は入場規制。まぁ、そうだよなぁ。タイムテーブルを見て、「とりあえず『Helsinki Lambda Club』行くかぁ。結局その後、『betcover!!』と『No Buses』観るし」と来た道をまた戻り、今度はQUATTROへ。開演15分くらい前につき、お手洗いやドリンク交換などなど済ませ、フロアに入場しますがまだ余裕のある客入り。開演直前になって徐々に人が集まり出し、「おぉ、これは結構位置取れたんではないか」と喜び合いながら本日1組目の演奏を楽しみます。

「Helsinki Lambda Club」は名前くらいは見聞きしたことがあるものの、ちゃんと聴いたのは初めて。紹介分の「サーフロック」や「サイケデリック」という文言だけが頼みの綱でしたが、実際に観てみると、とにかくベースの方が面白い。めちゃ前髪短いな、と思っていたら、踊りながらベース弾くし、中盤では「帰国したて、アメリカ仕込みのダンスを」とベースを提げながらむちゃくちゃなダンスを披露していてめちゃくちゃ笑いました。とても楽しいステージでしたね。終盤のシューゲイズっぽい轟音もすごいバンドっぽくて好みでした。

んで、いよいよお待ちかねの「betcover!!」。年明けくらいにDAXのチャンネルを適当に漁っていたときに「超人」のライブ映像を見つけ、そこでめちゃくちゃ気になったバンドです。このフェスのギリギリのタイミングで、幸か不幸か「Eight-JAM(旧関ジャム)」で取り上げられてしまい、個人的にはちょっとケチがついたな(要は、めっちゃ混んで遠くでしか見られなかったら嫌だな)と思っていたんですが、「toe」を断念して「Helsinki Lambda Club」から位置取りしていたおかげで、前から3列目くらいで彼らを観ることができました。

いやぁ、めっちゃ良かったです。ヤバ過ぎました。語彙無くなりますね。去年の映画「君たちはどう生きるか」もこの友人と一緒に観に行って、語彙を失くしてきたんですが、それ以来の衝撃でした。もう当日のうちに、4/24と6/10の対バンのチケットを取ってしまうくらいです。昨日、今日とずっと「betcover!!」聴き続けてますもん。世界観の渦に飲み込まれ、没入し、体の内側からぐちゃぐちゃになりました。いやぁ、めっちゃ良かった。ほぼ予習無しで行ったのも逆に良かったですね。予習無しでも確実に乗れるシャンソンのメロディに、予測不能のリズム展開を見せる楽曲はノリやすく、旧関ジャムで「和エロ」と評された色気と狂気の共存する歌詞、世界観がもう最高でしたね。本当に良いものを観れました。これだけでチケット代の元を取りましたし、「toe」を生贄に捧げた甲斐もありました。

そして、お次は「No Buses」。本当に客の入れ替わりの波に乗っていただけなのに、気づけば最前での観覧。友人はあまり「No Buses」を知らなかったので私に付き合わせてしまいちょっと申し訳なかったのですが、私はシンプルに彼らのファンなので間近で近藤さんとか見られてめちゃくちゃ嬉しかったです。ボーカルがほとんど声を張らないので、音源を聴いていないと何を歌っているのかわからないため、これもまた友人には悪いことをしたなと思いつつも、私はボーカルを脳内補完しながらとても楽しめました。先日、ワンマンも行ったのですが、また新曲「Slip, Fall, Sleep」も聴けましたし、ラストはやっぱり「Imagine Siblings」も聴けて最高でした。やっぱり彼らの内省的かつ暴力的な楽曲は、心の底からぐわっと来るものがありますね。シックでポップな楽曲も好きですが、やっぱりこういう楽曲があると締まりますね。

終演後、QUATTROを後にし、clubasiaへ「荒谷翔太」を観に行きます。「No Buses」と半分くらい時間が被っていたのですが、速足で行けば何曲かは聴けそう。もともと私の計画にはなかったんですが、友人が「この荒谷って人、『yonawo』の人ですよ」と教えてくれました。私が数年前の「Local Grenn Fes.」で彼女に「yonawo」を教えたのに、Vocalの人の名前を押さえていなかったなんて…恥ずかしや。目論見通り、最後に滑り込んで2曲だけ聴くことができました。「No Buses」ではほとんど歌声が聞こえなかったこともあり、「やっぱり歌っていいね。荒谷さん、ほんと歌上手いわぁ」と心がほっこりしました。

「荒谷翔太」のあとはラストの「KIRINJI」に向けてカフェで小休止。スタバで美味いのかよくわからないワッフルで小腹を満たしつつ、翌日一緒に参加する友人の結婚式や、結婚式一般に関する愚痴を言い合い、話しに花を咲かせます。そして何と言っても、2人とも度肝を抜かれた「betcover!!」について。「こんな年齢になっても、心の底から揺さぶられる経験ができるなんて幸せだ」と語り合い、頷き合い、甘い溜息をつきっぱなしでした。

そして1時間くらいゆっくりした後、入場規制がかかる前にかなりの早め行動でO-EASTへ。会場に入るとちょうど「リーガルリリー」が最後の曲のアウトロに雪崩れ込んだところで、階段を降りているうちに「じゃーん」と曲が終わり、ちょうど入れ替わりのタイミングに。そしてあれよあれよと言う間に、O-EASTの3列目へ。まじか。この近さで堀込高樹見られるんか。メインステージで「KIRINJI」がセッティングしているのが気になりながらも2ndステージの「Bearwear」の演奏を楽しみ、入場から約1時間。ようやく「KIRINJI」のライブが始まります。

大学時代に友人とカラオケに行って、だらっと「エイリアンズ」を歌ったところ、彼女が興味を持ってくれた「キリンジ」ですが、今ではすっかり彼女の方が「KIRINJI」ファン。そんな彼女に連れられ、昨年末にEX THEATER ROPPONGIにライブを観に行ったのですが、そのときやった曲がほとんどだったので、私もかなり前回より楽しめました。特に「The Great Journey」は前回のライブで勉強したのですが、これがやっぱりカッコよかった。ベースは終始カッコ良すぎるのですが、終盤の畳み掛けのドラムもヤバいんですよね。「killer tune kills me」で韓国語ラップを歌う高樹さんも最高でした。そのタイミングで歓声が上がっていて、「やっぱ皆コレ好きなんだな」とちょっと笑いました。

大々満足で帰路につき、本当はそのまま語り明かしたいほどだったんですが、翌日は同じ結婚式に行くので、ちゃんと早めに帰ることにしました。朝の10時から開式って早過ぎやしないか、と愚痴を言い合いながら。

神奈川のハブ駅で別れ、スーパーで缶ビールとつまみを買って帰ります。もうね、興奮冷めやらぬ、って感じでした。「さらば青春の光」のYouTubeを観ながらざっくりと酒を煽り、「明日も早いけど、もうちょっと」とブルイックラディの水色のボディにも手を出してしまい、気がつけばもうハイ。個人的に最近書きたいものが出てきたので、酒と音楽でぶち上げながら、キーボードをパタパタパタパタ。脳内のフィラメントが焼き切れるまで文字を打ち続け、1時を回った頃に完全にショート。顔を洗い、シャワーを浴びて、水をがぶ飲みし、布団に入ります。

が、案の定、疲れ果てているのに脳味噌がギンギラギンで眠れない。エスゾピクロン(通称ルネスタを何錠か水で流し込み)「いつ眠れるんだろう」と延々と何回も視聴済みの「攻殻機動隊」を子守歌代わりに垂れ流すも、結局4時過ぎまで眠れず。タチコマが家出してから、ひまわりの会が襲撃されるまで、あれやこれやとトイレに行ったり、適当にギターを触ってみたり、手を尽くしながら何とか眠りにつきました。が、20分寝ては、目が覚めてを繰り返し、結局超寝不足のまま式用のスーツに袖を通します。

 

さて、4/14(日)。結婚式編です。

私はこう言っちゃあなんですが、かなり結婚式が苦手です。怖い、と言ってもいいかもしれません。要約され、美しいところだけを切り取られた人生、飾り立てられた装いに誇張された演出。はい、これが正しき人生への祝福なのです。と言わんばかりのあれやこれやに打ちのめされます。何と言うか、自分が酷く間違った人間なんじゃないかと思わされるんですよね。特に、恋人と旅行に行ったときの、自撮りツーショット写真なんかがスライドショーで映し出されると、発狂しそうになります。内心では社会から振り落とされそうな気持ちを抱えながら、「わかるわかる。こういうのめっちゃ素敵。人生って素晴らしいよね。じんずば、だよね」と頷くマシーンに成り下がるしかありません(そうは言っても、結婚式に招待してくれるその気持ちは嬉しいし、幸せそうな友人の笑顔を見るのは良いものです。久しぶりの再会がある場でもあるし、全部が嫌というのでもありません。ただ私が勝手に、素敵な会食を土砂降りの屋外でやっているような感じになってしまう、というだけで)。

水飲み鳥が干上がるほど頷きを続け、ようやく閉式。早く始まった分、早く解放され、中でも仲の良い3人でカラオケへ。「ごめんね。もうね、この場を盛り上げるとかそういうのはしないから」と最年長の権威を利用し、先日カラオケ解禁となった「ハヌマーン」を歌いまくりました。「ネイキッドチャイニーズガール」「猿の学生」「アパルトの中の恋人達」「Fever Believer Feedback」「トラベルプランナー」、そして「アナーキー・イン・ザ・1K」でフィニッシュ。1時間ちょっとの隙間時間を一緒に潰してもらいつつ、旧Twitterで当日券があるっぽいというので、横浜ベイホールへと向かいます。

寝不足と精神的な疲弊で、灰と化した心身を桜木町から出発するバスに押し込め、貯木場前まで。私の体力をそのまま反映しているような、充電僅かなスマホで「betcover!!」を聴きながら、不必要にセンチメンタルな気分になりました。普段は全然バスに乗らないので、陽の傾いた街をバスで走っていると、何だか子供の頃に帰ったような気分になります。普段は着ないちょっと良いスーツ、腹回りがきつくなったスーツを着て、明らかに疲れ果てた表情で情念に塗れた音楽を聴いていると、自分の現在地を見失いますね。結婚式自体、結局のところ私にはよくわからないことで、アフリカ少数民族の割礼の儀式に対する共感度と大差ないなと思ってしまいます。どこか懐かしさを感じる車窓はかなり非現実的で、自分はタイタンにでもいるような気分にないます。トラルファマドール星人の代わりに、音楽だけが私の近くにいます。

 

と、そんなぐにょぐにょとした想いを抱えながら、初めてのベイホール。

無事当日券を購入し、ほとんど眠りながら最後列で開演を待ちます。影アナがアラームとなり、凝り固まった身体をほぐします。客席の照明が暗くなり、「か!り!ん!」コールが湧き上がり、少しずつ現実味が戻って来て、それから佳林ちゃんがステージに舞い降りた瞬間、「あぁ、これから私は救われるのだ」と天啓に打たれます。

はぁ、可愛い。はぁ、癒される。はぁ、救われる。

はぁ、可愛い。はぁ、癒される。はぁ、救われる。

はぁ、可愛い。はぁ、癒される。はぁ、救われる。

手を組合せ、跪きたい気持ちを堪えながら、瞼はもちろん虹彩まで極限まで広げて、最後列から佳林ちゃんを見つめました。「これが真の祈りの姿。今日の神父の嘘くさい祈りの言葉よりもこの祈りはずっと真実。ずっ実。」ってふざけられるのはたっぷり眠って正気に戻った月曜日だからであって、安息日には神聖な気持ちで教会に祈りに行くのが至上命題です。

結果的に私は浄化されました。魂の浄化です。えぇ、えぇ、決して怪しい宗教ではございませんよ。まぁ、前日にあれだけ素晴らしい音楽を浴びたわけですが、佳林ちゃんのパフォーマンスもまた同じくらい素晴らしいものでした。かつ私がとても追い込まれた状態でしたので、そこに佳林ちゃんの特質が重なり、「救済」感がハンパなかったわけです。

終演後にもらった「ザ☆アイドル」の良い紙でできたフライヤーをそのまま手に持ち(ご祝儀と財布だけだったので鞄無しで結婚式に行き、引き出物もQRコードタイプでしたので)、また貯木場前からバスに乗りました。夜の横浜の街は美しく、とても感傷的でした。輝いていた佳林ちゃんの姿を窓ガラスに反映させながら、また凝りもせず「betcover!!」で感情をぐちゃぐちゃにしてもらいます。あぁ、なんかもうよくわからん。めっちゃ疲れたけど、でも、めっちゃ揺さぶられた2日間だったな。そう思い返していると、少し泣きそうになってしまいました。

人でごった返す横浜駅。これで長い1日も終わる、と電車を待っている間、元会社の先輩から連絡が来ます。

「今から〇〇駅で飲まない?」

行かないという選択ができたはずですが、なんか自暴自棄になっていましたので、ついつい「もちろんです!」と返してしまいました。今思えば、素敵な2日間の締め括りを「先輩からのお誘いを断った」っていう後味の悪い記憶にしたくない、ってのもあったかもしれません。佳林ちゃんライブの感想ブログ(いま書いてるコレですね)を書くのは月曜にしよう、と気持ちを切り替えました。目の前に電車が止まりましたが、横に一歩ずれて、後ろの人に順番を譲り、私は階段を降りて別のホームへと向かいます。

 

ここからは蛇足ですね。とりあえず先輩に呼ばれた駅に向かい、そこの改札前で合流しました。よく男女2対2で飲むグループがあるんですが、そのうちの先輩が狙っている女の子と先輩が一緒にいました。駅前の小さな居酒屋に入って、「飲むばっかじゃなくて今度どっか外に行こうよ」とか「じゃ、花見とか」とか「いや、結局飲んでんじゃん」とか「だいたいもう葉桜だよ」とか、まぁ、あれやこれやと薄いハイボールを飲みながら駄弁りました。私は疲労が極限まで来ていましたし、そのせいでこのところ緩くやって来ていた「躁」に拍車がかかっていたので、いつになくめちゃくちゃ喋ってしまいました。「呼んだお前らが悪いんじゃ」とでも言うように、誰も興味がないであろう、サーキットイベントの話や佳林ちゃんの話を畳み掛けてしまいました。んー、反省。

あまりに私が意気揚々と喋るので、帰り際先輩と2人きりになったんですが、「お前、あの子のこと好きなの?」と勘違いされたほどです。ごめんなさい、そんな好きとか嫌いとかそういうのはもうどうでもいいんです。この2日間、鮮烈な衝撃にぶちのめされ、自己否定の堕獄に逢い、そして天使からの救済を受けたんですよ。壁の塗り替えが行われたあの日のグラース家くらい、すごい事が起こっているんですよ。もう私はこれからフラニーのように夢のない深い眠りに落ちるだけなんですよ。そう叫びたい衝動を何とか堪え、「また飲みましょう!」と先輩を見送りました。

家に着き、一張羅だけちゃんとハンガーにかけ、シャワーを浴びてから何をするでもなく、すぐに寝ました。深く、案の定、夢もなく。

 

と、そんなことがこの4/13~14にかけての出来事でした。いやぁ、長くなりました。でも、私がどれだけの想いを佳林ちゃんに向けられたかというのは、これだけのことを書かないことはうまく記録ができなかったのです。まぁ、もし万が一にもこの文章を読んでいる人がいるとすれば、きっと「長ぇよ」と思うでしょうから、生成AIに400字で要約してもらいました。

 

記事の要点は、筆者が土日を振り返りながら、病院での診察やライブイベントに参加した経験を述べています。土曜日に歯医者に行き、ライブイベントに参加して、「toe」のライブを逃し、リストバンド引換の混雑に苦労しました。その後、別のバンドのパフォーマンスを楽しみ、友人と過ごす中で感じた興奮を表現しています。日曜日には結婚式に出席するため、早めに帰宅しようとしましたが、興奮が冷めず、なかなか眠れない夜を過ごしました。
4月14日、結婚式に参加。結婚式が苦手で、自己否定感に苛まれる。カラオケでリフレッシュ後、バスで佳林ちゃんのライブへ。彼女のパフォーマンスで心が浄化される。終演後、先輩に誘われて飲みに行くが、疲労困憊で躁状態になり、つい喋り過ぎてしまう。帰宅後、すぐに寝る。

 

ということらしいです。はい、素晴らしいですね。私の言いたいことが端的に伝わります。

 

2.佳林ちゃんのライブについて

まぁ、これが本題なわけですが、最初に書いたようにライブレポート的なものは名古屋公演の記事に譲ります。なので、ここではあまり書くことがありません。同時に、書く体力も書く時間も残っていません。だいたい私は11時には寝て、8時間くらい寝ないと翌日非常に体調が崩れてしまうタイプなのですが、6時から書き始めたこの記事の、その1章を書き終えたのが10時過ぎということに戦慄しています。

まず言っておくとすれば、私が参加したのが、佳林ちゃんにとっては、4/13埼玉2回公演、4/14神奈川2回公演というひとまとまりの最終公演だったということです。つまり、佳林ちゃん的にも体力や喉などの面で結構不安があった公演だったようです。ライブ序盤は確かに「ちょっと疲れているのかも」という面もありましたかね。フレーズの最後の一音が伸びるところで、ちょっとピッチがずれたりというところもあったかもしれません。それでも歌っていくにつれ明らかに会場も熱を帯び出し、佳林ちゃん自身もノっていき、最後にはとても強い一体感が生まれた公演でした。ベイホールという会場も初めてだったのですが、放射状に広がっていく客席のその円の中心に美しい佳林ちゃんがすっと立っているというのが観ていて心を掴まれました。

セトリはほぼ名古屋公演の通りで、「優柔不断だね、Guilty」が外れ、「Lonely Bus」の後に発売前の2ndアルバムから「アンフェアな事情(表記不明)」が追加されました。新曲は4つ打ちのダンスミュージックでカッコイイ感じでした。個人的には、途中でちょっとしたMCを挟んだものの、「イイオンナごっこ」→「Lonely Bus」→「アンフェアな事情」という3曲の流れが凄い好きでした。佳林ちゃんの良いところと、類稀なるスキルが存分に堪能できました。

名古屋公演の記事でも繰り返し書き連ねましたが、本当にの中盤の3曲がエグイんですよね。本当に皆に1回観に来て欲しい。めちゃくちゃ流麗かつ洗練されたキレと艶美が共存する踊りと、一切ブレない歌声。ブレないどころか、筆の毛先くらい繊細に歌っているんです。本っ当に宮本佳林が極まっています。リストの超絶技巧を見せられてるんか、ってくらいのハンパない技術。ハロプロという文脈で、歌って踊るを極めるとここに行き着くんだな、って思わされます。

しかも、そのうち「イイオンナごっこ」と「Lonely Bus」は客を座らせて、コールもさせずに見せつけてくるんですよ。客が座らせられたときは、最初は「あぁ、『氷点下』とかバラードをじっくり聴かせるタームなのね」と思うんですが、それだけではない。名古屋公演のときは「何となくコールさせたい曲じゃないから」くらいだろうと思っていたんですが、今回の横浜公演ではしっかりと佳林ちゃん自身の口で「歌とダンスをしっかり見てもらうコーナー」と明言していました。要するに、「これが宮本佳林のスキルじゃ。どや」ってことですよね。もう、あんたは最高だよ。ほんと、目ん玉ひん剝いて観させていただきやした。ごっつぁんです。めっちゃ凄かったよ。

「Lonely Bus」が終わって軽いMCが入るんですが、もうめちゃくちゃ息が荒れているのが伝わって来るんですよね。「はぁ」と溜息を口にして、会場に小さく笑いを届けていましたが、まじでそれくらい大変なことをしています。私だったらたぶん1週間くらい動けなくなってますね。スキルという観点で言えば、この2曲に全身全霊を注ぎ込んでいることがよくわかります。

そしてMC後に客を立ち上がらせて、簡単なアルバムと曲紹介をしたのち、「アンフェアな事情」が披露されるんですが、これもまた「イイオンナごっこ」と「Lonely Bus」に続いてバキバキに歌って踊るんですよね。いやぁ、凄かった。本当に良いものを観ましたよ。仮にこの記事に辿り着いた人がいたとしても、1章の日記は読んでないと思いますが、「betcover!!」と同じくらい、この3曲は凄かった。それまでのアイドルに対する認識をぶち壊されます。カッコ良すぎでした。

 

アンコールの「未来のフィラメント」も凄い良かったです。コピンク*関係や「銀テレ」、もちろん「氷点下」なんかも佳林ちゃんの特徴を活かした歌唱が光る楽曲ではありますが、この横浜公演では「未来のフィラメント」が凄いよかった。基本この曲はキーが高いんですが、4公演目の終盤で疲れているにもかかわらず…いや、むしろ疲れているからこそなのか、力みなく澄み渡る歌声が堪能できました。めっちゃホーリースラング的なニュアンスもありつつ、本当に神秘的でした)。本公演はカメラが入っていたのですが、どういう形でも良いので映像に残してほしいですね。

 

そして、恒例のMCですが、今回は佳林ちゃんのステージングに対する意識の変化について。小学4年生の活動当初から「パフォーマンスを通して幸せな気持ちになってほしい」という想いは変わっていないそう。うん、うん。そうだよね。それが佳林ちゃんだよね。その強い意思に何回も救われ、感動させられてきたし、その指針は今もJuice=Juiceにしっかりと受け継がれているよ。

でも、一時期はその気持ちが行き過ぎて、「パフォーマンスじゃなくて、目が合ったり、手を振ってもらったりしたことが嬉しいんじゃん。そんなんに迎合していたらパフォーマンスが荒れる!」ってな感じだったそうです。それが今では大人になって、「どんな形であれ、私のステージを観に来た人がその人なりに幸せになってくれればいい」と思うようになった。だから色んな角度から向上心を持って、これからも頑張りたい。まぁ、もちろん最優先は歌とダンスなんですけど(←あんた、やっぱ最高だよ)。皆にとっても、頑張りたいときに背中を押し、頑張れないときに癒す、そうやって幸せの一因たる宮本佳林でありたい、というようなお言葉(大意)を頂きました。

本当に佳林ちゃんはすごいなぁ。そして私の中では佳林ちゃんが言ったことは、寸分の狂いもありません。頑張りたいときも頑張れないときも私を幸せの方へ導いてくれる、まさに天使みたいな存在です。それがこの記事の1章で、だらだらと8000字かけて言いたかったことなんです。

 

終演後、お見送り会に頑張って参加しました。本当に緊張します。「来て良かったです。ありがとうございました」。それだけを何回も何回も心の中で練習し、心臓がはち切れそうになりながら、また上手く目を見ることもできず、もごもごと申し述べさせていただき、佳林ちゃんの「よかった~」というお返事を取りこぼしながら逃げてきました。できることなら、アルバムを予約して、お話し会にもとても参加したかったです。が、絶対無理ですね。気失いますね。

 

3.最後に…

「気失いますね」で終わるのは忍びなかったので、ちょっと一言。

自分の事ばかり書いて、この記事はいつも以上に良くない記事。わかってます。でも、包み隠さずに、佳林ちゃんに「救われてるよ。ありがとう」ということを真剣に伝えたかったのです。

私はLINEが苦手です。こまめに連絡を取ることが面倒くさい。村上春樹が描く時代のように、文通で互いの気持ちを確かめ合っていた時代であれば、私ももう少し周囲の人に対して「大切にされている」と実感させられたのではないかと常日頃思っています。そんな自信過剰の波に乗って、どうにかこうにかこの感謝の念を佳林ちゃんに伝えられたら。

「へっへーん、あいつこんな分厚い手紙書いて寄越してきたぜ。まじ何書いてっか意味わかんないけど」くらいには思ってもらえるよう、とにかく便箋とインクだけは沢山使いましたんで。だから生成AIに要約されると困るんですよね。12,300字。すなわち197,000ビットを詰め込んで、ネットの海にボトルメールを流します。漂着した瓶を開けて、これを読んだ人はどうか「ダッセ、つまんね」と失笑してやってください。

私の駄文は乱射乱撃雨霰、それでも伝われ感謝感激雨霰。

「宮本佳林 LIVE 2024 春 ~Hello! Brand new me~ RETURNS」@NAGOYA ReNY limited

素晴らしいモノを観てきたので、その記録をば。

 

 

1.前書き(本論)

久しぶりに佳林ちゃんのライブに参加してきました。関東住みなんですが、4月中旬の埼玉や横浜のライブには友人の結婚式などの予定が入っており行けず…仕方がないので新幹線代を捧げることにしました。うーん、この2万円が佳林ちゃんの懐に入ればいいのになぁ。

と、いきなりお金の話をしてしまいましたが、わざわざこんなことを書いたのは「そうまでして行きたかった」ということを伝えたいがためで。実は佳林ちゃんのライブに行ったのは、2021年のダリア公演が最後で、それからしばらくは日程とか、あとはまぁ体調とか、そういう諸々が上手いこと重ならなかったんです。「佳林ちゃんに会いたい」という気持ちは、春先の梅の香りのようにぼんやりと漂ってはいたのですが、一生懸命予定を組んだり、チケットサイトにアクセスしたり、最近更新したクレジットカードの新しい番号を入力するのが億劫だったり…色々な障壁があるわけで。それらを乗り越えるには私は疲れ過ぎていました。

が、昨年末。1~2か月ほど遅れて…そう、日々の忙しさにかまけてなかなか追えていなかったせいで生まれてしまった多大な遅れを取り戻すべく、M-line Musicを片っ端から喉の奥に詰め込んでいた時。その時に、とんでもない動画を観てしまったのです。

 

www.youtube.com

 

このM-line Specialで披露された『Lonely Bus』のパフォーマンスがエグすぎて、「とととととととtttttttttとんでもないことになってrrrrrrrるぅぅぅうぅぅう!」と叫びました。宮本佳林、ここに極まれり。かつてこの域にまで達したアイドルがいたのだろうか。人間国宝が生み出した繊細で艶麗な陶器の一品の如き、鋭敏かつ洗練された感性。もう史上最大の賛辞を贈るよりほかに私にできることは、「次のツアーは何が何でも絶対に生の宮本佳林を拝みに行く」という決心をすることだけでした。

話は一旦少しばかりズレますが、『バンビーナ・バンビーノ』を佳林ちゃんが貰ったタイミングで、「おっ、キャッチーで良い曲じゃーん。これは次のシングル、買いだな」と思っていたのですが、約1か月の時間をおいて発表された同シングル収録の『Lonely Bus』を聴いたときに「うわっ。めっちゃ佳林ちゃんに合う曲来たじゃん。こんなん買わずにいられるかい」とピコンと来たのが記憶に残っています。センチメンタルな曲調、細やかでいて滑らかな、そして要所々々でファルセットを多用するテクニカルな歌唱が必要とされる楽曲。また、今やハロプロらしさを体現する、星部ショウさん作曲に、大久保薫さん編曲というゴールデンコンビ。こんなの佳林ちゃんが歌ったら100%ハマりますやんけ。と、感動を覚えてはいたのですが、そのとき丁度忙しかったり、なんだりで、20日後に公開される上記のライブ映像には辿り着けずにおりました。

と、もう一度、M-lineのライブ映像に話を戻しますが、やっぱりこの『Lonely Bus』のパフォーマンスはちょっと尋常じゃないですよね。

まず『Lonely Bus』という楽曲自体がめちゃくちゃ佳林ちゃんにハマっているのは言わずもがな。繊細なガラス細工のような佳林ちゃんの歌声で歌われて、楽曲も喜んでいるのが伝わってきます。上述の通り、ファルセットを多用するテクニカルな楽曲ではあるのですが、それを難なく歌い上げる、どころか最高に軽やかな情感を込めて、さらっと歌い上げるその研ぎ澄まされた技術は、もはやJuice=Juice時代に魅せていたモノを軽々と超えています。どころか、さらに度肝を抜いてきたのは、佳林ちゃんのめちゃくちゃに統制されたしなやかなダンス。佳林ちゃん、こんな指長かったっけ、って思うほどに指先まで神経が通っている先鋭化された身振り、手振り。パっと止まったと思ったら、美しく流れ、決して破綻しないようコンパクトに整理されながらも、躍動感を感じるダンスが、ちょっとエグ過ぎました。バキバキにカッコよく踊るヒップホップとかはまた別でしょうが、『Lonely Bus』的な女性アイドルがポップかつ美しく魅惑的に踊るダンスとしては、この宮本佳林のダンスが最強だと思います。うん、ハロプロ関連でダンスと言えば、まなかんやあゆみんが思い出されますが、彼女たちにもこの宮本佳林のダンスは踊れないように思います。ダンススキル一般という問題ではなく、ジャンルの問題ではあるわけですが、この振付をした先生でも佳林ちゃんほどにはこの楽曲にぴったりとは踊れないんじゃないでしょうか。そう思わせてくれるくらい、最強。そして、最高。しかもあんな繊細に歌いながらですからね。ちょっと異常ですよ。もうね、五条悟か、ってくらいに。

 

そんな感じで、ライブの感想に行くまでに、もう2000字も書いてしましたが、この『Lonely Bus』のライブ映像を観てすぐに、「今の宮本佳林はヤバ過ぎる。これ観とかないと絶対人生損するやつだ」と次の単独ツアーに絶対に申し込むことを心に決めました。

まぁ、スキルはもちろん上に書いた通り凄いんですよ。でもね、それだけじゃなくて。可愛さもちょっと凄い極まり方をしておりまして。Juice=Juice時代には見られなかったロングヘアーは普通に可愛いし、淑やかだし、お姉さんだし。そして二十代前半までは「二の腕が弱点で…」と自嘲するくらいには、僅かながらにふっくらしている要素があったその御体も、余分なものが完璧に削ぎ落され、まるでお人形のような体形に変貌しました。まぁ、ここまで痩せたことで、「佳林ちゃんって、若干ふっくらしている要素がある子だったんだ!」と今さら気づいてびっくりしているのですが。もちろん、昔の佳林ちゃんも可愛かったですよ。痩せてる、が正義とは思っていません。が、しかし、やはり今の佳林ちゃんは究極体過ぎる…25歳という年齢も、めちゃくちゃ油が乗っている年齢ですし、今この瞬間を目に焼きつけておくのは人生における必須項目であると直感しました。

色んなアイドルとしての形があるとは言え、ここまでの完成度に持っていく佳林ちゃんはやっぱりストイック過ぎるし、並みの人間ではないですね。「推し」を有する人類すべてが思うことですが、「なんでこの子が世間でもっと賞賛されていないわけ!?」「世の中みんな目が腐ってるんか!?」というテンプレを、いま一度、神仏や権力者の眼前に叩きつけてやりたい気分です。でも、まぁ、うん、近くで観たいし…僕の佳林ちゃんでいてほしい的な…いやいや、佳林ちゃんはアイドルなんだから売れさせてあげるのが何より1番なんだから!んー、あー、えっと、でもなぁ…そんな誰のためにもならない葛藤を抱えながら、今日のライブを楽しみにする日々を送っておりました。

 

というわけで、また800字程度の替え玉を追加して、いよいよ今日のライブの感想に入っていきたいと思います。

 

2.セトリ(一言感想)

セトリをバン、ってよりかは、ライブレポート的な感じで一言付け足しながらご紹介。

まず今回の会場のNAGOYA ReNY limitedですが、名古屋駅で新幹線を降りましたら、地下鉄の東山線で2駅、栄町で降ります。栄町は駅を貫くように南北の長い公園が敷かれておりまして、その両側には企業のビルやお洒落で高級感のある商業施設が立ち並んでいるという、結構大きな街でした。私は栄町に行くのは初めてだったんですが、街の構成としては全然違うものの、横浜駅みなとみらい駅という関係性が、名古屋駅と栄町の関係性に近いものがありますかね。そんな優雅な公園とビル群を眺めながら南下し、5分か10分くらいでライブ会場に辿り着きました。

会場は地下にあり、ライブハウスらしい雰囲気ですが、東京よりも敷地に余裕があるからかドリンクカウンターは広々としており、ロッカーなども使いやすそうな感じ。ひとつ扉をくぐると、ステージフロアがありました。指定席で用意されているのですが、おそらく1列あたり15席×15列程度だと思われますので、集客は200~300人程度といったところでしょうか。うーん、もっと広い会場で歌わせてあげたい。でも、こんなに近くで観られる機会を失いたくない。ジレンマですね。

フロアは2つに分かれていて、後ろの数列が1段高くなっているのですが、昔はクラブ的な場所だったのか、ミニカウンターのようなものが一列分横に柵状になっており、そこに物を置くことができるようになっていました。私はちょうどこの後方ブロック1列目のミニカウンターのある席だったので、前の人よりも高くなっているし、かなり快適にライブを観賞できました。後ろの方の席でしたが、もともとキャパは780人程度のそこまで広いライブハウスでもなかったので、十分よく見えました。それでも、マサイ族の目か、視力という点だけにおいては死神の目が欲しいですけどね。それと天上にはミラーボールではなく、あまり見ない形状のシャンデリアが。お洒落空間。

影アナウンスでは佳林ちゃん自らが注意事項を読み上げ、基本的にヲタは「はーい」と元気よく返していたのですが、「ジャンプは禁止です」に対してだけ、「えー」と不満の声を上げていました。もちろん、そういうお遊びです。そして、「か・り・ん」のコール。会場が暗くなると、コールが止み、SE。クラップからの「うりゃ・おい」で佳林ちゃんを迎えます。

1曲目は、『Beautiful Song』で爽やかにスタート。指揮者の振り付けが可愛い。衣装は紫色のふわっふわ、もしゃっもしゃのスカートスタイル。前回の単独ツアーでも着ていたやつですね。佳林ちゃんがステージに現れた瞬間の、パッと世界が華やぐ感じはいつ観ても鳥肌モノ。ずっと昔、2014年だったかに秋葉原で行われたコピンクスのイベント(ちょうど佳林ちゃんの中学校卒業式の直後だったかな)…あれも小さなライブハウスだったけど、その頃と何ら変わらない輝きでした。

ごめんなさい、もう1つだけエピソードを付け足させていただくと、その2014年のイベントは、トークイベントだったので特に歌をうたう予定はなかったのですが、佳林ちゃんの粋な計らいで、たしか『カリーナノッテ』をアカペラで歌ってくれました。それはそれは澄んだ歌声で、とても胸に響いたのですが、その直前に「卒業式の歌はね、あんまり練習に参加できてなかったから、口パクしちゃった」的なことを語っており、対して数年ぶりの『リバース』は全く淀みなく歌えていたので、「この子はなんてアイドルなんだ。うぅ、健気だ」と涙したことを覚えております。

と、今回のライブに戻ります。

2曲目はたぶん新曲ですかね。2ndアルバムの発売が決まっていますが、そこに含まれる新曲に『愛し合わなきゃもったいない(表記不明)』という曲があるっぽいので、たぶんそれだと思います。そこまでアップテンポでもなく、佳林ちゃんが歌いやすそうにしていたことだけは覚えていたのですが、私は音楽的な才があるわけではないのでそれ以上の情報が…サビでみんなで手を振っていたかな…いや、違う曲だったかな。うぅ、記憶が。。。体たらくですみません。

3曲目は『パラレルハート』。この曲は本当に可愛いですよね。セリフパートは言わずもがなですが、セリフに合わせて表情をころころと変えるアイドル芸はさすがの一言。適切ではないと思いますが、でんでん虫が角を伸ばすみたいな振付が印象的です。とても可愛い。

紫のふわっふわの衣装はスカートスタイルなんですが、正面は短く、背面が長いものになっており、これが何とも甘さと上品さをいい塩梅で演出しています。お立ち台に立つと、佳林ちゃんのすらっとした脚が美しいのですが、快活な印象を与え過ぎず、どこかお淑やかなお姉さんらしさも感じさせてくれ、本当によく似合ってました。

 

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サムネにもなっている、コレの最初の衣装ですね。本当に可愛い。

1回目のMCでは、ひなフェスの裏でやっていることに軽く触れて笑いを誘った後、朝ご飯を「パン派」「ごはん派」「食べない派」にわけてコール&レスポンスをやっていました。「男の子~!」「いえーい!」「女の子~!」「いえーい!」というはありがちだからだそうです。ちなみに佳林ちゃんは「食べない派」だそうです。最近の佳林ちゃんは言葉の端々、というかブログでも頻繁に「ちゃんと栄養摂らなきゃ」「食べなきゃ」的な発言が多いので、ちょっとだけ御体が心配です。卒業してからは健康そうですが、Juice=Juiceには割と追い込み過ぎてなのか体調を崩すことも多かった佳林ちゃんなので、どうか心穏やかに、心身ともに健康に過ごしておられますよう。痩せて凄い綺麗だけど、心配になっちゃうよ~…ってのは、今の時代セクハラとかなんですかね。まぁ、いずれの時代であるにせよ、大きなお世話ということに変わりはありませんわな。

MCからの流れで、4曲目。幼い頃に大好きだったという紹介から、月島きらりちゃんの『水色メロディ』。結構疾走感があるこの曲。佳林ちゃんの伸びやかな歌声がストレートに胸に突き刺さってきます。気のせいだったかもしれませんが、原曲より半音くらい高いような感じがしましたね。何はともあれ、佳林ちゃんの核には月島きらりちゃんがいるので、胸アツな選曲でした。

ここからはコピンク*メドレー。『カリーナノッテ』、『最高視感度』、『兎tocome』、『リバース』、『カリーナノッテ polaris mix』という前回単独ツアー「Hello! Brand new me(RETURNSなし公演)』と同じ流れですね。当時の発表順、アルバムの曲順ですが、全5曲というのも含めてもうこれで完璧な流れになっていますね。とりあえず、このメドレーをやっておけば、佳林ちゃんのコピンク*ちゃんとしての歴史は押さえられます。とは言え、Juice=Juiceに所属しながら強行した「Karing」公演では、コピンク*楽曲が始まる度に観客の絶叫がありましたが、もうすっかり封印は解き放たれた感がありますね。皆さんはもう慣れてしまったのかもしれませんが、私は割と今でも新鮮な気持ちで「うわぁぁぁぁぁぁ!」ってなります。幼女、いや、少女佳林ちゃんが目の前に浮かび上がり、確実に歌やちょっとした仕草は大人びて、スキルも上達しているわけですが、あの頃と同じキラキラとした無垢さそのままに胸を締め付けられます。

そんな佳林ちゃんを構成した月島きらりちゃんと、コピンク*ちゃんの楽曲が披露されました。そして、ここからはMCで着席が促され、しっとりセクション。

メドレーを1曲換算し、6曲目は『桜ノ雨』。私、ボカロは黎明期にちょっと聴き齧っていたくらいで『脳漿炸裂ガール』の知識しか持ち合わせていませんので(しかも、宮助=現:戌神ころねが歌ってたやつ)、この曲は存じ上げませんでした。佳林ちゃんヲタ失格です。MCで「桜が開花し始めているそうじゃないですか。まさにぴったりの季節ですね」と紹介されたように、卒業という別れのシーズンにぴったりの楽曲。それから「教室の窓から桜ノ雨」というサビがめちゃくちゃ印象的で素敵な楽曲でした。それにしても、こういうミドルテンポの純粋でノスタルジーを含む楽曲は佳林ちゃんによく合います。コピンク*の流れから、ってのもよかったですね。

7曲目は『優柔不断だね、Guilty』をお洒落に歌い上げてくれました。センチメンタルで儚げな楽曲も佳林ちゃんの得意分野です。ちょっといいディナーショーに来たみたいな、ソフィスティケートな雰囲気さえ漂っていました。もう、本当に佳林ちゃんってば素敵なんだから、ってなりました。何となくですが、昔よりも無理して力を込めて歌う感じがなくなり、ちょうどいいアクセントをつけているといった感じで、胸にぐっと来させつつ、耳には優しい歌い方が上達したような感じもありました。座って聴いているからそう思うんですかね。

そして8曲目は、もう十八番中の十八番『氷点下』。何て言うか、もはや聴くまでもない。イントロ聴いただけで、「あぁ、めっちゃ良い曲だった。佳林ちゃんも最高のパフォーマンスだったよ」と言ってしまう。ってのは、もちろん半分冗談で、ちゃんと心して聴きましたとも。これも印象ですが、生で久しぶりに聴いたせいか、低音部がよく響いているような感じがしましたね。そして、<本日のラスト「でも…」の解釈のコーナー>!!!。1番、2番は割とさらっと「でも…」を歌っていて、名残惜しさや躊躇いといったくらいの感じ。けれど、間奏明けからの震えるような落ちサビは、やはり圧巻の一言。「君に触れて溶けたこの心」で声はか細く、掠れ、儚く消えかけ、「弱くなったの」はもう風前の灯火。そして、「弱くさせたんでしょ」で一気に感情が爆発するというのは、いつもの演出ですね、はい。そして、大サビを盛大に歌い上げ、来たるはラストの「でも…」。潤んだジト目。後光のように取り囲む青いライト。泣いて、叫んで、けれどそれを押し殺して「幸せになってね」ってメッセージを送る。スマホをパタンと机の上に伏せ、すべてが終わってしまったことを悟る。黒く、光を失ったままのテレビ。ベッドの枕の横で、目覚まし時計の秒針が静かに音を立てている。それ以外の音は何も無い。寒いな、そう言えば暖房もつけていない。リモコンは…どこだっけ。ううん、もういいや。全部忘れよう。「もう終わったんだ」って石を井戸の中に投げ込んで、深い水の音がしばらくがらんどうな心の中に反響している。どれくらい時間が経っただろう。さすがにもう終わってしまったことは飲み込めたはずだ。そして、やっぱりこの部屋は寒い。体を温めようと、お風呂にお湯を張りに行く。蛇口を捻った後、洗面台に映る自分と目が合う。そこでもう一度、「もう終わったんだ。忘れよう」と鏡に映る子に向かって言葉をかける。疲れ果てた顔。諦めた顔。けれど、その瞳のずっと深く奥のところで、青く憂いを帯びた光がすっと輝く。それは奪い去ることのできない想いや思い出の色なのか…幼稚な往生際の悪さで小さく口元から零れる。「でも…」。と、はい、長々と書かせていただきましたのは<本日の「でも…」解釈>でございました。いや、もはや佳林ちゃんどうこうではなく、私の頭の中に思い描いた光景ですね。まぁ、でも今日のパフォーマンスを観て湧き上がったものなんで、これはこれでれっきとした感想ということでどうかご容赦ください。

んでもって、ちょっと『氷点下』が長くなってしまったんですが、ここからの2曲が今日のハイライトです。

『氷点下』の歌い終わりで、ステージからさっと捌けると、『氷点下』の短いアウトロ、合間の拍手、それから次の曲のイントロが約30秒程度でしょうか。その短いインターバルの間に早着替えをした佳林ちゃんが新しい衣装で戻ってきます。銀色を主体としたミニスカートの衣装ですが、派手過ぎず、どこかシックな感じがありました。1つ目の紫の衣装では腕は二の腕以外を露出していたのですが、この2つ目の衣装では白く半透明なシャツっぽい生地のアームカバー?(アームカバーよりはもっとダボっとしていて、肩口から手首にかけてを覆うような感じでしたので、確実にアームカバーではないのですが)を付けていました。これがまたミニスカートになった分の露出を埋め合わせるような感じで、あまりスポーティになり過ぎず、いい塩梅で大人っぽく、同時にガーリーで、かつふわっふわが無くなって、軽やかな印象にもなっていました。

そんな新しい素敵な衣装に変わってからの9曲目が『イイオンナごっこ』、10曲目が『Lonely Bus』。前書きで『Lonely Bus』のパフォーマンスのヤバさについては2000字近くを費やし書かせていただきましたが、まさにそれを実際にこの一対の眼で見ることができました。予定外で嬉しかったのは、『イイオンナごっこ』でも本気の宮本佳林が見られたことです。この2曲以外は、ステージ前方の3つあるお立ち台を使うことが多かったのですが、お立ち台に立つということは狭いスペースでのパフォーマンスになるので、本気で踊ることはできません。まぁ、もちろん体力的な問題もあって、本気の宮本佳林を出せる曲数には限りもあるのでしょうが、それがこの2曲だったというわけです。この2曲はお立ち台も使わず、余計な客煽りもせず、とにかく楽曲に設定されたダンス、歌唱を100%の力でパフォーマンスしていました。どちらも繊細で、少しセンチメンタルで、ややアンニュイで冷たい感じも持ち合わせるカッコイイ楽曲です。まさに佳林ちゃんのパフォーマンスの強みが遺憾なく発揮できる楽曲。もうね、身を乗り出して、瞬きも忘れ、口も半開き状態で見つめていましたよ。虹彩通り越して、網膜に焼きつけましたよ。海馬に刻みつけましたよ。こんなヤバいもの後の人生で何回観られるかわかりませんからね。ルノワールの『ピアノを弾く少女たち』は30分くらい眺めてられましたけど、音楽は時間芸術ですからね。この7分程度の貴重で僅かな時間をとにかく余すことなく体に染み込ませなくては。私はからっからのスポンジ。宮本佳林という神聖で清廉な湧き水を…何としても。

いやぁ、本当に良いものを観れました。これだけでも、往復2万円の新幹線代の元は取れましたね。いや、お釣りが来るくらいか…いやいや、この感動はプライスレス。本当にありがとうございます。ありがとうございました。感謝、感謝。

そして完全な満足感の中、ライブでしか聴けない『ひとそれ』のイントロが薄くかかり、Juice=Juiceメドレーへとなだれ込みます。本家本元の『ひとそれ』の出だし。流石に先の完全なるパフォーマンスの2曲があったからか、少し力の入り切っていない歌唱。Juice=Juiceで歌うときは、マンキンの情念を込めていたイメージがありましたが、しっとりかつさらっとした印象で始まりましたね。うん、これはこれで悪くない。Juice=Juice時代よりも大人びたビターな歯痒さを感じましたね。入りのソロ歌唱パートが終わると同時に、客を立たせ、一気に会場のボルテージが上がります。そのまま楽曲は展開していき、大サビも当然ながら佳林ちゃんが歌唱するという、グループ時代では考えられないようなご褒美を頂きつつ、『ひとそれ』を歌い切ります。続いて『わた抱き』。イントロのスネア4つ打ちのところで佳林ちゃんが「せーの♪」と可愛らしく煽れば、ヲタが全力で「はい!はい!はい!はい!」と応えます。もうめっちゃ楽しい!やっぱJuice=Juice最高!ってなりながら、ノらせていただきました。次に登場しますは『ぐにゅに』…じゃない『大人の事情』。Aメロとかすっ飛ばし、落ちサビ含め美味しいところだけを切り抜いた感じ。「Just wanna to be ~♪」からの最後の「next to you ~♪」のところの振付、めっちゃ好きなんですよね。これがまた佳林ちゃんっていうアイドル大正解ウーマンによく似合うんだよ。そしてすかさず『微炭酸』。先日、ソロデビューが決まったまなかんと「One on One」でやっていたので胸アツ。疾走感というか、リズムの粒の細かさ、短さがやっぱり佳林ちゃんソロ曲ではあまりない感じで良いですね。佳林ちゃんはやはりどちらかと言えば、伸びやかだったり、流麗だったりする感じの歌い方が得意だし、強みだと思っているのですが、Juice=Juice初期のつんく♂さん楽曲は結構リズムが細かくて、タイトなイメージがあります。初期ではないですが、『微炭酸』も結構タイトですよね。『わた抱き』の辺りでは、テンポが速いにもかかわらず、まだソロのときの歌い方が若干残っていた感がありましたが、この『微炭酸』の辺りでようやく当時の勘を取り戻したのか、かなりリズムにタイトな歌唱に切り替わっていました。やばい、長くなってきてる。一旦改行します。

お次は『銀色のテレパシー』。一転、また宮本佳林節が炸裂する楽曲。もうね、これは合いの手の「フッフー」も含めてめちゃ楽しかったです。ダンスも凄い可愛いんですよね。お立ち台の上でも成立するコンパクトな振りがまた良いんだ。そしてこれは結構意外だったんですが『Va-Va-Voom』。個人的にはあんまり佳林ちゃんの楽曲というイメージはなかったんですが、やっぱりJuice=Juice楽曲としての1つの正解を佳林ちゃんは常に提示してくれますよね。オリジナルパートの『もう左右されないくらい~』は流石でした。ここ数年は里愛ちゃんのを聴き続けていたので、「あぁ、そうだ。佳林ちゃんのこれもすげぇ良かったんだよなぁ」ってなりました。最後は『Wonderful World』。これもJuice=Juiceの宮本佳林楽曲の1つですね。とは言え、これは『銀色のテレパシー』よりは佳林ちゃんの手を離れて、普通にJuice=Juice代表曲になった感じがありますね。とは言え、やっぱり佳林ちゃんが歌うと「これが本物か…!」となりますし、初武道館よろしく、ヲタにほぼアカペラで歌わせるパートもあり、しかもヲタもさすがでパート分けが自然とできていました。超楽しかったですね。あ、でも、初武道館のときとは違って、ヲタが歌い続けないようにちゃんと然るべきところで「ありがとー」と入れて、歌い終わりを明示していましたね。流石、宮本佳林。学ぶ、女。

という感じで、Juice=Juiceメドレーが終わってそのまま次の楽曲に移るんですが、ちょっとここで備忘録。

 

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後輩の有澤一華ちゃんのボーカルレコーディングでたいせいさんに、「(佳林ちゃんの)真似をしているんじゃない?」と指摘されたところです。一華ちゃんは耳が良いので楽曲を聴き込んだ結果、自然と佳林ちゃんに寄ってしまったのか、一華ちゃん自身が言うように「歌いやすいように歌った」結果、宮本佳林仕様に作られたこの楽曲では自然と宮本佳林になってしまうのか、そこのところは不明ですが、いずれにせよなんか嬉しかった出来事でした。

さて、それではJuice=Juiceメドレーをまた1曲分とカウントし、12曲目は『なんてったってI Love You』。この楽曲もきらきらしていて、佳林ちゃんによく似合いますよね。たしかこの曲も間奏はお立ち台から降りて、結構キレキレに踊っていましたね。会場のテンションはかなり高まっていた記憶があります。うーん、楽しかった。

13曲目は『Happy Days』。これもかなり幸福度の高い楽曲ですね。明るくて、元気になれます。間奏の「幸せ」「不幸せ」「裏表」のコール&レスポンスが楽しかったです。

 

はぁ…ヤバい。もう深夜3時半だ。ちょっと急ぎます。

 

14曲目は『自分ファースト』。はい、全員でタオル回して、楽しかったです。私は残念ながらタオル持っていなかったのですが…いやいや、お金落してけよ、自分。ごめんなさい、家が狭いのと、引っ越しが多いのと、管理するものを増やしたくないという性分なものでグッズ全般あまり得意でなく。その分、文字数を沢山用意するんで。

急げ、急げ。

ラストの15曲目は『バンビーナ・バンビーノ』。もうね、この辺になるともはや何がどうの、とか何がこうの、とかそんなことを考えている余裕はないのですよ。早く寝たいっていうのは抜きにしても、正直もう楽しんでいるだけなんで、何も思い出せやしません。もう投げやりに見えるかもしれませんが、Bメロのコードがないところが結構好き!

 

んで、佳林ちゃんが捌けまして。アンコールの「か・り・ん」コール。

佳林ちゃん再登場では、もうどんだけ可愛いんだ、って白地に花柄のワンピース姿。頭には白いヒラヒラが付いてるっぽいカチューシャ。こんな子とヒマワリ畑を散歩したら、ちょっとした映画になってしまいます。ワンピースのスカート部分が透けていて、綺麗な脚が薄っすらと見えているのが、ちょっとライブ仕様でしたね。

16曲目は『未来のフィラメント』。意外と聞いたのは久しぶりですかね。改めて聴くと、結構凝った音作りになっていますし、宇宙を感じさせる歌詞もコピンク*を引用している感があって好きですね。そして、何と言っても、佳林ちゃんの卒業コンサートを思い出します。こちらも佳林ちゃんの奏でるイノセンスを存分に堪能できる楽曲でございました。

あぁ、で、ヤバい。これも書かなきゃ。結構な文字数を使うことになりそうだぞー。これは4時回るな。日の出前までに書ききりたい…!チケットはないけど、明日はSATOYAMA&SATOUMIに初めて行こうと思ってるんです。

ここで佳林ちゃんのMCが入るんですが、これが結構長くて。そして、めちゃくちゃ良いMCで。ざっくりと概要だけ言うと、

・ひなフェスの裏だったから、今日は皆さんが来てくれるか不安だった。

・昔よりも臆病になった自分がいる。けど、それも大人になった証拠だよね。

って感じでした。

もし自分がファンだったら、ひなフェスは絶対に行きたいと思う。だって、その日にしか見られないもの沢山あるし、SATOYAMA&SATOUMIでは近くでメンバーを見られるかもしれない。そんな中、自分のライブに来てくれたからには、それに匹敵するものを提供したいと思っている。

ひなフェスはJuice=Juiceの初披露があった舞台。あんな大きなステージに10代とかで普通に立っていたことを思い返すと、本当に怖いもの知らずだったと思う。アドリブとかも怖がらずにやっていた。でも、今は自分でどういうステージにしようかってことをすごい考えるようになった。そして考えれば考えるほど、失敗したときのことを思って怖くなる。だから、怖いもの知らずだったあの頃に帰りたいと思うことがあった。物怖じしないってのは凄いこと。けれど、その一方で、恐怖心が生まれるようになったのは大人になったからだとも思う。色々と考えたり、悩んだりする力がついたからこそ、大人になったし、恐怖心も生まれるようになった。だからこそ、これからはそういう恐怖心を受け入れたうえでこそ、見せられるものがあるし、与えられる勇気とか元気があると思うようになった。

だから、これからも私は皆さんに何か力を届けられるように活動していく。毎回でなくてもたまにライブに来てくれたり、1日に1回でも「佳林ちゃんの楽曲で元気を貰っている」っていう人がいてくれたりしたら嬉しい。皆さんの生活のどこかに宮本佳林がいてうれれば…これからもよろしくお願いします。

はい。こうやって書き起こしてみると、ひなフェスの話題からちゃんと広げていって、立派な構成になっていることに気づきました。そして、何と言っても佳林ちゃんの言葉の健気さね。緊張しないで有名だった佳林ちゃん、「誰も緊張してる私なんて見たくない」と豪語していた佳林ちゃんが、ソロで活動するようになり、色々と考えるようになったんですね。確かにJuice=Juiceの頃の佳林ちゃんの無敵感ってすごいものがありました。とりあえず、ステージにこの子がいれば何とかしてくれる感がありましたよね。それがすっごいカッコ良かったし、そこに惚れたのも事実です。

でも、最近の佳林ちゃんを見るようになって、なんか凄い「お姉さん感」が出ている感じがしていたんです。今日のライブに行くまでは、「ただ髪が伸びて、スタイルが引き締まったからかな」なんて思っていたんですが、結構な心境の変化もあったんですね。確かに、私が佳林ちゃんに感じるようになっていた「お姉さん感」って、もう少し具体的に言うと、「思慮深さ」という気がしていました。そもそもデビューが決まった頃から、「これまで応援してくれたファンの皆さんにやっと恩返しができる。後に続く、研修生のためにも絶対に成功させる」と熱く健気で強い気持ちを胸に宿していた佳林ちゃんです。これまではその宣言を原動力に突き進んできたような格好でしたが、ソロでの活動が始まり、年齢ももう25歳。これまで大人が用意してくれたステージの上で、ただ強く光り輝き、爆発していればよかったわけですが、そろそろ自分の責任でステージを作ったり、パフォーマンスを考えたりするフェーズに差し掛かって来たというわけですね。そこで色々と思い悩んだからこそ、佳林ちゃんにはその分だけの「思慮深さ」が宿ったように思うのです。

 

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昨日公開の最新のM-line Musicで佳林ちゃんはMCをしています。大好きなタケちゃんとのMCでテンションが上がっているところもありますが、昔と比べると凄い穏やかな表情になっている気がします。なんか凄い素敵な女性になっているんですよね。

これについてはまだ言語化しきれないところがありますが、とりあえず佳林ちゃんのMCの言葉を受けて、色々と考えることができそうだなぁくらいで今は留めておこうと思います。

ヤバイ、もうすぐ4時半だ。5時までには、5時までには何とか寝よう。

そして本当に最後の曲、17曲目は『ソリスト・ダンス』。上のM-line Musicでもライブ映像が上がっており、佳林ちゃんも「コールを入れたり楽しい曲」と紹介してくれています。そういう意味でも最後に相応しい楽しい曲なんですが、「誰に観られなくてもいい。自分ひとりであっても、心から湧き上がるダンスを」っていう感じの歌詞が印象的です。正直に事実だけを言うのであれば、佳林ちゃんのライブ会場の規模は回を重ねるごとに大きくなってはいないように思います。事務所の意向なのか、集客力が高まっていないのか、原因というのはよくわかりません。でも、佳林ちゃんのパフォーマンスは上述の『Lonely Bus』然り、凄いことになっているのは疑いようもありません。そんな状況がどこか『ソリスト・ダンス』という楽曲に反映されているように思えて、少しだけ切なくなります。

今の佳林ちゃん、本当に可愛いし、素敵な女性になったし、凄いパフォーマンスをするんです。どうか佳林ちゃんが楽しくパフォーマンスをし続け、幸福でいられるよう、私もお金や時間を注ぎ込むことはもちろん、こうやって賽の河原よろしく駄文を積み上げることを続けていこうと思いました。

歌い終わり、たっぷりと時間をかけて、お客さん1人ひとりに向かってステージの上から「ありがとう」と手を振り続ける佳林ちゃんに胸が熱くなりました。昔だったらもっと大雑把に、元気よく、客席全体に向かって「ありがとー!楽しかったねー!良い夢みろよ!」って感じで両手を振るようなイメージだったんですが、会場の広さの関係もあるでしょうけど、本当にお客さんの1人ひとりに向かって感謝の気持ちを伝えている感じがありました。この辺りがまた凄い大人びたな、と。

私は自分が誰かに見られたり、目を合わせたりすることがとても苦手なので、お見送り会に参加するかどうかとても悩んでいたんですが、このライブを観た後に佳林ちゃんに合わずにさっさと帰ることはさすがにできませんでした。本当は近くで佳林ちゃんの姿を目に焼き付けたかったんですが、上手く目も合わせられず、ほとんど消え入るような声で、どもりながら「最高のライブでした」とだけお伝えさせていただきました。視界の端でも近くで見る佳林ちゃんは、とても美しく、可愛かったです。

不慣れな夜の名古屋の街。味噌カツでも食べようと、評価の高そうなお店を数店舗回りましたが、どこもかなり並んでいたので、大人しく駅弁で「矢場とん」を買って帰りました。

 

3.宮本佳林という正解

まだ書くのか、って感じですよね。はい。自分でも思ってます。早く寝たいです。

でも、今日のライブを観ながら思ったことがあります。それは宮本佳林がJuice=Juiceにおける、ひいてはハロプロにおける1つの正解であるということです。高橋愛田中れいな鈴木愛理がそうであるように、佳林ちゃんもまた1つの到達点だと思います。しかも、現在進行形で活動しているメンバーとしては数少ない存在です。

昔、誰だったか忘れましたが、有名なギタリストが「自分のプレイスタイルで迷ったりスランプになったりしたときは、だいたいいつも布袋寅泰さんを参考にしているんですよね。彼のプレイを見習ってみると、必ず良い方向に戻してくれる。ただ模倣するというよりは、基準というか指針というか、そういうのが明確になるんで、自分のプレイスタイルも再定義しやすくなるんですよ」的なことを言っていました。佳林ちゃんも特にJuice=Juice楽曲においては、必ず後輩たちの指針になる存在だと思います。それは単に佳林ちゃん在籍時の楽曲を後輩がカバーするという場面だけでなく、「あれ?Juice=Juiceとか、ハロプロとか、アイドルとして、どういうパフォーマンスが良いとされてるんだっけ?」と迷ったときにはいつだって、参照しに行けるのが、佳林ちゃんのパフォーマンスだと思うんです。それは単に後輩ちゃんたちに言えることだけでなく、私達ヲタもまた、「良いパフォーマンスが観たいな」とか「自分ってどんなパフォーマンスが好きなんだっけ?」となったときには佳林ちゃんを観に行けばまず間違いないと思います。佳林ちゃんは確固たる基準を持っているので、とりあえず佳林ちゃんのパフォーマンスを勉強しておけば、そこを基準に自分の「好き」を探れると思います。また、特に『Lonely Bus』なんかを見れば、「アイドルってここまで行けるんだ」とハッとさせられますね。参考にする後輩ちゃんからすれば、佐藤優樹ちゃんのパフォーマンスよりは多分現実味があるはず。まーちゃんは天性のものが強すぎて、もちろん努力もあるんでしょうが、ちょっと真似するには現実味がない気がします。

 

佳林ちゃんのパフォーマンスに感銘を受けながら、何となくそんなことを考えていました。んー、完全に蛇足感が強いけれど、まぁ、記録として残しておきましょう。

とにかく、宮本佳林ってすげぇし、後輩もヲタもとりあえず1回真剣に彼女のパフォーマンスを観ておいた方がいいよな、って思った今日だったわけです。何度も繰り返し言いますが、本当に今の佳林ちゃんって、エグいパフォーマンス魅せてくれるんで。これ、あとで気づいて「なんで追ってなかったんだ」となっても知らんからね。

 

最後に…

福田真琳旋風が巻き起こっている、現ハロプロ史の裏側で、実は宮本佳林がとんでもないことになっていた。昨年末にライブ映像を観たときからそう思っていましたが、今日生で観て来て、それが確信と実感に変わりました。

真琳ちゃんについても、何とか記事を書こうと思っています。既に書き始めてはいて、それを一旦下書きに回し、まずは佳林ちゃんから書き上げました。新幹線で名古屋から関東に戻り、もう5時になります。6時間ぶっ通しでキーボードを叩いていました。1万6000字です。久々の長文記事。でも、まだ書き足りないような気もする。

ともかく、今日はもう寝て、もし明日元気だったら、SATOYAMA&SATOUMI行ってみよう。なんか限りなく無理っぽいけど。でも、いいんだ。この土日はこれが書けたから大満足。幸せを噛みしめながら眠ろう。夢で髪の伸びた彼女が歌って踊ってくれますよう。

神﨑風花presents「学生最後の春休みvol.2-神﨑風花とサカナとアコースティック-」@LOFT9 Shibuya

会場を出ると、薄汚れた渋谷の路地は俄雨に洗われた後だった。空気も幾分か冷ややかになっていて、ライブ会場に併設された小さなカフェテラスにはほんの2人ほどがばらばらに座っているばかり。

薄着で来てしまったことを後悔しながらも、あっという間に雑踏に紛れ込んでしまうと、さっきまでの暖かな切なさはぐっとボリュームを下げられ、その分だけ空いたスペースをノイズが満たしていく。あの小さな会場でちらちらと瞬いていた同志の涙を反芻しながら、ひとつの物語が終わった後の空気を吸い込んだ。

 

…的な時節の挨拶を挿し込んだところで、ライブの感想を…というよりは、なんて言うか「ジャーナリング」的な心持ちでだらだらと今の心境について書いておきたいなと思いますね。

 

2024年3月20日(水・祝)、えっと今日はなんの祝日でしたっけ(2月のままになっているカレンダーを捲り、確認)。そうか「春分の日」か。春というにはまだ少し寒いかな、って感じの天候でしたね。冒頭に書いた雨の雰囲気はもうすっかりと消え去り、今は暖かい自室の中でコーヒーを飲みながら、こうしてぱたぱたとキーボードを叩いております。

 

2020年9月6日にsora tob sakanaが解散して、3年半が経ったんですね。ふぅちゃんにとっては、普通の大学生として過ごした約4年間。その最後の春休みにまたステージの上に戻って来てくれたわけです。 

ところで、過去にもsora tob sakana関連の記事は、楽曲レビューや解散のタイミングで書いています。

 

eishiminato.hatenablog.com

 

私とオサカナの馴れ初めは、上記の記事に書いた通り、2016年の1つのネット記事でした。好きなバンドのドラムがアイドル界隈に明るく、記事内で彼女たちが紹介されていました。が、その時点ではあまりピンと来ておらず、あまり漁らないままに時が流れまして、再度オサカナに注目したのは「Lightpool」のMVが公開された2018年の5月でした。当時私は就職したてで、実習という名目で北関東の地方都市に飛ばされていましたね。

新しい環境、新しい人間関係、新しいライフスタイルで結構ストレスが溜まっていて、会社に行くまでの道のりによくオサカナを聴いて癒されていました。未だに「鋭角な日常」を聴くと、あの季節の割にはやけに暑くて、胸の内には苛立ちを抱えていたあの頃を思い出します。

それから少しずつオサカナにハマっていくのですが、北関東での3ヶ月くらいの実習を終えた後は、今度は甲信越方面の地方都市に本配属が決まり、東京のライブシーンからは少し離れることになりました。いつかライブに行きたいなぁと思いながらも、なかなか東京に足を運ぶのも大変で、「2年くらいすれば東京配属になるだろう」と高を括り、オサカナのライブのために予定を調整したりなんてことはせずに退屈な日々を送っておりました。

が、そのうちにコロナウイルスの恐怖が世界を支配し、オサカナが解散を発表し、最後に解散ライブに行かなきゃ…!とチケットを申し込むも外れ、ネット配信で彼女たちの有終の美を見つめていました。そして、その頃、奇しくも私の東京への異動の内示が出て、何とも言えない「すれ違い」が私とオサカナの間ではありました。結局、私は一度も彼女たちのライブに行くことができないまま、彼女たちがいない東京の街に戻ってきたわけです。

 

いくらか私の個人的な話になりますが、オサカナが解散した1か月後の10月に私は東京配属となったのですが、その新しい環境と私の中の何かがあまりにも合わず、「適応障害」を発症して、会社に行けなくなりました。もともと強い虚脱感や希死念慮を感じることが頻繁にあったので、単純に環境変化に適応できなかったというのでもなく、むしろ私が潜在的に抱えていたいくつかの問題がそのときに「適応障害」という形で噴出しただけだと今では思っているのですが、そこから中々に大変な日々が続きました。

今でもまだ立ち直れたとは言えないですが、何とか復職はできましたし、何とか破綻しないように気をつけながら生活を営めています。ここまでやって来るまで、いくつもの不安定な日々がありましたが、調子の良い日も悪い日も色々なものが私の支えになってくれました。その中でも、何か純真で美しい力みたいなものが欲しいときは、よくオサカナの曲を聴いていました。「えふ」というアカウント名で生存確認ができる神﨑風花ちゃんの存在も、私にとっては非常に支えになっていました。

 

今日までの日々を語るに足るオサカナ関係の特筆すべき思い出というのはありません。ただ彼女たちの歌声と、照井さんの音楽を聴くのは、私の生活における重要なルーティーンであり続けました。いつでも瑞々しい何かを頂いていたように思います。

あ、そう言えば、オサカナのライブには結局行けずじまいでしたが、siraphのライブには行けましたね。照井さんの音楽はハイスイノナサの頃から好きでしたし、もちろんsiraph自体もよく聴いているので、ライブに行けたのは喜ばしい出来事でした。とは言え、心の中ではどこか「あの頃コネクトできなかったオサカナと間接的に繋がっている」という感覚に酔い痴れたりしていましたね。それくらいオサカナへの気持ちは消えない炎として私の中で燃え続けていました。

 

そんなこんなで、ふぅちゃんが大学卒業前にイベントをやるという情報がX上で流れてきました。「今度こそ、ふぅちゃんに会いたい!」という思いから、チケットを申し込もうとしたのですが、即完ということで…イベントで話していましたが、もう30秒くらいで売り切れてしまったそうですね。結局、オサカナちゃんたちには誰にも会えないまま、自分の人生も流れていくんだろうと打ちひしがれていたところ、3/20昼公演(vol.2)だけ追加販売されると、天から蜘蛛の糸が垂れてきました。今回は抽選。運にはあまり自信がないのですが、駄目元で申し込んでみたところなんと当選!オサカナが活動していたときに全く現場に行けていなかった私なんかが当選してしまって良かったのだろうかと思わないでもなかったですが、せっかく神様がくれた機会だったので、今日という日を素直に楽しみにしながら2週間を過ごしていました。

 

そして、ようやく今日という日がやってきました。

昨日、会社で飲み会があって、それが割とストレスフルな飲み会だったので、家に帰って来たからも追い酒をして意識を吹き飛ばしたまま眠りについたせいで、若干の二日酔い。それでも熱いシャワーを浴びて、何とか意識を目覚めさせ、電車に揺られ、渋谷まで。LOFT9は初めての会場だったので、少し緊張しました。が、ちらほらと聞こえてくる会話の中で使われるお馴染みの単語たち、うっすらと会場に流れているオサカナ楽曲、お洒落な内装の中で時間を潰しているうちに少しずつリラックスしてきました。

そして、会場が少し暗くなり、そこから1~2分待っていると、音楽が大きくなって、拍手とともに照井さん、森谷さん、それから神﨑風花ちゃん。茶髪で、現役時代よりも髪を伸ばして、大人な印象。私の席がド・センターライン上でしたので、前席の人の後頭部が丸被りして、なかなかふぅちゃんのお姿は見づらかったのですが、それでも何とかちら、ちらっと覗き見たふぅちゃんはとても可愛くて、愛おしかったです。白いシャツに水色のゆったりとしたカーディガン姿が、素晴らしく美しかったです。sora tob sakanaとして活動していた頃からは確実に大人になっているのですが、あの印象的な少女が成長したら…というあの頃の同一直線状にいる変わらない彼女の姿に涙腺が緩みました。

歌声は、最初の方は少し発声しづらそうでしたが、楽曲が進むにつれて声に潤いが戻り始めました。やはりふぅちゃんらしい真っ直ぐで、丸みはあるけれどどこか少年っぽさも感じる硬質な歌声が私は大好きです。桜の和菓子みたいな、上品で控え目な甘さ、それから何と言っても香り高い。歌声だけでなく、喋っている声もとても可愛くて、やっぱり好きになってしまいます。

 

ここでセトリをば。

 

1.夜空を全部

2.広告の街

3.魔法の言葉

4.flash

5.tokyo sinewave

6.Lighthouse

 

MC多めで、楽曲数はそこまでって感じでした。が、どれも素晴らしい演奏。「広告の街」は、3人とも「めっちゃ不安」みたいな感じでやっていましたが、ほぼオリジナル通りのアレンジで演奏されていましたね。ふぅちゃんも全くリズムがブレずに完璧に歌い上げていました。相変わらず照井さんのギターはめちゃくちゃムズそうでしたね。

ふぅちゃんの実感として「『広告の街』がきっかけで好きになったってよく聞く」というのがあるらしく、「だから、セトリには入れようと思った。アコースティックでやったこともなかったし」と言っていましたね。

魔法の言葉では、お客さんがクラップを入れていて、初めてのオサカナのライブだったので「みんなすげー!」となりました。ふぅちゃんのダンスも、小さくでしたが可愛らしくて素敵でした。

全体的にふぅちゃんは、歌声もダンスもとても大人っぽくなっていた印象です。音源やバンドではなく、アコースティックだからこそのなのかもしれませんが、昔はもっとがむしゃらに歌って踊っていた印象がありました。が、どこか余裕というか柔らかさを感じるパフォーマンスで、ダンスは本当にリズムを取ったり軽く手ぶりを入れる程度だったのですが、リズムの取り方がかなりアーティスト然としていて、音感の良さというかグルーヴ感のようなものを感じました。

アレンジ的には「tokyo sinewave」が何だかとても艶やかな感じで、完成度が高かったように思います。照井さんのギターもエグかったですし(演奏前に「不安だ…」と漏らす照井さんに、「裏でできてたし大丈夫だよ。ここは楽屋」と明るく励ますふぅちゃん。それにさらに「他人事だと思って…!」と嘆く照井さん、というやり取りがとても微笑ましかったです)。「flash」は歌い終わった後、本人が言っていた通り、めちゃくちゃ歌うのが難しい楽曲なんだなと再認識。

楽曲のイントロがかかる度に、「おぉ!」とか「きたー!」という歓声が上がっていて、私も一緒にテンションが上がっておりました。それと、楽曲が終わった後の拍手が、何と言うか誰も言葉にはしなかったのですが、「これが最後だろうから」と本当にみんなが全力で手を叩いていて胸が熱くなりました。特に「広告の街」の演奏後の拍手は、あまりの素晴らしさになかなか鳴り止まなかった印象です。

 

MCではオサカナ時代の話がほとんどで、解散後のふぅちゃんの生活に関することはほぼなかったと思います。私は作品ベースでしか追って来られなかったので、天体の音楽会の話なんかは初めて聴くことばかりでとても面白かったです。King Gnu新しい学校のリーダーズ、崎山蒼志とも共演経験があるというのは初耳でしたし、当時ライブに行ける環境であれば、ぜひとも参加したかったイベントでしたね。「こんなに売れるんだったら…」みたいな文脈で、「King Gnuのステージ、当日観られなかったのが残念」と言うふぅちゃんの悔しそうな顔がとても可愛かったです。

好きな楽曲やパートに関する話もあり、ふぅちゃんは相変わらず「flash」や「まぶしい」という疾走感のある楽曲が好きということでした。好きなパートでは、「まぶしい」の「まぶしい♪」や「Lighthouse」の「おいでよ♪」を上げていて、照井さんに「感想に雪崩れ込むところが好きなのね」と分析されていました。オサカナの楽曲制作における歌割は、照井さんが楽曲作成時に決めているそうで、「勝ち取った、ってわけじゃないけど『まぶしい♪』のパートを貰えたのが嬉しかった」とふぅちゃんは懐かしそうに語っていました。照井さんは好きな楽曲に「夜間飛行」を上げ、「一時期擦り続けていた」と自虐っぽく言っていましたが、ふぅちゃんはそれに被せるように「照井さんはわかりやすい」と軽くイジっていました。「大き目のライブでは『ribbon』を1曲目に持ってきがち」とか、「『Summer Plan』は2曲目が多い」とか。照井さんは反論するように「『ribbon』は中盤に持って来る楽曲じゃないし、そうなると必然的に最初か後ろの方になる。『Summer Plan』は2番バッターっぽいよいね」と返し、何となく2人を納得させていました。

森谷さんは一番のオサカナのヲタクみたいで、「帰り道で『World Fragment』聴いてると泣きそうになる」とか「曇りの日に、部屋から外を眺めてるときは『信号』聴きたくなる」とか、それだけではなく「音源データを貰ってるから、勝手にボーカルとコーラスだけのトラックを作って聴いてる」とかまで言っていましたね。いやー、実に羨ましい。

 

ほかにも色んな話を聞けましたが、一旦レポ的なものはこの程度で。

 

というわけで…てな感じで…うん、そうですね。今回のイベントでも1番大事なことを。

まずは今回のイベントは、ツイ廃疑惑が出るほどふぅちゃんを応援しているお祖母ちゃん含め(旅行から帰ってきた直後が、今回のイベントチケットの発売日だったらしく、疲れて寝ていたところにお祖母ちゃんのLINEでチケットが即完したことを知ったふぅちゃん。お祖母ちゃんは常にTwitterでふぅちゃんのエゴサをしているらしく、おそらく私(ふぅちゃん自身)よりもヲタの名前に詳しいらしい)、お母さんが物販をしていたり、お兄さんが特典会のサポートをしていたり、ふぅちゃんの家族が総出で彼女をフォローしていたそうです。そんな良好な家族関係が、ふぅちゃんの純真さを作り上げているのかなと思いました。同時に、孫・娘・妹の晴れ舞台を応援しに来た、という事実がこれが彼女にとってのラストステージになることを想起させて悲しくもなります。

そして、それまでは曖昧に濁されていましたが、最後にはふぅちゃんの口から「次がステージ上で歌う最後の曲になる」という事実がアナウンスされました。

大学を卒業して、会社に勤め、社会人になる(「会社に勤める」までは言っていたか、ちょっと忘れてしまいましたが)。だから、この「最後の春休み」のイベントが、私が立つ最後のステージ。今日の夜の部、vol.3はトークイベントだから、歌を歌うのは次の曲が最後。

「1,2,3,4」という掛け声とともに始まったのは、「Lighthouse」。楽曲終盤、バックサウンドが消えた最中、「物語は続く」と歌われ、会場全体がぐっと涙を滲ませる瞬間がありました。

 

私はsora tob sakanaというアイドルに、イノセンスジュブナイル、純真さ、無垢さ、少女性みたいなものを感じてきました。それは1つの側面としては、「子供」だけが持ちうるものという部分もあるかと思います。だから、10代のうちにオサカナが解散したということには、ある程度の納得感がないわけでもありませんでした(もちろん解散せず、活動を続けてくれている方がずっとずっと嬉しかったのは言うまでもありませんが)。彼女たちは解散時点ですでにその生き様というか、アーティストコンセプト的なものが完璧に達成されてしまっていたように思っていました。なっちゃん、まなちゃんはおそらくもう芸能活動していないでしょうし(玲ちゃんは芸能活動を続けているみたいですね)、ふぅちゃんも細々とTwitterを更新したりしていましたが、目立った活動のようなものはなかったように思います。そのことがより一層、オサカナというグループを1つの作品として固定化してくれていたように思います。

けれど、私にとってはオサカナの中心的な存在であるふぅちゃんが、たまにTwitterを更新し、(オサカナ楽曲ではないにせよ)弾き語り動画を載せてくれたりしているので、なんというかオサカナというグループや、楽曲アーカイブのようなものが、まだ失われずに繋がれているような気がしていました。いつかどこかで、何かのタイミングで、例えば今回の「最後の春休み」イベントのような形で、復活してくれる余地みたいなものが残されているように思っていました。

かつての姿そのものではないにせよ、向井秀徳NUMBER GIRLを復活させたり、小山田壮平がALを始めたり、なんていうかそういう奇跡がまだ起こるんだ、って信じていたいような。照井さんと神﨑風花ちゃんがいれば、何とかなるんじゃないかって。

ふぅちゃんは将来、芸能活動を続けてくれるんだろうか。怖くて知りたくないけれど、それだけがずっと気掛かりでした。でも、残念ながらその望みは、ひとまず今日の時点では断ち切られてしまいましたね。正直とても悲しいですし、会場にいた何人もの人がその事実に涙を流していました。

しかし、それがただ「悲しい」という感情からもたらされた涙なのかというと、少し違う気がしています。かなり言語化するのが難しいのですが、例えならすぐに出せて、あれはまさに「卒業式」という感じでした。ただ学校を卒業するというだけでなく、これまで毎日やっていた部活動もやめて、新しい土地に移り住み、もうきっと会うこともなくなる。悲しいし、寂しいけれど、同時に新しい生活にできるだけ幸福な気持ちで送り出してあげたい、そして成長したその姿を目にして感動のあまり流れ出る涙。そんな感じですかね。

オサカナ自体すでに解散しているので、「何を今さら」って感じもわかるのですが、今日は今日でまた1つの物語が終わったという感じがしました。ふぅちゃんは「物語は続く」と歌っていました。たしかにふぅちゃんの人生という物語は続いていきますので、それは全力で応援したいと思っています。けれど、もうオサカナの歌は誰も歌わなくなってしまう。オサカナが解散して約4年間。細々と紡がれてきた可能性の糸が、今日を以ってぷつんと切れてしまいました。それは単にふぅちゃんが芸能活動を引退し、一般の女性になったという単なる肩書上の問題ではないかもしれない。晴れやかな表情、大人っぽい雰囲気を纏って、最後に「学生」としてオサカナを歌うふぅちゃんの姿は、本当に最後の灯でした。名実ともに「大人(社会人)」になったふぅちゃんは、もう少女性というところからも飛び立って、sora tob sakanaっていうアイドルではなくなる。

子供らしい無垢さを表現してきたオサカナだからこそ、様々な意味合いにおいて、今日のイベントが区切りになったという感じがしています。

 

2020年の解散時、彼女たちは少女のままスモークの霧の中に儚く消えていきました。

2024年、残された神﨑風花という可能性は、自身が少女から大人になる瞬間(まさに「最後の春休み」)を私たちに見せてくれ、もはや幻想すら上書きして、本当の意味でのオサカナの終わりを刻みつけてくれました。

羽化する彼女への祝福、本当の終わりを見た寂寥感。それらが瞳を潤ませました。

 

改めて今までありがとうございました。これからの人生も本当に応援しています。また色んな現実との折り合いがついたときにでも、姿を見せたり、歌声を聴かせてください。変わらず、良いときも悪いときもオサカナを聴いて、何とか生きていこうと思います。

 

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言葉がまとまらないまま、書いては消してを繰り返しているうちに、頭の中はぐちゃぐちゃ。日は暮れ、今頃はvol.3が開演していますかね。

酷い文章になっていると思いますが、この何とも表現しがたい感情のほんの1割くらいは文字にして記録に残せたでしょうか。これからもオサカナを聴きながら、今日感じたことを思い返し、いつの日か、きちんとした言葉にできますように。

 

 

《追記》

仕事をしながら、生活をしながら、どうにかこうにかこの胸に湧き起こった感情を整理できないかと考え続け、数日が経ちました。まだ自信はないですが、考えまくった現状の暫定的な到達点として書き記しておきます。

 

まず、照井さんのShowroomや、vol.1, 3を見た上で思うのが、照井さん含め制作陣がオサカナちゃんたちの持つピュアで気高い想いや人生を強く尊重していたことに対する感謝の念です。活動している彼女たちは彼女たちなりに色々と思うところもあったと思いますが、大前提として彼女たちに近いところにいる大人が、彼女たちが自身の活動を振り返って「黒歴史」と思わないような、気高いものを作ろうとしていたことが何よりも尊いと感じました。これがあったからこその、オサカナのイノセンスジュブナイル、ノスタルジーなどが先鋭化され多くのファンに突き刺さったのだと思います。

 

そのうえで、ラストライブの霧の中に消えていくオサカナちゃん達、という演出はあまりにも完璧すぎました。

それは多くの御伽噺で、例えばシンデレラとかで、「その後、シンデレラと王子様は幸せに暮らしましたとさ」と結んでいくような、そんな潔ささえ感じる最後だったと思います。「いやいや、その後も嫁姑問題とか、夫婦間のセックスレスの問題とか色々あったやろ」なんて言うのは無粋ですし、全く意味の無いものだと思うのと同じくらい、オサカナのラストは素晴らしいものでした。

だからこそ、私たちはあまり彼女たちの「その後」について考えないようにしてきたのかなと思います。しかし、それでも私たちは相も変わらず日常の中で疲弊し、絶望してきましたから、何か美しい灯のようなものをまた体の内に取り込みたいと思わずにはいられませんでした。そんな中で、ふぅちゃんがゲリラ的に更新をし始めたTwitterのカラオケ動画や、弾き語り動画、そのほか写真や言葉などは、「めでたし、めだたし」で終わった御伽噺のその後の美しい続きを感じさせてくれ、我々の生きる活力になっていたと思います。

それが今回の「最後の春休み」では、何か綺麗に蓋を閉められていた物語の封を切り、私達にまた温かく切ない何かを与える機会になってくれたと思います。ただ幸せにその後の人生を生きていくと約束した主人公が、いま再び私たちの目の前に姿を現し、「いやね。まぁ、色々あるし、色々思い出すけどさ。まぁ、今日くらいはあの美しい日々…ほら、一緒に皿洗ったり、暖炉の掃除をしたりしたじゃんか。ああいう日々を思い出しながらさ、そうは言ってもこれから先のことについても話そうや」と言ってくれているような気がしました。ふぅちゃんが、ステージから降りて、一般の社会人として生きていく。そういうこんなにも切なく、意味があって、とても暖かい「蛇足」をつけてくれたことが、私はとてつもなく嬉しく、そして涙が幾筋も零れ落ちてしまいます。

私たちが生きる世知辛い現実の延長線上に、またふぅちゃん、ないしオサカナちゃんたちの現実も確かにあり、あれは素晴らしい御伽噺ではあったけれど、でもそれだけじゃない。同じ美しい思い出を分かち合いながら、これからも何とか生きていこうぜ。そういうグサリグサリと突き刺してくるような、確かな実感が胸に迫る。何よりもあんなに可愛いふぅちゃんの笑顔に、さしずめシャーロットのコトンのドレスが残していった右の掌のレモン・イェローの跡のような、印象的な感傷を感じる。「みんなが画策しているような気がするのだ、ぼくを幸福にしてやろうとして」って感じの、幸福な哀しみを感じずにはいられない。

 

そういう様々な感情が綯い交ぜになって、あのとき見た御伽噺が、「あれは良い御伽噺だったね」という実感をいまさらになってぶつけてきて、途方に暮れつつも、その途方に暮れている感じが何とも不幸せで、幸せだ。打ち上げの中で「沼らせる、ってのが果たしていいものなんだろうか」と言っていた言葉の意味を、今になって感じている。

そうだ。沼っている場合ではない。

物語は続いていく。

【妄想】キャメリア工房ユミの「はぁ?聞いてないんですけど」

2021年5月

晴れてデビューすることが決まり、これで私も芸能人の仲間入りという感じだ。これまで一応芸能事務所に所属して、ドラマだとか戦隊モノのちょい役としてテレビに映ることもあったけれど、何か継続した活動があるというわけではなかった。ほぼ習い事の延長線上みたいに歌やダンス、演技のレッスンを受けて、たまにオーディションに応募するくらいのものだった。

でも、数か月後からは違う。ほぼ毎週のように週末はライブ。そして何と言っても10月には武道館公演を控えている。もちろん私達新メンバー4人がその武道館公演開催をもたらしたわけではなく、偉大な先輩方のこれまでの活動の成果である。けれど、武道館公演を行えるようなグループに入ったのだと思うと身が引き締まる思いだ。

とは言え、まずは目の前の7月の初舞台。しばらくは歌・ダンスのパフォーマンスはなしで、挨拶のみと聞いている。たかが挨拶ではあるけれど、与えられた短い時間の中でお客さんに良い印象を与えることができれば、その後本格的にパフォーマンスをするようになってからも、気にかけてもらいやすいだろう。たくさんのオーディションを受けて来た私にとっては、ほかの3人よりもきっとこれまでの経験値で優位に立てるはず…

 

言わずもがな楽しく活動できることが1番ではある。他人を蹴落としてどうのこうの、みたいなことをしたいわけじゃない。でも、せっかくアイドルという人気商売に身を置くことになったのだから、所謂グループのセンターだとかエースだとか、そういう存在にはなってみたい。そういう野心みたいなものがあればこそ、ファンも応援したいと思ってくれるのではないか。「応援」ってそういうことなんじゃないか。最終的にバイプレーヤー的な立ち位置になるとしても、加入したてでいきなりそんなところに目標を立てるほど私は謙虚でも、ひねてもいない。もちろん大人でもない。まだぴっちぴちの17歳だ。

ただいきなり先輩方に勝てるとは思っていない。長年活動してきた先輩たちに人気で勝つためには、それなりの時間をかける必要がある。客観的に見ても、歌やダンスのスキルでは全然歯が立っていないのはわかり切っている。もちろん私には私の強みがあるけれど、まだまだその差をひっくり返すには足りてはいない。

けれど、少なくとも同期の4人の中では、1番になれるはずだ。そういう気持ちでやっていく必要がある。いや、気持ちだけではない。ちゃんと戦略を立てて、人気を自分のところに集めなければならない。そう、これからだ。がんばっていこう。

 

2021年7月

加入発表の動画がYouTubeで公開された。そのときの自分的には精一杯やったつもりだったけれど、いま思い返してみるともっとやれたとも思う。サプライズで発表がなされて涙を流せたのはよかった。もちろん計算して流した涙ではないし、本当にびっくりしたし、合格が決まって本当に嬉しかった。それは真実。でも、こうして客観的に動画を見返すと、うん、よく綺麗に泣けていると思う。これは好感度高いだろう。

ただコメントはあまり強くはなかったか。憧れの先輩としてキャメリア工房じゃなくて、サンクス!プロジェクトの別のグループの先輩の名前を上げてしまったのもあまり良くなかったかもしれない。事実、私の次にコメントしたシホリがキャメリア工房の先輩の名前を上げて、結構場を盛り上げていた。これは単純な私のリサーチ不足でもあるし、どちらかと言えば悪い方向で私の素直さが出てしまった。しかも、シホリに関しては、サンプロ研修生から一緒にデビューすることになったルナのことを昔から応援していたらしく、そこでもポイントを稼いでいた。シホリのことは2次オーディションからずっと見て来たけれど、彼女は器用に嘘や方便が使える性格ではない。天然でそういうことをやれてしまう。そこがなかなかに厄介なパーソナリティだ。

けれど、総じて見てみれば、私の立ち振る舞いは4人の中では1番新人アイドルとして期待感を感じさせるものだったと思う。ちゃんとは知らなかったけれど、キャメリア工房は毎年グループで浴衣を着て花火をするらしく、「一緒に花火してくれますか?」という質問にピュアっピュアな雰囲気で「ぜひ!」と答えられたのはナイスプレーだった。YouTubeのコメント欄でも、そこの私のリアクションに対し、「なんていい子なの」とかタイムスタンプ付きでコメントしてくれているのをいくつか見つけた。

これまでのあまりパッとしない芸能活動を通して、私はどのように振舞えば大人から好感を持ってもらい、出役からスタッフまで様々な人間が入り乱れる現場で自分の価値を高められるかを学んできたつもりだ。いや、芸能活動だけではないか。部活や学校生活でも同じことだ。結局、不機嫌な顔をせず、常にハキハキと、フレンドリーに人と接せられるかが重要なんだ。しかもそういった態度を偽装するのではなく、自然に醸し出せるか。作り物は結局のところ化けの皮を暴かれてしまう。

そういう意味では、私には「才能」がある。そういう明るく、フレンドリーな感じを私は割と素で出すことができる。もともとの性格が私は陽キャ寄りなのだ。けれど、私の陽キャ感の良いところは、決してギャルとかヤンキーとかそういう浅はかな感じではないというところ。勉強が得意なわけではないし、ときどきおバカ発言をしてツッコまれることもあるけれど、私の陽キャ感には威圧感や嫌味みたいなのはない。割と誰からも「接しやすい」と言われるし、時と場合によっては、真剣な話をしたり、陰キャトークにも付き合うことができる。「世渡り上手」と言うと、すごい聞こえが悪いけれど、どんな空気にも合わせることができて、そしてちゃんと心からその空気や場を楽しむことができるのは私の「才能」だと思う。

キャメリア工房は王道アイドルで、サブカル感の強いアイドルではない。綺麗に、清く正しく生きることが評価に繋がるタイプのアイドルグループ。そういう土俵でこそ、私の持ち前の清純な陽キャ感というのは、最大限に力を発揮するだろう。

 

ライバルである同期についてもオーディションやレッスンを通じて少しずつ素性が知れて来た。

まずはさっきも話した八田シホリ。年齢的には同級生。演劇が好きで将来は舞台女優になりたいと思っているみたいだけれど、合格発表のときに答えていたように、ちゃんとサンプロが好きという気持ちでオーディションに応募してきたようだ。こいつはライバルとしてはなかなかに厄介で、どこまでも天然で素直で嫌味のひとかけらも無い人間だ。私が思うに、普通「舞台女優を目指している」なんてことを発言したら、「キャメリア工房を踏み台みたいに考えやがって」とくさされるものだけれど、シホリが「舞台女優になりたい。でもアイドルもがんばる」と言うと、本当に両方を真剣に頑張ろうとしているんだな、という感じがする。まだシホリは動画やブログで「舞台女優になりたい」と名言はしていないけれど、何となくファンも「演劇好き」という情報からシホリの気持ちを見抜いて、その純粋な想いをどちらかと言えば前向きなものとして捉えている感じがある。そういう不思議な純粋無垢さがシホリにはあるような気がする。

でも、シホリは空気が読めるタイプではないし、よくマジレスをして場を凍らせている。ステージやカメラの前に立つ人間としては配慮する力に欠けている。これが私と対極にある特性だ。シホリの純真さはもろ刃の剣みたいなものだ。その点、私の方が安定して場を盛り上げることができる。だから、シホリは厄介な存在ではあるけれど、正直負ける気はしない。

 

次に福原マロン。1つ年下の地味顔一般人。すごい悪口みたいなことを言ってしまったけれど、正直私からしたらマロンは人前に立つタイプの人間ではないように思える。たぶん姉妹か母親が応募したら、なぜかわからないけれど、合格してしまって困惑してるのだろう。辛うじてバレエをやっていたから、多少はステージに立つ度胸というのもついているのかもしれない。でも、そのバレエだって、どれくらい自分の気持ちからやっていたのかはわからない。会話をしてみても、別に面白いことを言いたがるわけではなく、そこら辺の物静かな毒にも薬にもならないただの真面目な女子。委員長タイプというのでもない。委員長決めを推薦でやったとしても、周りが気を遣ってマロンの名前を上げることはないだろう。そんな感じの本当に地味な子。

ただ気をつけなければならないのは、やたら小顔でスタイルが良いということ。ちょっとひょろっとし過ぎているので、あまり一般ウケするとも思えないけれど、衣装やヘアスタイルやメイクを上手いことやれば化けるかもしれない。ただマロンの純朴さをゴテゴテとした装飾で損なう結果になってしまうとも考えられる。

それから歌声は妙な色気があるようにも思える。ピッチもリズムも素人丸出しって感じだけど、確かに何か素材の良さみたいなものは感じるかもしれない。ダンスに関しては完全にバレエ系で、アイドルっぽいダンスは全然上手いとは思わないけど、基礎ができているから今後伸びるということもあるのかもしれない。私が思うに、マロンは所謂「成長枠」みたいな感じで選ばれたのだろう。地味で冴えない子が頑張って努力して、まぁそれなりのモノになっていく、というストーリーをサンプロはこれまでも色んな子で見てせて来た。マロンもそのタイプだと思う。だから、当面は私のライバルとしては考えなくていいだろうし、将来的にも私とファン層が被ることにはならないだろう。玄人向けのアイドルとして頑張ってもらいたい。そういう枠も必要だろうから。

 

最後は、豫城ルナ。これはシホリの発言でもあった通り、サンプロ研修生からの昇格で私の同期となった。サンプロ研修生の中でも、歌が上手く、定期模試(研修生は半年に一度「模試」という形式で、既定曲と自由曲をパフォーマンスし、お客さんの投票と審査員の評価で順位付けがなされる)で優勝している実力者だ。年齢もまだ13歳と、将来を嘱望されている超期待のスーパールーキーだ。まだデビューしていないにもかかわらず、一般加入の私達と比べたら圧倒的なファン数を既に獲得している。大方の見立てとしては、このルナが新メンバーの中でのエースであり、センター的な存在になっているのだろう。

でも、だからと言って、ルナが本当にエースやセンターとしての役割を務められるのかと言われると、私はやや懐疑的だ。まず年齢の問題がある。さすがに13歳は若すぎる。喋っていても本当にただの子供だ。学校であった話を私に「ねえねえ、聞いて聞いて」と無邪気にしてくるし、学校のペーパーテストでちょっと良い点を取ろうものなら、「ねえすごいでしょ」としつこくアピールして来て、「すごいね」と返すと、「やったー」と本気で喜ぶ始末。ファンシーショップのキャラクターが描かれた水筒を持って来て、両手で持ち上げて水分補給をする姿はもはや赤子。確かにパフォーマンスで魅せる力には舌を巻くけれど、ルナの立ち振る舞いからはグループに対する責任感なんてものは微塵も感じられない。子供ながらに「ちゃんとしなきゃ」と躾けられていることをなんとか守っている程度のものだ。まぁ、年齢が年齢なのだからそれはそれで仕方ないことではある。

 

そう考えていくと、どうやら私の同期はなかなかに個性が強いみたいだ。個性ってのは良く言い過ぎか。クセが強いというか、うん、バランスが悪い。総合的に見れば、私が1番良いんじゃなかろうか。とは言え、アイドルとか芸能人ってのは総合力ではない。突出した何かが必要なのだということを、私が1番良く知っている。

それでも、私の同期はまだアイドルや芸能人としての基礎的な力が足りていないように思える。そもそも人前でちゃんとしたことを、ちゃんと喋るという能力ができていない。これから始まるツアーでは、自己紹介とちょっとしたやり取りをすることになっているが、正直同期として一緒に喋る私の方が不安だ。だが、この不安はむしろチャンスとして捉え、私がしっかりとした人間であることを示し、内外ともに私への信頼感を一気に高めるよう頑張ろう。

 

2021年12月

9月からのツアーで初めてのパフォーマンスが始まった。そのまま10月の武道館公演まで駆け抜けて、11月には新曲シングルが発売。もう怒涛の日々だった。

色々と語りたいことはあるけれど、ともあれ今ここに記しておくのは、私の成功と懸念だ。まず、私は自分の強みである繊細なウィスパーボイスを存分に生かして、新曲の出だしパートを貰うことができた。もちろん新人だから活躍の場を特別に与えられたというところもあるだろう。でも、評判は上々。実力派の先輩たちも多くいる中で、私の歌声は既にグループにとって1つの武器となっているようだ。これは想定内であり、歌のレッスンを重ねたことで何とか達成に漕ぎ着けたことでもある。これは正直、かなり自信に繋がる出来事ではあったね。

それからグループ内での人間関係や、私のバラエティ能力についても概ね私が望む通りの評価を受けてる。新人4人をまとめるのは自然の成り行きで私の役割となり、先輩やレッスンの先生との仲介役を任されることが多くなった。それに何人かの先輩とはもうプライベートでも食事に行ったりして、普通に楽しかったし、色々とビジネス上でもやりやすい面が増えていった。ライブのMCでも、そうやって培ってきた人間関係と私が元来持ち合わせているコミュニケーション能力を活かし、新人の割にはかなり上手く立ち回れている。トークが苦手な先輩からも既に頼られているし、自分の喋りたいことを見当違いな角度から喋るシホリや、箸にも棒にも引っ掛からない普通のことを喋るマロンや、子供過ぎるし電波過ぎる奇天烈なルナたちの発言を適切にフォローして笑いに変えるのも私の役割となっていた。

そういった実績を鑑みれば、私はグループ内での序列を順調に上げて来たと言える。

けれど、この間YouTubeに投稿された新メンバー4人のソロ歌唱動画の再生数が変な伸び方をしている。声楽を習っていたシホリは発声が良いし、ルナに関しては相変わらずの底力のある表現力。それらを絶賛するコメントも多かったが、再生回数で言えば、私の方が一回り多い結果となっている。私の武器であるウィスパーボイスは確実にファンの心を掴んだと思うし、日々の立ち振る舞いから私のアイドル能力の高さを買われ、再生数が伸びたと私は考えている。だから、この状態にはまずまず納得がいっている。欲を言えば、もう少し差を広げたいところだったけれど、まぁ、新メンバー4人全体が注目されているということを考えればむしろ喜ばしい。実際、私たち4人は、新曲の曲名に合わせて「G4(ゴールデン・フォー)」とか「ミニキャメ」とかという愛称で呼ばれるようになり、キャメリア工房だけでなく、サンプロ全体でもかなり注目され始めた。

だから、現状に不満があるというのではないけれど、いまいち腑に落ちないのが、マロンだ。相も変わらず地味顔で、面白いことも言わないパンピー・マロンのソロ歌唱動画が何故だかグイグイと再生数を伸ばしている。エース筆頭の私を軽々と追い抜き、シホリやルナの倍近い再生数を叩き出している。4人ともそれぞれに割と人気の高い曲を歌っているはずだったから、楽曲選定自体ではそこまで差がつかないはずだった。いや、むしろマロンの与えられた楽曲よりも、私が与えられた楽曲の方が人気がある楽曲のはずだった。にもかかわらず、マロンは硬い表情でぎこちなく曖昧な発声で歌っただけで、サンプロファンを魅了したようだった。コメント欄ではマロンの純朴な感じを褒めたたえる声や、奥底に隠れた色気のある声質に賞賛を送る声で溢れ返っていた。なぜか皆がこぞって、「自分がマロンを見つけた」とでも言いたそうな感じで、知ったような口を聞いていた。

もしかしたらマロンには何か隠された才能のようなものがあるのかもしれない。ただ小顔でスタイルが良いという以外の何かが。

 

2022年2月

また不思議なことが起きた。シホリの変人っぷりについては、もうデビュー当時から感じるところではあったけれど、正直シホリは周囲から呆れられるくらいがちょうど良いと思っていた。

彼女はもうデビューしてから1,2か月でそのヤバいセンスをブログで世界に発信していた。ブログをチェックしているマネージャーもよく止めなかったな、というくらいの粗野な手抜き料理の写真。具無しのインスタントラーメンの写真。あんなものを外に出して恥ずかしくないのか。ファンや周囲の人たちからどう思われるか、とか考えないのだろうか。しかも別に料理下手キャラを付けようとしているわけではないのだから驚きだ。自分が何をどういう風に普段食べているのか、ということをファンの人と共有することでファンが喜んでくれると思ってやっているのだ。単に他人の目が気にならない性質なのか、あるいは手抜き料理を見せるくらいでは自分の価値は変わらないというとんでもな自己肯定感の持ち主なのか。私には到底理解の及ばない行動を取るシホリだったけれど、このシホリのメシの写真がファンの間でとてつもない反響を呼び始める。

最初はそれがぶっ飛んだギャグとして、ネットミーム的に流行っているだけだと思っていた。しかし、次第にシホリの開けっ広げな料理やブログの在り方に、ファンの人たちが感動を覚え始めていったようだった。「前よりも上手になったね」と褒めるコメントもあれば、「上手くならないで!」という原理主義者も現れ始め、「八田メシ」なんて言葉も生まれ出した。

そして先日、彼女が愛用するキャラクター柄の鍋(シホリは調理したその鍋のまま、皿に移すことなく食事することを公言している)を作っている企業から、リアクションがあった。SNSでシホリの料理に対して、いちいちリプライが来るようになり、これがシホリの料理の価値をさらに高めることとなり、キャメリア工房の中でも一大コンテンツに登り詰めるまでになった。「(見た目はともかく)味は(ごく一般的な味なので)、美味しいよ」と言うと、シホリはそれを真に受けてとても喜ぶ。シホリがライブのMCとかで「ちょっと失敗しちゃうことが多いんですけど」と料理の話をすると、会場がドっと笑い声に包まれる。そんな現象まで起こるようになった。
シホリのそんなパーソナリティーはいつの間にか、サンプロファン全体にまで広がり、シホリが色んなファンの最推しとなっているかどうかまではわからないものの、明らかにファンに対してインパクトを与え、各ファンの推し上位何パーセントかに食い込むようになったのを肌で感じるようになった。インタビューでもシホリのぶっ飛びエピソードを聞かれることが増え、普段大人しくて上品なマロンがちょっと腐すようなことをぽろっと零すと、それがまたウケ、「ハタマロン」のカップリングがキャメリア工房の中でも大きな覇権を握るようになっていった。

私個人の人気が落ちたとは思わないものの、「ハタマロン」が異常な人気の取り方をし始めるようになり、少し焦る。いや、まだ私は彼女たちとトントンくらいの感じで戦えているだろうか。コンサートのペンライトの色味を見ても、まだ何とかなっているんじゃなかろうか。いやいや、何を弱腰になっているんだ。マロンはたまたまあの純朴さと秘めたる「何か」が一時的にファンの心を掴んでいるに過ぎないのだろうし、シホリの人気の出方こそ一過性の飛び道具みたいなものだ。私はパフォーマンスと、バラエティスキルで圧倒すれば良い。王道アイドル。それが私の生きる道だ。

 

2022年6月

新曲がバズってる。ノリの良い曲で、私も大好きな曲だ。何よりも良いのが、先輩たちが順当に賞賛されていることだ。1人ひとりに見せ場があり、次々とキラーフレーズのバトンパスが行われるから、グループ全体の評判もうなぎのぼりだ。

何よりも凄いのはMVのサムネになっているララ先輩。ずっとグループのセンターにしてエースを務めている尊敬する人で、やっぱりこの人にはなかなか勝てないと思う。けれど、いずれは追い越さなければならない存在。私も先輩くらいの華を身に着けたい。

でも、私は私でこの曲でまた1つ評価を高めた。曲の中盤にあるキラーパートを任されたのだ。YouTubeのコメント欄でも、私のパートを好きだと言ってくれる人が多いし、今回こそは同期4人の中でも私の実力が証明されたんじゃないかと思う。相も変わらず、「ハタマロン」の台頭には目を見張るものがあるけれど、それでもやっぱり私の人気が落ちているわけではないはずだ。良いパフォーマンスをすれば、必ずファンの人たちは見ていてくれるはず。今回の新曲でそのことを再確認できた。

新曲では私の得意のウィスパーボイスはなかったけれど、それでも自分の価値を証明できている。これを足掛かりにもっと凄いアイドルになるんだ。

 

2022年11月

やられた。今度は豫城ルナだ。

サンプロの先輩を指名して、1対1でパフォーマンスする企画。キャメリア工房のトップバッターは私が務め、お姉さんグループのエースにして、今や色々な雑誌やテレビに引っ張りだこの上白浜さんと共演をさせてもらった。これが大好評であっという間に再生回数が伸びていった。先輩の力も大きいに決まっているけれど、めちゃくちゃ歌が上手い上白浜さんとタメを張ってることを色々な人に評価してもらった。かなり背伸びをしたけれど、やっぱり実力者に挑んで良かった。ビジュアルの面でもしっかり仕上げていったおかげで、超絶美人の先輩に見劣りしなかったことも大きい。

この動画で私の地位も盤石になった。そう思っていた。そこへ2週間後、ルナの1対1の動画が投稿される。

ルナの相手はサンプロ・メイングループのOG佐原さん。神憑り的な人気を博し、芸能界や著名人にも彼女のファンを公言する人は沢山いる。後輩や同じアイドル業界からの憧れも圧倒的。とにかくこの人を出しておけば、動画が回る。パフォーマーとしての表現力も桁違いだけれど、ステージを降りた後の天真爛漫でトリッキーな言動は、ただのぼんやりとした「不思議ちゃん」というレベルを凌駕し、唯一無二のキャラクターを作り上げている。

私の動画の再生回数が、ルナの動画に抜かれるのにそう時間はかからなかった。まぁ、正直佐原さんが出ているし、再生回数で負けるのは仕方がないとは思う。それくらい佐原さんという存在は別格なのだ。でも、問題なのは、その動画内でルナが佐原さんと対等に渡り合っていたことだ。もちろんパフォーマンスの面では、まだルナには甘いところがあり、食らいつく場面が所々で見られても、どちらかと言えば、まだまだ及ばないといった印象があっただろう。でも、ルナは佐原さんに触発されてなのか、かなり魅力的なパフォーマンスを見せていた。そのことがファンの間で話題を呼んでいた。ルナにはもともと天性の表現力がある。まだまだ子供だからパフォーマンスは安定しないことが多かったけれど、一瞬の煌めきは昔から佐原さんに近いものがあると思っていた。そのことが今回の1対1の動画でほとんど証明されてしまったのだ。

さらにマズいことに、その動画ではパフォーマンスの後で、サシで2,3分喋るタームがあるのだけれど、そこでルナは佐原さんと異様な相性の良さを見せてしまう。天然・天才・奇想天外、宇宙人同士にしか分かり合えない波長とでも言うのか、そういう奇跡的な邂逅がルナのアイドル商品としての信憑性を高めた。それまではただの「子供」とか「電波」とか、風変わりなところがちょっと佐原さんっぽさを感じさせていたに過ぎなかったけれど、この動画のせいで空席と思われていた佐原さんの後継者争いの筆頭として、ルナの名前が上がるようになってしまった。

私がこの対決動画で2の名声を手にしたのだとしたら、ルナは4の名声に加え、佐原さんの御加護というとんでもないアドを手にしたのだ。ずる過ぎる…動画の時間も私より1分近く長いし。

とは言え、この企画においては、私の動画の再生数はシホリやマロンに倍以上の差をつけている。動画の投稿時期や1対1の相手の問題、選曲の要素も色々とあるけれど、そのことだけは私のささくれだった心を少しは宥めてくれた。再生回数だけに囚われているわけではないけれど、自分自身の客観的な評価指標やトレンド感を押さえておく意味では、これが結構参考になる。ルナの躍進はあったものの、私は今まで通り着実に努力を積み上げて、1つずつ信頼を高め、人気メンバーへの道を進んでいきたい。

 

2023年2月

この事態は新曲レコーディングの辺りから想定できていた。しかし、実際に目にしてみて、ここまであからさまな時代の変化点になるとは思ってもみなかった。

英語を多用した楽曲がキャメリア工房に提供された段階で、「あぁ、もうこれはマロンを全面に押し出したいんだな」とわかった。マロンは英語と韓国語を喋ることができる帰国子女という、そう簡単には打ち崩せないストロングポイントを持っていることは周知の事実だ。どういう風にしてなのかその道筋は全くわからないのだけれど、水面下で着々と人気を集めていったマロンはもう事務所側も無視できない存在になっていて、そんな彼女を飛躍させるためにこの英語まみれのが曲が宛がわれたのだと想像に難くない。

大人しく、あくまで上品で、面白味が欠けた常識人。小顔で首が長く、華奢という言葉を擬人化したみたいなスタイルだったけれど、顔のパーツはどちらかと言えば地味な印象で、瞼だって一重。そういう深窓の令嬢みたいな女子が好きな層が一定数いることは私も知っている。でも、そんなマロンがメインストリームに来ることはまずないだろうと思っていた。しかし、髪を伸ばし、その伸ばした髪を緩く巻いて、妖艶なメイクに暗色の衣装を身に纏ったマロンは、どこか浮世離れしていて、それまで何だったらちょっと見下していた私にすら輝いて見えてしまった。

そんなマロンがバリバリに英詩のラップを歌う。楽曲が与えられた時点で薄々と想像していた考えたくもない未来が少しずつ、けれど着実に具現化されていき、最後はMVのサムネがマロンのソロショットとなったことにより、もはや何一つとして口を挟む余地のないものが出来上がってしまった。

公開して間もなく、私のAメロの歌い出し、得意のウィスパーボイスを称賛する声もままあったけれど、もはやほとんどがマロンのお祭り状態。ミニキャメの序列が一気に覆された感じがあった。これまで私の積み上げてきたものが小っちゃく思えてしまうくらいの圧倒的な転換点だった。完全にやられてしまった。こういうのは才能の問題なのだろうか。でも、歌だってトークだって、まだマロンに負けたとは思っていない。数値化できるステータスでは負けるつもりなんてさらさらない。それでもマロンが持っている「何か」が色んな些末なごちゃごちゃとした議論をすべてぶっ壊し、世界に新しい秩序をもたらすものなのだろうということがわかった。というか、わからされた。

けれど、こういうショックが起こる度に思うのは、やはり私の人気が落ちた訳ではないということ。もちろんチヤホヤされる機会は減ったとは思う。でも、私を応援してくれる人は変わらず沢山いたし、その絶対数は何だったらマロンのおかげで増えてすらいると思う。悔しいけれど。マロンはそれまであまりキャメリア工房を知らなかった人や、興味なかった人たちを惹きつけ、グループ全体の価値を高めることにも一役を買っていた。それくらいの快進撃を見せていた。

ちなみに、この曲はグループのセンターにしてエースを長年務めてきたララ先輩の卒業シングルのうちの1曲でもある。ララ先輩がメインの曲も別にあったけれど、マロンを新機軸に沿えたこの楽曲が圧倒体な再生回数を叩き出し、界隈に衝撃を与えたという事実は、ララ先輩やキャメリア工房にとって良い事だったのか、悪い事だったのか。今のところそれらのことはあまり議論になっていないけれど、間違いなくグループの転換点にはなっていると思う。もしかしたらそういったこともマロン・フィーバーの前では些末なことに過ぎないのか。

 

2023年11月

色々なことがあった。4月にララ先輩が卒業し、そこから立て続けに、リノ先輩とユメ先輩2人の卒業発表があった。リノ先輩はキャメリア工房結成当初からのリーダーだったし、ユメ先輩はグループのムードメーカにしてグループ随一のディーヴァ。この主要3メンバーが卒業することでグループの戦力は大幅に下がることが確定的だった。しかし、私たちミニキャメの努力が認められてきたのか、グループ崩壊に対する懸念を示す人達よりも、ミニキャメによる新時代の到来を待ち侘びる人達の方が多いのではないかと感じることが多かった。

随分と昔のことになるが、エース・ララ先輩の卒業を控えたグループとしての少しナーバスな時期に、ちょっとした騒動があった。先輩方の何人かがお酒やSNS絡みでちょっと炎上してしまった。事務所からは特に謹慎処分等もなかったし、もちろん法的にもコンプライアンス的にも何も問題がない、可愛いお騒がせだ。ブログなどを通じて謝罪や反省があり、それで事態は収束した。ララ先輩の卒業公演も、大きな問題はなく、つつがなく、けれど壮大に執り行われた。それでももちろん一部のファンの人達の間ではぐつぐつと何か煮え滾るものもありそうだったけれど。

サンプロでアイドルをするには綺麗に生きなければならないと、昔の大先輩が卒業後にSNSで語っていたと耳にしたことがある。まさにその通りなのかもしれない。まだ20歳になったばかりの私やシホリ、まだ10代のマロンやルカは未だ清純なイメージを損なっていないはずだ。そういった経緯や、ララ先輩の卒業、リノ先輩とユメ先輩の卒業発表も相まって、グループの中でのパワーバランスのようなものが不安定になったような気がした。そしてそんな時期に、卒業発表を終えたユメ先輩が心の病気にかかってしばらくお休みすることになった。

ユメ先輩の心の中までは私には覗けないけれど、色々と無理もないことだという気がした。私だって環境の変化にうまくついていけず、「もっとがんばらなきゃ」と思ったり、「どうせ私ががんばったって」と思ったり、心が不安定な時期を過ごした。

そんな時期でもシホリはあくまで自分のペースでアイドル稼業に精を出し、ずっと続けてきた料理「八田メシ」で料理系の外部仕事を取って来たし、マロンは毎日ブログでユメ先輩に対して見舞いの言葉を述べ続け、好感度を上げていた。2人とも別に自分をよく見せようとしてそうしているわけではないというのはよくわかっている。2人とも根っからのそういう人間なのだ。例の英詩の曲でマロンは一躍グループ内で段違いの人気を博するようになっていたけど、シホリもいつの間にかその我が道を行くキャラクターだけでなく、演劇趣味から来るものなのか重厚な表現力を身につけ始め、グループの中で人気を高めていった。

そしてリノ先輩とユメ先輩の卒業公演。ユメ先輩の療養も何とか間に合い、メンバー総出で2人を送り出すことができた。卒業の寂寥感に浸る一方で、ミニキャメが引っ張っていく新しい時代がやってきたという声も聞こえて来た。ミニキャメの中では私が長女的な役割として残りの3人を引っ張っていくという構図は変わらなかったけれど、「ハタマロン」の人気にぶら下がる感じで私がいて、そこにルナがトリックスター的に絡んでくるという新しい布陣が固まりつつあった。武道館での卒業公演については、SNSを見る限り、マロンの圧倒的なオーラや、シホリの急成長する表現力、そしてルナの鮮烈な歌声を賞賛する声が多かった。私もビジュアル面や、安定した歌唱力、グループを牽引する力、そして儚げな曲でのウィスパーボイスを褒めてもらった。1つひとつのお褒めの言葉は嬉しいし、励みになるけれど、どうしても同期と比べてしまう。

持ち前のコミュ力を使って、先輩を食事に誘って愚痴を聞いてもらった。

「私に何が足りないと思います?」

先輩は笑いながら首を横に振り、「何も足りないところなんてないよ」と言ってくれた。「向上心があるのは良い事だけど、人気なんて水モノだし、1つのスキャンダルで砂の城みたいに崩れて無くなるもんだよ。むしろね、人気が無くなって落ち目になっても応援してくれるファンの人達がいて、そのファンの人達が『良い』と言ってくれるものが見つかったら、それを大切にするの。それがユミらしさになるし、人間ってのは自分らしくあることが何より幸せなんだから」。

それから先輩は、「だいたい私より人気があるユミにそんな質問されたくないよ」と机の下で私の脚をコツンと蹴った。

まったく、なんでファンの人達は私の魅力に気付かないんだろう。それにシホリは加入した時から空気の読めない猪突猛進人間ってのは変わらないし、マロンは相も変わらず根っこは普通のことを普通にいうだけのただの一般ピーポー。ルナは末っ子属性の電波で日に日にブログの内容が壊滅へ向かって行っている。それが何故だかわからないけれど、時空が歪んだかなんだかして、本来欠点だったはずのものが魅力的に見えたり、説明できないような高輝度の魅力が内側からUFOみたいに突如として出現したり。

ったく、やってらんねぇよ。

「先輩、やってらんねぇです」

「後輩、やってらんねぇです」

ゲラゲラと笑いながら、焼き肉をやけ食いした。

 

2024年2月

髪をショートカットにしたマロンが猛威を振るっている。インフルエンザよりも感染力の高い何かが、サンプロ界隈を揺るがしていた。まじであいつは何個ギアを持ってるんだよ。

「はぁ?聞いてないんですけど」

「Juice=Juice 10th Anniversary Concert Tour 2023 Final ~Juicetory~」ライブレポート

ブログを更新するのはだいぶ久しぶりになります。文章を書くということ自体久しぶりの行為になるため、お手柔らかにお願いします。

と、いきなり言い訳から始まった本記事になりますが、2023年12月6日(水)にJuice=Juice(以下、J=J)の10周年記念武道館公演に参戦してきました。久しぶりのハロプロの現場、そしてデビュー当時から応援してきたグループの10周年記念コンサートということで、とても楽しい時間でした。公演時間も2時間を超え、大満足の内容でしたね。

 

 

■セットリスト

1:プライド・ブライト

2:Next is you!

3:プラトニック・プラネット

MC(自己紹介)

4:Dream Road ~心が躍り出してる~

5:FUNKY FLUSHIN'

6:ノクチルカ

7:Va-Va-Voom

MC

8:ブラックバタフライ(植村、段原、井上、工藤、松永)

9:初めてを経験中(有澤、入江、江端、石山、遠藤)

10:POPPIN’ LOVE

11:TOKYOグライダー

12:生まれたてのBaby Love

MC(コール&レスポンス)

13:明日やろうはバカやろう

14:選ばれし私達

15:STAGE ~アガッてみな~

※Juicetory スペシャルメドレー(M16~23)

16:イジワルしないで 抱きしめてよ

17:「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?

18:微炭酸

19:私が言う前に抱きしめなきゃね

20:カラダだけが大人になったんじゃない

21:Never Never Surrender

22:CHOICE&CHANCE

23:Magic of Love

24:Wonderful World(2023 10th Juice Ver.)

25:ボン・ヴォヤージュ~想いの軌跡~

EC

26:Familia

MC

※デビュー曲メドレー

27:全部賭けてGO!!

28:イニミニマニモ~恋のライバル宣言~

29:プラスティック・ラブ

30:Future Smile

31:がんばれないよ

32:好きって言ってよ

33:ポップミュージック

34:Fiesta! Fiesta!

35:ロマンスの途中(Original Ver. ~ 2023 10th Juice Ver.)

MC(1人ずつ)

36:未来へ、さあ走り出せ!

 

大満足の内容でしたね!

 

■長めのハイライト

出囃子はいつものツアーやフェスなどで聴くアレではなく、今回の武道館公演仕様のカッコイイ楽曲が使われていました。スクリーンにはローマ字表記でメンバーの名前が順々に映し出されて、1人ひとり歓声をさらっていましたね。

そして1曲目からキラーチューンの「プライド・ブライト」。近くに座っていた割と新規目?のお客さん(良いのか悪いのか、割とライブ中に喋るタイプのお客さんだったので、いちいち反応が面白かったです。カップルか男女のお友達で観に来ていたようです)も「あぁ、この曲ね!」「カッコイイ!」と歓声を上げていました。落ちサビの里愛ちゃん、れいれいの流れは鉄板ですね!1mmも外さず、完璧に歌い上げていました。ラスト「プライド!」のりさちも最高に決まってました。

そして次の2曲目は久しぶり過ぎて、最初イントロを聴いたとき「なんだっけ!?」となった「Next is you!」。この曲はイントロから凄いカッコイイんですよね。ぶち上がりました。「ふくらはぎバリ筋肉って努力の証だい!」のところ、誰が歌っていたか忘れてしまったんですが、めちゃくちゃ男前な歌声で印象に残っています。はやく配信されるか円盤が発売されて確認したいですね。

3曲目は皆大好き「プラトニック・プラネット」。前回の武道館ではイントロの「愛 愛 愛 愛…」のところでアレンジがありましたが、今回それはなく。スタンダードな「プラトニック・プラネット」でした。でも、いいよね。由愛ちゃんのフェイクではアレンジがありましたし。最高の出来でした。高音パートで由愛ちゃんが輝くタイミングが増えて嬉しいです。

自己紹介では、いつものことながら、ゆめりあいのテンションの高低差が面白かったですね。川嶋美楓ちゃん欠席にも軽く触れられ、10周年公演を楽しもう!というMC。J=Jは基本的に生真面目なMCなので、これと言って引っかかりはなかったです(笑)

4曲目はまた珍しい曲で「Dream Road」。「大工ダンス」と揶揄され、初代リーダーのゆかにゃも講演後のブログで「独特なダンス」と言っていた、不思議なコンテンポラリーダンスは健在。でも、楽曲自体はとても美しいんですよね。娘。の小田さくらさんも、この曲が好きだということがゆかにゃのブログで明かされました。私もこの曲、結構好きなので、久しぶり(というか初めて?)聴けてとても嬉しかったです。

5、6、7曲目は、「FUNKY FLUSHIN'」「ノクチルカ」「Va-Va-Voom」とお洒落系の楽曲が続きました。J=Jは歌声に厚みがあるので、聴いていて迫力があっていいですよね。それでいて、3トップの声が特徴的かつお洒落なので、雰囲気も醸し出されて聴いていて飽きないです。中でも私は「ノクチルカ」が大好きなので、今回の10周年記念ライブでもセトリに入っていてとても嬉しかったです。間奏明けの「誰かの模造品は嫌!」はいつもの如く、鳥肌ものでした。あと、里愛ちゃん推しの私としては、「Va-Va-Voom」の「もう左右されないくらい スピード上げていいじゃない 行きたいとずっと願った場所まで」も聴けて大満足でした。「まで~♪」でアレンジも加えていて、歓声が上がってました。

そしてMCの後はまさかの「ブラックバタフライ」。ゆかにゃブログでも「ブラックバタフライで笑った」と書いてあり、やはりオリジナルメンバーにとってこの曲はちょっとした思い出になっている楽曲なんでしょうね。発売記念イベントでプロレスラーの蝶野さんが招待され、J=Jの客層の年齢層の高さをいじられたのも良い思い出です。でも、私は結構この曲好きなんですよね。初期のJ=Jは本当に様々なジャンルの楽曲にチャレンジしていて、「ついにタンゴにまで手を出したか!」とびっくりしつつも、楽曲のクオリティに舌を巻きましたね。推しの里愛ちゃんはモチーフとしての蝶が好きなんですが、この曲では持ち前のセクシーさを思う存分発揮していてカッコよかったです。あ、言い忘れていましたが、この楽曲はMCに引き続き、お姉さんチームでの披露となっていました。ゆめりあいがお姉さんチームというのも何だか感慨深い。そんな1曲でした。

9曲目は「初めてを経験中」。こちらは年少チームでの披露。いちかちゃんはやはり頭一つ抜けて歌が上手い!そして安定していますね。でも、ほかの4人も楽曲の持つ可愛さを十分に表現していました。中でもりさちは可愛さという面ではかなりレベルが高かったです。こう言っては何ですが、オリジナルメンバーは佳林ちゃん以外、この楽曲やるときに固くなっていた印象なんですが、今のメンバーはかなり前向きに取り組んでいますよね。それも何だか、時代が変わったなぁ、という印象です。

10曲目はアルバム「terzo」から「POPPIN’ LOVE」。可愛い楽曲が続きます。私は東側の1階席で観ていたのですが、メンバーが近くまで来てパフォーマンスしてくれたので、その可愛さを堪能できて最高でした。例の新規目のお客さんも「かわいい~」と歓声を上げていましたね。りさちの台詞パートも100点の出来!

11曲目は「TOKYOグライダー」。東京女子流の楽曲を数多く手がけた松井寛さん作曲の「TOKYOグライダー」。6曲目にやった「ノクチルカ」も松井寛さんの楽曲なのですが、そのせいか今までのライブでは「TOKYOグライダー」か「ノクチルカ」のどちらか披露されたなということが多かったと思います。しかしながら、どちらもお洒落なJ=Jを体現する良曲。ここに来て、10周年記念コンサートで両方の楽曲が披露されてとても嬉しかったですね。

12曲目は1stアルバムから「生まれたてのBaby Love」。この辺りの楽曲って、J=Jをボーカルの凄いグループとして位置付けてくれたという印象があるんですよね。ライブでの盛り上がりもひとしお。間奏では会場全体でウェーブをやったのですが、ウェーブの最後を担当したあかりんごがそのまま綺麗なバレエのターンをやって会場を沸かせていました。本当に素晴らしい才能を持った子が入ってくれました。由愛ちゃんのラストのフェイクも最高でした。

そして、今回のライブの中でもかなり印象深かったコール&レスポンス(というか、さくらちの煽り)。黙っていれば美人筆頭のさくらちが、「もっと声出せますか?」「その100倍どうぞ!」「そのまた100倍どうぞ!」「その1000万倍どうぞ!」「こっちも!」「そっちも!」「こっちも!」とかなり理不尽に煽るので、会場からは笑い声も混じりながら大歓声が巻き起こっていました。「ライブビューイングの皆さんも!」「全然聴こえない!」とこれまた理不尽な煽りをして、メンバーから「そりゃそう…」と失笑されていたのも面白かったですね。これからもさくらちの煽りが毎回楽しみですね。引き際の潔さも面白かったです。

13曲目の「明日やろうはバカやろう」のイントロから、コール&レスポンスは里愛ちゃんに引き継がれたのですが、ここも大盛り上がりでした。何と言っても、「ペンライトを赤に!」の演出が良かったですね。不在のみっぷるを想っての演出が粋でした。単純に攻撃的な楽曲に赤色が映えてもいました。ただみっぷるにはやらなきゃいけないことを先延ばしにしてでも、今は何よりもまずしっかりと休養を取っていただきたいものです。まぁ、それはそれとして、この楽曲は福田まろ先生が作詞をしていることがやはり印象的ですよね。まろと佳林ちゃんのストロベリーズなんてのもありましたっけ。J=Jも色々とあったなぁ、と感じさせてくれる1曲でした。

14曲目は「選ばれし私達」、15曲目は「STAGE ~アガッてみな~」というアッパーな楽曲が続きます。「選ばれし私達」の頃って、オリジナルメンバー5人のライブパフォーマンスが凄すぎて、「これからJ=Jがとんでもないことになるんじゃないか!?」と期待が膨らんでいた時期なんですよね。ステージでの貫禄が付き始めていた時期だったんですが、そこから長い年月が経って「STAGE ~アガッてみな~」では、もう既にJ=Jが最強のパフォーマンス集団であることは周知の事実となっていたと思います。たった2曲の流れですが、そんな時の移り変わりを感じました。メンバーの入れ代わりはありましたが、圧倒的なステージパフォーマンスをJ=Jブランドの中軸にこれからも最強のグループであり続けて欲しいですよね。後付けみたいになりますが、れいれいのボイパ、やっぱりカッコよかったです。

16~23曲目はJuicetoryスペシャルメドレー。「イジ抱き」から始まり、「ひとそれ」や「Magic of Love」といった定番曲もこのメドレーの中で披露されました。長さが1ハーフ…どころかもっと短くなっている楽曲もあったので、なかなかライブに来たことがない人たちにとっては少し残念に感じた部分もあったかもしれません(近くにいた新規目のお客さんも「ひとそれは知ってる!再生回数すごい曲だよね!」と開演前に話していたので、フルで聴きたかったんじゃないかな)。でも、言っちゃあ、これまで死ぬほど聴いてきた楽曲たちなので、10周年記念ではその美味しいところだけツマミ食いできれば十分かな、という部分もありました。「微炭酸」はまなかんが入って、佳林ちゃんとのシンメの激しいダンスがJ=Jの新しい側面を表してくれた楽曲ですし、「わた抱き」は下手したら「ロマンスの途中」よりも初期J=Jらしさを感じさせるアッパーチューン。「カラダだけが大人になったんじゃない」はドラマ「武道館」に伴ってNEXT YOU名義で発表された「Next is you!」と抱き合わせで発売された、J=J名義の楽曲ということで「本業はこっちなんだけどね」的な印象のある楽曲です。「Never Never Surrender」は個人的にはずっとあまりピンと来なかった楽曲なんですが、2ndアルバム「!Una mas!」の1曲目ですし、何と言っても近年のいちかしのフェイクで個人的注目度爆上がり中の楽曲です。「チョイチャン」こと「CHOICE&CHANCE」は1stアルバムからMV化までされたキラーチューン。「STAGE ~アガッてみな~」と対を為すイメージなので、松井寛2選と並んで、「どっちもやってくれて贅沢だなぁ」部門を務める楽曲でした。「Magic of Love」では「ここだよりさち」をやってくれて、それだけでもありがたかったですね。

そんな素晴らしいメドレーが終わって、次の24曲目は「Wonderful World(2023 10th Juice Ver.)」でした。1回目の武道館公演のラストで披露されたパフォーマンスは、今でも語り草になっている伝説の1曲ですよね。この間、YouTubeのオフィシャルチャンネルでもライブ映像が公開されてとても嬉しかったです。

 

www.youtube.com

 

J=Jも年輪の厚いグループになりましたね。2023年バージョンということで、前奏のアカペラでのハモリも披露されていましたが、とても美しい歌声でした。これでこそJ=Jですね。

25曲目のアンコール前最後の楽曲は「ボン・ヴォヤージュ~想いの軌跡~」。10周年記念アルバム「Juicetory」に収録された唯一の新曲です。コンサートタイトルにもなっている「Juicetory」を象徴する1曲ですね。「新しい未来を増えていく仲間と切り開いていく、でももちろんこれまでの軌跡も忘れない」というまさに今のJ=Jらしい歌詞。いちかしのヴァイオリンも素敵でした。

アンコール明けからは、みんながデビュー時の衣装を身に纏い再登場。この演出がにくかったですね(そういえば、ここまで衣装に触れるのを忘れていました…どれもカッコよく美しい衣装だったので、ぜひネットで探してみてください)。

26曲目からのアンコールは「Familia」で壮大に始まりました。穏やかな楽曲なので、何だか大好きなJ=Jがまたステージに戻って来てくれて安心したような心持になりました。「Familia」のあとのMCでは、「アンコールありがとうございました」的なお決まりの内容ではあったのですが、みんな言い間違えがあったり、噛みかみだったりで、歌とダンス以外はぽけぽけなJ=Jが見られて、これまた気分が非常に和みました。そして、今回のツアーではアンコール1曲目にそれぞれのデビュー曲をやっていたことが紹介され、ツアーファイナルの武道館ではそれをメドレーでやることが宣言されました。ここからテンションぶち上げのひと時が始まります。

デビュー曲メドレーは「全部賭けてGO!!」から始まり、「イニミニマニモ」とさくりんごのデビュー曲。クールかつ可愛いJ=Jを見せてくれました。お次は、3flowerのデビュー曲「プラスティック・ラブ」と「Future Smile」。「Familia」はすでにアンコール1曲目でやっていたのでね。妃咲ちゃんが「プラスティック・ラブ」の衣装を着ていたのですが、当時は衣装に着せられている感がありましたが、今ではぴっちに似合っていたのが流石でした(妃咲ちゃんは本当にお顔が美しい)。それから、れいれいのJ=Jデビュー曲は「がんばれないよ」。れいれいが「がんばれないよ」からという印象はあまりなかったのですが、そう言えば、「いきなりれいれいの歌声が堪能できる楽曲が来たな~」という感想を持ったことをふと思い出しましたね。れいれいの「がんばれないよ」の白いワンピース衣装が非常に似合っていました。そして、次に来たのは、ゆめりあいのデビュー曲にして、私が1番大好きな「好きって言ってよ」。落ちサビのソロパート回しはやはり圧巻の一言。やってくれてありがとう!そして里愛ちゃんの「好きって言ってよ」衣装、めちゃくちゃキュートでした。「ポップミュージック」は他の曲がかなりのショートバージョンだったのに比べて、かなり長めの割り振り。おそらくはKANさんへの感謝を表明していたのではないかと。素敵な楽曲をありがとうございました。そして、来ました。デビュー曲で、ここまで衝撃を与えたのは後にも先にも、このるるちゃんの「Fiesta! Fiesta!」だけ。最高に「情熱を解き放」っていました。

デビュー曲メドレーの締め括りは、当然ながらあーりーデビュー曲の「ロマンスの途中」。間奏までの前半はオリジナルバージョンでしたが、間奏から先は10周年記念アルバム「Juicetory」に収録された2023年バージョン。時代を繋ぐ、そんな演出にめちゃくちゃグッときました。

あと、いちいち言うことではないかもしれないんですが、できれば「SEXY SEXY」もやって欲しかったですね。スペシャルメドレーの方で「微炭酸」をやっていたので、まなかんは救済できている気がするんですが、できれば「SEXY SEXY」でやなみんの救済も…まぁ、やなみんの代表曲が「SEXY SEXY」というわけではないんですが、個人的にはそのイメージがあったので。でも、ツアーロゴの「Final」にやなみんカラーもあったので、それで良しとしましょう!

そして、ラストMCは恒例の1人1言。詳細は覚えていないんですが、めちゃくちゃ早口で言葉を詰め込んだ工藤由愛ちゃんがハイライトでしょうか。謎に最後に「アーイ!」と叫んでいたのも、会場を爆笑に包んでいて微笑ましかったです。円盤でどうなっているか早く観たいですね。

最後の楽曲は「未来へ、さあ走り出せ!」。重なり合う歌声がどこまでもJ=Jの歌声で、この楽曲も未来まで歌い継がれていくのだと思うと感慨深いですね。厳密に言えば、声音は変わっていくのかもしれません。でも、この楽曲を歌うときに脳裏に去来する光り輝くイメージはいつまでも変わらずにどこまでも繋がっていってほしいと思います。

歌い終わり、「未来へ、さあ走り出せ!」のインストがかかりながらの、バイバイタイム。会場を練り歩きながら手を振ってファンサービスをしてくれる恒例の時間ですが、まだ歌い足りないのか、何人かのメンバーが「トゥトゥトゥ♪」と歌い、ハモリながら手を振ってくれました。途中からはれいれいもボイスパーカッションで参加してくれたり、皆の仲の良さや、ライブへの愛情を感じられて素晴らしい一時でした。

 

■後記

言及したメンバーにもちょっと偏りがあったり、色々と書き足りないこともあったり、決して満足のいく記事にはなっていないのですが、久しぶりに沢山の文字を書いたので疲れてしまいました。なので、この辺で終わりたいと思います。が、せっかくなので、いま自分の頭の中にある諸々の事柄を吐き出しておこうと思います。ライブの内容には直接関係ないところも多いので、読み飛ばしていただけたらと思います。

まず、今回の席について。途中でも書きましたが、今回は、東側の1階席のチケットをゲットしました。1階席は実は初めてで、武道館はだいたいいつも2階席でした。なので、「今回は1階席だ!」ちょっとテンション上がっていたのですが、まさかのかなり端の方の席。ビジョンはほとんど真横なのでまともに見れず、また1階席の奥の方の席だったので、ビジョンの上側は2階席がある屋根で5分の1くらいは欠けている感じでした。始まる前は「外れ席だ~」と嘆いていたのですが、いざ始まってみたら、結構近くまでメンバーがやって来てくれる瞬間があり、「これはこれでいいかも」と思いましたね。ビジョンを観たいなら後日円盤を買えば良いわけですし、メンバーを近くで観て、手を振ってもらいたいなら、たとえ端の方であっても(むしろステージに近い端の方の席が)1階席は良いものなんじゃないかなと思いました。何にでも一長一短がありますね。

前回の武道館公演はライブビューイングを映画館で観たのですが、これは視界良好で常にアップでメンバーの表情が大画面で見られるので、これはこれで良いものだと思いました。が、やっぱり音響がイマイチ。特に低音の質が悪く、あまりライブに行っているという体感を得ることができませんでした。まぁ、ほぼリアルタイムでみっぷるの涙を観られたのは、良かったのですが。そういう意味では、やはり現地の音響はいいですね。低音もしっかり響いて、「ライブに来た~」という感じがあります。歓声の大きさもリアルに伝わって来るので、テンションの上がり方が違います。やはりできることならライブは会場で楽しみたいものです。まぁ、会場に行けなそうであれば、ライブビューイングもまた良いものですけどね。

それから途中途中でも書きましたが、近くの席に、結構新規目のカップル(か男女の友達)が観に来ていました。この2人が割と喋るタイプだったのですが、正直ライブ中のお喋りはやめて欲しい派なんです、私。気が散るので。でも、いざこうやって文章に記録を書き起こしてみると、自分以外の人がどういうところに注目していたのかということが自分の興味を引いていたんだと思い知らされました。そう言えば、YouTubeのコメント欄とかも結構読む派なので、考えてみれば当たり前のことなんですよね。だから周りの人が話していても、今後はあまり苛々したりしないように気をつけようと思いました。ライブを楽しめないのが1番勿体ないですからね。

ライブの環境についてはそんなところで、J=Jのメンバーのことについてもいくつか。まず推しの里愛ちゃんの衣装について。1着目のパンツスタイルがまずカッコ良かったですね。ステージを真横から見る形だったので、探すのに苦労するかなとも思っていたのですが、パンツスタイルはさくらちと里愛ちゃんしかいなかったので、割と簡単に発見できて良かったです。無事、双眼鏡でじっくり見ることもできました(笑)。2着目は記憶が薄れてしまっているのですが、里愛ちゃんの上半身が結構ふわふわな感じの白い衣装で、こちらも割と特徴的だったので見つけやすくて助かりました。里愛ちゃん以外のメンバーで言うと、りさちのヘアスタイルが甘々で非常に可愛く、目を引いていました。MCでの喋り方も含め、さすが3代目あざかわ担当を名乗るだけはありますね。ダンスで言うと、意外といちかしに目を奪われることが多かったです。キャラクターっぽい可愛さと音感の良さがあって、観ていて楽しいダンスでした。あとは由愛ちゃんのダンスもいつも通りパワフルで目を奪われましたね。最後にもう一度衣装の話に戻りますが、あーりーの「ロマンスの途中」の衣装が、何と言うかあーりー自身の成長も含め、色々とエモかったです。

 

J=Jを好きになってから10年が経っているということは、私も10個年を取っているわけですが…J=Jメンバーが様々なことを乗り越え、変化や進化を遂げている一方で、いったい私は何を得たのだろうと思うと、かなり怖くなりますね。変わらないことが美徳となる老舗の料亭であるならば、私のこの10年間も褒められるべきことなのかもしれませんが、そう都合良く自分の立ち位置を誤魔化すことはできませんよね。でも、10年間彼女たちを追って来たからこそ、今回のライブを楽しめたのだと思えば、救われるところもあります。

たっぷりと何かに時間をかけることは、ある意味ではいちばん洗練されたかたちでの復讐なんだ

ねじまき鳥クロニクル

別に何かに復讐をしたいわけではないのですが、この10年という歳月の重みを「てこ」にして、今後もJ=Jという素晴らしいグループの紡いでいく物語を、まるで自分の事のように楽しんでいこうと思います。

改めて素敵な時間をありがとうございました!

Juice=Juice「プライド・ブライト」レビュー

Juice=Juiceの17thシングル「プライド・ブライト」のレビューをしていきたいと思います。100万回再生おめでとうございます!

 

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久しぶりの楽曲レビューです。

MVが公開されてからやや時間が経ってしまいましたが、この素晴らしい楽曲について何も書かずに据え置くことはできませんでした。先日の武道館公演は、ライブビューイングにて鑑賞させていただいたのですが、そこでもこの新曲はひと際注目を集めていましたし、何よりも会場を盛り上げていました。イントロのギターが流れてから数秒間で、「Juiceに凄い新曲が来たぞ!」と、そういった類のうねりが巻き起こっていたように思います。

 

■楽曲構成

楽曲構成は至ってシンプルで、

イントロ→サビ1→Aメロ→Bメロ→サビ1→サビ2→間奏

→Aメロ→Bメロ→サビ1→サビ2→間奏

→サビ1→サビ2→アウトロ

という感じです。特別取り上げるとすれば、この楽曲の肝は上にも書いた最強の「ギターリフ」と、最強の「サビ」にあり、その2つをふんだんに使っているということでしょうか。まずはイントロでバキバキのギターリフを発動させて、そこから印象的なサビに繋げています。そしてサビの最後にはまたギターリフが挿入されるという仕組み。

作曲の山崎あおいさんはJuice=Juiceの代表曲にもなった「『ひとりで生きられそう』ってそれってねえ、褒めているの?」の作曲もされており、印象的なメロディラインを作ることに長けた方です。私はあおいさんが作曲した「好きって言ってよ」がJuice=Juiceの楽曲の中でも1,2を争うくらい好きなんですが、この曲もメロディラインがとても素敵です。

そして編曲はハロプロ御用達の編曲家で、ご自身が優れたギタリストでもあらせられる鈴木俊介さん。武道館ライブでこの楽曲を初めて聴いたときも、ハロプロでこれだけ攻めたギターリフを入れて来るのだから編曲は鈴木俊介さんだろうと思っていました。それくらいロックバンド的に高度なサウンドと言えば…な方なんです。

そう考えると、山崎あおいさんのサビと、鈴木俊介さんのギターに主軸が置かれたこの楽曲が良作になるのは必然なわけですよね。

他にも語るべきことは沢山あり、前述した「好きって言ってよ」もそうでしたが、本楽曲はサビが2部構成になっているので、1曲を通して聴いたときの満足感はとてつもないものがあります。ただ2部構成と言っても、完全に違うメロディを繋ぎ合わせているのではなく、「Only 1 & No.1」のところだけが違うメロディとなっているので、継ぎ接ぎ感もなく、かと言って飽きも来ない絶妙なラインでまとめられています。それからもちろん、AメロやBメロの置き方も素晴らしく、全くと言っていいほど無駄がありません。リズムの立っているAメロと、マイナー調で流れるようなBメロと王道の感じです。楽曲全体を通して、王道でキャッチーなところから全く逸れることなく作り込んでいる…そんな正面突破感があって素敵ですね。

前にも語ったことがありますが、Juice=Juiceと言えば、才能と努力に裏打ちされた高スキルが売りです。そんなグループが王道の楽曲を臆することなく真面目に歌い上げるというのが良いんですよね。ともすれば誰にだってできることのように思われそうなのですが、Juice=Juiceのオリジナリティってこの王道感だと思うんです。これはきっと誰にも真似できない。歌もダンスも上手く、ビジュアルも優れた子たちが自信満々にパフォーマンスしている姿が私は好きです。YouTubeのコメント欄でも「Juiceが歌う強い女の子の曲が好き」というコメントをよく見かけますが、それってこの私が感じる王道感とかなり通じていると思うんです。まさに「ひとりで生きられそう」って言われてしまいそうなくらい完成された子たちが、完成された楽曲をパフォーマンスするというのがJuice=Juiceなんだと思っています。

オリジナルメンバーの頃からJuice=Juiceにはどこか完成された感というのがありました。初期にはその完成された感のせいでどこか引きが無いように見えてしまった時期もありましたが、今やその完成された感がJuice=Juiceの強みになっているというのが感慨深いです。そして実際にはJuice=Juiceは新陳代謝を繰り返し、未来への成長の可能性も感じさせてくれるグループにもなりました。常に現状がベストだと納得させながらも、未来を感じさせてくれるなんて、どれだけ素晴らしいグループなんでしょう。

と、少し楽曲のレビューからは逸れてしまいましたね。

あ、あと転調について触れるのを忘れてました。聴き過ぎていつの間にか当たり前になってしまっていたもので。米津玄師やYOASOBIの楽曲でよく見るように、最近は転調を取り入れるのがもはや当たり前になって来ていますよね。ただ本楽曲では、サビと間奏が同じメロディラインなのに半音転調してるのが面白いところです。さらに間奏からAメロに入るタイミングでも転調しているので、もう盛沢山って感じです。この転調があるおかげでシンプルな構成にもかかわらず、何回聴いても飽きないんだと思いますね。

 

■音像

シンセサイザーを色濃く使っているので、全体的な口当たりはアイドル楽曲らしいというか、J-POPらしい感じがあります。が、一聴して耳を引くギターリフを中心にして、ドラムもベースも結構エグイことをやっています。表面のポップさを剝ぎ取ると、とんでもなく攻めたロックサウンドになっていますね。

ドラムなんかはかなりわかりやすく、手数と言うかゴーストノートがハンパないです。全編通しても凄いのは変わらないのですが、1番のAメロではスネアが、2番のAメロではハイハットがわかりやすくかなり細かいゴーストノートを刻んでいてとてもカッコイイです。ベースは間奏やサビでもう一つのメロディラインかというくらい自由自在にフレーズを奏でています。これがあることでだいぶ楽曲としての厚みが出ているように思います。もちろん無理をせずコードや全体のリズムに合わせて弾いているところもあり、その辺のバランスもちょうどいい感じなんですよね。

ギターはその音作りからカッコイイですし、全楽曲の中でも1番耳を引くように要所に差し込まれています。が、荒っぽいカッティングでありながらも、Bメロの背後では相当テクニカルなフレーズを弾いています。聞こえにくいですがサビでも僅かに聴き取れますね。このギター、ベース、ドラムの3者がそれぞれに高度な演奏をしてくれているおかげで、ただキャッチーなメロディラインを持っているだけの楽曲というところに留まらないクオリティを感じさせてくれます。

 

■歌詞

そして絶賛されているのが、この山崎あおいさんの書く歌詞です。

あの子に会ってたのね 「ケジメ」なんて呼び方で

というのはこの楽曲の中でも1番のキラーフレーズですね。なぜキラーフレーズなのかと言えば、もちろん皮肉の効いたワードセンスということもあるんですが、全体的に抽象的な言葉で構成されている本楽曲の歌詞において、このワンフレーズだけでおおよその状況が説明されているからだと思います。

色々な場面が考えられますが、とりあえず主人公の女の子の彼が隠れて別の女の子に会っていたことは間違いがなさそうです。「ケジメ」と言うからには、元カノなのか何なのか、いずれにせよ彼はその子に対して何かしら惹かれるところはあったのでしょう。惹かれていたからこそ、その別の子との関係性を断ち切るために会っていたのでしょうか。いや、単に「ケジメ」というのは都合の良い言い訳でしかなく、浮気がバレそうになって持ち出した都合の良い言葉だったかもしれません。

そして、そこに繋がる…

比べて選ばれて めでたし言える女じゃない

という歌詞からは、「それでも僕は君の方が好きなんだ。だからこうして君の所に戻って来たんじゃないか。そうさ。君の言う通り、僕は確かにあの子に惹かれるところがあったかもしれない。でも、だからこそ、男のケジメとして、あの子よりも君の方が好きだと確信するために、あの子に会って、そしてちゃんとお別れを告げて来たんだ」的なエピソードがイメージできますね。たった2行の歌詞ですが、何と言うかそういう場面設定がすっと頭に浮かんで来るので、この歌詞はとてつもない情報量を含んだ優れた詩であると思うわけです。

それ以外の歌詞については基本的に抽象的なことを語っているので、ざっくりとまとめると…

・Only 1かつNo.1でありたい(特別かつあらゆる面で1番の女でありたい)

・ありきたりな愛の言葉で言いくるめられるような女じゃない

・そういうプライドが私にはある

ということになるでしょうか。つまり、「私のことを心底愛してくれる人じゃないと嫌だし、ましてや他の女に現を抜かしているような男はごめんこうむる」ということでしょうね。ただ、そういうことを繰り返し宣言し続けないといけないくらいには、そのプライドもぐらぐらとぐらついていると読み取れるかもしれません。

だめ…だめ…前向いて

なんかの歌詞にあるように、やっぱりどこかに弱さのようなところも抱えていて、基本はカッコ良くて強い女性なんですけど、その二面性が見え隠れする感じが堪らないです。「ひとそれ」なんかもこういったテイストが含まれていましたよね。そういう意味でも、Juice=Juiceのイメージにぴったりの歌詞だと思います。

 

■まとめ

ともかく武道館公演で初めて見たときから印象が強かったこの楽曲。シンプルな楽曲ではありますが、繰り返される転調とJuiceメンバーの高いスキルとビジュアルのおかげで何回でも聴くことが、観ることができてしまいます。ネットの情報では、ハロプロのMVの中でもかなりの早さで100万回再生を達したということですし、やっぱり楽曲の強さって大事だなぁと思います。そんなわけでMVはもうかなりの回数観たので、今度はライブバージョンも早く観てみたいものです。

MVの見どころについても語ろうかと思ったのですが、もう1カット1カットが素晴らしすぎるので、今回は割愛させていただこうと思います。それでも漂う妃咲ちゃんのエースの風格と、落ちサビの里愛ちゃんの音ハメだけはここで少し触れておきたいと思います…いや、やっぱりみんな最高だ~

凛として時雨「aurora is mine tour 2023@KT Zepp Yokohama 2023.5.20」ライブレポート

約1年ぶりに凛として時雨のライブに行って参りました。まず一言、「最高に盛り上がったぜ!!!!」なライブでした。

コロナが第5類に格下げとなり、完全に歓声もOK、1階はオールスタンディングという久しぶりの感じだったわけですが、いやぁ、めちゃくちゃ盛り上がっていましたね。ちょうど1年前の「DEAD IS ALIVE TOUR」も同じ会場で観たのですが、その時は1階も全て席指定だったのでここまでの盛り上がりではなかったように思います。そう考えると、たった1年でも世の情勢は大きく変わったんだなぁと思わされますね。通勤電車が込んで来たなぁ、というのも目に見える変化ではありますが、ライブの記憶はまた格段に深く刻みつけられているが故、ライブの高揚感とともに何とも言えない感慨深さに浸っております。

 

aurora is mine tour

 

 

1.雑感

どうしても1年前の「DEAD IS ALIVE」との比較になりますが、「DEAD IS ALIVE」が「竜巻いて鮮脳」を軸に据えた高湿度で濃密なライブであったことに対し、今年の「aurora is mine」はかなり攻撃的でノリの良いライブだったように思います。ツアータイトルからしたら何だか逆な感じですね。

この間発売されたアルバム「last aurorally」に収録されている楽曲が攻撃的な楽曲が多かったこともあり、全体的にアップテンポな構成となっており、息を突く暇もなくライブが進んでいった印象です。TKのソロだと曲ごとにギターを持ち替えている印象が強いのですが、私が見る限り、今回のライブでは一度もギターを変えずにやり切ったと思います。曲間の小休止やチューニングに割く時間も最小限で、次から次へと楽曲が降り注いでくる感じが、時雨のライブではちょっと新しく感じました。また珍しくTKがよく喋っていました。後ほど詳しく書きますが、客を乗せるような言葉を要所要所で発していたのも印象的でしたね。観客の歓声の大きさ、フロア全体のノリも最高で、何となく今回のツアーの中でもこの横浜公演は盛り上がったライブだったんだと思います。

あとは毎度のことかもしれませんが、相変わらず照明が美しかったです。オーロラ、見えましたね。

と、そんな感じで非常に温度感が高く、満足度も高く、という最高のライブでございました。それではセトリも兼て、1曲ずつ簡単に振り返っていこうと思います。

 

2.セトリ

M1:Neighbormind

まず、1曲目が「Neighbormind」ってヤバ過ぎます。この曲はAメロの不安定なボーカル、テクニカルなドラム、超絶技巧のギターという非常に演奏難易度の高い楽曲という認識があります。そして間奏の神々しさと、サビのキャッチーさが個人的に非常に大好きな1曲。スパイダーマンを彷彿させる赤と青の照明が怪しく光り、一音目から凛として時雨の世界に引き込んでくれました。

M2:Marvelous Persona

近年の時雨の楽曲の中でも、構成やリズムパターンが結構シンプル目なこの楽曲ですが、だからこそライブ序盤で非常に盛り上がります。「Neighbormind」がテクニカルで濃密な世界観の楽曲だとすれば、こちらはとにかくノリが良くわかりやすい楽曲。345の切り裂くようなボーカルと、繰り返される狂いそうなギターリフが突き刺さってきました。

M3:laser beamer

すっかりライブの定番曲となってきましたね。この楽曲はとにかくAメロがTKの曲芸なんですよね。よくあんなギターを弾きながら歌えるな、と。印象的なぴゅんぴゅん言わせるリフのときにエフェクターを確実に踏むスキルも一級品。シャウトを多用する楽曲でもあるので、音程なんて関係ねぇ!と言わんばかりのゴリゴリの勢いがテンションを上げてくれます。そして毎回思いますが、例のリフのときのライティングがカッコ良すぎます。脳汁出まくりです。

M4:Super Sonic Aurorally

楽曲が始まる前にちょっとチューニングタイムがありましたが、ここで珍しくTKが一言。「凛として時雨です。沢山聴こえますね、魂の声が。オーロラ見えちゃうんですかね、今日は。最後までよろしくお願いします」と、オーロラ・フラグを立てて、フロアを盛り上げました。このときから、この横浜公演はおそらくかなり盛り上がっている方なのではないかという予感がありました。

そして、始まった楽曲はもちろん盛り上がること間違いなしの「Super Sonic Aurorally」。時雨らしいテクニカルな部分もありながら全編通してメロディラインがキャッチーなこともあり、非常にポップな一曲ですよね。この頃にはもう既にフロアはこれ以上ないくらいに盛り上がっていました。僅かに残っていた硬さなんて完全に消え失せ、楽曲の勢いに身を任せていました。いやぁ、やっぱり好きだわ、この曲。

あ、あとライティングも非常に美しかったです。「last aurorally」のアルバムジャケットを彷彿とさせるような、青と緑のオーロラっぽい色味が最高でした。

M5:竜巻いて鮮脳

イントロから歓声が沸き起こっていました。おそらく「DEAD IS ALIVE」のラストのあの盛り上がりを思い出した人が沢山いたんじゃないでしょうか。そして、イントロのライティング(竜巻を模してくるくると回転する照明)がまた美しいんですよね。サビのノリの良さはもちろんですが、楽曲ラストの狂ったように倍テンポになる瞬間はとてつもないカタルシス……めちゃ竜巻いてました。

M6:ラストダンスレボリューション

ずっとライブで聴きたかったこの楽曲。私はそこまでの古参ではないので、ベストアルバムにライブバージョンが収録されていたこの曲を、実際にライブで聴いたことはありませんでした。ただライブでさらに良くなるということは、ベストアルバムで知っていたので、いつか生で聴いてみたいとずっと思っていたわけです。その願望をこの度、遂に叶えていただきました。とにかく「ありがとう」とゆいたい。

前半は緩やかになったり、細かいリズムになったりを繰り返し、後半は劇的な展開を見せるこの楽曲。中盤でガラッとテンポが変わる瞬間には、あのベストアルバムのように会場から歓声が上がり、「これこれ!」となりました。ラストのシャウトの応酬は本当に頭がおかしくなりそうなくらい盛り上がりました。うーん、生で聴けて本当に良かった。あと、ミラーボールを使ったライティングが最高でした。とても美しかったですし、この楽曲が「オーロラ」と題するこのライブで披露されて良かったな、と思いました。何となく銀色っぽいなぁと感じていたこの楽曲に最適の証明だったと思います。

M7:DISCO FLIGHT

まぁ、これもイントロから盛り上がる外れ無しの1曲ですね。ただただいつものようにノっていただけなので、あまり記憶がないです。何回聴いてもこの曲のドラムが大好き。そして、間奏のギターソロもエグイ。実は楽曲構成も凝っているので、何回聴いても飽きないんですよね。不思議。

M8:seacret cm

激しいラインナップから一転、幻想的な凛として時雨を見せてくれます。少し全体的なセトリに言及すれば、この「seacret cm」から「illusion is mine」に繋がるのかなと思いながら聴いていました。何て言ったって、ツアータイトルが「aurora is mine」ですからね。でも、まさかの「illusion is mine」なし。まぁ、それもそれで時雨らしいからいっか(笑)。

と、少し話が逸れましたが、この「seacret cm」がかなり良かったです。スタジオライブバージョンの映像も観たことがあるのですが、その時も結構終盤に盛り上がりを見せて、原曲とはまた違った一面がありました。が、今回のライブのそれはスタジオライブバージョン以上。もちろん、序盤、中盤の静かで美しく抒情的な音楽性も素敵ではありますが、この攻撃的なセットリストに引っ張られるような形で楽曲ラストではかなりの盛り上がりを見せてくれました。TKのファルセットも強弱がついていて、美しくかつ激しかったです。

M9:abnormalize

この楽曲もすっかりライブ定番曲となりましたね。興行上外せないという部分もあるのでしょうが、やっぱり1音目が鳴った瞬間の盛り上がりは格別ですね。1拍目にアルペジオが鳴り始め、2拍目からボーカルが入って来る。この一瞬で涎が流れてしまうくらいには、私もすっかりパブロフに調教されてしまいました。この曲も定番曲なので多くは語りません。とにかく音の洪水に身を任せましょう。

M10:self-hacking

最新アルバム「last aurorally」の中にあっては希少なミドルテンポの楽曲。怪しげなベースのリフから始まり、浮遊感漂うAメロが長く続くこの楽曲は掴みどころがなく、あまり得意でないという方もいるのかもしれません。が、私はとにかくこの楽曲のサビのメロディラインが大好きなんですよね。一気にキャッチーになるじゃないですか。てことは間違いなくライブで盛り上がるわけです。そんな期待通りの展開を見せてくれた本楽曲であります。

一点気になるとすれば、Aメロのギターが被せの音源だったことですかね。まぁ、さすがにあれは弾きながら歌えないか。でも、それ以外のところでは、キメも完璧に合っていましたし、ベースもギターもゴリッゴリの音像なのでめちゃくちゃカッコ良かったです。

MC

ピエール中野さんが沢山喋っていました。Xジャンプをしました。俺たちはXになりました。

あと予備知識で、ピエール中野さんのインスタのフォロワーが1番多いのは、横浜市民だそうです。教えてくれました。ありがたいですね。あと、「横浜は熱量高いですね」と言ってくれたことも嬉しかったです。

このピエール中野さんのMCを楽しむというのも、凛として時雨のライブの大事な要素だと思います。これと345さんの物販紹介があるからこそ、何と言うか凛として時雨がバンドだと思えるんですよね。バンド、最高です。

M11:make up syndrome

珍しい楽曲をやってくれるな!と嬉しかった1曲です。ていうか、ライブで実際にギターを弾いているのを見て、この楽曲のギターリフがエグイことに気づかされました。なんであんなにハーモニクスを多用して、しかも綺麗に鳴らせるんだ……!? あと意外とドラムもエグイというか、表現力が問われるなと思いました。何となく音源を聴いているときには平坦な印象があったのですが、こんなに深みのある曲だとはあまり認識できていませんでした。これからちゃんと音源も聴いていこうと思いました。今回のライブを通して、1番音源とのギャップを感じた曲だと思います。

M12:Telecastic fake show

はい。この曲も定番ですね。ブレイクのところで歓声が上がったり、間奏の辺りでクラップが会場を包んだり、会場全体が一体となった感じがありました。ピエール中野さんのドラムもちょっと走り気味になったりと、ライブならではの良さを強く体感した1曲でもありました。本当に素晴らしいパフォーマンスを魅せてくれます。楽曲終わりの遊びのギターソロも非常にカッコ良く、痺れました。

M13:感覚UFO

いやぁ、実は私、ライブで「感覚UFO」聴くの初めてだったんですよね。ライブ映像は死ぬほど見てきましたが。イントロというか、曲が始まる前のあの前奏が「Telecastic fake show」から間を置かず始まった瞬間に、体に電撃が走りました。これを生で感じたかった。フロアも最高潮に達していました。

サビの激情的なバックサウンドを叩き割るような平板なボーカルのメロディラインが相変わらず狂っていました。そこから盛り上がらないはずがないシャウト。一体全体、どういう展開の楽曲なんだい。初見殺しとはこのことですが、初見でも「なんか盛り上がってるー!」となってしまうに違いない素晴らしい楽曲です。

MC

345のMCは相変わらず可愛かったです。中学生の頃、妹がハムスターを飼っていましたが、何故かいつもその頃のことを思い出します。小動物的な可愛さ。「オーロラ・マイクロファイバー・クロス」の紹介をするときに言葉が出てこなかった345さんをサポートするように、会場から「メガネが拭けます」と声が上がっていたのが面白かったですね。次に「オーロラ・タオル」を紹介すると、会場から「おぉ!!」と歓声が上がったりして、この横浜公演が盛り上がっていることが感じ取れてそれも良かったです。

M14:滅亡craft

ライブ終盤のこの曲はヤバイですね。イントロの内省的な雰囲気が素晴らしい一日の終焉を予感させます。なんで楽しい時間って、ほんの少ししたら寂しさに変わってしまうんだろう的なセンチメンタルに浸りながら聴いていましたね。

ただ曲に集中できない瞬間もあって。頭の隅っこでは、「滅亡craftをここでやるってことは、最後がアレキシサイミアスペアか」と考えてしまう自分は取り除けませんでした。その辺が私の集中力がないところですね。まぁ、それくらい「アレキシサイミアスペア」が楽しみだったという事でもあるのですが。

それにしても「滅亡craft」は何と言うか、酸いも甘いもを含んだ楽曲ですね。転調して明るくなる部分もあるのですが、そこでもTKが悲痛なシャウトを放つのでとにかく心が乱されます。そして最後にはイントロと同じフレーズに戻って来て終わるという。素晴らしい映画を一本観た後のような満足感がありました。

M15:アレキシサイミアスペア

正直、アルバム「last aurorally」の中でも力の入れ方が半端じゃない本楽曲。どれだけ時雨の持っている引出を詰め込んでいるんだという感じですよね。そして、この狂った1曲を演奏しきってしまう3人のミュージシャンとしての技術の高さにも驚かされます。

もう終わってしまうのか、という寂しさもありましたが、そんな儚い感情さえ圧倒して吹き飛ばしてしまう楽曲と演奏のエネルギーに感服しっぱなしでした。一分の隙さえなく、一音一音がクライマックスに向けて盛り上がっていく感じが「良いライブに来てるなぁ」と実感させてくれます。テレビ番組「Love Music」でも演奏が披露されていましたが、ぜひこのライブ、横浜公演での演奏をもう一度テレビで流してほしいと思いました。やっぱりバンドだから。生きてるものだから。盛り上がったライブのラストで披露される楽曲ほどに心を揺るがすものは無いと思います。それくらい素晴らしい演奏でした。

 

3.ライブ終演

いやぁ、久しぶりに手放しで盛り上がれたライブでした。最近行ったライブで言うと、yonawoやtoeなどがありましたが、それとはまた違った、凛として時雨でなければ体感できない類の激情がありましたね。やっぱり時雨が好きです。そのことを再確認しました。今回のライブは「last aurorally」という最新アルバムを引っ提げての公演ではあったのですが、最初に書いたようにコロナ規制が終了したこともあってか、何か古き良き時雨のライブに来たという感じがありました。何度も書きますが、それくらい手放しで楽しめたライブだったように思います。

私事にはなりますが、近く会社で部署異動の予定があり、そのことで漠然と不安感を抱く毎日が続いておりました。新しい場所で上手くやっていけるのか、今までの場所で自分は何か成果が残せたのか、そういう焦燥感や不安感みたいなものが頭の中を渦巻いていて、何をしていても落ち着かないという状態。新しく買ったゲーム(ゼルダの伝説)をやっている間は、何となくそのことを忘れていられるけど……でも、なんか日々が楽しくないんだよな。そんな感覚に苛まれていました。

そんな日常に合って、わずか90分弱という短い時間ではありましたが、心から楽しいと思える時間をくれた凛として時雨には感謝しかありません。ほんの僅かな時間であっても、そういうのが心のエネルギーとなり、また小さな太陽となって、じめじめとした部分を照らし出し、温めてくれるのだと思います。そんな奇跡的な一瞬を胸に、言うなれば自らの心にオーロラを飼って、明日もまた頑張っていこうと思います。

最後にもう一度。最高のライブでした!